SCP-109-JP
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地表に出て宿主を探すSCP-109-JP(20██/01/16撮影)

アイテム番号: SCP-109-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-109-JP-1は移動することができないため、SCP-109-JP-1を中心とした半径5.5kmの周囲に緩衝帯を造設し、外界から隔離します。緩衝帯は、幅10m深さ6mの溝を掘り、溝の両面のみを厚さ10cm程度のコンクリートで固めます。そのうち、SCP-109-JP-1側の片面は地表から1m以上突き出るようにし、地表でのSCP-109-JPの移動を妨害します。また大型哺乳類の往来を防ぐため、コンクリート壁の上に高さ3mの金属製フェンスを敷設します。フェンスには静電気を発生させる吸着版を併設し、風によるSCP-109-JPの卵の移動を防ぎます。溝の中には砂利と乾燥剤を敷き詰め、SCP-109-JPが緩衝帯の地表と地中を移動できないようにします。

隔離エリア外でSCP-109-JPを発見した場合は、速やかに専用の薬剤で駆除し、担当研究員に報告してください。隔離エリア外でSCP-109-JP-2およびSCP-109-JP-2F群を発見した場合は、説得もしくは強制的手段により隔離エリアへ戻します。体毛を切断することによりSCP-109-JP-2と人間の識別が可能です。現在、SCP-109-JP-2およびSCP-109-JP-2F群は財団の隔離措置にも比較的協力的です。

SCP-109-JPの卵は衣服などに容易に付着し、エリア外へ移動してしまうため、隔離エリアを出入りする際は併設されたクリーンルームを通過してください。クリーンルームではエアシャワーによる簡易的な衣服の洗浄の後、靴や帽子を含む衣服の交換、頭髪と身体の洗浄を行いSCP-109-JPの卵を除去します。このため洗浄の難しい服装(革製品など)での隔離エリアへの立ち入りは禁止されています。

説明: SCP-109-JPは、Pheretima sieboldi(シーボルトミミズ)によく似た寄生生物です。

SCP-109-JPは大型哺乳類の就寝中に外耳道(耳の穴)から体内に侵入し、延髄付近に頭部を癒着させ、背骨に寄り添う形で寄生します。癒着が完了したSCP-109-JPは、脊柱内部へ侵入し、脊髄を消費しながら徐々に脊髄と入れ替わっていきます。同時に枝分かれした神経細胞も消費し、最終的には全身の神経とSCP-109-JPが入れ替わります。寄生している間、延髄に癒着した頭部において神経伝達物質の操作を行っているものと見られ、寄生された対象は体の異変に気づきません。直接的な脳組織への侵入は認められず、記憶や性質の改変は行われていません。

寄生からおよそ30日ほどで、宿主は神経を全てSCP-109-JPに変換されます(以降SCP-109-JP-2と呼称)。SCP-109-JP-2は後述する繁殖行動ののち産卵期に移行します。SCP-109-JPの卵は直径が0.05mmから0.15mm、長さが3cmから5cmほどで、黒色か灰色を帯びており非常に柔軟です。外見上、SCP-109-JPの卵と宿主の体毛と区別することは非常に困難です。卵は体外に排出されてから、およそ5日ほどで孵化し、幼生は速やかに地中へ潜ります。地中へ潜ったSCP-109-JPは、地中の養分を吸収しながら成長し、十分な大きさになると地表へ出てきて宿主を探し、また寄生するという生活環を持ちます。

