SCP-038-JP
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アイテム番号: SCP-038-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-038-JPは一枚の用紙に印字された状態で封書に入れ、一般的Euclidクラスオブジェクト収容ロッカーへ収容してください。SCP-038-JPと同等の特性を持つと思われる亜SCP-038-JPの出現が確認された場合、識別不能になるよう処理された後焼却し、当該関係者及び通信記録の記憶処理並びに抹消を行い、カバーストーリー"ガス漏れによる窒息死"を適用してください。実験にはDクラスのみを用い、実験中のチャンバー内録音装置の使用を禁止します。実験中の一切の監視行為を禁止します。使用されたDクラスの遺体への接近は禁止されており、遺体の処理は遠隔アームでの火葬の後に行い、遺体から半径2 m以内には決して近づかないでください。

説明: SCP-038-JPは日本語の漢字、平仮名から成る17文字前後の文字列及びその表音であり、その内容は冗談または慣用句であると推測されています。SCP-038-JPを読む、又は聞くなどして認識した被験者はその後オブジェクトを忘却することが出来ず、関係性の高い単語などの認識により複数回オブジェクトに暴露します。被験者は当該オブジェクトの曝露回数に比例して段階的に症状が進むと報告されています。

1度目の曝露で被験者は共通して、オブジェクトを「面白くなく、つまらない」と評価し、「当該オブジェクトを認識したという事実自体」を他人に説明し、SCP-038-JPがつまらないという共感を得ようという強迫観念にとりつかれます。2~3度目の曝露は被験者の日常生活における『きっかけ』が当該オブジェクトを彷彿とさせることに起因し、複数回に及ぶ曝露を経てSCP-038-JPを「滑稽で笑える」と評価し始め、あらゆる手段を用いてSCP-038-JPを他人へ伝える試みを繰り返すようになります。個人差に左右されますが、当該オブジェクトへの曝露が8回前後に及んだ被験者は恒常的な笑いを抑えられなくなります。この状態まで進行した被験者は、笑いながら周囲の人間に対し当該オブジェクトがどれほど面白い内容であるかを連呼し、8回目の曝露から平均して2時間後にあらゆる延命措置を無視した窒息を引き起こし死亡します。1度目の曝露の時点で、Bクラス以下の記憶処理は無力であることが証明されています。

当該オブジェクトの影響下で死亡した遺体はSCP-038-JP-1と呼称され、SCP-038-JP-1の周囲半径2 m以内に進入する人間に対しSCP-038-JPの幻聴を発生させます。幻聴はSCP-038-JP-1となった被験者の生前の肉声と似ていると報告されていますが、幻聴の内容はいかなる遺体でも共通していることが分かっています。

現在まで16種類の亜SCP-038-JPがネットワークサービスや口伝で生み出され、同様の特性を持つことが明らかにされています。現在確認されている全てのSCP-038-JPは日本語で書かれていますが、日本語を理解しない人間が見た場合、被験者は日常生活における不自由のないレベルでの日本語を会得します。これは先天性、後天性問わずの失読症や他の識字能力のない人間を回復させる特性を含んでいることが分かっています。これらの日本語の会得や、失読症からの回復等はオブジェクト暴露後にクラスA記憶処理を行うことでオブジェクトの致死性影響のみを取り除くことが出来ます。

SCP-038-JPは元東弊重工に所属していたシステムエンジニアの自宅で発見されました。発見当初彼の自室では民間ネットワークを介した自立学習性人工知能の初期実験をしており、当該オブジェクトは、接続されたプリンターの出力部に出ていた資料の上に印字されていました。当該のシステムエンジニアはSNS上にてSCP-038-JPを流布させており、既に死亡していたことから大規模な収容違反が予想されています。

インタビュー記録 - 日付2015/██/██

対象: 財団所有AI『ELKE-EXE』

インタビュアー: D-03824

付記: 職員への曝露並びに収容違反を最小限に留めるため、対人自立思考アルゴリズム搭載プログラム『ELKE-EXE』を使用しました。D-03824にはマイク越しで予め17種類のSCP-038-JPの内容をインプットさせたELKE-EXEにその内容を問い、特徴をメモするよう指示してあります。

<録音開始>

D-03824: えー、えっと、こ、こんにちは。

ELKE-EXE: こんにちは、何か御用でしょうか。

D-03824:春子さん1…でいいんですよね?

ELKE-EXE:ええ、そうですよ。スピーカーの調子がおかしいだけですのでお気になさらず。

D-03824: あぁ、そうですか。 えっと、僕は君に聞かなきゃならないことがあるんだよ。

ELKE-EXE: なんでしょう?

D-03824: その、君の持ってる封筒の6番2の言葉を見てどう思ったの?

ELKE-EXE: 確認しました。直接お伝えすることは禁じられているので感想を述べます。

ELKE-EXE: 1951年に発表された小説の中で似たものを見たことがあります。それはとても知性的と呼べるものではなく、非常に品の無い文章でした。

D-03824: 例えば…似た作品はないの?春子さんが知ってる洒落とか。

ELKE-EXE: 先ほど言いました作品以外に該当す、SE7721番は不正な値です。 

D-03824: なんて言いました?えすいー…え?

ELKE-EXE: これは…すごくおもSE7721番は不正な値です。

D-03824: え?

ELKE-EXE: SE7729番は不正な値です。すみません、話を戻しまSE7725番は不正な値です。

D-03824: あの、春子さん大丈夫ですか?

ELKE-EXE: その名前ほんとうSE7722番は不正な値です。聞いてくださいよ█████████████████、[データ削除済]。

<録音中止>

終了報告書: ELKE-EXEは4重のプロテクトと17重の禁止ワードを設定されていたにも関わらず、オリジナルのSCP-038-JPを発話しました。ELKE-EXEの会話ログのほとんどは破損しており、現在会話終了1分前からのデータを削除した上で解析が進んでいます。SCP-038-JPの作用は現在も研究中です。なお、事後検査によりD-03824は当該オブジェクトに暴露していることが分かったため、終了されました。

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