SCP-1564-JP
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アイテム番号: SCP-1564-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1564-JPは標準的な植物生育用セルに収容され、育成・管理は園芸種の薔薇を育成した経験のある職員によって行われます。SCP-1564-JPとの接触の際はSCP-1564-JPの棘が刺さらないようEクラス防護スーツを着用しなければなりません。SCP-1564-JPの種子はおおよそ200個程度を目安に保管され、それ以上は焼却によって破棄されます。

説明: SCP-1564-JPは吸血機能を持つ異常なバラ科の植物です。花の形状はバラ(Rosa)の園芸品種であるマイガーデン種に類似しており、花弁の色は通常白色もしくは薄い桃色です。一方で花以外の形状については、つる性の低木であることや花のつき方から、ノイバラ(Rosa multiflora Thunb.)との類似が指摘されており、実際にDNA検査の結果SCP-1564-JPはマイガーデン種よりノイバラに近い塩基配列を有することが判明しています。

SCP-1564-JPは茎に棘1を有しており、SCP-1564-JPはこの棘を用いて吸血を行います。特定の生物2がSCP-1564-JPの棘と接触し出血した場合、SCP-1564-JPは棘を通して対象の血液を吸収します。吸血は棘が有するパイプ状の組織を通して行われますが、この組織には小さなポンプ状の組織が無数に接続しており、吸収の際には非常に強力な吸水力が維持されます。棘が本体と分離していない場合、血液はSCP-1564-JP本体の成長に用いられ、SCP-1564-JPは吸収された血液量に比例して非常に速い速度で成長します3。通常、1個体から吸血される量は50 ml以下に抑えられ、それ以上は棘が血液に接触していても吸血されません。ただし、吸血量は対象が強いストレスを感じているほど4、またSCP-1564-JP本体が成長しているほど上昇することがわかっています。また、一定期間に大量の吸血を行った場合、SCP-1564-JPの花は巨大化する傾向にあるほか、花弁の色は徐々に赤色が強くなり、限界まで赤色に染まった後は花弁の色の明度が少しずつ低下していきます。

吸血の際、SCP-1564-JPは棘内に貯蔵されているいくつかの物質の混合物5を対象の血液中に放出します。この混合物は対象に低度の酩酊感、多幸感、鎮痛作用をもたらします。これは対象のSCP-1564-JPの吸血に対する抵抗を抑える働きがあると考えられています。

SCP-1564-JPの種子は直径5 mmほどの球体で、開花した花弁の付け根から生成され、花弁の隙間から地面に落下します。内部構造は種子というよりむしろ球根に近いものであり、SCP-1564-JPが種子の生成に交配を必要としないことから、この種子の生成は栄養生殖の一種であると考えられています。種子は水溶性の未知の毒素を有しており、種子が落下した周囲に存在する植物はこの毒素6によって衰弱もしくは枯死します7。種子の色は種子が生成された花の色と同色になり、この色の赤みが強いほど、また明度が低いほど毒素は強力かつ広範囲に影響を及ぼします8。赤色の強さと明度の低さはSCP-1564-JPの吸血量に依存するため、この毒素はSCP-1564-JP本体内部で血液を原料として生成されていると考えられています。

SCP-1564-JPの本体から切り離された棘はおおよそ2時間以内に崩壊しますが、崩壊前の棘には吸血作用及び前述の混合物の放出作用が残存しています。本体から切り離された棘単独での吸血の場合、吸血の限界量は10 mlほどです。吸血の限界量に達した場合、棘は徐々に変形し直径5 mmほどの黒色の球体に変化します。この球体は前述の種子とほぼ同様の構造を持ちますが、毒素は有していません。この事実は毒素が棘ではなくSCP-1564-JP本体で生成されているという仮説を裏付けています。

回収記録: SCP-1564-JPは千葉県南部に位置する██学園高校において、当該教育施設に勤務する教員による警察への通報をきっかけに発見されました。通報後速やかに初期収容部隊が派遣されましたが、SCP-1564-JPが内部全体を覆っており探索が困難だったため、現地でDクラス職員を用いたいくつかの実験の後、機動部隊は-7"庭番Guardener"9が改めて派遣されました。以下はその記録です。

探査記録

<記録開始>

リコリス: こちら機動部隊"庭番"第3班班長、隊員番号マルマルフタ、コードネームはリコリス。当該施設への潜入した。潜入班のメンバーは私の他に、マルマルヨンのニンファ、マルヒトサンのアドニスの合計3名。

アドニス: 外から見た分には異常事態なんて起きていないように見えましたが、中に入ってみると酷いですね。棘の生えた蔓でびっしり。後は黒い薔薇ですか。地面には張り巡らされたツタの間に黒い種子がたくさん落ちていますね。棘はさすがにHAZMATスーツを傷つけるまでに鋭利ではないようです。

ニンファ: 外でスーツを着る前に香った強烈な芳香、なめらかで厚みのある花弁。昔ハイブリッド・ティー系で似たものを見た気がしますが……

リコリス: 他にわかることは?

