SCP-1052
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アイテム番号: SCP-1052

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1052はサイト-45のエリア青-13にある、照明を備えたロッカーに施錠して保管します。小型のCCTVカメラをロッカー内に設置して、監視要員が毎晩チェックを行い、オブジェクトが失われていないか確認します。

サイト-45が受け取る郵便および電子メールは保安要員が検査を行います。検査の際に"アナ"に宛てられた葉書、封書、折りたたまれたメモ、その他の内容物が見つかった場合は、それがいかなる物であっても集積しM. ジョシュア研究助手に転送します。当該職員は、差出人が財団の存在に気付いている、またはSCP-1052の性質に関してその名称が"アナ"であるとする文献以上の知識を有することを暗示すると思われる内容があった場合、これを全て記録します。新たな知識を示唆する文献が発見された場合、回収チームが差出人の住所に派遣され、ただちに差出人を連行の上尋問し、可能なら無力化します。

葉書の内容はサイトデータベースのFoundation_Materials\Safe\SCP-1052に格納し、また紙の葉書そのものはサイト内のシュレッダーにより破棄します。

嘆願および"祈りの言葉"はほとんどの葉書に見られる標準的なものであるため、当該人物の存在に気付いているものとは見なされないことに留意してください。

また、保安要員は財団の専門用語(財団の言語学専門家がリストを編集しています)と同じ文脈で"アナ"という言葉が使用されていないか、インターネットワードフィルターの記録を週に2回確認します。

註: 最近になってサイト-45の脅威レベルがより高いものに更新されたことから、SCP-1052を兵器化が可能なSCPオブジェクトを収容していない保安施設に移送するべきだと考える。このオブジェクトは定期的にセキュリティに穴を開け、サイトの安全とサイトに存在する他のオブジェクトの収容に危険をもたらしている。 - リム博士

説明: SCP-1052は持ち手の縁と鏡部分の周囲に金色の葉の形のめっきが施された、直径およそ5インチの女性用手鏡です。持ち手と鏡の「頭」の部分は純真ちゅう製で、2つの部位をつなぐために使われる鋲は木製です。財団の史学専門家により、枠に1543年から1602年に人気を博したバロック様式の装飾があることから、16世紀後半に作られたものでありおそらくはフランスに起源を持つと見られています。

手鏡の何もない側の面にはフランス語で'Chère Ana'(日本語で「親愛なるアナ」)という言葉が刻まれています。鏡の「頭」部分から2インチの箇所、木製の鋲の部分に、およそ30歳の女性の絵が刻印されています。女性は第三会員1用修道服を身に着けており、百合が絡みついた十字架を把持しています。鏡自身は葉書を受け取る以外の異常な性質を示しません。

SCP-1052は多数の葉書を受け取りますが、これらを書いた人物らは神経性拒食症と診断されています。ここでは"アナ"をこれらの葉書の受取人であるとします。研究者らによる葉書の内容の分析から、差出人の一部は"アナ"を自身の疾病が具現化したものとみなしていること、また一方で残りの者は"アナ"が半神的地位にあると考えており、同人物に対し断食を行うための「慰め」と「強さ」を嘆願していることが判明しています。当初捕縛された多数の差出人が財団に関するいかなる知識をも有していなかったにもかかわらずSCP-1052宛の葉書がいかにして「受取人」に届くかは、現時点で不明です。

財団が保有するSCP-1052の記録は、クリアランスレベル3でアクセス可能な最も古い時期まで遡ります。このことから、少なくとも1世紀を超えて財団に専有されていると思われます。さらなる非公式の記録は、回収時の状況から、当時財団の協力者であった[編集済]から財団職員に譲られたことを示しています。現在の収容プロトコルは、SCP-1052宛の葉書の一通が傍受されたことによる情報漏えいと、それに引き続くGOCの勢力によるサイト-26への攻撃があった1948年から発効しています。サイト-26の壊滅を受けてSCP-1052がサイト-54に移送されてから、当該オブジェクトと葉書が関連付けられました。葉書は送られ続けており、現在はサイト-54に配送されています。

註: 現在、SCP-1052がGOCにより設置された追跡装置であることを突き止めるための実地調査が、同組織内部で活動する諜報員により実施されています。

補遺 1052-A: 2003年9月21日付の"アナへの葉書"の内容

親愛なるアナ

俺の人生台無しじゃねえかこのクソアマ。家族も友達も大切な人も、みんなゲロと一緒に便所に流れ失せちまった。今じゃあ指で喉の奥を突いたり擦ったり、目の奥が火を噴いたみてえにヒリついたりするたびに、お前の顔が目に浮かぶよ。お前は俺の全てを奪って、俺をぬいぐるみみたいに投げ捨てて、折れを2侮辱しやがった。なんでだよ? なあ、なんでだよ?! 俺がまだデブすぎるからか? 骨が皮膚を突き破るくらいじゃねえといけねえのか?

