SCP-1532-JP
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アイテム番号: SCP-1532-JP

オブジェクトクラス: Safe Neutralized Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1532-JPを録音した記憶媒体や実験記録等の資料はサイト-8181内の標準的な収容ロッカーに保管されます。貸与や視聴を希望する場合にはレベル2クリアランス以上を所持する職員2名以上の立会いと所定の手続きが必要です。
新たなSCP-1532-JP-1を発見した場合にはインタビューを行なった上でクラスA記憶処理を実行して解放するか、財団のフロント企業施設に収容します。

  • 2018/05/██追記: SCP-1532-JP-2については現在詳細を調査中です。SCP-1532-JP-1と同等の性質を持つ可能性があることから暫定クラスとしてEuclidを適用し、特別収容プロトコルもSCP-1532-JPに順ずるものとして扱うようにしてください。

 
説明: SCP-1532-JPは1927年~1935年の間でラジオを視聴していた人物のごく一部(以降、SCP-1532-JP-1と表記)の記憶にのみ存在する歌謡曲です。1人が記憶するSCP-1532-JPは数秒程度のメロディのみであり、これまでの調査ではSCP-1532-JPを完全に記憶しているSCP-1532-JP-1は確認されていません。
 
SCP-1532-JP-1は平時にはSCP-1532-JPについて意識することはありませんが、何らかの理由によりSCP-1532-JPの一部を耳にした瞬間、自身が記憶していると認識するSCP-1532-JPを"想起"してその場で小声や鼻歌によってSCP-1532-JPを唱歌します。この想起現象は数秒が経過した時点で自然に収束し、想起されたSCP-1532-JPはクラスA記憶処理によって容易に除去が可能です。これまでに言語や文章、単語として特定可能な歌詞を唱歌したSCP-1532-JP-1は存在せず、歌詞の代わりに曖昧なメロディを口ずさむに留まります。想起現象以外の影響について特筆すべき異常性は確認されませんでした。

想起収束後のSCP-1532-JP-1へのインタビューでは、「SCP-1532-JPをいつどこで耳にしたのか」という問いに対してはほぼ全ての対象者が異なる回答を行っており、追跡調査でもSCP-1532-JPの発生源に繋がる情報は得られませんでした。「どのような曲であったのか」という問いについても「軍歌」「大衆歌謡曲」「童謡」といった回答が得られており特定には至っていません。財団ではこれまでに531名のSCP-1532-JP-1を確認しており、1997年まではクラスA記憶処理を実行後に解放していましたが、SCP-1532-JP-1の可能性が疑われる世代の高齢化が進んだことで保護の必要性が認められたため1998年以降はフロント企業である介護老人福祉施設に収容する方針に変更されています。

1998/██/██: 当時収容中だった323名のSCP-1532-JP-1を用いて連鎖的に想起現象を引き起こすことでSCP-1532-JPの全容を解明するための実験を行いましたが、最長でも1分41秒の記録に留まっておりSCP-1532-JPの完全な復元には成功していません。

1999/██/██: 財団が保有する敷地内でのみ受信可能なFMラジオ通信にてSCP-1532-JPの感染実験が行なわれましたが、新たなSCP-1532-JP-1の発生は確認できませんでした。実験では1分41秒の再現記録に加えて現代の最新の音楽理論を用いて欠落部分を補った音源が使用されましたが、再現が不正確であるかSCP-1532-JPの感染に必要とされる経路にラジオ電波が含まれていないことが推測されています。

インタビュー記録 - 1999/██/██

対象: SCP-1532-JP-11

インタビュアー: エージェント・篠原

付記: エージェント・篠原はフロント企業「シルバー・ケア・プロバイダーズ」に収容中の対象に対して、介助施設職員を装ってインタビューを行いました。

<録音開始>

エージェント・篠原: [編集済み]さん、[編集済み]さん!

SCP-1532-JP-1: はーいー?

エージェント・篠原: あっ……。補聴器、落っこちてますよー!着けますねー!

SCP-1532-JP-1: あらー。ごめんなさいねぇ。

エージェント・篠原: 今日は音楽のテープを借りてきたんです。前に聞いたことがあるって言っていたでしょう?

SCP-1532-JP-1: あらー。どうだったかしらねえ……。最近は物覚えが悪くって。やーねー。

エージェント・篠原: ……それじゃあ、流しますね。

[エージェント・篠原が携行していたラジカセを使用してSCP-1532-JPの欠落部分を補った再現音源を再生]

SCP-1532-JP-1: [約42秒間沈黙。再生開始後42秒~48秒にかけてSCP-1532-JPの想起現象が発生し、小声でメロディを口ずさむ。その後、再生終了まで沈黙]

エージェント・篠原: どうでしたか?覚えてますか?

