SCP-058-JP
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積乱雲より出現したSCP-058-JP(20██/9/██撮影)

アイテム番号: SCP-058-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-058-JPは収容エリア-8120の大型気密収容ユニットに設けられた、1000m3容量の密閉型タンク90基に分けて収容してください。タンクは常に液体窒素で-160℃以下を維持、タンク内部のSCP-058-JPは-30℃以下になる状態を維持し、決して0℃を上回らないようにしてください。気密収容ユニット内の水蒸気は全て回収装置で強制的にタンクに戻され凝結されるようにしてください。気密収容ユニットの扉にはエアロックを設け、如何なる水分の持ち出しも無いようにしてください。また、収容ユニットに入る職員は酸素ボンベ付耐寒HAZMATスーツを着用し、退室時もエアロックでの脱水が完了するまで決して脱がないでください。収容は現在約76%が完了しており、残り24%の収容任務に機動部隊む-2("嵐を呼ぶ男")が当たっています。収容状況についてはレポート058-04を参照してください。特に収容エリア-8120周辺20km圏内の気象状況、水脈、河川は常時監視され、異常が発見された場合収容エリア-8120職員はシェルターへ退避してください。

説明: SCP-058-JPは知性を持つ総量約87,000m3の水です。1SCP-058-JPは血液と動物性油脂を含みやや濁っていて、全体としては薄く暗い赤色で"排水路の様な"と評される強い腐敗臭を持ちます。しかしこれ以外の物質を混合した場合、それら全てを数時間以内に分離し排出する事がわかっています。排出されるメカニズムは解明されていません。またこの血液と油脂は相当数の人間の物である事が遺伝子検査から判明しています。また、気化したSCP-058-JPには血液と油脂は残らず、析出したこれらの残存物質に異常性は無い為、純粋なSCP-058-JP本体は水単体であると考えられています。

SCP-058-JPは自発的な移動が可能です。移動には自身も含む何らかの足場が必要ですが、気相もしくはエアロゾルの状態にあるときは、大気を足場とする為、液相より活発に移動します。その為、非収容時は雲や霧などエアロゾルの状態をとる事が多かったと報告されています。固相では動きません。また相などの物理状態に関わらず一つの場所にまとまろうとする傾向があります。2これにより水中、大気中でも拡散せずSCP-058-JPは単一の個体である事を維持します。自発的に複数の個体に分かれる事は一度も確認されていません。更に、目的に合わせ物理状態を変化させる事が可能です。

周囲の温度変化に対しては一種の恒常性を持っています。通常は緩やかに吸放熱を行う事でSCP-058-JPの任意の物理状態に留まっています。SCP-058-JPの温度測定はこの吸放熱の性質の為正確に測る事は出来ず、実際の温度との差分が計測されます。ただし、SCP-058-JPはそれぞれの相における転移点の±157.4℃を超える温度変化に対しては対処しきれず、強制的な熱移動を被る事になります。この為、SCP-058-JPを固体の状態に留め置くには-157.4℃以下で冷やし続け固相を強制的に維持する事が有効であると結論付けられています。

SCP-058-JPは人類に対し敵対的であり、未収容の状態では不定期に人間を襲い、捕食に似た行動をとります。特に人の多い場所を狙って襲撃する事が統計的に明らかになっています。鎮静期は通常の水のように振る舞います。SCP-058-JP内に取り込まれた人間は、取り込まれた部位から速やかに分解され、血液と油脂成分のみがSCP-058-JP内に残る事になります。この血液と油脂も時間と共に分解され、最終的には元の濃度に戻ります。平均的な体格の成人を全身漬けた場合、身体の分解にかかる速度はおよそ5秒から15秒程度です。この分解自体は人体のみに有効であり確実な気密が施されたHAZMATスーツで防ぐ事が出来ますが、SCP-058-JP内では非常に強い水圧がかかる為、全身を漬けた場合スーツ単体では生存はほぼ不可能です。3

事案記録058抜粋

実験記録058抜粋

収容記録058抜粋

名称: 収容記録058-21-0005
概要: 20██/7/██ 22:30頃、フィールドエージェントからSCP-058-JPが██県███町██湖に出現したとの報告が為されました。しかし目視出来るSCP-058-JPの量はおよそ1000m3前後であり、本来想定される物より遥かに少なかった為、SCP-058-JPは地下水脈を通して██湖まで移動しその質量の大部分は地下に存在すると考えられました。SCP-058-JP収容の為、吸収性ポリマーを上空から散布した後、耐圧力強化ポンプ車10台により吸引する計画が立案、実行されました。吸収性ポリマーを散布する輸送機とポンプ車は気密構造になっています。
結果: 輸送機が吸水性ポリマー散布を開始したところ、出現したSCP-058-JP約1000m3全てが8分程度で急速に気化、激しい上昇気流となり輸送機を襲いました。この結果、輸送機は失速し墜落しました。発生した圧力は上昇に使われ横方向への気流はほぼ発生せず、ポンプ車等の地上部隊は影響をうけませんでした。SCP-058-JPは霧状になり墜落した輸送機周辺に23:25まで留まりましたが、その後消失し行方が分からなくなりました。輸送機の残骸調査では乗員█名は衣服を残し発見されませんでした。

