アイテム番号: SCP-1127-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-1127-JPの完全な収容は、その性質のため事実上不可能です。SCP-1127-JPによるインシデントが発生した場合、機動部隊さ-6("アミティ保安部隊")によってカバーストーリー「シリアルキラー」を適用し、関係者にクラスB記憶処理を行ってください。SCP-1127-JP-3は低危険度物品収容ロッカーに収容されています。現在SCP-1127-JPに関する実験、並びにSCP-1127-JP-3の閲覧及び持ち出しは禁止されています。
説明: SCP-1127-JPは、特定のテンポ・周波数を持つ一連の旋律です。これは1975年に発表されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画「JAWS」の劇中で用いられた、ジョン・ウィリアムズ作曲「メイン・タイトル~最初の犠牲者」に類似しています。
SCP-1127-JPは何らかの方法で12小節以上演奏された時、その異常性を発現します。SCP-1127-JPの12小節3音目の八分音符(以下SCP-1127-JP-1)は、いかなる手段によって演奏しても、必ず波形がノコギリ波状になります。また、演奏が23小節目に到達した時、SCP-1127-JP-1を聞いていた全ての生物(以下SCP-1127-JP-2)の身体に、大きな顎で噛み千切られたような傷が出現します。歯形などからこの傷は大型のホホジロザメ(Carcharodon carcharias)による咬傷と一致していることがわかりました。この傷はSCP-1127-JPの213小節4音目の付点八分音符を聞いたSCP-1127-JP-2を除く全てのSCP-1127-JP-2が死亡するまで、大きさや現れる部位を変えながら15~30秒ごとに出現し続けます。このときSCP-1127-JP-2が死亡していても、条件が満たされるまで傷は出現し続けることに留意して下さい。
SCP-1127-JP-3は、 SCP-1127-JPの楽譜が印刷された37枚のコピー用紙です。SCP-1127-JP-3は19██/08/██、行方不明とされていた編曲家の████氏の自宅の書斎にて発見、回収されました。SCP-1127-JP-3の最終ページの下端には████氏のものとみられる筆跡で以下のような殴り書きが残されています。████氏と要注意団体との関連性は現在も調査中です。
補遺-1127-JP1: SCP-1127-JP-3に記されていた殴り書き
真に優れた音楽は、全てを奪う。
心も、体も。
Are we cool yet?
20██/09/██、██県のアパートにて、動画投稿サイト███に映画音楽のアレンジ演奏を投稿していた[編集済]氏が全身に無数の咬傷のようなものを受けた状態で発見されました。[編集済]氏はヘッドホンをしたまま部屋の中央に倒れており、右脚の80%以上と左の手首から下が大きな顎で噛み千切られたように無くなっていました。創傷の状態から何らかのSCiPの関与が疑われたため、エージェントによる現場検証が行われました。その結果、[編集済]氏がインシデントの直前まで編集していた作曲ソフトからSCP-1127-JPが確認されたため、ただちに機動部隊さ-6("アミティ保安部隊")が出動し事態を収拾しました。財団の調査ではSCP-1127-JPは現在既存のどの「メイン・タイトル~最初の犠牲者」のアレンジ楽曲とも一致していなかったため、[編集済]氏が独自に行ったアレンジが偶然SCP-1127-JPと同一になってしまったのだと推測されています。
もし彼がこれをライブストリーム配信でもしていたら大規模な収容違反が発生していただろう。
そう考えると、彼一人の犠牲で済んだのは運が良かったのかもな。 - 宇都宮博士
補遺-1127-JP2: 事件-1127-JP-20██09██以降、財団は国内外における全ての「メイン・タイトル~最初の犠牲者」のアレンジ楽曲の発表を監視しています。
補遺-1127-JP3: 20██/10/██、[編集済]氏の隣に居住していた██一家の行方不明者届が受理されました。SCP-1127-JPとの関連は不明です。
補遺-1127-JP4: 20██/██/██、[編集済]氏が回復したとの連絡を受け、エージェント・家永によるインタビューが行われました。以下はその記録です。
対象: [編集済]氏
インタビュアー: エージェント・家永
付記: [編集済]氏は事件-1127-JP-20██09██を何らかの事故だと考えており、混乱を防ぐため「エージェント・家永は刑事であり、[編集済]氏の遭遇した事故について調査しに来た」と説明している。インタビューは病室にて行われた。
<録音開始>
エージェント・家永: [編集済]さん、お身体の調子はいかがですか?
[編集済]氏: ああ、おかげさまで。まだ松葉杖には慣れないし、幻肢痛もしますがね。
エージェント・家永: お気持ちお察しします。…さて、本題に入りましょう。編曲家の████さんはご存じですか?
[編集済]氏: いえ、聞いたこともないです。その方がこの事故に何か関係あるんですか?
エージェント・家永: …いや、そういうわけではないんですがね。それでは、事故当時について詳しく教えていただけますか。
[編集済]氏: (しばし沈黙)
エージェント・家永: なかなか思い出したくないでしょうが、話していただけませんか。
[編集済]氏: …わかりました。あれは18時頃だったでしょうか。お隣の██さんが帰ってきて、奥さんと娘さんが出迎えてる声が壁越しに聞こえていたので、それくらいだったと思います。私はその日は一日休みでしたので、趣味の作曲をやってました。それで、やっと納得のいくものになったので、一度通して聞いてみようと思ったんです。その前にベランダで一服して、戻ってきて、頭から再生し始めて、それから…。(強張った顔で黙り込む)
エージェント・家永: しばらくして、あなたの身体に傷が現れ始めた。
[編集済]氏: …そうです。すみません、刑事さん。ここから先の記憶はあまりないんです。あとは気が付いたらここのベッドの上でした。
エージェント・家永: わかりました。それでは今日はこれで終了させていただきます。またなにか思い出されましたらいつでもご連絡ください。
[編集済]氏: お役に立てず申し訳ないです。
エージェント・家永: いえいえ。では、お大事になさってください。失礼します。
[編集済]氏: …あの、一つだけ今思い出したことが。関係あるかどうかはわかりませんが。
エージェント・家永: 関係なくても構いません。なんでも話してください。
[編集済]氏: 再生し始めた時、音が小さいなー、と思って音量を上げてたんですけど、よく見たらヘッドホンが刺さってなくて。さっき一服しに行った時に抜けちゃってたのに気づいてなかったんですよね。それで慌てて刺し直したんです。
エージェント・家永: 端子を刺し直した時には再生開始から何秒程度経過していましたか?
[編集済]氏: ええっと、詳しくは覚えてませんけど、盛り上がりの前だったから、多分1~2分は経ってたんじゃないかなあ。
エージェント・家永: そうですか。ありがとうございました。
<録音終了>
終了報告書: インタビュー終了後、[編集済]氏にはクラスB記憶処理が行われた。
ページリビジョン: 9, 最終更新: 29 Aug 2021 16:33