SCP-098-JP
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アイテム番号: SCP-098-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-098-JPは通常規格の人型存在収容室に収容し、SCP-098-JP-1群によるSCP-098-JPの敵対化を防ぐため、可能な限り拘束または何らかの薬剤投与は避けてください。また、SCP-098-JPに対する暴力、言葉または態度による侮辱は同様にSCP-098-JP-1群による敵対化を誘発し得る事に注意してください。

SCP-098-JP-1群とは、その代表格であるSCP-098-JP-1aとの対話ないし交渉をSCP-098-JPを介して行う事で、より高度なコミュニケーションが可能です。その際には、SCP-098-JP-1群が有する文化的な背景についての学習マニュアルを必ず閲覧し、記述内の指示に従ってください。
SCP-098-JPがSCP-098-JP-1群によって敵対的となった場合、SCP-098-JP-1群と財団との関係の泥沼化を防ぎ、且つSCP-098-JPの身体的な負担を軽減するため、実行力による鎮静ではなく対話による鎮静と相互理解による関係の修復を優先してください。

説明: SCP-098-JPは北海道███出身の、収容当時21歳の日本人男性です。異常発現前は両親と共に一般的な中流家庭にて問題無く生活していましたが、████年██月██日に膵臓癌に罹患した際に突如異常な性質が発現しました。これらの癌細胞は、現在SCP-098-JP-1aとの交渉により良性腫瘍に似た活動を示しており、共存状態にあるとみなされています。
SCP-098-JPは、対象を構成するあらゆる細胞の一つ一つがあたかも集団生活を営む知的生命体であるかのような知性を有し、不明な原理により発話を行います。これらの細胞はSCP-098-JP-1と呼ばれ、更に各細胞の役割と、それに伴う性格の意味付けにより細分化されています。各SCP-098-JP-1が持つ役割と性格については付属資料1を参照してください。

SCP-098-JP-1は互いにコミュニケーションを取る事が可能であり、多くの個体が常に何らかの会話を周辺の個体と行っています。そのためSCP-098-JPは常に全身から無数の囁き声を放っています。SCP-098-JP-1群が用いる言語はSCP-098-JP人体上の"各地域"によって差異が存在し、その上世代交代に伴う言語の変遷が非常に速いため、現在解明には至っていません。
ただしSCP-098-JPのみが、SCP-098-JP-1全個体の言語を理解しており、また一つ一つの発言を抽出して認識することが可能なようです。そのため、SCP-098-JPを介する事で、SCP-098-JP-1との知的交流が可能です。

SCP-098-JP-1群は議会制国家に似た独特の文化を有し、SCP-098-JPを国土、資源、専守防衛の要と認識しています。SCP-098-JP-1にはそれぞれの役割に応じた階級制度が存在し、SCP-098-JP-1aがその最高位に位置しています。
SCP-098-JP-1は通常の生体細胞としての挙動以上に、能動的な相互協力や活動の効率化を図る事が可能であり、国土であるSCP-098-JPの維持と防衛、治療のために最大限の能力を発揮します。また、新陳代謝を制御することで、老廃物の効率的な除去と衛生を保ちます。

また、多くのSCP-098-JP-1個体はSCP-098-JP外の存在を認識し、何らかの問題が発生した場合には対処しようと努めます。特にSCP-098-JP-1aの多くは明らかに財団の存在を意識しており、現在SCP-098-JP-1群と財団は潜在的国交関係にあります。
しかしSCP-098-JP-1群はSCP-098-JPの独立した意思については正確に把握しておらず、何らかの超常的な存在であると認識しています。SCP-098-JPの脳活動が、SCP-098-JP-1aのそれぞれ独立した思考と意思の連携によって構成されているにも関わらず、SCP-098-JPが独自の意識を保ち続けていられる理由は不明です。

