SCP-1573-JP
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アイテム番号: SCP-1573-JP
 
オブジェクトクラス: Euclid
 
特別収容プロトコル: SCP-1573-JPは中型規模実体収容規格の施設内に安置した状態で地下に収容してください。収容室内への立ち入りは原則禁止とし、担当管理チームであっても、最低1名の日本支部理事の承認と、管轄サイト管理官の承認によってのみ入室が許可されるようにしてください。
SCP-1573-JP内部には9台の監視カメラを常設し、内部への侵入者の有無についてリアルタイムでの監視を維持してください。更に、収容室内には4基の熱源感知システムを設置し、SCP-1573-JPの外部からの監視を行ってください。
 
SCP-1573-JPを用いた異常性の実験は、現在準備が進行している「実験-1573-20年」を除き無条件で却下されます。SCP-1573-JPは最低でも20名規模の機動部隊一部隊で警備を行い、万一の侵入を警戒してください。
SCP-1573-JPの外観または位置に関連する情報は非公開機密とされています。本報告書からは、それらに類する記述を削除してください。
 
現在、SCP-1573-JPはサイト-8156管轄のセクター0017施設内に収容されています。専任の機動部隊は17-e38"留守番"が担当しています。
 
説明: SCP-1573-JPは[編集済]に存在する家屋です。[編集済]。SCP-1573-JPの異常性はその内部で一名の人物(以下「基準者」と表記)が45日間以上連続して生活した際に発生します。基準者が日常的に帰属している組織ないしコミュニティグループの中で、最も対象に意識された集団のうち28名以上の人物が属するグループがSCP-1573-JPの異常性の対象とされます。
対象のグループに28名以上の人物が属している場合、その28名以上の中で、45日間に最も嫌悪感もしくは憎悪、敵愾、排斥の欲求を受けた人物はその後4日以内に事故死します。
事故死する犠牲者は必ずしも基準者と直接関係している、あるいは面識のある者が選出されるわけではなく、グループに所属していると言えるかどうかという判断にはSCP-1573-JP独自の判定方法があると考えられています。
犠牲者の事故死より1日以内に、SCP-1573-JPは再び45日間の選出期間に入ると思われます。
 
SCP-1573-JPによる事故死はどれも不可解な状況の下で引き起こされますが、それ自体に特別な異常性は無く、現実改変の兆候も見られないため、統計的に有意とされる事例が累積されるまで、異常性が一般社会に曝露し続けていました。
結果として、不可解な状況の事故が定期的に発生し続けたため、その共通点である███████社について調査した所、SCP-1573-JPの居住者であり基準者であったB氏が自主的に申告を行いました。
B氏の申告と証言は、その後の███████社員全員に対する中期間の精神鑑定と聞き取り調査によって裏付けられましたが、実験による実証には未だ至っていません。
しかしながら、SCP-1573-JPの異常性が統計的、心理学的には認められる点と、安全性を確保した実験を行うまでに長期間の準備を要すると推測された点と、他の異常存在の関与が認められなかった点が考慮され、収容が行われました。
現在「実験-1573-20年」が準備中です。詳細については"17年目計画"に問い合わせてください。
 
基準者B氏へのインタビュー記録: SCP-1573-JPの持ち主であった基準者B氏に対するインタビューの抜粋記録です。B氏は███████社員であり、SCP-1573-JPの異常性によっては14名が死亡していました。
 

対象: B氏

インタビュアー: █博士

付記: B氏に対して正式手順では1回目のインタビューの一部記録である。事前の聞き取りと裏付けによって、SCP-1573-JPの異常性自体は当時すでに定義されている。

<記録開始>

█博士: それでは始めましょうか。まずは、あの物件にはいつ頃から住んでいましたか?

B氏: [削除済]からですので、大体1年と7ヶ月か8ヶ月間ぐらい住んでいたと思います。

█博士: どういった経緯であそこに住み始めたのでしょう?

