SCP-143-JP
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アイテム番号: SCP-143-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-143-JP-1は最新版の虫類型オブジェクト収容手順に従って、サイト-81██内の生類研究室-36に収容してください。メスに吸血されるとSCP-143-JP-2β個体が発生してしまうので、実験の目的でない直接の暴露を避けることには最善の注意を払い、必ず2013年以降に正式採用された指定防護スーツを着用してください。産まれた卵は全体の5%程度のみ残して全て終了させてください。

SCP-143-JP-1の生体標本は現在十分な個体数収容できているため、推定5 10 25匹未満の収容違反案件に際しては現場収容スタッフの判断で終了させてよいことになっています。野生の蚊の仲間よりも10倍程度薬剤への耐性があるため、直接触れずに叩く方法を推奨します。終了後の事後連絡は必ず行ってください。推定25匹以上の収容違反案件は第四位優先警戒となり、機動部隊る-9(”蚊遣り火”)が出動します。また、収容スタッフは6ヶ月に1度、機動部隊る-9による講習と訓練を受講することが義務付けられています。

SCP-143-JP-2は、同サイト生類研究室-36に隣接した収容室で収容されています。完全に密閉でき上部がガラス窓になっている12m x 12m x 12m以上の大きさの非鉄性コンテナLの中に、上面に穴があり内部の表面積が400m2より広い鉄製コンテナSを入れた、入れ子構造の中に収容してください。コンテナLは収容室床にしっかりと固定し、コンテナSは下記の手順に耐えられる最低限の強度の、非鉄性の細い鎖で四方をコンテナLの床に固定してください。清掃や修理が必要になった場合は密閉出来る酸素ボンベ付き防護スーツを着用して行ってください。

SCP-143-JP-2β個体(切断されたSCP-143-JP-2を含む)が実験や事故などにより新たに発生した、或いは新たに発見された場合、
1.収容室と研究室-36とを繋ぐオブジェクト用通路を開扉し、SCP-143-JP-2βに入室させる
2.SCP-143-JP-2がコンテナSの表面上にいることをコンテナLの窓から確認
3.電磁力発生装置を起動、コンテナSを浮遊させ、SCP-143-JP-2をコンテナSの表面に閉じ込める
4.コンテナLを開扉、SCP-143-JP-2βが収容施設に完全に入ったことを確認して閉扉
5.電磁力発生装置の電源を切る
以上の手順で収容してください。装置の操作手順や管理方法、各コンテナの詳しい構造などについては別紙の補足文書を参照すること。

説明: SCP-143-JP-1はヒトスジシマカ(Aedes (Stegomyia) albopictus)の近縁種に分類されると思しい生物です。外見や習性などは野生の同種に準じますが、寿命的にほぼ不死であること、野生の同種のおよそ14倍の薬剤1への耐性を持つこと、同じく本体の強度も3倍程度あることがわかっています。また、繁殖力は財団が収容した時点で約█倍、更に代が増す毎に██%~███%程度上昇しています。

メスのSCP-143-JP-1(SCP-143-JP-1Fとします)の分泌する唾液には通常ヒトスジシマカの唾液にはない幾つかの物質が含まれています。内7つは他の財団収容済みオブジェクトから過去に検出されたもの、4つは全く未知のものでした。しかし生体実験の結果では、身体的な有害性は野生の蚊の種類と比して殆ど違いがありません。
この唾液が被験体の体内に侵入すると、被験体には野生の蚊に吸血された時と同様のアレルギー反応が起こり、侵入部は血管が拡張することで赤みを帯びて少し膨らみ、痒みを感じるようになります。しかし侵入から大凡60~100秒後、生じた赤みは全て未知の方法で自立移動するようになります。この段階の赤みはSCP-143-JP-2βと定義されています。


SCP-143-JP-2βはゴキブリ目に近い素早い動きで移動し、恐らく虫類程度の知能と、知覚不可能なように思える三次元空間を含んだ非常に広い空間の把握能力を持っています。このオブジェクトは垂直方向に2mm以上の空間を確保できる固体の平面であれば、直接繋がっている面なら何処にでも進んでゆくことができます。例えば、SCP-143-JP-1Fに腕を刺された被験体が床の上に立っているならば、生じたSCP-143-JP-2βは体表を伝って足へ、靴を伝って床へ、続いて壁や天井、置いてあれば机などに進むことができます。被験体が何らかの方法で宙に浮いているならばSCP-143-JP-2βは被験体の体表で閉じ込め状態にありつづけることになるでしょう。生体の体表にいる時のSCP-143-JP-2βは血管の拡張現象として現れていますが、それ以外の場所では、その時いる平面の材質に不自然に浮き出た、2mm程度の赤い膨らみとして存在します。この時のSCP-143-JP-2βに特別な成分が含まれているかどうかは、捕獲が困難なことと、検査器具自体にも這い登ってしまう2ことから実験が難航しています(後述のSCP-143-JP-2についても同様)。