付属資料1: 主要なSCP-098-JP-1の特徴一覧
No. 対応する人体部位 性質 相当する役割
SCP-098-JP-1a 各脳神経細胞 海馬は書記、大脳新皮質は各言語の統制や議会で使用される言語の制定等、本来の脳組織の役割に準ずる性質をそれぞれが持つ。他の個体に比べより知的であり、民族意識が強い 知識層であり支配層。SCP-098-JP-1群の方針を合議制によって決定する。更に"脳議会"は司法、軍事、外交の決定権を有すると共に、具体的な計画を立案し他の各細胞に直接指令を発信する司令所としても機能している
SCP-098-JP-1b 各筋肉細胞 SCP-098-JP-1aより絶え間無く発される指令通りに連携し、筋肉を動作させる。自主性を持つことは無いが、損傷を受けた場合のみ、周辺の個体が指令を待つ事無く修復を開始する 労働者階級。肉体を実際に動作させ、更に各内臓器官や骨格の位置調整や働きを補助する。SCP-098-JP-1b個体同士の連携と人間関係は非常に密だが、積極的に他の細胞とは関係しない
SCP-098-JP-1c 各内臓細胞 主に自主的に、それぞれの内臓が持つ本来の性質を発揮させる。スケジュール管理を重んじており、それから外れるような事態が発生した際には混乱を来す 生産階級。それぞれの内臓が持つ役割と同様の役割を持つ。SCP-098-JP-1aからの指令を受ける事無く普段から自主的に活動しているが、知的活動には興味を持たない。多くの場合で、SCP-098-JP-1群が"移民"と呼称する個体の管理と統制を行っている
SCP-098-JP-1d 各骨細胞 殆ど発話を行う事無く、SCP-098-JP-1aからの指令無しで活動する。造骨細胞と破骨細胞の連携により非常に健康的な骨形成が促されている 労働者階級。骨形成とカルシウム管理を行うが、実際の骨格の運用はSCP-098-JP-1bに一任している
SCP-098-JP-1e 各血液細胞 赤血球等の流通担当個体は常時積極的に発話を行い、指令無しで活動する。血小板、白血球といった防衛担当個体は発話を行わず、指令が発されるまでは血液中を移動している。各個体による意識的な活動または代謝の制御によって血流と血中物質は非常に健康的なバランスに保たれている 労働者階級、治安要員と分業している。流通によって複数のSCP-098-JP-1にエネルギーを供給する個体と、指令によって侵入者を撃退する個体、指令または自主的な活動によってSCP-098-JPの損傷部の修復を行う個体が存在する
SCP-098-JP-1f 各皮膚細胞 積極的に発話を行う。連携力と自主性が高く、またSCP-098-JP外部の状況を認識する能力も有する。部位によって言語に差異が見られる最も顕著な例である 市民階級。感覚能力の補助、体内器官の保護、緊急時の防衛、代謝の補助等々の総合的な皮膚本来の役割を果たす。SCP-098-JP-1aに対して集団投票による任命権を有する。一部の"移民"もこれらに組み込まれている
SCP-098-JP-1g 膵臓癌患部の癌細胞 積極的に発話を行う。膵臓の機能を一部補助しており、その見返りとしてSCP-098-JP-1eからエネルギーを得ている。増殖が抑制されており、SCP-098-JPの健康維持に協力の意思を見せている。他のSCP-098-JP-1個体とは明らかに異なる、狩猟民族的な文化体系を有する 明確な役割は有さないが、文化面、実務面の活動は「一つの社会に取り込まれた少数民族のコミュニティを思わせる」と評される。異常発現直後、SCP-098-JP-1aとの対話によってSCP-098-JP維持のために協力する約定を交わしたと見られる
SCP-098-JP-1h 各感覚細胞 それぞれの感覚細胞で独自の集団を形成しており、非常に組織立っている。自主性が高く、正確且つ速やかな活動を重視する。SCP-098-JP-1aに対する忠誠心が高い 中位の支配階級。感覚細胞としての活動の他、それぞれの感覚器官そのものの操作や、その操作に関わるSCP-098-JP-1bへの直接的な指示を担当する。反射を除く活動の多くをSCP-098-JP-1aの指令に拠る
SCP-098-JP-1i 生殖細胞系列 [編集済] [削除済]
SCP-098-JP-1j 脳組織以外の各神経細胞 脳細胞とは大きな構造的差異が存在しないにも関わらず、明らかに簡略化された役割を果たすに最低限の論理的思考のみを有する。自主性と積極性は無く、SCP-098-JP-1aの指令のみで活動する 下位の支配階級、または通信仲介役。SCP-098-JP-1aの指令を、発話以上に速やかである電気信号によって他のSCP-098-JP-1個体へと伝達する。一個体レベルでの厳密な選定送受信が可能である
SCP-098-JP-1k 各種常在菌 それぞれの菌種で異なる言語・文化を有する。体細胞による管理と統制の下で、一部の種は従来の常在菌通りの活動を示すが、より効率的であり秩序立ったものである。SCP-098-JPを宿主としてから2〜3分でSCP-098-JP-1としての異常が発現する。利己的であるが、多くの個体は通常非活性である 明確な役割は持たず、その都度自らの活動を管理と統制の下で行う。他のSCP-098-JP-1種より明確に"移民"と称されている

