SCP-1096-JP
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アイテム番号: SCP-1096-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1096-JP-1が国内の芸能事務所に配達される事を防止するため、機動部隊ほ-4("クロヤギ郵便局")は全国の郵便物を検閲しSCP-1096-JP-1を回収してください。SCP-1096-JP-2から帰還した人物に対しては、調査の後にAクラス記憶処理を行ってください。当該人物が負傷または死亡した場合、カバーストーリー「悪質なストーカー被害」を適用してください。

説明: SCP-1096-JPは、全国の芸能事務所に対して不定期に配達される、 舞台作品「██████████」の出演者募集の案内書(SCP-1096-JP-1)、及び開催される異常なオーディションです。A4サイズのコピー用紙3枚と返信用封筒で構成され、連絡先やプロフィールに記載する必要事項などが記されています。この内、協賛企業などの情報は実在するものが無断で使用されています。

SCP-1096-JP-1の受取人に指定された会社に所属する俳優(以下"SCP-1096-JP-A")、または仕事の手配を行うマネージャーがオーディションへの参加を自由意思で決定し、付属の返信用封筒を用いてプロフィールを発送した場合、異常性が発現します。発送されたプロフィールは郵便物としてポストに投函された瞬間に消失します。現在まで追跡調査は成功していません。

募集日時に記載された当日、SCP-1096-JP-Aは会場へ向かう目的で自宅玄関から外に出る事で、異常空間(以下、SCP-1096-JP-2)へ転送されます。SCP-1096-JP-2は外壁を未知の金属で構成された、推定直径約60mのドーム型の空間です。SCP-1096-JP-2内には、未知の人型知的生命体(SCP-1096-JP-B群)が存在します。審査員と推測される外見的に同種の5個体(SCP-1096-JP-B1~5)、SCP-1096-JP-Aの思考に干渉することで通訳と進行の役割を持つ1個体(SCP-1096-JP-B6)が、他の参加者と推測される、ヒトを含めた様々な外見の知的生命体群(SCP-1096-JP-A群)を取り囲むように空間内に鎮座しています。

オーディションはSCP-1096-JP-B6の発言で進行し、SCP-1096-JP-A群はその指示に従ったアピールを行います。アドリブ劇など、SCP-1096-JP-A群同士の会話が必要とされる指示にはSCP-1096-JP-B6の異常性がSCP-1096-JP-A群に付与され、意思の疎通が可能となります。しかし文化的・生態的な違いから、SCP-1096-JP-A群同士が緻密なコミュニケーションを取ることは困難と考えられています。また、SCP-1096-JP-A群同士の接触により双方が負傷または死亡する事案が確認されています。

SCP-1096-JP-2空間は下記の行動により帰還する事が可能です。

・死亡または負傷により、アピールが困難になる。
・SCP-1096-JP-B群の合議により失格を宣言される。
・SCP-1096-JP-B6に対して、オーディションを辞退する意思を伝える。
・SCP-1096-JP-B6によるオーディションの終了宣告。この際、SCP-1096-JP-B1~5の合議により合否が決定する。

現在までにヒトのSCP-1096-JP-AがSCP-1096-JP-2内で「合格」を伝達された事例はありません。
報告書は改訂されました。事案1096-JP-9を確認してください。

補遺1: SCP-1096-JPは2008年11月██日に、多数の若手俳優がオーディションに出発した後に集団失踪した事件(事案1096-JP-1)の捜査によって財団に発見されました。生還したSCP-1096-JP-Aの証言から、SCP-1096-JP-1の回収と、初期の収容プロトコルが立案されています。事案1096-JP-1で行方不明となったSCP-1096-JP-Aのうち█名は現在まで発見されていません。実験中のSCP-1096-JP-B群の発言から、この時の行方不明者は後述のSCP-1096-JP-A34との接触で死亡し、消滅したと考えられています。

補遺2: 2011年5月██日、機動部隊ほ-4が日本各地の郵便機関にてSCP-1096-JP-1を確認。財団が確認している中では2度目の募集とされる。この際、財団フロント企業「芸能事務所Star Crap Project」にSCP-1096-JP-1が配達されたため、以下の実験が青旗博士の承認の下、行われました。

