アイテム番号: SCP-1201-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1201-JPは全体を湖底に偽装した構造物で覆った状態で収容します。民間人のSCP-1201-JPへの接近は不自然のない範囲で制限されています。警告に従わずSCP-1201-JPに接近した人物がいた場合は直ちに拘束し、もしもSCP-1201-JPを目撃した場合は必要に応じて記憶処理を施してください。財団職員とSCP-1201-JP-Bの無許可の接触は禁止されています。SCP-1201-JP-Bが収容エリアから出ようとした実例はありませんが、収容エリア内は常に動体センサーにより監視されています。
説明: SCP-1201-JPは██県██湖湖底に存在する建造物(SCP-1201-JP-Aに指定)と、同建造物内で活動する人型実体の群れ(SCP-1201-JP-Bに指定)の総称です。
SCP-1201-JP-Aは一辺およそ90mの建造物で、日本国内に存在する家電量販店"ヤマダ電機"の一般的な店舗に似た外観と内部構造を有しています。南側に正面入り口とされる大きな開口部が1つあり、その他に従業員用らしき小さな扉が8個、北側に貨物搬入用とみられる開口部があります。ただし財団による収容以降、貨物が搬入される様子は観測されていません。
SCP-1201-JP-Aの屋上と地下には駐車場が整備されており、土曜と日曜にはSCP-1201-JP-Bによる車両誘導が行われます。SCP-1201-JP-Aに陳列されている商品は通常の家電店で販売されているものと同様であり、異常性はありません。しかしSCP-1201-JP-A内は湖水で満たされており、商品は密閉された部品を除き水没した状態にあります。店頭の商品は購入したり持ち帰ったりすることが可能であり、それらの物品は十分に乾燥させることで異常なく動作します。しかし目視やカメラによる監視が解除されたタイミングで、商品はランダムに消失します。
SCP-1201-JP-Bは、毎日7:00前後にSCP-1201-JP-A内の監視されていない場所から出現しはじめ、営業時間中(10:00-21:00)は40体程度出現し、通常の家電量販店の店員のような行動を取ります。営業時間終了後は徐々に人数が減り、24時前後には全員が消失します。SCP-1201-JP-Bの全個体は存命中の日本人男性 ███氏と同一のDNAを有していることが確認されており、容姿も同氏に酷似しています。しかしSCP-1201-JP-Bは同氏の記憶を受け継いでおらず、また同氏とSCP-1201-JPおよび██湖の関連性も確認されていません。各SCP-1201-JP-B個体は陳列、会計、荷解きなど様々な業務を行なっており、互いを識別することが可能です。しかし固有名を有している様子はなく、会話や店内放送では「(業務内容)担当者」として呼称されます。SCP-1201-JP-Bの各個体には階級または職務が割り当てられており、各個体は自分の役割に応じた活動を繰り返しています。
SCP-1201-JP-B個体の活動内容例:
- 標準的なヤマダ電機の制服を着用し「店長」と書かれた名札をつけています。記名はありません。他のSCP-1201-JP-B個体に指示を出すことがあります。
- 標準的なヤマダ電機の制服を着用し「責任者」と書かれた名札をつけています。 「店長」以外のSCP-1201-JP-B個体に指示または依頼をすることがあります。
- 標準的なヤマダ電機の制服を着用し無地の名札をつけています。 「店長」と「責任者」以外のSCP-1201-JP-B個体に指示または依頼をすることがあります。
- 警備員の制服を着ています。駐車場にいる個体は誘導灯を持っています。店内の個体は拳銃を所有しています。
- 上下グレーのツナギを着ています。バックヤードで商品の荷解き、梱包、運搬などに従事しています。
- 上下シルバーのツナギを着ています。バックヤードで両手を上げています。
- 黒い外套を羽織り学帽をかぶっています。空調機室でロープを時間に繋げています。1
SCP-1201-JP-A内で放送される音楽は本来のヤマダ電機が用いている音楽とは異なります。ヤマダ電機のテーマソング以外の楽曲は現在発表されているいずれのアーティストの音源とも一致していません。SCP-1201-JP-A店内の音楽の特徴の一覧を次に示します。
SCP-1201-JP-A店内音楽の例:
- 演奏時間1分。ヤマダ電機のテーマソング。SCP-1201-JP-Aの音楽では唯一通常店舗と同ーの曲。
- 演奏時間4分30秒。シンセサイザーとコーラスを多用した公的には未発表の曲。基本的に4拍子だが不定期に3.5拍子が混ざる。
- 演奏時間7分11秒。ガムランの一種、異常な点なし。
- 演奏時間2秒。通常はノイズにしか聞こえないがスロー再生すると「暗躍せよ」というセリフを61回繰り返している。
- 演奏時間5分44秒。キョウチクトウの枝が風で揺れこすれる音を録音したもの。キョウチクトウはとても赤い。2
- 演奏時間3分07秒。視覚で聞く音楽。この音楽の再生中は聴覚で周囲を視認することができる。
- 演奏時間77分。蟻とテッポウユリ。3
- 演奏時間4分01秒。心臓と胃と肝臓の会話を録音したもの。大半は酒と肉に関する愚痴。4
