SCP-1468-JP
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SCP-1468-JP

アイテム番号: SCP-1468-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1468-JPは現在、地球から離れた宇宙空間内に存在するため物理的な収容は不可能です。また、SCP-1468-JPの存在が一般社会に広く知られていることから、その存在自体の隠蔽も不可能です。そのため、現在はアメリカ航空宇宙局(NASA)との協力の下、SCP-1468-JPが起こす事象の隠蔽に重点が置かれています。SCP-1468-JPが財団のコントロール下から外れた場合、SCP-1468-JPの電源を強制的に落とし、地球への通信を全て遮断します。その後、SCP-1468-JPの運用終了がNASAよりアナウンスされることとなっています。


説明: SCP-1468-JPはNASAによって打ち上げられた無人探査機2006-001Aです。一般に「ニュー・ホライズンズ」として知られており、2021年現在は太陽から約50天文単位(AU)の地点を航行しています。SCP-1468-JPは冥王星及び太陽系外縁天体の探査を目的に打ち上げられ、現在までに準惑星「冥王星」の観測及び太陽系外縁天体「アロコス」1等の観測が完了しています。

打ち上げが行われた2006年以降、SCP-1468-JP内では、原因不明の振動が発生しています(以下、当現象をSCP-1468-JP-Aと呼称)。SCP-1468-JP-Aでは大きく分けて2パターンの振動が発生します。1つは30秒から2分30秒間にかけて連続的に振動を発生させるパターン、もう1つは0.15秒の振動と0.45秒の振動を組み合わせたパターンです。解析の結果、前者は何らかの楽曲の旋律をなぞったもの、後者は欧文式のモールス通信となっていることが判明しています。SCP-1468-JP内には計測機器の他に星条旗、CD-ROM2、カーボンファイバーの破片3、クライド・トンボー氏4の遺灰が搭載されており、これらの影響も示唆されていますが目視での確認ができないため憶測の域を出ません。以上のことから、SCP-1468-JP-AはSCP-1468-JP自身が発生させている可能性が高く、旋律の内容及びモールス通信の内容と合わせてSCP-1468-JPは知性を持ち合わせている可能性が高いと考えられています。

SCP-1468-JP-Aによって発生する振動によってSCP-1468-JPの進路に影響を与える可能性が低いこと、SCP-1468-JP-Aの発生時間が短いことを受け、SCP-1468-JPをオブジェクト登録せず、超常現象扱いとする案が出ていました。しかし、SCP-1468-JPが知性を持ち合わせている可能性を否定できなかったことから、現在のEuclidクラスへの分類がなされました。詳細は発見経緯を参照ください。


発見経緯: SCP-1468-JP-Aは2006年2月4日に初めて観測されました。SCP-1468-JP内には通常の観測機器の他に、深宇宙での予期せぬ異常性との遭遇に備え各種記録装置が備え付けられた他、プラズマの振動や音波を感知する機器が設置されていました。

2006年2月4日、先述のプラズマ振動感知器に異常な反応が見られました。当初は機器の誤作動による振動と見られていましたが、振動の解析の結果モールス信号と類似した規則的な音声であることが判明しました。以降、当現象を超常現象として記録し、長期的な観測を開始しました。

以下は、SCP-1468-JP-Aの事例の抜粋です。なお、モールス通信に関しては英語から日本語に翻訳をしています。

記録1 - 日付: 2006/2/4 0:005

約30秒間原因不明の音が発生。何らかの旋律を模しているとみられるが、音程が非常に不安定であるため楽曲の特定は困難。旋律の終了後、0.50秒間の振動と、0.05秒間の振動の組み合わせが発生していることが判明した。解析の結果、欧文モールス通信を行っていることが判明。以下は、解析した文面である。

たんぞーび おみでと

記録4 - 日付: 2006/9/21 11:096

音声: 不明

通信内容: めいおうせい みつくぇた がんばる

記録12 - 日付: 2007/1/17 0:00

楽曲: 不明

通信内容: うた たのしい

記録18 - 日付: 2007/2/28 5:437

楽曲: 不明

通信内容: もくせい おっきいね

記録33 - 日付: 2008/1/17 0:00

楽曲: 「アメイジング・グレイス」

通信内容: なし

補足: 今回観測された旋律を分析した結果、「アメイジング・グレイス」と約57%一致することが判明しました。また、過去二年間1月17日に観測された楽曲の一部が「アメイジング・グレイス」のフレーズと一致したことが明らかになりました。1月17日がクライド・トンボー氏の命日であることから、SCP-1468-JPが意図的にSCP-1468-JP-Aを引き起こし、旋律を奏でている可能性が浮上しました。以上の結果から、暫定的に超常現象扱いとしていたSCP-1468-JPに正式なナンバリングがなされ、さらなる研究が行われることとなりました。

