SCP-1488-JP
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Kamala

23枚の写真のうちの一枚。カマラとされている。

アイテム番号: SCP-1488-JP

オブジェクトクラス: Euclid Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-1488-JP-AとSCP-1488-JP-Bは死亡しています。ただし、月に一度程度、死体の状態確認、及び必要であれば防腐処理を施してください。また、それらの死体はサイト-19内の特別死体保管室にて管理されていますが、アクセス権限として、セキュリティクリアランス3以上が要求されます。

なお、カバーストーリー「オオカミに育てられた少女」の定着、及び流布は、SCP-1488-JPの無力化後も継続されます。詳しくは添付されている資料を参考にしてください。

また、SCP-1488-JPと類似した特徴を持つ実体が発見された場合、速やかに保護し、危険度に応じた人型ユニットによって収容してください。収容環境は当該オブジェクト無力化前の特別収容プロトコルを参照してください。

説明: SCP-1488-JPは二人のコーカソイドの女性です。便宜上、SCP-1488-JP-A、及びSCP-1488-JP-Bと区分します。SCP-1488-JPの共通の異常性として、嗅覚及び犬歯の異常な発達、輝板の存在、そして消化器官の変異等が確認されています。これらは一般的なタイリクオオカミ(Canis lupus)の特徴と酷似しており、後に述べるカバーストーリー「オオカミに育てられた少女」の定着に大きく貢献しました。

SCP-1488-JPは非常に攻撃的な性格であり、エージェント・シングによる保護の際も、動員した機動部隊員数名が重軽傷を負いました。この攻撃性は、収容において留意されるべき点です。

以下はエージェント・シングに対して行った、SCP-1488-JP保護直後のインタビュー記録を書き起こしたものです。現在、当該音声データは破損しており、参照が不可能な状態となっています。

[ログ開始]

ドローミ博士: [不明瞭な音声]それでは、あのSCiPを収容した時についての話を聞かせてもらおう。

エージェント・シング: ああ。俺らは現地住民の助けを得て、ジャングルに立ち入ったんだ。そこから、他の奴らが二匹を見た、という場所を何日もかけて回っていた。

ドローミ博士: 一か所に留まっていたわけではないのだな?

エージェント・シング: クソったれな事に、二匹は本当に自由奔放にジャングルの中を動き回っているようだった。ジャングルの中でも、特にぬかるみの深い地域や、毒虫がわんさか足を這いあがってくるような場所でも見たってやつがいた。あのままじゃ、村に下りるのも時間の問題だったろうな。

ドローミ博士: それで、何処で見つけたんだ?

エージェント・シング: 上空が開けている清流の近く。多分そこがあいつらの寝床だったんだろうな。そこで一心不乱にでけぇイノシシを食ってやがった。まるで家族みてーに分けあってな。[不明瞭な音声]。

ドローミ博士: 様子はどうだった。

エージェント・シング: 何日も飯にありつけてなかったのか、目をギラギラさせながら貪ってやがったぜ。おかげで、俺らが最初にあいつらを見つけた時、あいつらはこっちに気づいていないようだった。

ドローミ博士: そこを機動部隊と襲撃した、と。

エージェント・シング: こんなチャンスはもう訪れないと直感が告げてな。機動力を削ぐために、まずは足を狙って全員で狙撃した。[不明瞭な音声]。

ドローミ博士: なるほど……

エージェント・シング: そんで、そこからは……俺らとあいつらの追いかけっこさ。[不明瞭な音声]。三日間くらいか。最初の狙撃の時、足を負傷していたのは確認したから、ジャングルの中を歩き回って、死にかけてたあの二匹を無理やり連れ帰ったってわけさ。

ドローミ博士: ありがとう、シング。状況は理解した。[不明瞭な音声]。

エージェント・シング: ……ああ。頼んだぜ、ドローミ。俺は今から、カバーストーリーを作るにあたってのインタビューを、また受けなきゃならねーらしいからな。

ドローミ博士: 忙しいな、お前も。

エージェント・シング: だがなぁ。オオカミに育てられた、なんて滑稽な話を世間一般の人は信じるもんかね?

ドローミ博士: 信じるさ。いや、信じてもらわなきゃ困る。

[ログ終了]

SCP-1488-JPはエージェント・シングにより、1920年にインド西ベンガル州ミドナプール付近のジャングル内で保護されました。当時、SCP-1488-JPの存在はジャングル内に立ち入った人間により認識され、ジャングル付近の町村に伝承として広まっていました。そのため、カバーストーリー「オオカミに育てられた少女」の策定、実施が行われました。



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SCP財団公式文書
「オオカミに育てられた少女」

前書: 以下のカバーストーリーはエージェント・シング、並びにサイト-19に駐在する研究者たちの合同で策定されました。全職員に対し、このカバーストーリーの遵守が求められます。これは当該オブジェクトが無力化されても変わりません。

カバーストーリーの情報: カバーストーリー「オオカミに育てられた少女」の流布は、23枚の写真とエージェント・シングによる直筆の日記により実施されます。 エージェント・シングの日記には財団直属の地方判事、主教による文面も含まれます。また、十分な知見を持った教授からの進言を受けて、日記を用意してください。

当カバーストーリーの策定背景として、財団の所持している記憶処理技術の未発達、並びにオブジェクトが発見されたジャングル付近の町村内にて、口伝での伝承が広範囲に及んでいる事が挙げられます。

従来のカバーストーリーと異なる点として、当該カバーストーリーは、近い将来一般人により「創作」である事が判明する事を前提に策定されています。そのため、真実性を欠く記述が文書内に散見されますが、それらは全て財団による意図的な物です。