実験方法: 実験対象者は研究班の基準を満たし、タレント契約を行ったDクラス職員で行う。財団支給のGPS、通信機器、録画装置を装備し、本人の選んだ私服で参加させる。SCP-1096-JP-2に到着するとGPSは反応を停止。以下の記録は帰還した対象者の録画装置より抜粋。

実験記録 1096‐JP-1 - 日付2011/06/14

募集人数: 1人(D-09241,24歳男性)

同席したSCP-1096-JP-A群: 3体(SCP-1096-JP-A1~3)
・浮遊する金属質の3つの球体(A1)。
・下半身の存在しない赤い肌をした人型実体(A2)。
・推定体高4mのインドサイ(Rhinoceros unicornis)に酷似した実体。二足歩行を行う(A3)。

SCP-1096-JP-B6の指示: ダンス

結果: D-09241はタップダンスを披露するが、音が反響せず。SCP-1096-JP-B3がD-09241に対し「なかなか挑発的だが、もう少し幾何学的な高貴さが欲しい。彼(SCP-1096-JP-A1)を見習いたまえ」と発言。SCP-1096-JP-A1は地面への落下と再浮上を高速で繰り返していた。アピール終了後、SCP-1096-JP-B6はSCP-1096-JP-A1へ合格を宣告。SCP-1096-JP-A2とSCP-1096-JP-A3は落涙していた。D-09241は帰還。

実験記録 1096‐JP-5 - 日付2013/09/08

募集人数: 2人(D-09248,30歳男性。D-09249,21歳女性)

同席したSCP-1096-JP-A群: 4体(SCP-1096-JP-A18~21)
・青色の鉱石。アピール中も終始無言であり、SCP-1096-JP-B5に叱責されていた(A18)。
・両腕が鋏になっているカマキリ(Mantodea)に類似した体高約2.5mの甲殻生物(A19)。
・体長約15cmの原始的な齧歯類(Rodentia)に類似した生物。挑発的な発言が多くSCP-1096-JP-B1によりアピール中に不合格とされる(A20)。
・人型実体。胴体の表皮が透過しており内臓器官が観察できる(A21)。

SCP-1096-JP-B6の指示: 情熱を見せてくれ

結果: D-09248は空手の形、D-09249は脱衣して下着姿になるが、特筆する反応は無し。SCP-1096-JP-A21が自身の右脇腹から臓器を1つ抜き取り、それを粘土のように捏ねてドーナツ状の立体を作る。SCP-1096-JP-B2が歓声を上げる。SCP-1096-JP-B4が「さすがだ」と発言。SCP-1096-JP-B6はSCP-1096-JP-A21に合格を宣告。退出前にSCP-1096-JP-A19がD-09249に対し「あなたとっても素敵よ」と発言。D-09248、D-09249は帰還。

実験記録 1096‐JP-8 - 日付2016/08/07

募集人数: 2人(D-09255,28歳男性。D-09256,22歳男性)

同席したSCP-1096-JP-A群: 5体(SCP-1096-JP-A31~35)
・緑色の鉱石。終始無言であり、SCP-1096-JP-B1の指示でアピール前に不合格となる(A31)。
・SCP-1096-JP-A19の類似種と推測。推定体高3.5m(A32)。
・体長約3mの霊長類に類似した実体。全身に太い体毛を持つ。Dクラス職員両名に対し何度か明確な視線を送っていた(A33)。
・発光、浮遊する直径50cmの球体。高熱を帯びている(A34)。
・木材に類似した素材の複数の歯車で構成された、高さ1.6mの不定形な実体。SCP-1096-JP-B群と親しげに会話しており、以前から面識があるとされる(A35)。

SCP-1096-JP-B6の指示: 戦闘行為(殺陣、アクションの意味と推測される)