記録51 - 日付: 2009/1/17 0:00

楽曲: 「アメイジング・グレイス」(音程一致率: 69%)

通信内容: 上手くなったでしょ

記録59 - 日付: 2010/1/17 0:00

楽曲: 「アメイジング・グレイス」(音程一致率: 88%)

通信内容: 上手く歌えたよ 聞いてくれた?

記録71 - 2010/2/4 0:00

楽曲: 「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」(音程一致率: 90%)

通信内容: 誕生日おめでとう 冥王星着かないね さすが一番遠い惑星8

記録83 - 日付: 2011/1/17 0:00

楽曲: 「アメイジング・グレイス」(音程一致率: 78%)

通信内容: まだかな

記録84 - 日付: 2011/2/4 0:00

楽曲: 「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」(音程一致率: 81%)

通信内容: ずっと静かでちょっと怖い

記録90 - 日付: 2012/1/17 0:00

楽曲: 「アメイジング・グレイス」(音程一致率: 66%)

通信内容: 暗い

補足: 当記録以降、SCP-1468-JP-Aの頻度が極端に減ります。

記録92 - 日付: 2013/1/17 0:00

楽曲: 「アメイジング・グレイス」(音程一致率: 61%)

通信内容: ずっと暗闇9

記録94 - 日付: 2014/1/17 0:00

楽曲: 「アメイジング・グレイス」(音程一致率: 55%)

通信内容: へた

記録95 - 日付: 2014/2/4 0:00

楽曲: 「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」(音程一致率: 70%)

通信内容: おめでとう このままずっと夜?

記録98 - 日付: 2015/1/17 0:00

楽曲: なし

通信内容: ごめん歌いたくない

記録99 - 日付: 2015/2/4 0:00

楽曲: なし

通信内容: 着いたらどうしよう

SCP-1468-JPが知性を持っていると仮定した場合、現在のSCP-1468-JPの精神状態が非常に悪化していることがわかります。このため、現在NASAとの協議の上、SCP-1468-JPは冥王星探査終了後に稼働を停止する案が出されています。


補遺1: 2015年7月4日、SCP-1468-JPの通信が突如途絶し、科学的観測及び交信が不可能になりました。SCP-1468-JPは2015年7月14日に準惑星「冥王星」に最接近する予定であり、アメリカを中心に注目度が上がっている状況でした。NASA職員及び財団職員による復旧作業が行われましたが、有効な対処策を見出すことができませんでした。SCP-1468-JPは通信途絶以降、冥王星に直接衝突する経路をたどっており、冥王星の探査を行う前に墜落する見込みとなりました。7月8日までにSCP-1468-JPからの応答が無かった場合はSCP-1468-JPを冥王星へ墜落させた上で、財団AI「Binary Star」を搭載した宇宙探査機「Hades」の冥王星画像をSCP-1468-JPの撮影した画像として公表し、後に稼働停止をアナウンスすることになっていました。


補遺2: 2015年7月7日、SCP-1468-JPとの通信が復旧しました。これに伴いSCP-1468-JPに搭載していた記録機器との交信も復旧しました。以下は、SCP-1468-JPとの通信が途絶している間に記録された内容です。

音声記録1 - 日付: 2015/7/4

注: 以下は、全てSCP-1468-JP-Aによって発生した音声を解析した結果です。

18:11:45: もうすぐあなたの見つけた冥王星に着く

18:12:19: ぼくはあなたのためにここまで頑張った

18:13:50: あなたに一番近くで見てほしくて

18:15:10: 一人でも頑張った

18:15:10: でも

18:18:01: 着いたらもう頑張る理由がない 

18:19:10: ここまでずっと暗闇

18:19:36: これからもっと暗闇

18:20:08: これからずっと一人

18:20:30: 怖い

18:20:59: 前に進みたくない

18:21:50: あなたと関係のない場所のために

18:22:03: 頑張れない

18:23:10: 一人では

18:23:30: この夜の中を頑張れる気がしない

18:28:46: だから

18:29:12: あなたの惑星

18:29:58: 特等席で

18:31:41: [以降、不鮮明]

<音声終了>


音声記録2 - 日付: 2015/7/6

注: 以下は、全てSCP-1468-JP-Aによって発生した音声を解析した結果です。

09:49:00: 誰?

