SCP-099-JP
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アイテム番号: SCP-099-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 財団は国連と協力して常に乳幼児の生存率を観測してください。不自然な上昇を観測した場合、住民の健康診断の後にSCP-099-JP用虫下しを観測地域の住人および哺乳動物に投与してください。その後、その地域で生産された肉及び乳製品から作られた食物は全て回収し、焼却してください。

SCP-099-JPの確実な収容案がある場合担当職員に報告してください。

説明: SCP-099-JPはギョウチュウ(学名:Oxyuridae)等複数の遺伝子を掛け合わせて人工的に作成された体長40mm前後、体幅0.1mmの糸状寄生虫です。SCP-099-JPの寄生対象となった哺乳生物(以下、宿主)が生物学的に雌であった場合、宿主の乳房が常識的な範囲で肥大することが確認されています。しかし、乳房が肥大するにはある程度乳腺が発達していなければならず、未成熟個体及び雄の成熟個体では乳房は肥大しません。

SCP-099-JPは寄生箇所である胸において血管に取り付くと自身の体と血管を一体化させます。その後、血管を流れてきた老廃物、不純物、有害物質を吸収し、栄養素および抗菌物質を放出します。その結果、母乳の栄養価が上昇するとともに病気にかかる危険性も低下するため、この母乳を飲んだ生物は健康状態を維持することができます。特に顕著な例としてはSCP-099-JPの生息地域における乳児生存率の上昇が上がられます。宿主自体はSCP-099-JPの影響により健康状態を維持し続け、他種の寄生虫が持つような健康被害は寄生開始最初期の腹痛及び下痢以外に報告されていません。

SCP-099-JPの感染経路は主に乳液もしくは尿を介した感染です。また少数ですが血液による感染も報告されています。SCP-099-JPの卵は非常に小さく、かつ環境の変化に強いため長期間卵の状態で食物の中や土壌に潜伏することが可能です。感染経路では主に母子感染や家畜からの感染1が確認されています。中間宿主には蚊などの吸血生物やニワトリなどの鳥類が挙げられており、汚染された河川から検出された例も存在しています。財団はこれらの感染を防ぐために虫下しの使用及び加工施設や浄水施設の設備強化を奨励していますが、貧困国では内戦や知識の欠如により満足に普及できていないのが現状です。

SCP-099-JPは貧困国における乳幼児の生存率が特に具体的な対策がなされていないにもかかわらず向上し始めたことで財団に注目されました。調査の結果多くの住民の胸にSCP-099-JPが寄生していることが確認されました。その後の調査により、最初の感染は慈善団体の援助によるものだと判明しています。この慈善団体は貧困国にSCP-099-JPが入った食物や家畜用の飼料を援助したものとみられており、代表の生物学者███████氏は現在行方不明です。彼は実業家でもあり、自身の慈善団体に多額の私財を投じていました。

補遺: ███████氏の息子が所持していた日記(SCP-099-JPの制作動機および関連していると思われる箇所を時系列順に抜粋)

6/28/1976: [編集済]社の████氏と話すことができた。彼は私の計画に賛同してくれたが、どこか商人の顔を覗かせているようにも思えた。だが、何も明確な対策を打たない国連より彼らのような商人の方がよっぽど信用できる。氏の話では来週の会議にこれを提出すると言ってくれた。これがうまくいくことをただ祈るばかりだ。

7/2/1976: 氏の話では会議の反応は上々だったそうだ。話を聞く限りでは私の想像以上に粉ミルクを途上国に配っていくようだ。おそらく、市場拡大の思惑もあるのだろう。これを利用して少しでも子供たちの栄養不足を解消できればいいのだが。

11/17/1976: いよいよ発展途上国に粉ミルクの供給が開始される。正直、ここまで大々的なものになるとは思っていなかった。私も現地に入り、無償で配っていく予定だ。これは些細な活動だが、ここから少しでも広がっていけばきっと世界は良くなっていくはずだ。主よ。どうか見守りください。

5/7/1977: 活動が始まってから半年ほどだ。心なしか栄養不足の子供が減ったように思われる。今日、粉ミルクを与えている母親を見かけた。出産祝いにもらったそうだ。彼女たちの笑顔がこのまま続くことを願うばかりだ。

5/23/1977: 初めて市場を覗いてみた。私たちが配っていた粉ミルクが売られていた。何故だ。

6/12/1977: 知り合いの子供が死んだ。栄養不足からだそうだ。彼女はどうやら粉ミルクを薄めて与えていたらしい。母乳を与えようにも出が悪く、仕方なく与え続けていたと言っていた。私に何かできることは無かったのだろうか。

