仇なし、奉仕せよ
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俺は今や財団の人間だ

アバカン1をひっかけ、シフトに従ってそれらしくやる。機動部隊の仕事としてはいい方だ。得体のしれないクリーチャーや異常な能力を持った人型実体を相手に効くかわからない武器で立ち向かうのと比べたらよほどマシだ。

ただ遺物サイトをノヴォシビルスク2にある軍の施設であるかのように見せかけるだけでいい、今週のシフトは本当にラッキーだ。

肉のせいで俺たちは忘れたことになった、そして国は俺たちを売った。

先週はあの肉の親戚が牛耳るマフィアのガサ入れだった。モスクワの地下でサイ-133の指揮下に入った。
あの人類愛に溢れた十字軍どもに従いブラックロッジの忌々しい肉崇拝のカルトどもに徹甲焼夷弾を浴びせる羽目になった。クローネンバーグ現象がどうたらとかで異常に盛り上がった足の吸盤を使って跳ね回るカルティストをどうやって生け捕りにしろっていうんだ、無理に決まってる。

俺たちは元”P”部局にいた火消しの寄せ集めだ、捕まえるのは専門じゃない。

タタールの軛は一人を除いて機動部隊となった4、唯一あの男だけは残された、利用価値があるからと

今週はモールの巣穴だ。

パイプベッドとまずい飯に目をつぶれば週末には都市に行ける。
クラコフ隊長が日本から入ってきたラーメンの店が最高だと教えてくれてから、以来休みの度に行く。

物流の強みを生かして野菜のイクラ5がたっぷりと載ったヌードルだ。ラードをたっぷり入れたソイソースのスープには大きな豚肉が2枚沈められていてボリュームを与えてくれる。脂っこくなった口の中を店主がどこからか仕入れてくるプレミアムウォッカ6で流し込むのはたまらない。そして合間にチャイニーズ風ペリメニ7だ。ジュワ!っとあふれ出る肉汁をさらにウォッカで流し込み、満足いくまで肉と油、そして酒を楽しむ。ひと時の休日を彩るには十分すぎる贅沢だろう。

早く休日にならないものか。

肉は俺たちを母なるロシアから切り離した、ロシアは俺たちを売り渡し、俺たちは世界に奉仕する。

上のやつらは俺たちを便利な道具か何かだと思っているようだ。正しく俺たちは道具だが使い減りするのを覚えてほしい。サイ-13の指揮下で俺たちはブラックロッジの残党が興行で使ったクソったれなグラディエーターの缶詰を延々と回収して廻る陰鬱な作業に従事した。最悪だったのはヴァシリの野郎が食べかけを見つけてしまった事だ。
ニシンのトマト煮みたいな缶詰にほぐれた筋肉とレバーのペーストが詰まってた。ぱっと見では単なるペーストだが、スプーンで削られた底にこっちをじっと見つめる目玉が見えてげんなりとした。その上傍らには徹甲焼夷弾のおかげで酷い匂いを放つ半人半魚の死体スプーン付きときたものだ。エラの張った手で器用に持ちやがって。

しばらくレーションに入ってるレバー・パテはロッカーにためておくことにする。

恐怖の目は大きい、肉は理性を削り心を疲弊させる。戦友との絆とささやかな日常だけが俺たちをかろうじて人間として成り立たせてくれる。

今週はノヴォシビルスク、再来週からロシア政府との新しい連絡員が来るらしい。
送迎会を開いてやろうと思う、GRUじゃ同じ場所に腰を落ち着けられる奴は珍しいが、あいつはそれでも長かった方だ、バターたっぷりのコトレータ・ポ・キエフスキ8と肉汁たっぷりのゴヴャージエ・コトレートィ9をたっぷり作って、ウォッカとワインで送ってやればしばらくは陽気でいられるだろうさ。

『自らに名誉を、祖国に栄光を』『確保、収容、保護』どっちの理念も信じるに値するが、それは大きなまとまりのものだ、この先は自分たちの、部隊の理念も探す必要があるだろう。

嫌な任務の為に人を出すことになった、SCP-2480と似たような案件があるらしい。
シトラ・アキュラの奴ら、俺たちが財団とGOCが協力する前から肉を相手にしていたからって、何人か出向させて
戦術パターンの充実化を図れだとか言いやがった。

クラコフ隊長はフランス製の骨董品を持ってきて、俺たちに運試しをさせた。フランス製のルフォショウ20連式リボルバーだ、あれでロシアンルーレットをさせやがった。空砲を引いたやつがプサイ-9に行く事になる。だから連続で引いてやった。12発目で引いた時にはげらげら笑ってクラコフの方に投げつけてやった、ざまあみろ。

記念すべきこともある、俺たちは俺たちを表す標語を決めた、俺たち60人の軛をまとめる言葉だ。俺たちは繋がり、そして欠けていくだろう……そして一番近い未来に欠けるのはプサイに行く3人の誰かだ。

俺たちはタグに刻んだ。そして俺たちの胸にも刻まれた。

そして今日、俺はルーマニアにいる。
プサイ-9の初週の生存率は半分を切ってるって話だが、タタールの軛で生き残ったのは俺だけだ。

大熊のミーシャはベヒモスに踏みつぶされた、アレクはあのスナッチャーに巻き取られて自分ごとテルミットでやつらを焼き尽くした。

一方の俺はキチン質の化け物に弾き飛ばされ、今まさに生きるか死ぬかの瀬戸際といったところだ。軋む体を無理やり動かしてアバカンのマガジンを弾き飛ばし、自家製のワイルドキャット10が装填されたとっておきを叩き込む。たかが2mの化け物に殺されてやるほど俺は安くない。

『肉に抗い、世界に奉仕しろ』俺たちは唱え抗う。

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