ニンファ: ツルはノイバラに似ていますね。ノイバラと同じ性質ならば、どこかに発生源があるはずです。発生源を回収したところで、他のところから根が生えるだけかもしれませんが。

リコリス: わかった。ではとりあえず発生源を探ることにしよう。校舎には生徒と教員がまだ存在しているとのことだ。後から救助隊が入ってこれるように地面のツルを処分しながら行くぞ。

ニンファ: 生存者がいるならば特殊除草剤の散布は控えることにしましょう。多少手間ですが、切断と加熱処理がいいでしょう。一応確認しますが、今回の目的は?

リコリス: この事態を引き起こしている元凶の確保だ。

ニンファ: 了解です。

[中略]

アドニス: 班長、教室があります。生存者がいるかもしれません。

ニンファ: 優先すべき事項ではないでしょう。ツルを見る限り、ここが張り巡らされたツルの根源ではないように思えます。

アドニス: しかし……

リコリス: ニンファ、確かにここは根源ではなさそうだが、被害状況も知っておく必要があるだろう。被害状況からわかるアノマリーの特性もあるかもしれない。これは任務の成功を確実なものにするだろう。アドニス、扉のツルを切断して扉を開けてくれ。

アドニス: 了解です。ありがとうございます。

[電動器具を用いてツルを切断する音と、扉が開く音]

アドニス: これは、酷い……

ニンファ: 人がツルに覆われていますね。ここの集団で固まっている女子生徒たちはまだ生きているようです。そこの椅子に座っている男子生徒も息がありますね。

リコリス: 教室の隅に一人でいたこの生徒は助からなかったようだ。

アドニス: そこの教室の扉を押さえつけたままツルに覆われている男性も脈がありませんでした。教員でしょうか。生徒を助けようとしたのに……

ニンファ: 一通り確認が終わりました。教室内に存在する生徒は35名、教員は1名ですね。そのうち生存者は生徒34名です。症状から、その全員が貧血状態にあると予想されます。

リコリス: わかった。もう吸血は行われていないようだが、一応生存者のツルは外し、外で待機している救助隊に連絡を入れておこう。しかし、あまり有益な情報は得られなかったな。以降の教室は救助隊に任せ、我々はこのツルの発生源の捜索を急ぐ。いいな?

アドニス: ……了解です。

ニンファ: 了解。

[中略]

ニンファ: どうやらここが発生源のようです。すごい量のツルですね。

アドニス: 女子トイレですか。男子トイレでなくてまだよかったですね。

リコリス: 良いも悪いもない。任務に我々の性別は関係ないだろう。ツルを切断して突入するぞ。

ニンファ: 了解です。

[ツルを切断する音と扉が開く音]

ニンファ: 個室のドアが1つ開いていますね。その前に3人倒れています。3人とも生存しているようです。

リコリス: 地面には紙袋が落ちているな。あとは陶器の破片が散らばっているようだ。

ニンファ: 個室内部には1人いますね。……いえ、よく見ると2人です。1人がもう1人の上に覆いかぶさっています。上の生徒10の脈はありませんが、下の生徒はまだ息をしています。

アドニス: 下の生徒の腕にはツルが巻き付いていますが、上の生徒がそれを途中で引きちぎっていますね。それでこの子は助けられたみたいです。……上の生徒はダメだったようですが。

ニンファ: 近くには割れた鉢植えと鉢植えに入っていたとみられる土が積もっていますね。あと、白いバラの花が一輪だけ落ちています。どうやら発生源はここのようです。

リコリス: 陶器の破片は鉢植えの破片か。それでは他のツルとこの部分を切断して発生源を回収しよう  

[硬質で軽いものが地面とぶつかるような、パラパラとした音が連続的に響く]

ニンファ: うっ、なんですかこれ。花弁の隙間から黒い種子がたくさん降ってきました。

リコリス: 今連絡が入った。入り口で救助隊の1人が失敗して棘に直接接触したそうだ。命に別状はないがかなり吸血されて意識を失ったらしい。こちらには特にこれ以外に影響はないだろう。この種子の雨も吸血による一時的な反応なら、直に降り終わるだろう。

ニンファ: 了解です。アドニス、なにぼんやりしているんですか?

アドニス: えっと、あの……

ニンファ: なんですか?

アドニス: あのこれ、まるで花が泣いているみたいな、そんな風に見えませんか?