B氏: 実は、前宅のマンションが火事で焼けてしまいまして、オーナーと管理会社から補償はあったのですが、新しい家を探さなきゃならなかったんです。緊急的な指揮をする可能性のある管理職となりますと、会社からも近くないと──

█博士: 会社とは、███████社のことですね?

B氏: はい、そうです。その近くということで不動産屋を回っていましたら、[編集済]の不動産屋でいい物件を紹介してくれる人に会いまして、かなりの事故物件でいいなら格安で譲れるという話でした。場所も申し分なかったので、とりあえず見てみようとなりまして。

█博士: その人物の特徴は?

B氏: あー、いえ、特にこれといったようなものは。紺色のスーツで銀縁の眼鏡の、サラリーマン風で30代から40代の、真っ当そうな男性でした。だから怪しい話にも、とりあえず聞くだけは聞いてみようという気になってしまったのかもしれません。

█博士: 後ほど似顔絵作成に協力して頂きたいのですが、構いませんか?

B氏: はい。

█博士: ありがとうございます。お話の続きをお願いします。

B氏: 実際に物件を見に行ってみましたら、[削除済]それでまあ、興味本位で、事故物件という話だったがどういう事故物件なのかって聞いてみたら、「人を食う物件なんですよ」なんて答えまして、まあふざけてるななんてその時は思いました。

█博士: その時、どのような説明を受けましたか? 詳細にお願いします。

B氏: 家が人間を飼い慣らして、関わった全員の心を食い続ける。事故に遭ってほしいと願われた時、それが起こる、これからもそうするだろう、なんて言われました。でも変な所は全くありませんでしたし、壊れや傷みもなくて、壁紙の裏にお札がベッタリ、なんていうのも無かったので、それでむしろ気になりまして。おかしいですよね? 事故物件だと言って実際に格安であるのに、その原因になるような要素が全然見つからなかったんですから。

█博士: それでも、その物件を買いましたね?

B氏: はい。仮住まいから早く引き払いたかったですし、利便性も申し分なかったので。

█博士: 異常にはいつ頃気付かれましたか?

B氏: おかしい、と気づいたのは大体5ヶ月ぐらいが経った頃でした。その時にはもう2件の事故が起こっていたんですが、3件目の事故で総務のTさんが亡くなって、その事故の原因がとても奇妙だったという話を聞いて、少し調べてみたんです。

█博士が事故の資料を広げて読み始める。

█博士: 1件目は被害者が自宅で食卓に手をついて立ち上がろうとした際、卓上に放置していた爪楊枝の後端を叩いてしまい、飛び上がった爪楊枝が被害者の左目に刺さる。痛みと驚きのあまり転倒した際に脳まで達し死亡。2件目はエスカレーターで移動中、前でフルーツ牛乳を飲んでいた者が手を滑らせ被害者の口に多量のフルーツ牛乳が入り、キウイと生乳とパインのアレルギーだった被害者はアナフィラキシーショックで死亡。3件目は窓を開けて車を運転していると、突然石が飛んできて頭部に命中し死亡。石はビルの12階から道路工事現場に落ちてきた鉢植えが弾き飛ばしたものでした。

B氏: はい [3秒沈黙][顔を手で拭う] その時に、あの人の言葉を思い出しまして、ひょっとしたら、と思うようになりました。ただ、亡くなった3名はそれぞれの部署でも有名な鼻つまみ者だったらしくて、飲み会の席でそういったよくない噂や話を聞きはしても、不安がったり不気味がったりしている人はあまりいないようでした。不幸な事故だったね、みたいな感想を聞くばかりでした。

█博士: その時点では疑惑の域を出ていないように思われますが?

