SCP-150
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D-13732の脳から摘出されたSCP-150個体、拡大率20倍。

アイテム番号: SCP-150

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 研究のために維持されるSCP-150罹患者はレベル3バイオハザード収容室に収容されます。収容室あたり1体以上の個体は収容されません。SCP-150の培養個体はサイト-42感染性材質研究室にある真空密閉されたガラスのフラスコに収容されています。常に標準的な病原体取扱い手順に従わなければいけません。収容外に存在する全てのSCP-150個体は焼却処分されます。

説明: SCP-150は、ウオノエ(Cymothoa exigua)に似ているものの、その寿命においてヒトとの結合共生関係を形成するように適応した絶対寄生体です。対象となるヒトに接触すると、SCP-150は自らを宿主の肉体に深く埋め込みます。約7日間にわたって、この寄生虫は宿主の体内を掘り進みながら数多くの生理学的変化をもたらします。

最も目立つ変化は、感染部位に一番近い四肢が、キチン質の付加物へ緩やかに変換されるというものです。SCP-150は宿主の肉を消費しながら、移植拒絶反応を引き起こさずに宿主の四肢の機能を置換・増強する組織を排泄します。SCP-150は麻酔物質および免疫抑制物質を分泌し、宿主の体が変化に反応するのを阻止できると考えられています。さらに、SCP-150が排泄する神経組織は宿主本来の神経系と調和することが可能です。プロセスが完了するまでの間に、宿主は運動性を失うことなく影響を受けた四肢の制御が可能になり、多くの場合は体力・反射機能・弾力性に向上が見られます。

1~2週間かけてSCP-150は繁殖し、同化した血管から栄養を補給すると共に、血管内に産卵します1。卵は血流に乗って人体全域に広がります — 大部分は死にますが、コロニーを形成して宿主の身体の残る部位を変化させるのに十分な数が生き残ります。宿主はこのプロセス中に不快感や時折の運動制御喪失を訴えますが、往々にしてこの不快感の原因には気付きません。SCP-150の子孫が空間や資源を巡って競合しない理由や、同化プロセスが身体の細胞シグナル機能に影響を及ぼさない仕組みは未だに不明確です。SCP-150はこの同化プロセス中に繁殖します — 肺が同化すると、より多くの卵が産み落とされ、宿主の咳によって拡散します。この間に10,000個近い卵が産生されますが、別な宿主に寄生できるのは僅かに1%であり、さらにその中の1%のみが宿主の免疫反応を生き残って移植に成功すると推定されます。

SCP-150は不可避的に脊髄や脳を含む中枢神経系の同化と変化を招きますが、宿主の意識と行動は一見影響を受けていないように思われます。SCP-150に感染した人物へのインタビューでは殆ど情報が得られておらず、SCP-150の存在を認識していない感染者は、特定の感覚や機能に変化・改善が生じているとは感じないと主張します。感染を認識している人物は変化の要因を特定できますが、否定的な感情を殆どないし全く示さず、しばしば変化への肯定的反応を見せます。

補遺150-E: 探索的白質切断、および神経組織変換実験の転写

2名のDクラス職員、D-13732とD-016002がSCP-150に感染させられ、全ての感染段階進行を看過されました。感染による完全な影響を調べるため、両名には探索的な脳神経外科手術が実施されました。D-13732には安楽死措置が施されました — 彼の神経組織は小型のSCP-150個体群に完全に置換されていたことが判明しました。彼の脳組織を形成していた個体群が摘出され、D-016002への実験のために保存されました。

続く減圧開頭手術および白質切断手術は、ハーラン・サン博士、ウェンディ・ロビン博士、アレックス・ハーロウ博士によって、D-016002に対して実施されました。完全な転写は以下の通りです。

<記録開始、21:43>

(頭蓋骨への初期穿孔中、D-016002は感覚を麻痺させるための部分麻酔をかけられている。当該プロセスは特に問題なく進行するが、ハーロウは穿孔と骨弁の切断にあたって、頭蓋骨からの抵抗が予想より弱いと報告している。骨弁を除去して硬膜を露出させると、無数の小さなSCP-150個体が、脳が存在すべき頭蓋内腔に横たわっているのが観察される。ハーロウはこれをロビンに報告し、ロビンはプロジェクションマッピングでD-016002の脳の部位を強調しながら、サンにインタビューを開始するように合図する。)

サン博士: 君の名前は?

D-016002: マコ・[編集済]です。

サン博士: 何か座る物の名前を挙げてくれ。

D-016002: 椅子。

サン博士: 草の色は何色かな?

D-016002: 緑です。

サン博士: 1足す1は幾つ?