以下は当カバーストーリーの簡易的な概要です。完全な内容については別紙63-エージェント・シングによる考察を参照してください。

  • 1920年10月17日、ミドナプールとモーバニの境にあるゴダムリ村付近のジャングルにて当該オブジェクトを発見。同年11月4日より財団直属の孤児院にて保護を開始する。個体Aを「カマラ」、個体Bを「アマラ」と名付ける。
  • 1921年9月21日、アマラ、腎臓炎で死去。
  • 1929年11月14日、カマラ、尿毒症で死去。
  • 同年内、日記の出版。
  • 実際のオブジェクトの無力化後、もしくは20年後、当カバーストーリーがエージェント・シングによる「創作」である事が判明予定。恐らくその頃には記憶処理技術の進化が見られ、関係者全てに対する記憶処理が可能になっていると推測される。
  • 以後、当カバーストーリーは俗説として扱い、アマラとカマラは脳機能に何らかの障害のある孤児であった、との定着を行う。

当カバーストーリーは1930年12月に仮決定が行われ、1935年11月より正式に当オブジェクトの収容手順として採用されました。

補遺: 以下はドローミ博士の個人的な日記より、当該オブジェクトに関連する情報が記述されていた一部のものを書き起こした文書です。これらの資料は当時の「アマラ」と「カマラ」の様子を知る上で、歴史的価値があるものとして財団内に保管されています。

1920/10/24

あの曝露者二人が、我々に確保されてから一週間が経った。

最初は、あのシングが命がけで回収してきたという興味本位から担当になったが、今になってその選択を私は後悔している。結局のところ、一週間の中であの二体が変わった反応を見せたのは、収容室内に犬用の玩具を放り込んだ時だけであった。それ以外は本当に犬と変わらないような生活を続けている。食べて、遊んで、寝て、食べて、遊んで、寝て。これを鑑みるに、例の、でかいオオカミの異常性は、シングの報告を聞く限りでも自意識の消失等ではないかと考えている。人間としての意識の消失、つまりはその声を聞いた人間は、ただの獣に成り下がる。しかしながら実際にそれが馬鹿にならない事は、目の前の二体が証明している。

ふと睡眠状態にある二体から目を離せば、テーブルの上の冷たく濁ったコーヒーと、昨日の日付が刻まれた新聞紙が目に入る。見出しには大きく、「狼に育てられた少女」、と銘打たれている。どこから漏れたのかは一介の職員である私にはわからないが、いや、旅の人間が土産話とばかりに自国に持ち帰ったのかもしれない。そんなはた迷惑なファッキンストレンジャーのせいで、担当の俺だけならまだしも、シングまで振りまわされるのは勘弁して欲しい。

ともあれ、私としてはそろそろ変化が欲しいと感じる。上に掛けあって反応が見られそうなものの実験許可をふんだくって、実物を用意させてやるのが、個人的な憂さ晴らしにもなりそうだ。

1920/12/29

遂に二体に対して変化が見られた。もううんざりしていた所だったが、どうも適当に収容室内に放り投げた猿の人形をえらく気にいったらしく、その人形を使って遊び始めたのだ。

最初はなんだったか。そう、おままごとのような事をしていた。その猿の人形を誰に見立てているのか、収容室内の椅子に座らせ、じっと何かを待っていた。収容室内に、日に三回ほど与えられる食事が配給されると、片割れ……ああえっと、ややこしいな。何か日記内だけでも、名前を付けておいた方がいいだろうか。暫定的にだが、今はAと呼ぶ。あっちだ。あの、大きい方。が、その食事を猿の人形にぶちまけた。何をしているのか最初はわからんかったが、どうも食事をさせたかったのではないかと、後に床に転がったジャガイモを、Aが人形の口元に手で持っていく姿を見て思った。

だがその後の行動が理解できなかった。Aはその人形を床や壁に叩きつけ始めたのだ。当初はおままごとの延長としての散歩でも行っているのかと思ったが、叩きつけるAの表情や様子を観察すればすぐ違う事がわかった。どうやらAの中では猿の人形は敵になったようだ。自意識はないと思っていたが、このような反応を見れるとは。ただ、さっきまで自分の分の食事を与えていた人形を急に攻撃し始めるなど……ああ、いや、特に珍しい事でもないのか。財団に例えてみれば、彼女の行動はまだ理解できた。

1921/5/17

どうも最近Aの様子がおかしい。ここ一カ月程度、常にBを気遣うような様子を見せている。まぁ、気遣うと言ってもこの前の猿の人形のように食事をぶちまけたり、ぶちまけた食事を手で拾ってBに食べさせている等の行動を示しているだけなのだが。しかしながら、Bは笑って―――ああいや、俺の見間違いかもしれない。とりあえず、抵抗なくそれを口にしている。正直、気味の悪さをも感じる。

ともあれ、俺がする事は今日も変わらない。収容室に向かって、ゴムのボールを一つ、投げ込んだ。

1921/9/21

Bが死んだ。脳のどこかがイカれていたらしい。知っていたが。

それにしてもAは静かだった。Bが死んだというのに興味を示すことなく、ただ収容室内の窓から外を眺めているだけだ。最近は目立った奇行も少なく、飯も盛大にこぼしながらだが、何とか食っている。時々、俺が飯を持っていくと笑うようになったのは、生存本能によるものだろうか。

目立っているわけじゃないが、何故か最近は俺かシングを見るたびに、窓の外を指差した後、手をクロスさせてバツマークを作る事が多くなった気がする。これ自体は前からも行われていた事だが、明らかに頻度が多くなっている。しかし、シングも特に気に留めていないようだし、私も気に留めない事とする。

そうそう、最近、与えている玩具に対して反抗とも思える態度を取り始めた。こちらがボールを投げ込んでも無視をするようになったのだ。
全く、世話の焼けるやつだ。次はどれを試してやろう?

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