B氏: 4件目が起きて、確信に変わりました。私の部下で、私よりも年上のベテランだったDさんが亡くなったんです。彼はパワハラ行為で何度も勧告を受けていて、私も彼を異動させるよう手続きをしているところだったのです。その時の空気を、同じ部署で直に感じ続けていたから、はっきりわかったんです。

B氏が俯いて目を右手で覆う

B氏: 今でもよく憶えています。忘れられません。Dさんの葬式での、皆のあの表情。事故の真相に気づいた私だけがそれを分かったのだと思いました。

█博士: それは何ですか?

B氏: 結局、誰もが事故を望んだのです。

<記録終了>

終了報告書: B氏は軽度のうつ状態にある。しかしながら、置かれた状況からくる心理的負担を鑑みた場合、非常に進行は軽度であると思われる。当該異常存在について、恐れを持ちつつも受け入れているように見え、極めて冷静であると言える。

 

対象: B氏

インタビュアー: █博士

付記: B氏に対して正式手順では3回目のインタビューの一部記録である。2回目のインタビューはSCP-1573-JPを販売した人物の似顔絵作成のための聞き取りと、B氏の個人情報についての詳細な尋問が主であったため本報告書では完全に割愛する。完全版は暫定的な研究チームである"17年目計画"が管理する。

<記録開始>

█博士: ███████社の社長の死についてはどう思いましたか?

B氏: 本当に怖かったです。夜も眠れなくて、いつでも心臓がドキドキしているようで、私が殺したのだろうかと思いました。私があの家に住んでいるから、5人も死んだんだと。そんな馬鹿なことがあるはずない、そんな異常なことが起きているはずがない、ただの偶然で私は気にしすぎだ、と自分に言い聞かせながら過ごしていました。

█博士: その時点で、転居等は考えませんでしたか?

B氏: 当然、考えました。でも、やっぱり気にしすぎなように思えたんです。それに、もし本当にこの部屋があの人たちを死なせたんだとしても、それは私がやったことじゃない。この部屋と、大勢の人々がそれを望んだんだ。誰一人としてそうだと気付かないうちに、数百分割させた処刑用のボタンをそれぞれがうっかり足で踏んでしまっただけなんです。

█博士: しかし、あなたが住まなければ事故は起きませんでした。

B氏: そうは言い切れないです。事故は事故ですから。それに、それぞれが弱い気持ちだったかもしれませんが、あの人たちに対して多くの人が「いなくなればいい」と考えていたのは事実だったんだと思います。それに、引っ越してもまた新しく別の人が入るだけなんじゃないか? とも思いました。

█博士: なるほど。あなたは、ご自分のことをどうお考えになっていましたか?

B氏: どういう意味でしょうか?

█博士: 失礼しました、質問を変えさせて頂きます。いつ頃から、そのように考えるようになりましたか?

B氏: いつごろ [3秒沈黙][考え込むようなそぶりを見せる] というのは、特に感じませんでした。決定的なきっかけがあった、とは言えないと思います。なんだか、今話しながら、当時の漠然とした考えをまとめているような気持ちなんです。

█博士: わかりました。それでは今日はこれまでにしましょう。

<記録終了>

終了報告書: B氏が当該異常存在の異常性を知りながら、居住を継続した動機について、今回のインタビューでの発言内容からでは弱いように感じられる。はぐらかされたようにも思えたため、次回までには時間を置いて、実際の動機に関係する当該異常存在の情報を引き出したい。

所感: B氏が異常存在の基準者として、謎の人物に選ばれた理由が何とはなしに分かってきたような気がする。 ──█博士

 

対象: B氏

インタビュアー: █博士

付記: B氏に対して正式手順では4回目のインタビューの一部記録である。前回のインタビューより36日間時間を置き、その間B氏はサイト-8156にて抑留されていた。

<記録開始>

B氏: あの、いつごろ出られるんでしょう。

█博士: 煩わせてしまい申し訳ありません、Bさんの証言内容に基づいた調査がこれまで立て込んでいまして。聞き取りは今回が最後ですので、これが終わったら帰っていいですよ。

B氏: よかった。ありがとうございます。

█博士: それと、こちらの質問への回答以外での発言はお控えください。記録の参照性に問題が出ますので。

B氏: はい。

█博士: それでは、図らずも前回から期間が空きまして、考えをまとめる時間が出来ていたと思います。当時の考えはなんらかの形にまとまりましたか?