結果: アピールは二人一組となり、全員同時に行われた。SCP-1096-JP-A34はD-09255に挑発的な発言をした後に勢いをつけて接触、D-09255は装備品を含めて炎上し消滅。SCP-1096-JP-A35がそれを見て悲鳴を上げ、青旗博士の指示でD-09256がSCP-1096-JP-B6に辞退を宣言したためアピールは中断。SCP-1096-JP-A群は退出を指示され、SCP-1096-JP-A34はSCP-1096-JP-B群に注意をされていた。D-09256は帰還。

映像記録 1096-JP‐8 - 日付2016/08/07

<映像記録の抜粋>

SCP-1096-JP-A35: (SCP-1096-JP-B群に対し)ちょっと、今回はああいう役者は呼ばないって言ってたじゃない!私のキャリアと顔に泥を塗る気?アンタ達まともな募集かけてるの?

SCP-1096-JP-B6: 恐れ入りますが、我々は公正かつ平等に行っております。それに今回はキャリアの有無は選考にしていません。ベテランだからといって形式的なオーディションになると思ったらそれこそ大間違いですよ。

SCP-1096-JP-B2: それはともかく、(SCP-1096-JP-A34に対して)君は以前にも私に注意されたはずではなかったかね?君の体温に耐えられない文明、特に水素系惑星の住人に気安く接触してはいけないと。

SCP-1096-JP-B5: しばらく前の募集でも君の接触で多くの参加者が消えたのを覚えているぞ。これは演技力の選定会であって、暴力の比べ合いではない。事務所に厳重抗議の上、君のエントリーを禁止とさせて貰う。

SCP-1096-JP-A34: 待てよ!また俺に貧乏人に戻れって言うのか?ちょっと焦がしたくらいで何だよ、そんなんで死ぬ方が悪いんじゃないか。頼む、年齢的にもこれが最後のチャンスなんだよ。お願いだ。

SCP-1096-JP-B1: 残念だが、三度目はない。(SCP-1096-JP-B6に対して)君。

SCP-1096-JP-B6: オーディションを終了します。申し訳ありませんが、今回は合格者無しとします。気をつけて帰宅してください。

<映像終了>

追記: SCP-1096-JP-A34は最後までSCP-1096-JP-2から退出せず、SCP-1096-JP-B群に抗議していた。

補遺3: 事案1096-JP-9
2018年8月23日、実験開始から9度目の募集を確認。劇団での長期の演技経験があるD-09257を対象に、実験が行われました。実験中、D-09257はSCP-1096-JP-B1の発言に対して「芝居を分かっていない」と激しく反論し、オーディションが中断される事態となりました。D-09257は青旗博士の辞退命令を無視、通信機器を投げ捨てました。直後、新たに未知の知的生命体(SCP-1096-JP-B7と呼称)がSCP-1096-JP-2空間に出現。SCP-1096-JP-B群はSCP-1096-JP-B7を起立して出迎えたが、SCP-1096-JP-B7はそれを無視してD-09257と接触しました。以降、通信機器は断絶し、D-09257の行方は判明していません。

補遺4: 202█年██月██日、██回目の募集を確認。その際、SCP-1096-JP-1に以下の文章が追加されていました。

新進気鋭の若手スター████(D-09257の本名)に続け!今、全宇宙があなた方の世界からの挑戦を心待ちにしています。
今後は舞台に限らず、様々なジャンルのオーディションのご案内を計画しておりますので、ご期待ください!

青旗博士のメモ: 202█年以降、財団の観測圏内で地球外文明のものとされる飛来物が爆発的に増えている。D-09257の頭部を模した発光する隕石、ゼラチン質の花弁を持った全長30mの直立する植物の束、アルコールに類似した液体を内包した筒状の構造物。先日は所属しているフロント企業に彼の本名を含んだ未知の言語の石碑が降ってきて屋上に穴が開いた。我々はSCP-1096-JP-B群とコンタクトを取り、至急D-09257を再収容すべきだ。これ以上人類の存在が他の文明の住人達に広まるような事は何としても避けなければならない。

現在、SCP-1096-JP-1を利用したD-09257の再収容作戦が計画されています。

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