SCP-1308
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アイテム番号: SCP-1308

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1308は生物研究サイト-21の改良済標準格納室に収容してください。出入口の機構、メインの換気機構、その他25 × 25 mm以上の隙間は、厚さ0.08 mm以上のスズで被覆した鉄網で覆ってください。

格納室に入る職員は、レベルB危険物防護用装備を必ず着用してください。このスーツには100 × 25 mm以上のスズ箔を50 mm以上の間隔が空かないように貼り付けなければなりません。室内にいる間やSCP-1308の収容違反の恐れが極めて高いときは、スーツ破損時の職員の安全を確保するために装備の下に頭部と頸部を保護する重ねたスズ箔を着用してください。

注意: 本封じ込めにおいてはスズ箔の代替物としてアルミニウムを用いることは認められません。- アイゼンバーグ研究員

格納室に入る全職員は標準電撃兵器を装備してください。視認可能な急所が存在しないためSCP-1308に対する銃撃は効果が薄いという点に留意してください。捕獲や研究のためにより長時間無力化する場合はクロロホルム溶液の入った携帯用加圧式噴霧器を利用してください。噴霧器は適切な訓練を受け、SCP-1308クリアランスを所持する全てのレベル1職員に支給します。

SCP-1308の格納室の気温は摂氏28度、相対湿度は47%に保ってください。10日に1度、1個体につき死後4時間以内の人間の死体を1体質量約50kgの生きた豚1頭をSCP-1308の格納室に搬入してください。給餌から2日後、部屋を清掃して残留物を排出してください。1つの格納室に保存するSCP-1308は3体以内にしてください。

新たに捕獲したSCP-1308は身体構造の差異を検査し、文書-1308-Cに則り記録・分類した後、位置検出兼識別用チップを埋め込み、適切に格納室に収容してください。

説明: SCP-1308は移動可能な人間の皮膚に類似した、大きさ約1×3 m1の生命体です。SCP-1308は未知の手段により浮遊することが可能です2。SCP-1308の外表面は人間の皮膚に類似し、体毛や母斑、ときには角質の斑点といった特徴を有しています。内表面は滑らかであり、SCP-1308-1を分泌可能な修正汗腺を大量に含んでいます。SCP-1308-1は半透明な黄色の液体で、成分は血漿に類似しています。

SCP-1308は脂肪面や垂直な2層の筋繊維面、ときには強化軟骨部位を皮膚下に内包しています。体内では表皮から身体の中心に向けて多数の毛細血管が伸びており、表皮でガス交換を行っていると見られています。また不随意的な筋収縮パターンにより血液の循環を確保しています。SCP-1308は膨大な筋収縮を推進手段として利用しており、筋組織は最大で600Nの力を発揮することが可能であることが判明しています。SCP-1308は直径約5mmの格子状神経節で構成される分散的な神経系を有しています。この神経網は約25本毎平方メートルの密度で不規則に張り巡らされており、アクソン繊維で接続されています。

SCP-1308から採取した細胞のDNA検査の結果は、細胞が人間由来のものであることを裏付けています。

SCP-1308は知性を持っていると見られ、放棄された建物、廃棄物処理施設の周辺、管理施設といった人目のつかない場所を好むようですが、ある個体は[編集済]。非活性時、SCP-1308は通常壁などに付着します。その際2.5m以上の高度を好むようです。

SCP-1308は独特な筋収縮パターンで身体を折りたたむことにより、音楽的な音響、さらには人間の声を含む外部環境の模倣音を様々な強度で発することが可能です3。この習性には獲物を誘引する役割がありますが、SCP-1308は不規則なタイミングで発声を行う傾向にあり、それは採餌中や採餌後であっても変わりません。

人間が近づくと、SCP-1308はその人間を包み込んで拘束し、直接人間の皮膚に触れるために表皮の大部分を衣服の下に潜り込ませます。その後、表皮の汗腺からSCP-1308-1が分泌されます。

SCP-1308-1は速やかに人間の皮膚に浸透し、含浸から3分以内に体表面から約1mm程度の動物性組織の細胞間結合が恒久的に分断されます4。それが完了すると、SCP-1308はゆっくりと体組織を吸収していき、それを未知の手段で肉体へと再統合します。このプロセスは3-7時間かかることが観察から明らかになっています。