付属資料2: SCP-098-JP収容時、財団によってSCP-098-JPが拘束され、ある種乱暴に扱われた事によって、収容当時SCP-098-JP-1群は収容について懐疑的でした。
SCP-098-JP-1aはSCP-098-JP-1hとSCP-098-JP-1jを通じて情報を入手しており、更には拘束時のSCP-098-JPが感じたパニックがSCP-098-JP-1群全体の意思へと無意識に伝播したこと、更には実際にいくつかのSCP-098-JP-1個体が損傷あるいは死亡した事が初期の非友好的な関係へと繋がりました。
更に、その後の実験によってSCP-098-JP-1群の財団に対する不信は加速し、最終的にSCP-098-JPの敵対化現象を招きました。以下はその敵対化現象が顕在化した当時の映像記録です。

映像記録098-13

※注: 本実験はSCP-098-JPが全身から発する囁き声のような音声の音量が上昇し、叫び声のようなものが混じるようになった原因を調査するための検体採取である。SCP-098-JPの抵抗が予想されるため、拘束具を用いた上で対象に鎮静剤を投与し、実行するものとする。

<映像開始>

拘束具を着せられ、椅子に座らされているSCP-098-JPが中央に映っている。

█研究助手が採血のための注射針をSCP-098-JPの左腕に挿入する。

採血が開始されるのとほぼ同時に、SCP-098-JPの全身から響く音声の音量が上昇する。

数秒後、音声が「複数の異なった囁き声」から「複数によって同じ言葉を囁く声」へと変化する。

SCP-098-JPが「何か囁いてる。よく聞こえないけど、祈ってる」と発言。

突如SCP-098-JPが拘束具を引き千切り█研究助手の左腕部を握り潰す。全身から発される「囁き声」は大きくなり、歓声のようなものが混じり始める。

保安要員が駆け込む。

<映像終了>

この後SCP-098-JPは収容を破り、通常収容時の様子や事前検査からは考えられない程の運動能力で以て8名の機動部隊員に重傷を負わせました。上記事象は、最終的に██博士がSCP-098-JP-1aとの交渉を成功させた事によって鎮静化し、その後SCP-098-JPは5日間に渡って昏睡状態となりました。
その後SCP-098-JPの特別収容プロトコルの改訂について議論の必要性があると判断された際に、SCP-098-JP-1aとの前向きな交流の努力の必要性が██博士によって提案されました。提案は、これ以上の化学的サンプルの採取は不必要であり、今後は対象の収容と文化面精神面の研究を重視すべきとの結論に基づき承認されました。

以下は、その後SCP-098-JPがSCP-098-JP-1aの声明を書き起こしたものです。

我々には力がある。その力は多くを解決する事が可能である。
貴国にも力がある。その力は多くを破壊する事が可能である。
然るに貴国が我々の同胞に対して行った唐突かつ理不尽極まりない暴力。それは民衆の殺害、拉致、屈辱的仕打ちの実行であり、我らが国土の侵犯と無節制な危害であった。それに対し我々は即座に神の如き怒りを燃やした。
貴国の犯した罪は許し難いものである。よって我々は力を示した。最終防衛プロトコル"ヘルメガルド1"は我らの神を呼び起こし、貴国にとって重大な損失を為さしめた。我々は大いなる力を示した。

しかし、我々は愚かではない。我々は、貴国が我々の国土を一瞬にして焼き尽くし、我々全てを白き荒れ野に追放するに十分な力を持っている事を知っている。我々が力を持つと同様に、貴国も力を持つ事を知っている。
故に、我々は貴国の提案が是である事を認めよう。
抑え難い怒りと拭い難い屈辱を捨て、新たな出発を願う事を認めよう。

我々と貴国は我々が述べる所の潜在的国交関係となる。互いに干渉は原則控える。だが我々は我々の利益のために貴国が我々を収容したいという望みを叶え、貴国は貴国の利益のために、我々が十分に生存し繁栄できるだけの環境と資源を提供し続けるのである。
我々は過去の恨みや痛みよりも、これら将来の利益を選択する。直接の干渉が無くとも、我々と貴国はより良い関係を築く事が可能であろう。
我々はそれを認める。それを認めることを、ここに誓おう。

おめでとう。我々と貴国には力がある。それは多くを解決する事が可能である。

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