SCP-1378-JP
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アイテム番号: SCP-1378-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1378-JPはサイト-8174の標準人型収容セル内に収容されます。SCP-1378-JP担当チームの人員は認知抵抗値が異常性対抗基準値を上回っている必要があります。SCP-1378-JPの行った物資要求および、SCP-1378-JPを用いた実験は更なる被害を生み出すとして却下されます。

説明: SCP-1378-JPは収容以前はサイト-81██管理官として財団に勤務していた日本人男性(本名: 飯田 恭一/収容当時37歳)です。SCP-1378-JPに身体的・精神的異常は確認されておらず、収容後に行われた各種検査の結果、スコアは同年代の財団職員の平均値を20%ほど上回る結果を記録しています。SCP-1378-JPは弱度のストレスに起因する脱毛症状を患っていることが確認されています。

SCP-1378-JPの異常性は、ヒト(以下、対象)が直接的に頭部を認識した際に発生する心理的衝動です。心理的衝動の内容は「禿頭の明確な基準の追及」であることが明らかとなっています。この心理的衝動は認知抵抗値が██.█以上の人物には影響を及ぼしません。異常性に暴露した対象は、毛量・髪質・長さなどの情報に則った禿頭の基準定義を開始します。この時定義される基準は対象ごとに異なりますが、一貫してSCP-1378-JPの頭部は禿頭であるという結論に落ち着きます。この影響は記憶処理を施すことで除去することが可能です。

SCP-1378-JPの異常性は任務の経過報告のためにサイト-81██管理官室を訪れていたエージェント・瑛多によって発見されました。発見後に収容スペシャリストが現場に駆け付け、エージェント・瑛多への聴取の結果としてSCP-1378-JPは精神影響性のアノマリーとして収容されるに至りました。収容当時の詳細な情報は付属資料を参照してください。


補遺1378-JP.1: 対話記録-1

以下の記録はSCP-1378-JPと収容担当者である箕田博士の対話記録です。対話目的はSCP-1378-JPの異常性の起源を探る目的でした。付記として、箕田博士の認知抵抗値は██.█であり、異常性の影響範囲外にあります。

対話記録 1378-JP
Record 20██/██/██


«記録開始»

箕田博士: それでは飯田さん。異常性の起源について教えてもらえますか?

SCP-1378-JP: 異常性の起源、か。確証はないが思い当たる節はあるな。

箕田博士: 教えてください。

SCP-1378-JP: わかった。まず、私がストレス性脱毛症を患っているのは知ってるね?

箕田博士: ええ、把握しています。

SCP-1378-JP: この症状が出始めたのがちょうど1年前、私がサイト管理官になったころなんだ。多分だが根詰めて無理しすぎたんだと思う。積み重なる仕事と、かさを増す抜け毛に悩まされていたある頃から、あることを考えるようになったんだ。

箕田博士: どんなことですか?

SCP-1378-JP: ハゲの定義が変わったらな、ってことだよ。今は若干髪がないだけでもハゲって言われるからね。実際、私も他のサイト管理官から言われていたものだよ。見た目をとやかく言われるのは好きじゃなくてね。ならハゲの定義が変わればいいじゃないかと。

箕田博士: なるほど。

SCP-1378-JP: その結果がこれだよ。部下にまでハゲと言われる始末さ。定義が変わるまでの時間が長すぎて私の髪が耐えきれなかったか、はたまたもともとハゲとして生きるべき運命だったのか……。今となっては分からないけどな。

箕田博士: ふむ。これが起源であると考えているわけですね。

SCP-1378-JP: そうだ。むしろこれ以外に思い当たる節がなくてね。

箕田博士: なるほど、ありがとうございます。

SCP-1378-JP: いやね、サイトを管理する立場でありながら異常になっちゃったのは悪いと思ってるよ?でもね、どうしても耐えられなかったんだ、ハゲって言われるの。まあ、どっちにしろ変わることはなかったけどな。

[SCP-1378-JPの乾いた笑いが記録されている]

«記録終了»


終了報告書: SCP-1378-JPの証言を基に考察する場合、SCP-1378-JPの異常性の起源は強い思念に起因するものとなる。しかしながら、現時点での技術力ではこれを証明することは困難である。現在、SCP-1378-JPの起源情報の特定試行が急がれている。

また記録後、SCP-1378-JPは男性用ウィッグを希望した。希望は受理され、当日中に適切なウィッグが支給された。



補遺1378-JP.2: 対話記録-2

20██/██/██、SCP-1378-JPの異常性の変容が確認されました。変容後の異常性は、「顔面の容姿が優れているかの明確な基準の追及」となっています。この影響は認知抵抗値が██.█以上の人物には効果を示さず、以前の異常性同様に記憶処理で除去することが可能です。また、顔面の容姿が優れているかの基準は対象ごとに異なるものの、共通して対象はSCP-1378-JPの顔面の容姿は劣っているという結論に至ります。これに対し、異常性変質の原因を特定する目的でSCP-1378-JPに対する聴取が行われました。担当者は箕田博士です。

聴取記録 1378-JP
Record 20██/██/██


«記録開始»

箕田博士: 何故異常性が変質したのか聞いてもいいでしょうか。

SCP-1378-JP: もちろんいいとも。というか本当にすまないね。手間増やしてしまって。じゃあ話すとするよ。

箕田博士: お願いします。

SCP-1378-JP: 多分だけど、今回の異常性変質は自分の容姿を気にしすぎたからだと思う。カツラをつけてからハゲって言われることはなくなったけど、浮いてる印象を持たれるようになってね。この前の実験の時なんか開始前にDクラスにずらおっさんって呼ばれたからね。

箕田博士: それはつらかったですね。

SCP-1378-JP: まあ、それだけならいいんだけど、前にサイト管理官仲間に色々言われたことを思い出すとどうしても気になっちゃって。そこでまた考えたんだよ。

箕田博士: 見た目の良さの基準が変わればいいと、ですか?

SCP-1378-JP: そういうこと。見た目の良さの基準変われば私はハゲともおっさんとも呼ばれなくて済むかと考えたからね。でも、それは間違いだった。前の反省を生かしてやめておくべきだったんだ。

箕田博士: でも考えてしまったと。

SCP-1378-JP: ああ、そうだとも。結果、私は前よりもひどい言われようになった。実験で見たろ?Dクラスが私のことを見てアイアイのような目だの深海魚のような顔だの軽蔑しているような目つきで私のことを罵倒したところを。

箕田博士: それは……

SCP-1378-JP: まあ、いいんだ。異常性を解き明かすためだからね。ただ、代わりと言っては何だがお願いがあるんだ。

箕田博士: なんでしょうか。

SCP-1378-JP: もしよければお面とかでもくれないかい?

«記録終了»


終了報告書: SCP-1378-JPの物資支給の要求は、「変人についての明確な基準」などに異常性が変化する可能性を考慮したうえで却下された。

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