吸収が完了すると、SCP-1308は獲物を解放し、宙に浮かびながら離れて行きます。過去の記録や試験から、SCP-1308と遭遇した場合の生存率は80%程度であることが判明しています。残りの約20%における死因のほとんどは皮膚の大部分を失ったことによる二次感染、圧迫による窒息または循環器不全、ショック症状です。生理的塩類溶液を用いて損傷部を徹底的に洗浄し、さらに予防のためレボマイセチンを投与すると回復が早まることが判明しています。広範囲が侵食を受けた場合は皮膚移植が推奨されます。

SCP-1308には金属スズやある種のスズ化合物と接触することを極端に回避する様子がみられます。これにはSCP-1308-1がスズ酸化反応の触媒として機能することが関係していると見られています。

回収記録: SCP-1308は1995/██/██にハンガリーの██████において、███████高温プラントの整備士であるヤーノシュ・B█████氏の入院により初めて財団の注意下に入りました。病院の精神科医による聞き取りと怪我の異常性に注目し、財団の渉外担当が農務省特別委員会委員を装ってインタビューを行いました(インタビューは補遺1308-1を参照)。彼の証言を基にオブジェクトに接近する計画が立案され、整備トンネル内にて無事に1体のSCP-1308を捕獲しました。ヤーノシュ氏には記憶処理が施され、病院の記録は怪我が精神病の発作による自傷であるとする記録へと変更されました。
現在までにさらに5体の個体が収容されました。

補遺1308-1:

対象: ヤーノシュ・B█████氏(以下J.B.)。███████高温プラントの整備士。

インタビュアー: F████研究員。農務省特別委員会の構成員を装っています。

序文: J.B.は同僚のベーラ・B█████氏によりメンテナンスルームの一室で発見され、██████県病院へと搬送されました。彼は頭部の怪我、背部・胸部・右腕の皮膚組織の広範囲にわたる喪失、感染症、高熱により直ちに入院措置が取られました。入院時点で彼の血中アルコール濃度は約0.5パーミルでした。J.B.の「肌のベッドシーツ」に攻撃されたという主張と怪我の異常性を理由として、財団は調査を実施しました。

<記録開始>

J.B.: ベーラ? 酒を持ってきてくれたのか? 早くくれ! 医者が来る前に!

F█████研究員: 失礼します。農務省の役員をしております、医師のイシュトヴァーン・ヴァルガと—

J.B.: あんたは……医者? 農務……俺が雄牛に見えるとか?……すまない、今のは冗談だ — 誰を探してる?

F█████研究員: 1965年██月██日セゲド産まれのヤーノシュ・B█████さんでよろしいでしょうか?

J.B.: ああ、確かにそれは俺だ……しかし……一体何を……すまない、俺—

F█████研究員: こちらに参りましたのは、あなたがここに運び込まれたとき、医師の方に話していらっしゃったことについてお伺いするためです。それで—

J.B.: マジで? 畜生……あいつは鎮静剤を打つとか言ってたのに……なら……でも農務省?

F█████研究員: この事例はあなたが初めてではないのですよ、B█████さん。あなたが出会ったのは偶然ウズベキスタンから持ち込まれてきた締め付け蛇の外来種のようです。正式な報告や対処を行う前に、まずは何点か細かい裏付けだけする必要がありましたので。

J.B.: 蛇?蛇なんかには見えなかったな……奴は……いや知らないけど……肌みたいな……生きた肌だった、俺の腕みたいな。そうだ、毛も生えてたんだ。しかも空を飛んでた。

F█████研究員: あの生き物は短い距離なら浮いて移動することができるんです。比較的希少な種でして、単にここの地勢がより生育に適していたのでしょう。オーストラリアの兎のようなものですね。今は関係ありませんが。同僚の方からメンテナンスホールで倒れていたとお伺いしましたが、何があったかお聞かせいただけますか?

J.B.: あれは確か火曜日だった気がする。俺は連続でシフトに入ってたんだ、1つはゲルゲリーの代わりで。2つ目のシフトから1時間くらいで起こったはずだ……自信はないが。しっこ行って、その後……起こったことは……そうだ。ええと、ラジオの音が聞こえたんだ……いや、聞こえた気がしたんだ。ベーラがラジオか何かを付けっぱなしで出て行ったんだと思って、そんときは気が付かなかったんだよ……クソッ、俺は奴が電池を無駄にしてると思ったんだ。だから探しに行った。音は保管庫から聞こえてきてると思って……そう思ったんだ……ええと、ときどき煙草を吸うために行ってた部屋だ。音も変だった。なんというか……テレビかどっかの映画で一回聞いた気がする。

F█████研究員: なるほど。それでは、部屋に入ったとき何があったのですか?

