SCP-1341-JP
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アイテム番号: SCP-1341-JP

オブジェクトクラス: Archon

特別収容プロトコル: SCP-1341-JPが人類社会に深く定着しており、またSCP-1341-JP-Aの存在による人体・環境・社会への影響を無視できることから、SCP-1341-JPの収容あるいは根絶に関する試みは実施されません。SCP-1341-JP-Aに関連する情報が公開・流布された場合、カバーストーリー「コンタミネーション」が適用されます。

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SCP-1341-JP-A群体を伴うSCP-1341-JPの一例

説明: SCP-1341-JPは一般にラーメンと呼称される生物圏です。SCP-1341-JP内には、一般に「油滴」として認識される、エステル脂質からなる脂質二重層で構成された小胞(SCP-1341-JP-A)が存在します。SCP-1341-JP-Aは分裂・融合・エンドサイトーシスの過程が確認されており、生命活動に類似する反応が示唆されます。このことからSCP-1341-JP-Aは、約40億年前の原始生命体と同様に出現した、既存の地球生物と独立した系統に属する原始生命と推測されます。

SCP-1341-JP内でSCP-1341-JP-Aの化学進化が促進される理由として、以下が挙げられます。

  1. 嫌気的環境。食品の品質管理のため食材に対し製造過程で還元処理が行われているほか、調理過程においても各種具材は酸化を防止する処置が施されている。加えて、SCP-1341-JPの液相部分は高温であるため気体の溶解度が低く、溶存酸素量が乏しい。このため、酸素への耐性を持たない原始生命に適した環境を呈する。
  2. 熱エネルギー。調理過程で加熱されたSCP-1341-JPの系は、一般的な地球表層で生物が経験するよりも遥かに高温環境である。こうした熱エネルギーに富む場では化学反応が進行するためのエネルギーが供給され、有機物合成が促進される1
  3. 豊富な出発物質の存在。材料に含まれる有機化合物が何らかの機序により分解され、無機物起源有機物2の合成に伴って用いられている可能性がある3

SCP-1341-JP-Aは嫌気性の原核生物であり、また細胞壁を有しません4。このため、調理から十分な時間が経過したSCP-1341-JPは液相の酸化、空気中の細菌類の侵入、ヒト(Homo sapiens)による捕食、食器の洗浄などによって死滅します。ヒトが「油滴」を集積することによりSCP-1341-JP-Aは細胞膜を融合し大型化する場合がありますが、SCP-1341-JP-Aの脆弱性、化学進化および生物進化の速度を鑑み、人体・一般社会に影響を与える可能性は皆無ごく低いものと判断されています。



実験記録: 以下は、一般に塩ラーメンとして知られるSCP-1341-JPを特定条件下においた場合の、SCP-1341-JP-Aの観察記録の抜粋です(完全な記録はアーカイブを参照)。以下の実験はいずれも気圧を1気圧に保った無酸素無菌室で実施されました。なお長期に及ぶ観察を鑑み、液相に影響を及ぼすことが想定される麺および一部の具材は除去されました。

実験記録2

対象: SCP-1341-JP

手法: SCP-1341-JPを常温の無酸素無菌室に1時間放置する。

結果: SCP-1341-JP-Aの活動は停滞していた。これはSCP-1341-JPが空気に冷却され、高温環境に適したSCP-1341-JP-Aに理想的な条件から逸脱したためと推測される。

実験記録3

対象: SCP-1341-JP

手法: SCP-1341-JPを200℃に加熱する。

結果: SCP-1341-JP-Aは死滅した。過去に地球上で発生した全海洋蒸発と異なり、地下すなわち食器への進入は見られなかった。

実験記録4

対象: SCP-1341-JP

手法: 液体窒素によりSCP-1341-JPを冷却、液相部分を凍結させる。

結果: SCP-1341-JP-Aは死滅した。過去に地球上で発生した全球凍結と異なり、熱エネルギーを供給する場が存在しないためと推測される。以降の実験はSCP-1341-JPの温度を一定に保った上で行われる。

実験記録7

対象: SCP-1341-JP

手法: SCP-1341-JPに波長約300nmの紫外線を照射する。

結果: 1時間の照射の後、SCP-1341-JP-Aは死滅した。紫外線への完全な耐性は確認されなかったが、液相部分からはカタラーゼが検出された。これは紫外線照射により生じた有害な過酸化水素(H2O2)への適応と見られる。

実験記録8

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緑色に変化したSCP-1341-JP

対象: SCP-1341-JP

手法: SCP-1341-JPに波長約700nmの赤色光を照射する。

結果: 9時間の照射の後、SCP-1341-JPが緑色に変化した。緑色成分を抽出して分析したところ、バクテリオクロロフィル様タンパクを持つ緑色硫黄細菌様のSCP-1341-JP-Aが検出された。非酸素発生型光合成が行われていたことが確認され、化学合成細菌に相当する独立栄養生物の出現が示唆された。

付記: 事案記録を参照。



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回収された線形動物様生物

事案記録: 実験記録8の後も照射を継続したところ、照射開始から5日目に新たな麺の出現が確認されました。不審に考えた実験担当者による直接観察を経て、麺はカイチュウ属(Ascaris)に類似する線形動物様生物の群集であることが判明しました。当該生物群は実験担当者を認識するとともにSCP-1341-JPを脱出し防護服を破壊、担当者への侵襲と推測される攻撃行動を開始しました。即座に緊急バイオハザードプロトコルが実行され、担当者は救出、当該生物群は捕獲の後アセトンを用いて固定されました。

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回収された珍無腸動物様生物

当該生物の回収後、SCP-1341-JP液相の溶存酸素量がパスツール点を有意に超過すること、またメンマや鳴門巻きをはじめとする一部の具材が珍無腸動物に類似する生命体に置換されていることが判明しました。このことから、実験記録8で確認された緑色硫黄細菌様生物がやがて酸素発生型光合成を行い、酸素に適応した真核生物、ならびに派生的かつ多様な多細胞生物が出現したことが示唆されます。

今後、当該生物をはじめとするSCP-1341-JP-Aの爆発的進化を防止するため、高照度環境および無酸素環境下へのSCP-1341-JPの長期配置を伴う実験は凍結されます。

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