以下は産卵期に移行してからのSCP-109-JP-2の変移です。
経過日数 宿主の状態
3日から7日 産卵の準備期間です。この期間に、SCP-109-JPの体内で受精と卵の生成が行われていると考えられています。
3ヶ月から6ヶ月 活発に産卵が行われる時期です。SCP-109-JPは体内のあらゆる部位から卵を排出することができ、宿主の皮膚を貫通させ体外へ突き出します。その際も宿主に痛みはありません。皮膚から突き出した卵は、平均して5日間は根元が皮膚に埋まった状態を維持し、その後、自然と皮膚から離れ地面に落下します。
8ヶ月から1年 SCP-109-JP-2F群(後述)への移行時期です。体毛が徐々にSCP-109-JPの卵と入れ替わり、やがて全身の体毛がSCP-109-JPの卵になります。卵は皮膚から抜け落ちなくなり、徐々に皮膚を覆っていきます。質感や硬度も変化していき、合成ゴムによく似た皮膚を形成します。変質した皮膚は全身を覆い、宿主の骨格や筋肉組織、内臓機能などを造り替えていきます。この変態の間も、宿主は自身の異変に気づく様子はありません。
1年半から2年以降 最終的な安定形態です。変態が終わった宿主は、もとの生物種に関わらず、この地球上のどの生物群系にも見られない外見を持った、二足歩行生物(以降SCP-109-JP-2F群と呼称)になります。SCP-109-JP-2F群は元の宿主の記憶や知能を維持していますが、その上限は人間のものより若干高いものと思われ、人間以外から変移したSCP-109-JP-2F群は徐々に知能を向上させ、発話能力などを獲得します。SCP-109-JP-2F群に産卵機能はありませんが、繁殖行動をとることは可能です。

SCP-109-JPの繁殖行動は、主にSCP-109-JP-2同士(あるいは一方がSCP-109-JP-2F群)の接触により完了するものと思われます。皮膚接触により、何らかの遺伝情報を持つ物質の交換が行われると考えられていますが、採取には成功していません。皮膚接触している間、SCP-109-JP-2(あるいはSCP-109-JP-2F群)は、互いに円を描くようにその場でゆっくりと移動します。その間、SCP-109-JP-2(あるいはSCP-109-JP-2F群)は互いの目を見つめ、視線を外しません。そこから何らかの遺伝情報が交換されているとの仮説もあります。繁殖行動が行われるのは決まって夜間であり、晴天であるという条件も必要であるように見られます。繁殖行動は5分から15分ほどで完了し、SCP-109-JP-2同士だった場合は双方ともに、一方がSCP-109-JP-2F群だった場合はSCP-109-JP-2側のみが、産卵期に移行します。

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SCP-109-JPが周囲に生息する湖(SCP-109-JP-1)。奥にはSCP-109-JP-2F群の住む建物も見える。

SCP-109-JP-1は、███ ███の山中に存在する外周2kmほどの湖です。

SCP-109-JP-1には微生物に至るまで一切の生物の痕跡が存在しませんが、湖水は非常に高い透明度(無風状態で最大39.7m)があり、どの箇所においても哺乳類にとって最適な水質であることが各種試験により判明しています。SCP-109-JP-1の水深を測る試みは、今のところ成功していません。最新の実験では、10kmのケーブルと継ぎ足した2kmのロープを全て使い切ったため、これ以上の計測は現在予定されていません。

SCP-109-JPおよびSCP-109-JP-2は、SCP-109-JP-1から5km以上離れて生存することができません。この理由はわかっていませんが、SCP-109-JP-1周辺の空気を密閉した容器内では、隔離エリア外でも長期間生存できるため、SCP-109-JP-1の水蒸気が関係している可能性が最も高いとされます。SCP-109-JP-1から5km以上離れたSCP-109-JPは、およそ24時間以内に急速に飢餓状態となり、ほとんど瞬間的に液化します。SCP-109-JPに寄生された生物は、寄生の初期段階であっても中枢神経を代替していたSCP-109-JPを失うため、呼吸不全により窒息死します。同様の理由により、SCP-109-JPを外科的に除去することもできません。SCP-109-JP-2F群は、SCP-109-JP-1からどれだけ離れても生存できることが判明していますが、唯一の食料である水にミネラル以外の不純物が混ざっている場合、著しい体調不良に陥ることから、事実上SCP-109-JP-1から離れることができません。

SCP-109-JP-1の周囲には███と呼ばれる村が形成されています。現在の見かけ上の人口は253人です。そのほとんどはSCP-109-JP-2F群で、そのうち何人が人間由来かは判然としません。