B氏: はい。あの、やっぱり、私は勇気がなかったんだと思います。事故については何回か警察が会社の方にも調べに来ていて、でも説明したって絶対信じてはくれません。そういう状況で転居なんてしたら、かえって自分が悪いんだって認めてしまうような気がして。だから、あなたたちが来て確信的な質問をされた時、ホッとしたんです。

█博士: Bさん。少しよろしいですか?

B氏: はい?

█博士: 嘘をつくのは、もうやめた方がいいですよ。

[4秒沈黙]

B氏: え?

█博士: あなたはどうしてあの家に住み続けたのですか? その理由について、正しいことを仰ってくださらなければお帰しすることはできかねます。

B氏: そんな、嘘なんて。

█博士: やっぱり、もう少し考えをまとめる時間を作りましょう。

█博士が部屋内の保安要員に合図する素振りを見せ、事前の打ち合わせ通り保安要員がB氏に歩み寄る。

B氏: ま、待って! 違う、違うんです! 本当なんです!

█博士: 何がですか?

B氏: 本当に、勇気がなかったんです! 転居する勇気がなくて!

█博士: どういうことでしょうか?

保安要員が定位置に戻る。

B氏: [3秒沈黙] 6件目の事故の後、ふと気付いたんです。もしかしたら、そうなのかもって、思ったんです。

█博士: 何がでしょうか?

B氏: [6秒沈黙][視線を伏せ、机上の一点に焦点を定める]

█博士: Bさん?

B氏: あの家は、住んだ人間の集団を利用して、最大の罪人を食べます。望まれた死で、だからこそ完璧で、騙しおおせる。でも人は減っていきますし、もし住人がいなくなれば食事は終わりです。だから [2秒沈黙]

█博士: だから? なんでしょうか?

B氏: だから、あの家はたった一人の住人だけ事故死のリストから除外するんじゃないか、と。

[3秒沈黙][B氏の息遣いがやや激しくなる]

B氏: そう思うと、物凄く怖くなりました。この現実そのものが、恐ろしくなったんです。それに、もし私が転居したら、あの男は会社の別の人間にまたこの家を売るんじゃないだろうか? そうなれば、私はいつか誰かに望まれて事故死するのではないだろうか? この家から離れたが最後、私は生涯その恐怖にとらわれ続けるのではないだろうか? 誰もが、誰かの命の端っこを気づかずに踏みつけ続けるマトモな世界に私は飛び出してしまうんじゃないだろうか?

B氏がしきりに目をこすり始める。

B氏: それで、それで、ここに住んでいれば、その方が安心だ、と。誰かに望まれて、意思すらない意思に死なせられるのは避けられるかもしれない。この家が、守ってくれもするんだって。それで、私が、私が、手を下したようなものなんですね? あとの、8人に関しては。そうなんですよね。

█博士: ご協力ありがとうございました。手続きと準備がありますので、あと1日は滞在して頂くことになります。

B氏: [微かな嗚咽]

<記録終了>

終了報告書: 当該異常存在が基準者に対してのみ異常性を発現させない可能性の調査について、正式に"17年目計画"に申告し実験内容と調査内容に追加する必要があります。

 
補遺: 現在、49名のDクラス職員を記憶処理し隔絶したエリア内で20年間、財団の存在を認識させないように間接的な誘導と援助を行って生活させ、そこで独自に生じたコミュニティを利用した「実験-1573-20年」の準備が"17年目計画"によって進行しています。
当該実験に対する追加の申請や検証、助言については"17年目計画"に直接行ってください。

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