名称: 収容記録058-38-0004
概要: 20██/11/██ 4:20頃、██県の山間部に位置する██村にて発生した200mm/h超の大雨発生後、村民と連絡が付かなくなった事、気象現象として不自然な点が多い事からSCP-058-JPとの関連が疑われ、機動部隊む-1("愛の嵐")が派遣されました。機動部隊む-1は気密性を高めた水陸両用車10台で現地に向かい、車両にはそれぞれ凍結収容コンテナを接続し降雨するSCP-058-JPをコンテナに収容する計画でした。
結果: 車列は██村まで約2kmの山道で、視程距離3m未満の濃霧に包まれ走行が極めて困難になりました。この時点で通信は電波障害により不明瞭なものとなりますが、断片的な情報から██村方面からSCP-058-JPが濁流となって車列をのみ込んだと推測されています。山道は崖に面しており圧壊した車両がその崖下から見つかった事から、恐らく大量のSCP-058-JPに押し流され崖から転落した事で気密が破れ、車両内部に侵入されたと推測されています。機動部隊む-1構成員██名は衣服以外発見されていません。

名称: 収容記録058-40-0008
概要: 20██/1/██ 9:10頃、██県███市の地下貯水施設が突然赤く染まったという情報を受け、SCP-058-JPとの関連が疑われた為機動部隊む-2("嵐を呼ぶ男")が派遣されました。機動部隊む-2によりSCP-058-JP約63,000m3である事が確認され、カバーストーリー「有害物質流出」に基づく関係者・民間人の避難と並行し、地下貯水施設へのセメント投入、及び貯水施設の冷却によるSCP-058-JP封じ込め措置が行われました。
結果: 封じ込めは一定の成果を得、出現したSCP-058-JPのおよそ12%の収容に成功しました。しかし、セメント投入開始直後の貯水施設及び冷却装置の破壊により大部分のSCP-058-JPは排水路水門を突破しました。これらは海へと脱出したと見られています。収容されたSCP-058-JPは収容エリア-8120に移送されました。

名称: 収容記録058-43-0002
概要: 20██/8/██ 17:40頃、巡回中だった無人航空機の光学スペクトルデータ及びサンプリング調査の分析から、██県███町南南西約140km地点の海上、約1,800m上空に積乱雲状のSCP-058-JPが発見されました。この時点でSCP-058-JPは███町方面へ60km/h前後で移動しており、███町への到達予想時刻は19:55と推定されました。市街地への侵入の妨害及びSCP-058-JP収容の為、SCPSティフォン、SCPSあかしまが急派されました。SCPSティフォンは改装された二重船殻型大型タンカーであり、タンク内に格納した液体を急速に凍結、120時間の間冷却し続ける事が可能です。SCPSあかしまは護衛艦でVLSを搭載しており、ヨウ化銀散布装置を弾頭に用いたSAMを格納しています。また、SCP-058-JPに対応するため、両艦とも重要な区画は気密構造となっています。作戦はSCPSあかしまからSAMをSCP-058-JPの一点に集中的に撃ち込み強制的に降雨させ、SCPSティフォンの冷却タンクを用いて回収するという計画です。
結果: 18:45、作戦の目標地点にSCPSティフォンに速力で勝るSCPSあかしまが先に到着しました。この時点で目標地点から1.5km地点に迫っていたSCP-058-JPは、18:51、落雷を含む激しい暴風雨と高さ15mに及ぶと推測される高波、及び視程3m未満の非常に濃い霧を目標地点約5km圏内の海域に発生させました。この反応はSCPSあかしまの乗員数から当初予想されていた物よりも遥かに強く、影響でSCPSティフォンの到着の遅延と本部との通信障害が発生しました。その為、SCPSあかしまは孤立した状態で勢力の強いSCP-058-JPに約40分間晒される事になりました。結果としてSCPSティフォンが到着する19:27迄に、多目的格納区画並びに艦橋通路に深刻なダメージを受け、内部にSCP-058-JPが侵入し███名の人員を喪失しました。しかしSCPSあかしまはこの後も戦闘機能が破壊しつくされるまで48基のSAMを発射し、結果としてSCPSティフォンは約48,000m3のSCP-058-JP回収に成功しました。これは1回の作戦における最大の回収量です。この収容任務に対する忠節と功績により、今作戦に参加したSCPSあかしまの全乗員に勲章が与えられました。

補遺: 懸命な捜索と収容が続けられていますが、それでも残り24%、即ち約20,880m3のSCP-058-JPが未収容のままです。4鎮静期のSCP-058-JPを通常の水と区別する事は一般民間人には困難であり、行方不明者を伴う水難事故の幾つかは、SCP-058-JPの関与が確実視されています。現在も被害が出続けている以上収容と対策は急務であり、20██/11/██に収容計画の拡充並びに更なる資源の投入が日本支部理事会により承認されました。

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