ニンファ: え、ああ…… そうですね。確かにそうも見える、かもしれない。

リコリス: 降ってくる種子の量が減ってきたようだ。はやいところ対象を回収して撤退しよう。

<記録終了>

その後の調査によって、校舎内にSCP-1564-JPを持ち込んだのは女子トイレの個室内で池田南氏に覆いかぶさるようにして死亡していた須田詠美氏であることが判明しました。須田詠美氏の自室からは、切り離された棘から生成されたとみられる大量のSCP-1564-JPの種子と、以下の文章が発見されています。

今回は夜宵園芸をご利用くださり、誠にありがとうございます。

お買い上げ頂いた薔薇は、同時にお買い上げいただいた鉢植えに植えて丁寧に育ててあげてください。お手入れは水やりだけで十分ですが、丈が伸びすぎた場合は適宜剪定してください。また、園芸用手袋などを利用し、直接お手を触れないようお気を付けください。

また、棘を利用される際は必ずツルから切り離したものを利用してください。くれぐれも、ツルから切り取っていない状態の棘に直接触れることがないようにお願いします。

この子はお客様のためではなく、自身が生きるためにこの性質を獲得しました。ですから、この子のことを便利な道具と同じように考えることは思わぬ事故につながる恐れがあります。この点をお忘れないよう宜しくお願いします。

※この商品はいつも御贔屓にしてくださっております須田様のために特別にご紹介させていただいた商品です。くれぐれも周囲には公言しないようよろしくお願いします。

インタビュー記録: 以下は事件の全体像をつかむため、池田南氏に対しておこなわれたインタビューの記録です。

インタビュー記録

対象: 池田南

インタビュアー: ██研究員

付記: 池田南氏は██研究員をカウンセラーとして認識しています。

<録音開始>

██研究員: それでは、思い出すのがつらいかもしれませんが、事件の様子を聞かせてください。

池田南氏: 先生、本当にこれ、治療のためなんですよね? 話せばきっと楽になれるんですよね?

██研究員: はい、もちろんです。治療のためにはトラウマの原因となっているものを自分でしっかりと認識する必要があるのです。ゆっくりでいいですから、お聞かせ願えますか?

池田南氏: わかりました。えっとあの日は、3人11に言われて、私は詠美がいるトイレに行きました。詠美に紙袋の中身を見せてもらうためです。

██研究員: 3人は詠美さんがトイレに紙袋を持ち込むことを知っていたのですか?

池田南氏: はい。詠美は昼休みになると、毎日そうやってこっそり紙袋を持って教室を出ていくんです。あの3人はそれを見て、あの紙袋の中には、なんというかその、大人のおもちゃが入ってると思ったみたいです。それで、自分たちが言っても見せてはくれないだろうから、私に言ったんだと思います。

██研究員: その3人は詠美さんと仲が悪かったのですか?

池田南氏: 住んでる世界が違うんです。あの子たちは上、私や詠美は下の人間です。あの子たちは冗談とか、いじってるつもりだったと思います。でも、いじられてる本人からすれば、そんな生ぬるいものじゃないんですよ。

██研究員: なるほど。それで、トイレに着いた後はどうなったんですか?

池田南氏: 私が声をかけると、詠美はすぐ個室から出てきました。しかも満面の笑みで。でもすぐに3人がいることに気が付いて、トイレの個室に逃げ込もうとしました。でも、私は詠美が閉めようとする扉を止めて、無理やり彼女から紙袋を奪い取ろうとしました。そしたら、勢い余って紙袋が飛んで、中から出てきた鉢植えが割れました。私はそこに白いバラが生えていたので、それを無我夢中で掴みました。そしたら棘に刺さって、ツルが巻きついてきて…… それ以降は覚えていません。

██研究員: そこまでするということは、あなたは詠美さんと仲が悪かったのですか?

池田南氏: わからないです。昔はよく遊びましたが、私は詠美を捨てたんです。あの子が上の層の子たちにいじられるようになってから、巻き込まれるのが怖くて、私はなんとなく詠美を避けていました。上の子たちはそんなこと知らないでしょうけど。でも嫌いではなかったんですよ。

██研究員: ではなぜ、3人の誘いに乗ったんですか?

池田南氏: チャンスだったんです。私はいつも、上の人間になりたいと思っていました。もしかしたら、今回うまくやれば上の人間になれたかもしれないんです。まあ、もともと断る権利なんて、私にはなかったのかもしれませんが。

██研究員: なぜ、そうまでして、あなたは「上の人間」になりたいと思ったのですか?

池田南氏: いつも得をするのは上で他人を傷つける人たちです。私、見たんですよ! この事件で死んだ人たちの名簿。みんな私と同じ、下の人間です。陰キャとか、ぱっとしない担任とか、クソオタクとか。いつもそうです、苦しむのは下の人間なんですよ!

██研究員: 少し落ち着いてください。深呼吸をして  

池田南氏: 私はチャンスをつかむために、詠美を犠牲にすることにしたんです。それで、生き残ったってことは、もう私も上の人間だってことですよね? 喜んでいいんですよね? なんでこんなに苦しいんですか? ……あの子たちはいっつも、あんなに楽しそうなのに。

<録音終了>

終了報告書: 池田南氏は事件に関する記憶処理が施されたうえで解放されました。

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