SCP-1312-JP
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伏木駄菓子店.jpg

██県に出現した際のSCP-1312-JP

アイテム番号: SCP-1312-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-1312-JPは後述する異常性とその出現範囲の広さから恒常的な監視・把握が非常に困難であり、完全な収容は事実上不可能です。現行の特別収容プロトコルはSCP-1312-JP-1の回収及び来客者の拘束に重点が置かれている事を念頭に置いて下さい。また、SCP-1312-JP-Aについて財団による更なる調査が進行中です。SCP-1312-JPに及ぼす影響が不明なことから、SCP-1312-JP-Aを無力化する試みは許可されません。

SCP-1312-JPの存在が確認された場合はその都度、適切なカバーストーリーを適用しSCP-1312-JP周辺を封鎖しなければいけません。また、SCP-1312-JPへの来客者の存在が新たに判明した場合、全国の監視カメラと目撃情報を調査し来客者を特定・拘束すると共に、SCP-1312-JP-1を回収して下さい。

2020/4/16追記: 全国の財団関連施設にD-1312-1の個人情報データを通達し、SCP-1312-JP-Bの出現に関する注意喚起を定期的に実施して下さい。SCP-1312-JP-Bが財団施設内に出現した場合、SCP-1312-JP-Aと同様に拘束することが困難と見られることから、SCP-1312-JP-Bの主張する"出張営業"に応じて施設から退去させて下さい。提供されたSCP-1312-JP-1は速やかに回収され、関係者には記憶処理が実施されます。また、SCP-1312-JPに関する実験はDクラス職員を使用した実験も含め全面的に禁止されます。

説明: SCP-1312-JPは日本国内において「伏木駄菓子店」と名乗り、不規則な出現と消失を繰り返している駄菓子屋です。SCP-1312-JPの出現範囲は現在までのところ日本国内に限られており、日本国外においてSCP-1312-JPが出現した記録は報告されていません。国内におけるSCP-1312-JPが出現する地域に特別な傾向は存在しませんが、路地裏の奥やショッピングセンターの端といった人目に付きにくい場所に比較的多く出現する傾向にあることが判明しています。SCP-1312-JPの内装は報告されている全ての事例において木造であり、店先には多くの菓子や玩具が雑然と陳列されている様子が確認されています。これらの菓子や玩具には特別な異常性は存在せず、希望すれば購入することが可能です。

SCP-1312-JPに入店すると店の奥から「伏木駄菓子店」の店主を自称する人型実体(SCP-1312-JP-Aと指定)が出現します。SCP-1312-JP-Aの外見や口調は出現毎に異なりますが、入店した客(以後「来客者」と記載)が内心で抱えている問題を未知の方法で把握していることが確認されており、それぞれの来客者に応じて異常性の存在する菓子や玩具(SCP-1312‐JP‐1と指定)を提供します。この時、SCP-1312-JP-Aが来客者に対して金銭や対価を要求した事例は現在のところ確認されていません。来客者がSCP‐1312-JP‐1を受け取った後に店外へ出るとSCP-1312-JPは速やかに消失し、日本国内を範囲としたランダムの場所へ転移します。また、SCP-1312-JPへの来客が皆無の状態が1ヶ月以上経過した場合も同様に消失・転移することが確認されています。SCP-1312-JP-Aを店外へ連れ出す試みはSCP-1312-JP及びSCP-1312-JP-Aの消失という結果に終わるため、現在まで成功に至っていません。

来客者に提供されたSCP-1312-JP-1には「伏木駄菓子店」のラベルが添付されており、注意事項に反した場合には使用者に悪影響を及ぼす旨の文章が記載されています。SCP-1312‐JP-1には注意事項に沿って適切に使用した場合、使用者が抱える欲望や苦悩を解消する超常的な効果があり、来客者は一時的に強い満足感を覚えます。しかし、この効果はあくまで対処療法的なものであり、来客者が抱える問題や苦悩を根本的に解決する訳ではありません。やがて来客者はより強い満足感を求めて注意事項や自身への悪影響を軽視するようになるため、多くの事例において来客者に重大な悪影響を及ぼしています。これまでに回収されたSCP-1312-JP-1のサンプル解析結果からは財団が認知していない未知の成分が検出されており、この成分がSCP-1312-JPの効果に大きく関わっているものと考えられています。

