衛星キス


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ああ。

もうこんな年か。

もう41世紀が終わろうとしているのか。

キミが遥か宇宙の彼方のサイトに異動になってから100年が経とうとしている。

見当もつかない。それくらい、キミは遥か彼方。

そう、人類は寿命の枷を壊し去ったのだ。機械の体に乗り移った者もいるし、肉の体のままに不死となった者どももいる。

すると、知識が失われない。冷たく暗い死の世界に誘われることもない。何より良いのは、愛する者と分かたれることが永遠にないこと。

ワタシは煌々と灯る赤く巨大な星の光に包まれている。今、キミは何色の光に包まれているのだろうか。

この小さな黄金の立方体に唇を落とす。大丈夫、キミの座標はすでに入力されているよ。

ワタシの部屋から唯一、外の冷たく暗い死の世界に繋がるのはただダストシュートのみ。そこに、黄金の立方体を優しく置く。

黄金は宇宙へ放たれた。小さな青白いイオンの炎を身に纏って、真空の世界を蜂のように。

愛を運ぶ、ちいさな黄金の蜂。

幾千年かけてゆっくり、花と花の間を飛んで行く。

キミの元に届くのはいつになるだろう。いつでもいい。

何せ、時間は無限にあるのだから。

   

ああ。

もうこんな年か。

もう52世紀が終わろうとしているのか。

ワタシがキミと分かたれてからもう既に千年以上経ってしまった。

ワタシは肉の体に拘った。何よりも温かみがあるからだ。

ワタシは今白く巨大な星の光に包まれている。遥か彼方のキミは何色の光に包まれているのだろうか?

一つ、窓からこのサイトに宇宙船が入ってきたのが見えた。

こつんと、窓にぶつかる小さな音。

音もなくドアは開かれる。黄金の立方体が軽やかに宙を舞っていた。

蜜蜂のように、軽やかと。

ワタシはそれを手に包み込み、そっと唇を落とす。

少し暖かいのは、あの青白いイオンの炎のおかげだろうか。

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