19██/10/05 かねてより地元において、底なしの湖の周りに異様な村があるとの噂があり、真相を調査すべく財団がSCP-109-JP-1へ向かいました。当時の村の人口は推定50人程度であり、ほぼ全員が人間の外見をしていました。SCP-109-JP-2F群は村のどこかに隠れていたものと思われます。調査に向かった当時の職員は、住人たちが異様に社交的であること以外、異常な点を見つけることができず、翌日の水質調査のため野営している間にSCP-109-JPに寄生されました。村の住人の忠告を無視し、報告へ戻ろうとした2名が、財団施設へ到着する前に死亡しました。残りの3名の職員は現在SCP-109-JP-2Fに変移し、当該の村に設営された研究施設で生活しています。

聴取記録109-037: 19██/04/27 09:45 SCP-109-JPに寄生された調査隊の1人である研究員Sへの聴取記録です。研究員Sは産卵期への移行前でした。

研究員T: それでは定期報告をお願いします。今月は何か変わったことがありましたか?

研究員S: はい。ダンスに誘われました。

研究員T: ダンス?

研究員S: 3日ほど前の夜、住人の1人が宿舎のドアを叩き、私を湖のほとりへ誘いました。湖の表面は月の明かりでまぶしいくらいに光っていました。そのヒトは、湖を背にして私をじっと見つめていました。私が近づくと、そっと私の手に触れ、私の周りを回り始めました。私もその動きに合わせるように回り、翻り、幾度か触れ合い、そして別れました。

研究員T: その行動にはどのような意味があったのですか?その…相手はなにか言っていましたか?

研究員S: わかりません。正直、自分でも、あのときの自分が正気であったのかさえ、判断がつきません。他の研究員は眠っていましたから、目撃証言も得られません。もしかしたら、夢の中であったのかもしれません。

研究員T: そうですか。大丈夫です、監視カメラの映像が残っています。寄生された期間が長くても、SCP-109-JP-2Fに変移するまでは意思疎通することは困難だということですね。

研究員S: そのようですね。

監視カメラに映っていたオオカミと見られる対象と研究員Sは、1年半後、共にSCP-109-JP-2F群へ変移しました。現在、互いに愛情を示すような行動を取っています。

聴取記録109-058: 19██/06/09 09:45 SCP-109-JP-2F群の中でも比較的高齢と思われる対象(以降SCP-109-JP-2F-10)に聴取を行った記録です。

研究員T: あなたたちは何者ですかという質問は漠然としすぎていましたね。こう聞きましょう。あなたたちはあの湖からやってきたのですか?

SCP-109-JP-2F-10: 私もそう思っています。おそらく私たちの変換を行っている生き物は、あの湖の底からやってくるのでしょう。そうだ、私からも質問があります。

研究員T: はい。なんでしょうか。

SCP-109-JP-2F-10: 私は人間だったように見えますか?

研究員T: わかりません。SCP-109-JP-2Fに変わってしまうと、外見上でも解剖をしても区別がつきませんから。少なくとも、会話をしている限り、人間のように思えます。

SCP-109-JP-2F-10: 私はキツネでした。

研究員T: そうですか。ばかされましたね。

SCP-109-JP-2F-10: 幾人か、黒い姿になってから、あの湖に還った者がいます。もしかしたら、私たちも知らない間に、人間でない黒いものは、自然と湖に還っているのかもしれません。

研究員T: あなたはそうはならなかったんですね。

SCP-109-JP-2F-10: 人間と踊ったせいでしょう。しかし、時折、湖の夢を見ることがあります。

研究員T: 夢?

SCP-109-JP-2F-10: 湖の夢を見るときは、毎回、同じ夢を見ます。あの湖に飛び込み、水面ごしの空を眺めながら、だんだんと湖底に沈んでいく夢です。空がどんどん遠くなり、暗闇に包まれ始め、やがて視界が真っ暗になると目が覚めるのです。その夢の中で、ひとつ気になることがあります。

研究員T: どのようなことでしょう。

SCP-109-JP-2F-10: いつも水面の向こうから、こちらを眺めているあのヒトは、一体誰なのでしょう。

補遺01: SCP-109-JPに寄生されると、元来の生殖機能が失われることが判明しています。

補遺02: 20██年6月現在、1年間に1から2体の、SCP-109-JP-2F群が隔離エリアから消失しています。管理のために体に付けた追跡装置は、最後にSCP-109-JP-1にいたことを示しています。現在のペースが維持され、隔離措置が完全なままであるなら、およそ200年後には全てのSCP-109-JP-2F群が消失します。

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