以下はこれまでに確認されているSCP-1312-JP-1の実例を一部抜粋したものです。

概要 使用用途 使用方法 問題点
「思い出ドロップ」と記載されている、スチール缶で形成された空のドロップ缶。 使用者の「思い出」の疑似的な追体験。 使用者が缶を左右に振るごとに様々な形のドロップが出現し、使用者の記憶が一部消失する。消失する記憶は使用者本人の意思で選択が可能であり、摂食することで復活する。また、発生したドロップを他者が摂食することで、他者に使用者の記憶を追体験させることも可能。 使用者が何らかの強い意志を抱いた状態で缶を振ると、重篤な記憶障害を引き起こす。
「シガレット・バク」と記載された非異常性の箱に封入されているココア・シガレットに酷似した棒状の菓子 摂食した人物のストレスや不安の軽減。 摂食すると吐出した煙の中から「マレーバク(Tapirus indicus)」に酷似した生物実体が出現し、使用者と交流を開始する。交流の中で生物実体は使用者のストレスを「捕食」し、使用者の苦悩や不安を軽減させる。ただし、効果は1~2日程度で消失する。 摂食を繰り返した場合、生物実体の能力が成長し、使用者の人格や記憶を捕食し始める。
「けんこうふうせん」と記載されている金属製チューブ 使用者の病気や疾患の病状緩和。 生成されたシャボン玉を使用者が破裂させると、使用者の持病や疾患が改善される。難病に指定されている病気や精神的な疾患にも効果があり、1度に破裂させるシャボン玉の数が多いほど強い効果が表れる。 短期間に繰り返し使用しすぎた場合、体内の免疫系統が異常反応を起こすようになり、アナフィラキシーショックを発症し死亡する。
「いこいの時計」と印字されたブリキ製の腕時計。 装着している人物の休息を目的とした体感時間の上昇。 装着すると、使用者の体感時間が通常の150~200%程度に引き延ばされ、差分を利用した余暇を楽しむことが可能になる。外部からは通常通りに活動しているように見えるため、使用者の状況に気づくことはない。時計を外すと、体感時間は平常時に戻る。 装着時に故障や外部要因による秒針の停止が発生した場合、使用者の体感時間を元に戻すことが不可能となる。

これまでの来客者の証言から、SCP-1312-JPには特定の条件に合致する通行人を店内へ誘引する精神影響効果が存在するのではないかと考えられています。また、SCP-1312-JPの影響を受ける来客者の多くは日常生活において何かしらの問題や悩みを抱えている人物であることが明らかになっています。

SCP-1312-JPはSCP-1569-JPが回収された後に行われた追加調査の結果、日本国内でSCP-1569-JPと同様の事例が多数報告されたことが切っ掛けで財団の関心を引くことになりました。確認された全ての事例において「伏木駄菓子店」の名前が確認されたことから、日本国内に存在する監視カメラの過去の映像記録を追加調査したところ、SCP-1312-JPの存在と詳細な異常性が判明し、現在の特別収容プロトコルが制定されました。

補遺1: 2020/03/15、SCP-1312-JPについての情報を入手するためにSCP-1312-JP-Aに対してインタビューが実施されました。以下はインタビューの詳細を記録したものです。

対象: SCP-1312-JP-A
インタビュアー: D-1312-1
付記: このインタビューはD-1312-1がSCP-1312-JPへの来客者を装い実施された。D-1312-1には小型通信機とGPS装置を携帯させ、首には脱走防止用の遠隔起爆型小型爆弾が取り付けられた。D-1312-1は事前に通常の客として複数回来店している。また、インタビュー時のSCP-1312-JP-Aは初老の女性の姿をしていたと報告されている。

<録音開始>

[D-1312-1がSCP-1312-JPの店先に到着する]

インタビュアー: 今回はここの店主と話すれば良いんだよな?それにしても、こんな昔ながらの駄菓子屋なんて今でもあるものなんだな。御免下さい!