補遺1: SCP-1201-JP-Bの活動例および店内放送の特徴の記載に「抽象的」または「非客観的」な部分があるとの指摘が度々なされていますが、これらの記載はSCP-1201-JP収容担当者と観測に参加したDクラス職員および研究助手の証言から検討された結果です。BPMやコード進行を記載することも可能ですが、SCP-1201-JPの特徴を示すために、主観的表現を記載しています。これらは例えば「楽しい曲」や「ノリノリな曲」といった表現と同じ種類の記載であり、実際に観測することでのみその妥当性を理解することが可能です。
補遺2: 事案1201-JP-2以降、SCP-1201-JP-Bと財団職員の接触は禁止されています。事案1201-JP-2の全記録はユビソ388協定に従い削除されました。
探索ログ 1201-JP-3: 機動部隊によるSCP-1201-JP-A内の探索ログの書き起こしを以下に掲載します。本探索の結果は事案1201-JP-1として登録済みです。映像の閲覧は収容担当者の許可が必要です。
<機動部隊がSCP-1201-JP-Aに侵入する時点までの記録は省略。潜水服を着た機動部隊員がSCP-1201-JP-A開口部に入った直後のタイミングから記載>
アルファ: 位置についた。計器に異常はなし。
ブラボー: 第二測定器群も異常なし。
チャーリー: 第三測定器群、異常なし。
デルタ: 録画機器異常なし。[前を歩く3名を撮影している]
██博士: 前進して陳列されている商品に異常な点がないか確認してください。デルタは常に前方の3名を撮影し続けてください。
アルファ&デルタ: 了解。
[3分ほど店内を歩きながら商品を物色する]
アルファ: 普通だな。ブラボー、チャーリー、何かあったか。
ブラボー: 特にありません。
チャーリー: ありません。水に沈んでいるという点を除いては、ありふれた家電のようです。
アルファ: 探索を続けます。
██博士: お願いします。
[45秒間、映像に異常な点なし]
[映像の右側から突然遮蔽物が現れる。後に台車に乗せられた冷蔵庫であることが判明。遮蔽物により0.6秒ほどチャーリーの姿が映像からはずれる]
デルタ: あっ。
SCP-1201-JP-B: おっ、と、申し訳ありません。どうぞごゆっくりご覧ください。
デルタ: 本部、SCP-1201-JP-Bと予定外の接触をしました。対象はそのまま台車を押して別の売り場へと行ったようです。
██博士: これまでのサンプルと大差ない個体のようですので、探索を続けてください。チャーリー、立ち止まらないでください…チャーリー? アルファ、振り返ってチャーリーを確認してください。
アルファ: りょうか…チャーリー?本部、チャーリーの顔が、SCP-1201-JP-Bに変化しています。
チャーリーの無線: はぁ、さては、目を離しましたね?
[チャーリーだったものは潜水服のヘルメットを脱ぎ水中で会話を続けている]
チャーリーの無線: お伝えしておりませんでしたか。それとも突発的な事故? いや、我々のせいですか、それは申し訳ありません。カメラマンの方、そのまま観測を続けてください。観測し続けてください。それが唯一、あなた方に許された抵抗なのですから。
アルファ: チャーリーはどこだ。彼を戻せ。[水中銃を構える]
チャーリーの無線: 大変お気の毒だとは思うのですが、ただの用務員に過ぎない我々では、残念ながらなんともできません。
アルファ: 本部、指示を願います。
██博士: 検討します。
[4分弱、本部無線から会話の音声が漏れ聞こえる。アルファは水中銃を構え続けている。チャーリーだったものはカメラを眺めている]
██博士: 撤退してください。けして慌てず、デルタのカメラからはずれないように注意してください。しかしDクラスの時は何も…
チャーリーの無線: それは彼が無垢だからですよ、クライマー。さあ、機材をお返ししましょう。重いですか?お気をつけて。お帰りはあちらです。くれぐれも観測を途切れさせぬよう…
[以後、撤退完了まで異常な点は記録されなかった]
本探索の4日後、機動部隊員コードネーム・チャーリーは公式に死亡扱いとされ、本件は事案1201-JP-1として記録されました。本件の前後に行われたDクラス職員を用いた実験、および事案1201-JP-2以前の探索では、同様の現象は再現しませんでした。
「店長」による電話の盗聴ログ: 本ログは事案1201-JP-2が発生する直前に記録された音声ログをテキストに書き起こしたものです。通信相手の詳細は不明です。通信相手の音声はノイズとして録音されていました。
[ダイヤル音]
私です。ご無沙汰しております。こちらは万事順調で…はい? ええ。観測は続いています。問題ありません。え? いやそれはあなたが自由にやってくれと仰ったから、私どもも自由にやっているのであって…はい?
えー、それについてはですね、順を追ってお話ししますと、まず我々は我々自身の意に反し、あなたによって集められた存在だということを思い出していただきたい。我々はそれぞれの一個人から世界の柱たる犠牲へと大変革を遂げたわけで、今や納得しているとはいえ、そこにはある種の葛藤があったわけです。その困惑と期待の中で、我々自身とあなたがたが、どういった形ならば合意を得られるかと検討した結果が、この方法だったと、はい、思い出していただけましたでしょうか。
観測は続いていますが、いまだ気づいた様子はありません。はい。ありました。しかしそれは残念ながら失敗に終わりました。我々の期待はいつも…はい。はい。だめです。クレーム? エンジニアに言ってください。我々の仕事はそこにはありません。
我々の仕事? もちろんです。
Sell(販売)、Contentment(満足)、Payment(支払い)。
もしもし?