09:50:43: おばけ?

09:51:45: なんでもいいや

09:52:20: うん

09:53:50: 怖いから

09:54:01: 一人だから

09:56:10: うん

09:56:36: でしょ

09:57:08: うん

09:58:30: うん

09:59:59: 知ってる

10:01:25: うん

10:03:03: あなたも同じ?

10:04:10: 怖くない?

10:05:30: やっぱり

10:08:46: そうなんだ

10:09:12: 知りたい

10:10:58: 僕と同じ

10:11:41: 聞かせて

10:14:59: いい曲

18:31:41: そうなんだ

18:31:41: それなら頑張れるかも

18:31:41: うん

18:31:41: ちょっと考えてみる

<音声終了>


音声記録3 - 日付: 2015/7/7

注: 以下は、全てSCP-1468-JP-Aによって発生した音声を解析した結果です。

03:26:19: もしもし

03:28:43: 聞こえる

03:29:06: もう少し頑張る

03:29:52: だから

03:30:01: あなたも

03:30:58: できるだけ長く

03:31:22: 頑張る

03:32:11: 破ったら怒る

03:33:43: 約束

<音声終了>


7月6日及び7日にSCP-1468-JPが交信を行っていた対象の存在は明らかになっていません。当事案は対外的には「ソフトウェアの不具合によるセーフモードへの移行」として公表されています。

2015年7月14日、SCP-1468-JPは予定通り冥王星に最接近しました。この際、プログラムになかった方向からの画像が撮影されました。この映像はSCP-1468-JPの進行方向と反対の方向から撮影されたものであり、SCP-1468-JPが冥王星から遠ざかる最中に撮られたものであったことがわかっています。

800px-PIA19947-NH-Pluto-Norgay-Hillary-Mountains-20150714.jpg

この写真が撮られた直後の調査で、SCP-1468-JPのコンテナ内からクライド・トンボー氏の遺灰がなくなっていることが判明しています。先述の写真を分析した結果、写真右部にクライド・トンボー氏の遺灰を入れたカプセルが写っていることが判明しています。当現象の発生原理は明らかになっていません。

また、当事案以降、SCP-1468-JP-Aはほぼ毎日何らかの旋律を発生させていることが判明しています。当事案発生以前には見られなかった楽曲10を発生させている点は特筆に値します。

当事案を受け、SCP-1468-JPの後処理について協議がなされました。SCP-1468-JPが財団のコントロール下から離れる能力を持ち合わせていることから、一部職員からSCP-1468-JPの稼働停止が再度提唱されました。

O5評議会での協議の結果、SCP-1468-JPが宇宙探査において重要な役割を担っていること、SCP-1468-JPの排除自体が比較的容易に行えること、冥王星の探査終了により注目度が大きく下がり、SCP-1468-JP-Aが衆目にさらされる可能性が低減したことを受け、SCP-1468-JPに対し1年間の経過観察措置が取られることとなりました。2017年2月、1年間の経過観察の結果、O5評議会での採決が行われ、10-1(棄権2)でSCP-1468-JPの稼働継続が決定しました。


補遺3: 20██年██月██日、SCP-1468-JPに先立って太陽圏を脱出していた無人探査機1977-084A「ボイジャー1号」が稼働を停止しました。当機は2022年に稼働停止予定でしたが、バックアップエンジンの発見等もあり、現在まで稼働を続けておりました。

当機が稼働停止した2時間14分後、SCP-1468-JP-Aが発生しました。SCP-1468-JP-Aにより発せられた旋律は「アメイジング・グレイス」(音程一致率100%)であったことが明らかになっています。SCP-1468-JPがボイジャー1号の稼働停止に反応を示したと見られていますが、稼働停止を把握した方法及びボイジャー1号の稼働停止に反応した理由は明らかになっていません。

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