[SCP-1312-JP‐Aが店の奥から出現する]

SCP-1312-JP‐A: …あんた、また来たのかい?

インタビュアー: まあ、そんなところだな。今回はほら、この店の名物って聞いた不思議なお菓子とやらが欲しくなってさ。

SCP-1312-JP‐A: そうかい… どれ(そのまましばらくD-1312-1を見続ける)

インタビュアー: お…おい。

SCP-1312-JP‐A: …あんたも随分苦労してきたんだね。あんたにはこれがちょうど良い(SCP-1312-JP-Aはそう言ってD-1312-1に菓子のように見える何かを手渡す)

インタビュアー: あ、ありがとうございます。えーっと、おばあさんはこの店の店主さんか?ちょっと聞きたいことがあるんだけど、良いかい?

SCP-1312-JP‐A: …なんだい。

インタビュアー: どうしておばあさんはこんなことをしてくれるんだ?

SCP-1312-JP‐A: 言ってることの意味がよくわからないね。もっとはっきり言いな。

インタビュアー: 俺は過去に色々と罪を犯した。自分で言うのもなんだが、俺は本当にロクデナシで人様に顔を向けてこれない人生を送ってきたと思ってる。この店のことは噂で色々と聞いた。店主さんの口ぶりだと、俺の過去を知っていながら、このお菓子を渡してくれたように聞こえる。このお菓子がどういう代物なのか俺にはわからない。でも、明らかに善意で渡してくれたことは俺でもわかる。どうしてこんな俺のようなロクデナシの人間に、こんなことをしてくれるんだ?

[しばらくの間、SCP-1312-JP-Aが無言となる]

SCP-1312-JP‐A: …そんな大層な理由なんてないさ。皆、この店が悩みを解決してくれる素晴らしい店なんて言ってくれるけど、そんな力なんてウチにはないよ。この店のお客さんは何かしら深い悩みを持っている人が多くてね。この店の商品はそんな悩みの抱える人の心を解すだけさ。悪化させるわけでもなく、解決するわけではない。悩める人に寄り添い、昔懐かしい駄菓子や玩具で心を慰める。ウチにできることはそれだけなんだよ。

インタビュアー: 解決できないと分かってるのに、どうして続けていられるんだ?

SCP-1312-JP‐A: どうしてと言われても… それがこの店の存在意義だからね。

インタビュアー: …(無言)

SCP-1312-JP‐A: …この店はね、元々各地を渡り歩いて、飴を売って歩く、所謂飴売りって奴だったんだ。最初は他と同じくごく普通の飴売りだったらしいんだけど、初代の店主が変わり者だったらしくてね。単なる飴は売りたくないとか言って、食べると悩みをしばらく忘れるって飴を売りだした。これが思いのほか上手くいったらしくて、色々な菓子や玩具を扱うようになっていったそうさ。そんなことを続けている内に、いつしか「不思議なお菓子屋さん」と呼ばれるようになった。

インタビュアー: それがこの店の名前になったと?

[SCP-1312-JP‐Aが頷く]

SCP-1312-JP‐A: ウチは今までずっとこのやり方だったし、これからも悩める人に寄り添うことに変わりない。…ただ、最近は普通のお客さんが少なくなってきてね。そのせいで仕入れにも苦労するようになってきて中々大変なんだよ。ウチのお菓子や玩具は仕入れが特別だからさ。そういえば、結構前に懐古主義者を名乗る人が店を買いたいなんて言ってきたこともあったけど、ウチは別に何かを懐かしむための店じゃないからね。

インタビュアー: …なあ、店主さん。お願いがあるんだがいいか。

SCP-1312-JP‐A: なんだい?