SCP-143-JP-2βは移動を始めると、現在までの事例では例外なく全て、SCP-143-JP-2を目指して進みます。SCP-143-JP-2はSCP-143-JP-2βの集合体で、少なくとも財団が収容しているのは1体のみです。報告書最終更新時点でその面積はおよそ37m2ほどあります。観察される限りでは、代謝や代謝に準ずる機能によってこの面積が小さくなることはありません。何らかの外的要因でSCP-143-JP-2が切断された場合は、最も大きな部分のみがSCP-143-JP-2としての機能を保ち、残りの部分はSCP-143-JP-2βに近い振る舞いをすることがわかっています。
SCP-143-JP-2は大部分でβ個体と同じ性質を持ちますが、これは普段周辺部を細かく波打たせながら、粘菌を思わせる緩慢な動きで移動します。但し近くの生体に向けて幾本かの細い触腕のような部分を伸ばすことがあり、これは最長で10m伸ばせ、末端の速度で推定秒速約40mで動かせるようです。また、どんな細い面へも進むことが出来ますが、平面において身体を重ね合わせることは不可能らしく、細い棒の表面などを進む場合には広い身体を移動させるためにかなりの時間をかけなければいけないようです。動作からはβ個体から確認できない音への反応が見られるほか、β個体よりも幾らか高い知能を持つように見受けられますが、各種知能テスト・能力テストの実施方法の確立の目処が立っていないため、現在までのところ詳しい能力は不明です。
β個体には無い独自の特性として、SCP-143-JP-2には、人獣を問わず動物の体表にこれが触れると触れた部分にかぶれたような赤みと強い痒みを生じさせ、触れた面積と同じだけ自身の面積を拡げる能力があります。これはSCP-143-JP-2の捕食、あるいは生殖に当たる行為なのではないかと思われます。この痒みは野生の蚊やSCP-143-JP-1Fの唾液によるものよりも明らかに強く、個人差はあれど1~5時間ほど継続します3。また、痛み、冷たさ、熱などの信号はこの痒みを一時的に紛らわせることが出来ますが、抗ヒスタミン剤などの痒み止め作用のある薬は効果が殆ど確認できません。触れた部分の血管の拡張は見られますが、血流の活発化などの物理的要因から来るもの以上に、神経自体や脳の認識そのものに影響を及ぼしていることに由来する痒みなのではないかという説が有力です。

SCP-143-JP-1及びSCP-143-JP-2は████県北部の山中にあった研究施設らしき建物で発見されました。発見時には人間が去ってから既に一週間は経過している様子でした。この建物は日本生類創研の小規模な実験施設の一つとみられ、所在地の土地の本来の持ち主は現在も失踪中です。
発見段階ではSCP-143-JP-1は凡そ████匹が"D-343"と書かれた大きな飼育槽で飼育されている状態でした。SCP-143-JP-2は現在よりも7m2ほど小さい姿であり、現在の財団の収容施設とほぼ同じシステムのガラス張りの部屋で管理されていたようです。SCP-143-JP-1は繁殖に十分な量のサンプルのみをトラックで輸送し残りは駆除、次いでSCP-143-JP-2は民間のものを偽装した赤い気球を使って運搬し、共に直近のサイト-81██へ無事収容されました。
施設で発見された幾つかの文書より、このオブジェクトが一種の拷問に用いるために作られ、3年半もの間複数の団体を顧客として同施設で実際に運用されていたこと、主に顧客減を理由として運用が凍結され同施設が放棄されたこと、移動の困難さゆえにこのオブジェクトがそのまま同施設に残されたことがわかりました。また、SCP-143-JP-2をある程度手懐けてコントロールする技術があったことも文書の記述から判明しており、現在もその方法は模索中です。

実験記録 143-JP-██ - 20██/██/██

実験内容: Dクラス職員D-52646をSCP-143-JP-2収容施設に長時間放置。経過を見る。
結果: D-52646は困惑しつつもオブジェクトに接近。残り2mの地点でオブジェクトの触腕に足を触れられ、急に痒みが生じたことに驚いたらしく転倒。直後にオブジェクトが体表を覆ったのを確認して、以降8時間放置した。
D-52646は5分後にDクラス職員用制服を脱ぎ捨てて裸になり、身体中を掻き毟り、悪罵を続けながらも実験終了まで生存。終了後に失神し、防護スーツを着た収容担当スタッフに抱えられて収容室を退室。出血部位の手当てが行われた。
直後の検査の結果、D-52646の全身の体表、眼球、食道、気道の一部、[編集済み]、[編集済み]などに赤みが見られた。オブジェクトの面積は2.5m2ほど拡大した。
分析: 面積拡大が人間一人分の体表面積よりも明らかに大きい。これは直接触れ続けることで、"痒みが引いてゆく端からまた痒くする"ことが可能になっているのだと推測している。
また、当初はアナフィラキシーショックの症状が現れるのではないかと予測されていたが、実際には見られなかった。察するに、オブジェクトの開発者はより効率的に拷問を行うために敢えて致死的な有害性を排したのではないだろうか? 各仮説の結論を出すには続く実験が必要であろう。

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