(D-016002は一瞬沈黙する。)

D-016002: 2です。

ロビン博士: ウェルニッケ野2の凡その位置を区分けしました。

ハーロウ博士: ありがとう、博士。サン、この部位から数匹の標本を除去します。

(ハーロウ博士は注意深く硬膜を切開し、鉗子を使って当該部位から数匹の個体を摘出する。彼は各個体をガラス瓶に入れ、コルク栓をして近くのスタンドに置く。各個体は殆ど生気を示さず、取り除かれている時のみ身動きし始める。このプロセスが約10分間続き、その間サン博士は繰り返しD-016002に同じ質問を続けている。およそ100匹の個体を摘出した時点で、ハーロウは身振りでサンに続けるよう促す。)

サン博士: 何か座る物の名前を挙げてくれ。

D-016002: えっと… えー、席。

サン博士: 草の色は何色かな?

D-016002: 緑?

サン博士: 1足す1は幾つ?

D-016002: …2です。

サン博士: 記録のため述べるが、D-016002の応答は僅かに遅くなっている。これは彼女の頭蓋内腔にいる個体群が確かに神経細胞相当の役割を果たしていることを示すが、各個体がどれだけの神経細胞に相当するかは不明確だ。

ハーロウ博士: 私は今、D-13732から得られた神経組織のサンプルをD-016002に配置しています。D-13732由来の個体群には、後ほど摘出するための区別として放射性発光塗料が付いています。

サン博士: 何か座る物の名前を挙げてくれ。

D-016002: カウチ。

サン博士: 草の色は何色かな?

D-016002: 青。

サン博士: 1足す1は幾つ?

D-016002: 2。

サン博士: 11の十倍は幾つ?

D-016002: 111。

サン博士: D-016002の応答は通常の速度に復帰した。これは、150個の神経組織を拒絶反応なしに宿主個体間で自由に交換可能であることを示唆している。これより最終手順を開始する。D-016002、君に今から全身麻酔をかけるぞ。

(D-016002は、手順開始前の数秒間で全身麻酔をかけられる。)

サン博士: 患者は今、完全な麻酔の影響下にある。ハーロウ博士、組織摘出プロセスを開始してくれ。この最終手順において、我々はD-016002の脳組織を、D-13732のそれと完全に置き換えようとしている。以前行われたD-13732の頭蓋内腔の探査手術で、ハーロウ博士と私は、彼の脳組織と脊髄組織を接続している個体群がいかなる形でも固定されておらず、それどころか脳内にいる他の個体と場所を入れ替えているように思われる様子を観察した。この親和性の範囲がどの程度まで拡張するかを見ていく。

(以後1時間は沈黙が続く。ハーロウ博士、サン博士、ロビン博士はD-016002の頭蓋骨の頂点を除去し、彼女の脳組織を大型のガラス容器に摘出し始める。)

サン博士: 摘出完了。D-016002の脳組織の除去に成功した。ハーロウ博士が今、D-13732の脳組織を、D-016002の露出した頭蓋内腔に配置している。

(数分間の沈黙。)

ロビン博士: 心拍数は安定しています。脈拍、呼吸アリ。もう1分ください… よし。彼女を起こしますよ。

(合間。ロビン博士が麻酔の量を減らし、D-016002が目覚める。)

サン博士: 君の名前は?

D-016002: マイケル・[編集済]3

ハーロウ博士: (背後からの微かな声) そんな。

サン博士: 何か座る物の名前を挙げてくれ。

D-016002: ビーンバッグ。

サン博士: 草の色は何色かな?

D-016002: 緑。

サン博士: 1足す1は幾つ?

(何かを掻き回すような静かな音がマイクに捉えられる。)

ロビン博士: ねぇ、ちょっと、サン —

D-016002: 2だ。

ロビン博士: サン、見て。

(D-016002の脳が自律的に動き、微かに前後に揺れているのが見える。)

ハーロウ博士: これは… 新しいですね。

サン博士: 身体のどこかに痛みを感じるかな?

D-016002: 胸が何だか重い。それ以外は同じように感じるね。

サン博士: それは良かった。では—

D-016002: なぁ、俺は普段かなり活発なほうだし、手術の前でもそうだったよ、でも今はちょっと疲れてる。近頃は寝る前に運動してるけど、ここじゃそうもいかないしさ、少しぐらい休んでもいいだろ?

サン博士: 休む?

D-016002: 3分、いや5分ぐらい、もし良ければここで休む。 (D-016002の脳の頂点にある小さな一部が分かれ、ゴボゴボと音を立てる。問題の部分が閉じた後、D-016002の脳の部位は急速に収縮する。D-016002の目が閉じる。)

サン博士: あまり良くはなさそうだ。 (ロビン博士が手術台から離れ、えずきながら退室する。)

ハーロウ博士: D-016 — いや、D-13732、大丈夫ですか?

D-016002: ああ。 (欠伸) 俺は元気だよ、何でわざわざ訊くんだ?

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