8/28/1977: 私は人殺しだ。
(この文が書かれていたページには新聞記事が挟まっていた。その内容は主に途上国では清潔な水が得られないために粉ミルクには細菌が繁殖した水を使うしかないというものだった)

10/2/1977: 失敗した。私は何も知らなさ過ぎた。私のせいだ。

(日付が10年飛ぶ)

4/19/1987: 知人から奇妙な男を紹介された。彼はジョンと名乗ったがおそらく偽名だろう。彼はどこぞの人道支援機関に所属しているそうだ。信用していいのだろうか。

6/4/1987: ジョンと話をした。彼は世界は平等でなければならないと私に力説していた。そして、そのためには世界中から貧困をなくすことが大切だとも話してくれた。ここ数年で私は老いた。だが、人の真偽を見抜く力はついたつもりだ。少なくとも、彼は嘘を言っているようには見えなかった。
彼になら私の計画を話してもいいかもしれない。

1/25/1988: ついに研究が始まった。構想段階では何度もジョンとぶつかったが、今ではいい思い出だ。だが、研究はこれからだ。前のようなことがないように進めていかなければ。

3/9/1988: 最近、ジョンはこちらにいることが多いように思う。家族は私がいなくても大丈夫だと自嘲気味に笑っていた。正直なところ家族は大事にしてほしいのだが、彼がいれば研究は著しく進む。それこそ、私が必要ないくらいに。彼ほどの研究者なら有名になっていてもおかしくないはずだ。きっと何かあるのだろう。それか主が私に遣わした天使なのかだ。

4/2/1988: 試作品第一号が完成した。牛で試してみたが胸が異常な大きさになった。これではだめだ。次を試さなければ。

7/17/1988: いくつかの試作品で動物実験が成功した。喜ばしいことだが次は人体で試さなければならない。危険もある。何人か協力者を集めなければ。

7/27/1988: やはりと言っていいのか、希望者は少なかった。まあいい。私も参加すればいいだけだ。男の実験対象も必要だしな。

8/2/1988: 実験に参加することになった。ジョンは反対したが私も何かしなければならない。そして彼には自身のすべきことをやってもらわねば。

11/2/1988: 左目が見えなくなった。不幸なのは腐った眼球が朝食のスクランブルエッグに落ちたことだ。研究所では数少ない娯楽なのに、クソッタレ。

12/24/1988: 今日はクリスマスイブだ。息子と一緒に祝った時のことを思い出す。今でこそ仲違いをしているがあの当時は良い家族だった。彼は今の私を何というだろうか。少なくとも、完成させなければロクデナシのままだ。

2/7/1989: ついに右[判読不可]が[判読不可]してし[判読不可]だがいつか慣れ[判読不可]

(以降、███████氏は日記をつけていない)

8/10/1989: 今日の日記は私、ジョンが書いている。君のお父上は最早まともに動くことはできない状態だ。いや、生きているのが不思議な状態と言った方が良い。私ができたのは生命維持と彼の皮膚の上に『完成した』と指で書くことだけだった。彼は肥大してもうほとんど動かなくなった唇でかろうじて笑ったよ。
君のお父上は立派な方だった。君からしてみれば何をしているのかわからないロクデナシだったかもしれないが、最後まで戦っていた。だから誇りに思わないでも、軽蔑だけはしないでほしい。彼の友人としての頼みだ。
今の彼は人の形をしていない。いつ発狂しても不自然じゃない。それでも、彼は生きている。正気を保っている。私はこれから彼を治療する。だからもしも彼が帰ってきたときは恐れず迎え入れてやってほしい。彼の最期は家族と一緒であるべきだから。

追記1: 財団がSCP-099-JPを根絶したと判断した地域で再度SCP-099-JPが発見されました。土壌に付着していたSCP-099-JPの卵が家畜に侵入し、人に感染したものと思われます。

追記2: SCP-099-JPが確認された地域では人口の急激な増加が発生しています。これにより食糧不足、雇用不足等の典型的な人口増加による問題が多発しています。多くの場合、人口維持のために資源を必要とすることから、その資源をめぐって自国内で紛争もしくは他国へ戦争を仕掛けることになります。この影響はSCP-099-JPが確認されていない地域にも波及していき、結果としてSCP-099-JPは貧困国の拡大とともに生息地を広げていくものと考えられています。

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