SCP-1042-JP
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アイテム番号: SCP-1042-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1042-JPは種の保護のため必要最低限の個体数のみが飼育されます。成虫のSCP-1042-JPに対しては、1週間に1度哺乳類の糞を与えてください。野生のSCP-1042-JPが発見された場合は、拡散を防ぐためにすべての個体を殺害してください。

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SCP-1042-JP(雄)の死骸。体表には求愛の際分泌される物質が付着している。なお、SCP-1042-JPの形状には地域差がある。

説明: SCP-1042-JPはコガネムシ科(Scarabaeidae)に属すると考えられる昆虫の一種です。DNA分析によると、特にタマオシコガネ属1(Scarabaeus)との一致点が多く見られます。実際に、SCP-1042-JPはハナムグリ属(Cetonia)に近い外見的特徴を持っているにも関わらず、消化器系はタマオシコガネ属のものと非常に類似しています。

SCP-1042-JPは一匹の女王を頂点とした簡易な超個体2を構築します。女王階級にあるSCP-1042-JPは主に産卵を行う個体であり、全てが雌です。また、現在まで発見されている雌はすべて同じ遺伝子を有するクローンです。雌は営巣の条件を満たす空間を探すために、非常に高い感度の嗅覚を有することが知られています。一方で労働階級にあるSCP-1042-JPは全て雄個体であり、雌の染色体の半分のみを有する半数体です。また、すべての個体は卵内で疑似的な蛹化過程を経るため、孵化時には成虫とほぼ同じ形状を有しています3。SCP-1042-JPは他のハナムグリ属と異なり強靭な顎を有し、これはクワガタムシ科(Lucanidae)の雌が有するものに形状的に類似しているものの、それを大きく上回る咬合力を発揮することが可能です。

SCP-1042-JPが気温の変動や直射日光・多湿な環境を好まないことや、各個体が遺伝的にクローンであることから、SCP-1042-JPの原産地は日本外の閉鎖的な地域であり、そこで近親交配を繰り返した結果として現在の生態を獲得したと考えられています。

SCP-1042-JPのライフサイクルは大きく以下の5期に分けられます。


第1期 - 営巣

雌は、卵を体内に保持した雄(詳しくは後述)数十匹と共に営巣を開始します。SCP-1042-JPの巣は簡素なものであり、周囲の環境に変化を及ぼすことはなく、雌を中心として同伴した雄が同心円状に集合するのみです。ほとんどの雄は営巣後疲労により死亡するので、結果的に雌の周囲には雄の死骸のサークルが完成します。


第2期 - 孵化

営巣終了後、雌はエネルギーの消耗を防ぐため仮死状態に移行します。その後おおよそ3週間後、雄の死骸の中にある卵が孵化を始めます。合計で200個以上ある卵から孵化するのはほとんどが雄であり、雌は最低でも1匹、多くとも3匹までしか存在しません。ただし、第2期で孵化するのは雄のみであり、雌の孵化は第3期です。この時点で営巣を行った雌は仮死状態から復帰し、女王としてSCP-1042-JP集団の頂点的役割を担います。


第3期 - 家畜化

孵化した雄は付近に存在する生物に集団で接近し、対象となる生物の行動の自由を奪います。これは多くの場合、顎を用いた対象生物の脚部の損傷という形で行われます。また対象生物が周囲の仲間へ助けを求める場合、雄はそれを阻害するため発声器官などを破壊します。

雄はこのような手段を用いて対象生物の行動を封じた後、対象が糞をするまで行動を停止しますが、対象が糞をするとその糞を摂取し、この過程で対象生物の主な食料を分析・記憶します。付近に分析された内容に合致する食料がある場合、雄はそれを対象生物付近に運搬します。対象生物は多くの場合、飢餓に耐えることができずそれを摂取し、再び糞をすることになります。このような家畜化は、SCP-1042-JPが原産地において巣を作らない移動性の生物を主な糞の供給元としていたことを示唆しています。

この時点でまだ孵化していなかった雌が孵化し、群れの中では副女王の地位を占めるようになります。家畜化された対象生物の糞は優先的に女王と副女王に与えられます。


第4期 - 求愛

孵化した副女王が成熟すると、雄は交尾のための求愛行動を開始します。この求愛は主に夜間に行われ、雄は雌の嗅覚を刺激することで雌に自身の存在を誇示します。

具体的には、雄は体内でクミンアルデヒド、シンナムアルデヒド、オイゲノール、β-ピネン4などいくつかの物質を分泌します。これらの物質は雄の肛門から粉末状態で噴出されます。雌(女王及び副女王)はこれらの物質の匂いにより発情し、雄との交尾を始めます。


第5期 - 産卵

雌は雄との交尾後産卵を開始します。第4期の後、雄の体は徐々に肥大化し、消化器官は退化し、体内に空洞が生じます。雌が産卵した卵は雄によって飲み込まれ、体内の空洞で保持されます。やがて雌が産卵を終えると、雌は家畜化された生物の残った糞を摂取し、体内に卵を保持した雄数十匹を連れて巣を飛び立ちます。その後、営巣に適した環境を探索し、第1期に戻ります。

なお、SCP-1042-JPが営巣するためにはSCP-1042-JPが好む環境の他、閉鎖的な空間が必要です。また生物が2体以上安定的に付近に存在しているような空間は安定した糞の供給に適しているために営巣地として選ばれやすくなる傾向があります。結果として、営巣地として選ばれる空間は多くの場合、ヒトの家族が居住する住居です。

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