J.B.: 部屋に入って……待て、違う。部屋に飛び込んで……ええと、ホールを通り抜けたら急に音楽が止んで、声が聞こえたような気がした……だからスパナを掴んで飛び込んで、ええと……昔浮浪者がいたんだよ……門番が凄く年寄りで酒好きでさ。で、そいつが俺たちの間で少しばかり問題になってた。

F█████研究員: 問題とは?

J.B.: ホームレスどもだよ、クソッタレ。あのクソ野郎どもだ。あいつらは冬中、いや、いつだって寝るために忍び込んでは散らかしやがるんだ。

F█████研究員: それで部屋に入ったのですね。何があったのですか?

J.B.: 最初は何もなかった。ドアを開けても誰もいなかった。入って、そしたら……クソッ。後ろの上の方から……金切り声が聞こえてきたんだ。振り向いたら……あの生き物がいた。さっき言ったみたいな見た目で……カーペットかベッドシーツみたいな奴だった……だけど空を飛んでて、丸まって、形が……ちょっと筒みたいな形になって、それで……あれが……音楽がまた鳴り始まった。で、奴は俺のところに来た……猫みたいにすばしっこかったよ。俺は動けなかった……その後なんとか落ち着いてレンチで殴ろうとした。無駄だったが。

F█████研究員: 叩いたことで何かダメージはありましたか?

J.B.: あっ、殴って……殴って傷はついた。ええと、俺は腕力は凄いあったから……レンチで穴は空いた。何かが吹き出してもいた。だけど奴はそんなことお構いなしだった。ええと、奴は俺の腕に巻き付いた。そして迫り上ってきた……温かくて犬に舐められているみたいだったが、腕を本当にきつく締め付けてきた。引き剥がそうとしたけど倒れちまって……
そしたらあいつは袖の方までよじ上ってきたんだ。さっき言ったように、奴は肌のような見た目で毛があった。頭か何かを見たんだと思うが分からない……そんで奴はシャツを引きちぎりながら全力でまとわりついてきた。ベルトは通れなかったみたいだ、ありがとマリア様、クソッ。そのときのせいで、ええと……一度奴は俺をきつく包み込むと、何かやり始めて、弱くはなったんだけど体が熱くなった……まるでフェフェロニを切った後、目かあそこを擦ったみたいだった。クソッ。しかも奴は俺を放さなかった……動こうとしたら少しは動いたが、またもっと強く締め付けてきた……そして奴は……体のどこかで鼻声でまた歌ってた気がするけど、 頭の中でそう思っただけかもしれない。畜生、どれくらい長かったか覚えてない。

F█████研究員: 次に覚えていることは何ですか?

J.B.: 奴はやっとこさ俺を放すと浮かび上がってすごい速さで離れていったよ。体を起こそうとしたが……腕も足も全部痺れてた。動くだけでも大分時間がかかった……俺はメンテナンスホールまで逃げて、誰かに電話しようと受話器を取ろうとして……つまづいて……つまずくか何かしたんだと思う。次に覚えているのはベーラが毒づきながら俺をはたいていたことだ……彼のシフトだったんだろうな。間違いなく。ベーラが俺を病院に連れて行ってくれた。あいつは俺がこんなことをいうのは頭を怪我したせいだと思ってた。

F█████研究員: 以上で終わりです、ありがとうございました。この薬を飲んでください。血清です。この種の蛇の毒は相当悪質でして、まずは幻覚を引き起こし、治療しなければ数日で肝臓を害します。

J.B.: ありがとう……クソッ、あの医者はそんなこと知らなかったぞ。

<記録終了>
終了報告: J.B.にはクラスA記憶処理を施し、怪我はボイラー事故による蒸気火傷であると説明しました。病院の人間には、怪我は自傷によるものであり、彼の怪我ならびに陳述は自分の肌が襲いかかってくるという妄想の結果であると報告しました。

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