[この時点でD-1312-1に対して帰還命令が下るが、D-1312-1は命令を無視して会話を継続する。また、この辺りから原因不明の雑音が入り始める。]

インタビュアー: 俺も世の中で困っている人の役に立ちたいんだ… だから[雑音]

SCP-1312-JP‐A: そうかい… 本当はあんたのような人は[雑音]の対象じゃないからどうしようかね… あんたが良いのなら[何かを話している様子だが、雑音が入り不明瞭]

インタビュアー: ははっ!まるで[雑音]だな… ばあさん、宜しく頼むよ。

[通信が途絶、それから間もなくしてGPS反応も消失する]

<録音終了>

GPS反応消失後、D-1312-1に取り付けられていた小型爆弾の起爆装置を発動させましたが、反応は見られませんでした。その後、機動部隊が現場に急行しましたが、SCP-1312-JP及びD-1312-1は既に消失していたことが確認されています。D-1312-1の行方は現在も明らかになっていません。補遺2を参照して下さい。

補遺2: 2020/04/15、D-1312-1が配属されていた財団のDクラス宿舎において、SCP-1312-JP-1を配布する人型実体(SCP-1312-JP-Bと指定)が出現しました。目撃者の証言から、SCP-1312-JP-Bは「伏木駄菓子店 出張営業店員」を名乗り、複数人のDクラス職員に対しSCP-1312-JP-1を配布していたことが明らかになっています。配布されたSCP-1312-JP-1は速やかに回収され、関係者には記憶処理が実施されました。機動部隊が現場に到着した時、SCP-1312-JP-Bは既に消失していましたが、財団に宛てたと見られる文書が現場から回収されました。以下は文書の詳細を記録したものです。

令和2年4月15日

SCP財団の皆様へ

有限会社 伏木駄菓子店


出張営業開始についてのお知らせ



SCP財団の皆様、 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。

早速本題に入りますが、この度、当店は財団の皆様に対する出張営業を不定期ではありますが行うことを決定致しました。これは先日、当店で新規の店員として採用した元財団職員という██1が「自分と同じ境遇の人のため、少しでも役に立ちたい」という強い希望によるものです。

██には当初、これまでと同様の接客を担当させる予定でいましたが、彼の熱い訴えに我々も強く胸を打たれ、皆様への出張営業と商材の仕入れを担当する方向へ方針を変更することと致しました。当店も全く存じていなかったのですが、財団の皆様は世界を守るべく日頃から過酷な業務を強いられているとお聞き致し、こちらも大変胸を痛めているところです。職員の皆様方には心を病んでらっしゃる方も少なくないのではないかと存じます。当店はそんな悩める皆様の心強い味方となりたいと考えています。

これから全国津々浦々のSCP財団様の施設における悩める人々に寄り添っていきたいと考えております。つきましては、皆様と良き関係をお築きしたいので、よろしくお願い致します。

謹白

上記の文書回収後、複数回に渡ってSCP-1312-JP-Bを拘束する試みが実施されましたが、全ての試みが失敗に終わったことが確認されました。このことから、SCP-1312-JP-BはSCP-1312-JP-Aと同様の異常性を保有しているものと推測されています。また、監視カメラの映像及び目撃者の証言から「伏木駄菓子店 出張営業店員」を名乗るSCP-1312-JP-Bの容姿は行方不明となっているD‐1312-1と共通点が多いことが判明しています。SCP-1312-JPが新たな異常性を発現した原因は現在調査中ですが、SCP-1312-JPがSCP-1312-JP-Bを通じて財団に関する知識を獲得したのではないかと考えられています。財団は上記の点を踏まえた上で、特別収容プロトコルの改定を決定しました。

補遺3: SCP-1312-JP-Bが配布していたSCP-1312-JP-1について、回収されたサンプルを解析した結果、D-1312-1のDNAと見られる成分が検出されました。これを受け、SCP-1312-JP-Bに対してSCP-1312-JP-1の調達方法について質問を行いましたが、SCP-1312-JP-Bは現在まで回答していません。その後、過去に回収された全てのSCP-1312-JP-1を前回の解析よりも精度の高い精密機器を用いて再度解析した結果、一部のSCP-1312-JP-1から、これまでに確認されていた未知の成分の他に、D-1312-1とは異なるヒト由来の成分がごく微量ながら検出されました。財団はSCP-1312-JP-1の製造・調達方法がSCP-1312-JPの異常性と大きく関わっているものと推測しており、実態の調査が進行中です。

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