SCP-1532-JP-1: 懐かしいわぁ。どこで聞いたのだっけ、この曲。放送局で働いていた時かしら……?

エージェント・篠原: 放送局ですか?

SCP-1532-JP-1: そうよ。あなたくらいの年の頃に、5年間だけラジオの放送局で働いていたの。あの頃はまだラジオもそんなに出回ってなくてね。家で聞けないから職場で聞いてたのよ。

エージェント・篠原: この曲の名前は憶えていますか?

SCP-1532-JP-1: 何だったかしらね……。確か……ええっと……。駄目ね、思い出せないわぁ。あの時の人気の歌手さんが歌ってたような覚えがあるけれど、歌詞ももう忘れてしまったわ。

エージェント・篠原: そうですか……。

SCP-1532-JP-1: ごめんなさいねぇ。他の事は思い出せたのだけど。お爺さんと出会ったのもラジオの放送局がきっかけだったのよウフフ。あれは雨が降ってた日の夕方だったかしら[以後、関係の無い話が10分以上継続]

エージェント・篠原: ……インタビューを終了します。

<録音終了>

再現されたSCP-1532-JPはあらゆる音楽記録と一致しないことから、現在の研究では限られた条件で感染・発症して記憶影響を及ぼす一種のミームであると推測されています。財団の調査過程においてSCP-1532-JPによる二次汚染は発生していないことから、伝染性は通常成立しがたい特殊な条件でのみ発揮されるか、極めて低いか、または皆無であると評価されています。

2000/██/██: 財団が確保していた最後のSCP-1532-JP-1が収容先のフロント企業施設内で死亡しました。解剖の結果老衰死と判明し、異常性が無いことを確認したため遺体は遺族に引き渡されています。1997年以降、財団は新たなSCP-1532-JP-1を確認できていません。

2004/██/██: Neutralizedクラスへの再分類が決定されました。
 
 
補遺: 2018/04/██、1970年~1980年代に日本国内でテレビ番組を視聴可能であった世代の一部(以降、SCP-1532-JP-2と表記)の記憶にのみ存在する何らかの歌謡曲の存在が報告されました。
 
 
インタビュー記録 - 2018/04/██

対象: エージェント・山田

インタビュアー: エージェント・大河原

付記: エージェント・大河原がSCP-1532-JP関連記録の保守点検のために録音音源を再生していたところ、近くを通りかかったエージェント・山田が反応を示したことからインタビューを行いました。

<録音開始>

エージェント・大河原: よし、録音を開始した。……インタビューを始める。

エージェント・山田: えーと、大河原さんがオフィスで聞いてた"あの曲"のことでしたっけ?

エージェント・大河原: そうだ。聞いたことがあるような素振りをしていたが、ここで詳しく聞かせてほしい。

エージェント・山田: そんなに大げさにするものだったんですか、あれ。……えーと、あの曲は確か僕がまだ学生だった頃2にテレビで流れてた曲だったと記憶しています。

エージェント・大河原: テレビ? ラジオではなく?

エージェント・山田: はい、テレビです。確か、[編集済み]でやってた番組だったっけなぁ。番組名までは覚えていないんですが。

エージェント・大河原: 誰が歌っていたか、とか、曲のタイトルとかは覚えているか?

エージェント・山田: うーん……。流石に昔の事なので、あんまり覚えてないんですよね。歌ってたのは女性……いや、男性だったかなぁ……。すいません、分かりません。

エージェント・大河原: そうか……。

エージェント・山田: 僕も、大河原さんが聞いていたのが耳に入ってきて初めて思い出したくらいですから。何年前でしたっけあれ。懐かしいなぁ。

エージェント・大河原: 他に何か覚えていることはあるか?

エージェント・山田: [約30秒の沈黙]……いえ、それ以外はさっぱりです。

エージェント・大河原: 分かった。……インタビューを終了する。

エージェント・山田: あ、はい。でも大河原さんも、あんな曲を聞くだなんて意外ですね。

エージェント・大河原: あんな曲?

エージェント・山田: アニソン3ですよ、それ。

<録音終了>

 
2018/05/██: インタビュー結果を踏まえて調査を開始したところ、少なくとも500人以上のSCP-1532-JP-2が存在する可能性があると判明しました。集められた情報からSCP-1532-JPとの関連性が強く疑われるものの、曲の一部に違いがあるという証言が共通していることから現在も慎重に調査が進められています。全財団職員に対するヒアリングテストの実施は審査中です。
 
合わせてSCP-1532-JP-1以前にも同様のオブジェクトが存在していた可能性が指摘されているものの、現存する音楽媒体自体が少ない等の理由から調査は難航しています。現在は文献捜索を中心に調査が進められています。

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