自分が俺をこんなにしたことに気付いてねえのか? お前が俺の喉をレイプしたせいで二度と誰とも話せなくなったことにも、お前が俺の心を引っ掻き回したせいでお前のことを、美しく魅力的なお前のこと以外考えられなくなったことにも? 愛してる。アナ。愛してるよ。愛してるんだ。美しいアナ。お前のようになりたい。お前になりたい。腹ん中の冷たい空気だけ味わっていたい。腹がひとりでに潰れていくのを感じながら。罪を探しながら。虚空に踊り、無重力に浮かんで飛んで、ある晩自分が吐いたもので窒息して死ぬんだ。そうすれば俺は、アナ、お前のところへ行けるんだ。俺を独りにしないでくれ。俺を見捨てないでくれ。毎晩お前を大声でお前を呼ぶ。家族が、俺の周りの臆病者どもがやめろというのも聞かずに。あいつらは、俺と違ってお前のことを知らないんだ。俺にはお前しかいないんだ。

この世とおさらばさせてくれ、アナ。俺を気が狂うくらい惹きつけて、強く抱きしめてくれ。ここは寒くて孤独だ。ここには誰もいない。気が遠くなる。今にも逝ってしまいそうだ。でも自分からは逝きたくない。死にたくない。俺を連れて行ってくれ。俺を痩せさせてくれ。このささやき声を止めてくれ。「お前はまだまだだ、お前の肉はまだお前の皮膚の下でうごめいているぞ」という声を。たのむ。この痛みを止めてくれ。

愛と信仰を込めて

補遺 1052-B: サイト-54及びサイト-45に36通の葉書を送った███ █████氏への尋問

対象: おい。おいっつってんだろ! 一体何もんだ、お前ら? こんなところで俺をどうしようってんだ、ええ?

███████研究助手: 落ち着いてください、███さん。我々はいくつか質問をしに来たのです。これはあなたのためにもなることですよ。

対象: どういう風にだよ? ああ神サマ。これはアレか? 言ったじゃねえか、このクサレ野郎。俺は元気だぜ。今より良かったことはないくらいにな。お医者サマはなーんにも分かっちゃいねえ。あいつは俺をずっとなりたかった俺にしてくれた。てめえら、さっさと消え失せて、誰かは知らねえがてめえらをここに寄越した連中を元の仕事に戻らせやがれってんだ!

███████研究助手: ███さん、あなたは自分が情報が制限された政府機関に葉書を送っていたことを理解していますか? あなたが知っているはずのない機関にです。

対象: リラか? あいつがてめえらをここに?

███████研究助手: ███さん! 気をつけていただかないと。あまり話をややこしくしたくはないのですが、協力いただけないのなら別ですよ。

対象: [およそ1分間の沈黙]

███████研究助手: 本題に入りましょう。あなたはどのようにして我々に葉書を送っていたのですか?

対象: 何のことかわからねえよ。

███████研究助手: あなたがアナに送った葉書のことですよ! どうして葉書の送り先が分かったんですか?

対象: [およそ1分間の沈黙]

███████研究助手: 質問に答えろ、クソが!

[被験者は取り乱して泣き崩れた]

対象: あいつ……あいつが最初に俺に手紙を送ってきたんだ。俺はイマイチだって言うあいつの声が心の中で聞こえて、俺を蝕んでいったんだ。あいつに話かけなきゃ、あいつの眼の冷たさを感じなきゃならなかった。頼む、あいつと話さなきゃ、謝って、骨だけになれなくてごめんって言わなきゃならないんだ。頼むよ……

███████研究助手: …….他に彼女から受け取った手紙はありますか?

対象: あいつは俺に、俺が手紙を送るたびに……いかに俺がダメでクズか、いかに太ってるか、まだまだやらなきゃいけないぞって言ってきたんだ。あいつが喜んでくれたのは一回だけ、腹をかっ裂こうとしたときだけだ。でもあいつは……あいつは一回も……あいつと話をさせてくれ。あいつの愛が、あいつの抱擁が必要なんだ。

███████研究助手: その手紙はどこにありますか?

対象: 俺んちだ。頼む、あいつがどこにいるか分かるか? 話をさせてくれねえか? 俺がやったことをあいつに言いたいんだ。

███████研究助手: 何をしたと言うんですか?

対象: 十分なことをだ。

補遺 1052-B: ███ █████氏宅から回収された葉書

親愛なる███へ

そんなのじゃ何にもなりません。それじゃいつまでたっても届きませんよ。医師や周りの人を盾にするのはやめなさい。私はあなたを見ています。そのひだをなす厚い脂肪を見ています。あなたに私の便りを受ける資格はありません。もしこのままなら、███、あなたとはこれまでです。

しかし望みはあります。美しい人よ。素敵なことではないですか? ただひたすらに努力なさい。そうすれば、きっといつか、私にふさわしい人になれるでしょう。そして、その暁には、あなたを愛してあげましょう。

アナ

葉書はサイト-45の住所から送られていました。

補遺 1052-C: インシデントログ 1052-1

20██年1月██日、████ ██████上席研究員がサイト内での実験の間、SCP-1052に接近しました。ただしここで、当該研究員個人の生活を考慮し比較的緩い措置がなされていたため、その実娘である███ ██████氏がSCP-1052に葉書を送っていた人物のうちの一人であることが看過されていました。

███氏は当時16歳で、およそ4年間神経性拒食症を患っていました。そのため2度の入院を経験し、長期間にわたりいくつもの精神病院への通院を行っていました。████上席研究員は当時実娘の行動に動揺しており、おそらくはSCP-1052を権限がないにもかかわらず破壊しようとしたものと見られています。しかしSCP-1052の実験(第三者機関の調査によれば、同職員がただ一人オブジェクトとともに時間を過ごすもの)が計画された日の2日前に、████上席研究員が自宅で殺害されているのが発見されました。その後に財団職員により行われた同職員宅の調査で、娘の███氏と"アナ"の間でやりとりされていた葉書が発見されました。"アナ"からの最後の手紙は、███氏が父親により危険にさらされていることを伝えるものでした。███氏は財団により勾留されており、現在は財団下の総合精神医療施設██-█にて精神科的療法および外出制限を受けています。

以上のことから、SCP-1052およびSCP-1052が送る葉書はいずれも軽度の認識災害的性質を有しており、同オブジェクトによりもたらされる危険は当初の予想より高いと推測されます。オブジェクトクラスをSafeからEuclidに変更することが検討されています。

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