SCP-1030-JP
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アイテム番号: SCP-1030-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 財団職員は総員努めてあらゆるオブジェクトにまつわる名称、プロトコルなど全てにおける用語を過度に略することを禁じます。また会話に「あれ」という単語が一定以上に増えた職員はレベルに関わらず全員が言語分析の後、必要に応じてBクラスの記憶処理及び催眠処理にかけられます。

説明: SCP-1030-JPは、会話行動と文書を媒体に侵蝕していくミーム的影響を持った行動形式の一種です。現時点において発症した███人の内、61%が40代以降の人間であり、壮年男性が最も多く発症しやすいと確認されています。が、あくまでそれは大まかな傾向に過ぎず残りの発症者には女性や若年層も確認されています。
 
SCP-1030-JPの第一の特異性は財団職員がオブジェクトの取り扱いについての固有名詞及び動詞等を主に「ここはあれで通じるだろう」「無意識にあれと呼称したが特に問題は発生しなかった」という理由から「あれ」という単語へと置き換えすぎた際に発生します。この場合明らかに会話として類推不可能な領域まで会話の文章中に「あれ」の数が増えているにも関わらず、正確に会話相手との意思疎通が可能になります。この会話を第三者が聞けば不自然な「あれ」の羅列であると認識することは可能ですが、会話の受け手側になった場合それを意識する事はできません。

また複雑な収容手順などの指示や質問も「あれ」だけで通じ、重度になると単語のみならず文脈全てが「あれ」となります。そして「あれ」を用いた会話の受け手となった存在にもこの特異性は感染しますが、この際に感染する期間や確率はそれぞれ受け手の個人差が大きく特定ができていません。この時点ではまだ記憶処理によって影響の除去は可能です。また、記憶処置をした後の80%以上の職員は特に「あれ」を使ったところでこの再影響は確認されませんでした。

第二の特異性は重度の感染者が「あれ」を用いた会話を長期間使用した際、あるいは記憶処理をしても尚「あれ」と言いすぎる癖を直せず再度感染した一部の場合にのみ観測される新たな異常です。ミーム汚染に感染する前に出力した文書、データ等も含めた感染者が今まで記録した文字媒体の情報が全て「あれ」という文字の集合体に置き換わります。しかし第一の特異性と同じように、影響された者同士ならば元の意味を解読可能なようです。またこの状態の情報的に置換された「あれ」の文字列を400文字以上連続して見ただけで「あれ」を言っていない職員でも低確率で更に第一の特異性をミーム感染する事が示唆されています。

財団は情報復元を試みていますが、一定の成果をあげるものの文字情報の全ての修復は未だ成し遂げていません。

事件記録 1030-JP-1 19██年08月██日
サイト81██で「あれ」という単語を多用して部下と意思疎通を行う、何らかの影響を受けているであろう博士を確認。
音声記録:

█博士:おい、君。[データ削除済]を念のためあれしてあれで処置してくれんか。データによればあれする事で完了するはずだ。

███:はい、わかりました。赤色で良いんですね。

█博士:ああ。それで大人しくなるのは実験済みだ。

███:わかってますよ。

メモ:なお実際に行われた収容手順は完璧でした。

事件記録 1030-JP-4 19██年10月██日
エージェント4名が「あれ」のやり取りだけで通信しているとの報告を別エージェントから受ける。即座にBクラス記憶処置を行い3名が復帰。
音声記録:

エージェント・█:あれをあれしてあれであれあれてあれするとあれなんじゃないか?

エージェント・██:しかしあれがあれなってあれるあれがあれーれということもあるだろう。

エージェント・鯉滝:ああ。全てを決めつけるのは早計だ。あれ。

エージェント・███:あれあれ。あれ、あれあれあれ。あれあーれ、あれ。あれあれ?

エージェント・鯉滝:そういう事もありえるのか……実にその、あれだなあ。

メモ:どうやら意思疎通自体は汚染の度合いにあまり関係なく、互いに意識することもないようです。

事件記録 1030-JP-16 19██年01月██日
財団外部の店舗で、あれという単語を過度に使い始める財団職員の映像記録を店の監視カメラから確認。映像から前日にSCP-███-JP関係の仕事についていた██研究員と判明。映像修正と記憶処理を行う。
映像記録:

██研究員:すいません、これの大型のって入荷してますか?

████店員:ええ。確かあったんじゃあないかな……探してみますよ。

██研究員:すいませんねえ。どうにもこれが無いとどうにもその、そこがこれで。

████店員:[店舗の在庫を探しながら]いやわかりますよ。僕にもそういう時ありますから。

██研究員:いや……しかし、あれですよね。そこに無いとあれが困る時も多いっていうか。ええ。こうですし。

████店員:あー。気分だけの問題じゃないんでしょうけど。でも大事ですよね。おっ、ありましたよ。

██研究員:あれですか。いやーありがとうございます。あれがあれしてて助かりますよ。

████店員:あ、いえ。それでは[編集済]円です……はい、確かに。

██研究員:どうもあれ。明日はあれをあれであれきますよ。あれ。

████店員:ええ、良かったですね。ありがとうございましたー。

メモ:少し珍しいタイミングのパターンですが、影響の進行度合も多少個人差や時間差のムラがあるようです。

事件記録 1030-JP-1██ 20██年06月██日

O5-[編集済]に影響を確認。即刻記憶処置を行った。後に日本支部全体に対し「あれ」の多用に対する厳重な禁止通達が下る。

なおこの事件の後日本支部全域において以下の文面のポスターを貼ることによって大きな改善と影響の激減が見られました。
固有名詞剥奪法.png 
事件記録 1030-JP-[データ削除済] 20██年01月██日

「あれ」ではなく「それ」での影響パターンを確認。
元々の単語が持つニュアンスとしての使い勝手や性質の問題か、あるいは単純な使用頻度が影響しているのか軽度の感染が一件確認されるのみだった。

補遺1:影響範囲と伝わる度合及びその利便性を明らかにするため、というかつてSCP-1030-JPの影響下にあった█博士による7度にわたる実験の提言は、既に充分な事件記録が出揃っていることにより全て却下されました。以降もSCP-1030-JPについての実験が許可される予定はありません。

補遺2:20██年██月██日に█博士及び同時期に研究に携わった5名が独断で秘匿していたSCP-1030-JPの媒体となる重度感染の文書と、財団全体への映像媒体による大規模な発信準備、財団職員以外への[データ削除済]に関する作成資料を[編集済]研究主任の報告により確認。█博士以下6名は拘束、後に処分されました。

補遺3: SCP-1030-JPの影響下におかれた財団職員の第一発見以前に、同サイトで██博士の死亡が確認されています。██博士は会話に「あれ」を始め曖昧な語調を多用し、その功績に反してインタビューなどでもミスが多く死亡時刻と同日の19██年07月██日にもSCP-███-JPに対するミスの音声記録が残っています。ですがSCP-1030-JPとの関係性は現在立証されてはいません。

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