SCP-1731-JP
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アイテム番号: SCP-1731-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1731-JPは窓のない非生物オブジェクト収容室に収容されます。収容室には散水機が設置され、24時間ごとに5分間の散水が行われなければなりません。また、収容室には不透明な仕切りもしくは柱を設置してください。SCP-1731-JPを視認する可能性がある場合は専用のゴーグルを着用してください。適切な装備がない環境で視認せざるを得ない場合は、カメラの画面等を介し、直接視認することがないようにしてください。未収容のSCP-1731-JPについては、捜索が続けられます。

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収容時に撮影されたSCP-1731-JP-3。

説明: SCP-1731-JPは大まかに人間を模した形状を持ち、ケイ酸塩鉱物及びその他いくつかの自然由来の鉱物を主成分として構成される造形物です。前述の成分に加え焼結の痕跡があることからその素材は加熱された粘土であると考えられていますが、SCP-1731-JPが人工物であるかは不明です。頭部に当たる部分(以下開口部と呼称)は外側に向かって開かれています。また、表面には一定の間隔で穴が開いています。カメラによる穴を通した内部の観察、さらにX線による透過検査の結果、内部は空洞であることが判明しています。

SCP-1731-JPの最初の個体は長野県の██で発見されました。発見地点周辺では発見までの2カ月間に3名の行方不明者が発生しており、これらはSCP-1731-JPによるものだと考えられています。その後、東京都███で2個体目のSCP-1731-JPが発見され、最初に発見された個体と2個体目はそれぞれSCP-1731-JP-1、2とナンバリングされました。これ以降に発見された個体も同様にナンバリングされています。現在24体1のSCP-1731-JPが収容されていますが、これらの発見は夕暮れ~早朝の暗い時間帯かつこの時間帯に人通りが少ない地点に限られています。

SCP-1731-JPを一定2の距離で直接視認した場合、慕情・恐怖・同情・悲しみ・怒りのいずれか、もしくはその全てが喚起されます(以下直接視認した人物を対象と呼称)。また、対象は錯乱状態に陥り、正常な認知能力が阻害されます。その後、対象は表出した感情と錯乱の結果としてSCP-1731-JPに接近します。対象を強制的にSCP-1731-JPから隔離した場合、1時間ほどでSCP-1731-JPの影響から一時的に脱しますが、SCP-1731-JPのことを想起した場合同様の症状を再発します。これは重度の睡眠障害を併発し、対象は強い心的ストレスを経験します。

SCP-1731-JPは通常時であれば常に開口部を不透明な壁、もしくは柱などに接触させ(添付画像参照)移動しませんが、対象が接近した場合、開口部を壁等から離したうえで大きく拡張・伸長させ、上から対象の全身を包み込みます。その後開口部は上部に向けられ、対象はSCP-1731-JPの内部に"飲み込まれ"ます。この飲み込みの過程において対象の体はSCP-1731-JPの体内に収まる大きさまで物理的に圧縮・成形されます。このプロセスの終了後、SCP-1731-JPは再び開口部を元の大きさまで収縮させたうえで壁等に接触させ、プロセス開始以前の状態に復帰します。この時、飲み込まれた対象に関するあらゆる反応は消失します。なお、この"飲み込みのプロセス"を発生させない状態を維持した場合、SCP-1731-JPにひびが発生することが確認されていますが、これは定期的な散水により遅延させることが可能です。また、既に生じているひびは"飲み込みのプロセス"を発生させることで減少します。

実験記録

被験者: D-173111

内容: SCP-1731-JPの影響の確認。D-173111は収容室に入場後、SCP-1731-JPに接近するように指示されていた。

<実験開始>

[D-173111が収容室に入場]

D-173111: こいつに近づけばいいんだな?

[当初は問題なく接近を継続していたが、SCP-1731-JPとの距離がおおよそ12mの地点でD-173111が立ち止まる。]

██研究員: なにかありましたか、D-173111?

[D-173111はSCP-1731-JPを注視する。その表情は、驚きから不快、その後すぐに恐怖を表すものに変化する。D-173111は数歩後退る。]

D-173111: ああ、ああ……

██研究員: D-173111、返答してください。

[D-173111は涙を流す。これが恐怖によるものなのかその他の感情によるものなのかは不明。]

D-173111: なんで、こんなこと。

[D-173111はSCP-1731-JPへゆっくりと接近を開始]

D-173111: ごめん、ごめんな、ずっと放っておいて。

██研究員: D-173111、反応してください。何が見えているのですか?

D-173111: ひどいな、つらかったよな、ごめんな。こんなこと、絶対許せないよな。

[D-173111は指示伝達用のイヤフォンを外す。]

D-173111: でももう大丈夫、俺が一緒にいるよ。

[D-173111がSCP-1731-JPに接触。]

D-173111: ずっと、待ってたんだよな、そうだよな。全部思い出したよ。今そこから出してやるからな。

[SCP-1731-JPの開口部が収容室の壁から離れ、拡張・伸長を始める。以下特筆すべき事項はなし。]

<実験終了>

備考: 実験後複数の研究員から、D-173111がSCP-1731-JP内部に完全に取り込まれた後咀嚼音のような音が聞こえたという報告がなされていますが、記録装置にそのような音声は記録されていませんでした。

インタビュー記録

対象: D-173152

インタビュアー: ██研究員

付記: このインタビューはSCP-1731-JPがもたらす認識への影響を探るためのものである。D-173152はSCP-1731-JPの影響下に置かれたのち隔離され、インタビュー時は鎮静剤を投与されている。

<録音開始>

██研究員: それでは、あなたが見たものを説明してください。

D-173152: ……無理だ。

██研究員: なぜですか?

D-173152: 無理なもんは無理だ。それは、そうだ、あの中にあった。それだけは言える。

██研究員: あの中、というのはSCP-1731-JPの内部のことですか? SCP-1731-JPの内部は空洞であることが判明していますが。

D-173152: 本当に何も覚えていないのか?

██研究員: はい?

D-173152: あの理不尽に押し付けた犠牲も、あの中にある、ああ、いる? わからない、ああ、あの中にいるのが何なのか、何の結果なのか、なにが起こったのかも、本当に何も覚えてないのか?
 
[D-173152の語気が強まり、頬が若干の紅潮を見せる。]

██研究員: あなたが何について話しているのかよくわかりません。順を追って説明してください。

D-173152: だから、説明できないって言ってるだろ! 説明できなくしたのはお前らだ!

██研究員: 我々、財団が過去になにかをしたと?

D-173152: そうじゃない! [机を強くたたく音]

██研究員: では誰が?

D-173152: 全員だよ、みんなだ。

██研究員: 人類全体ということですか?

D-173152: そうだよ! 本当に、本当にあの中に押し込めたのが何か覚えてないのか? ほら、泣き声が聞こえるだろ! 聞こえないのか? もう始まってるんだよ!

[D-173152は制止を振り切って立ち上がる。インタビューはここで中断される。]

<録音終了>

初期収容時SCP-1731-JPの異常性に暴露した職員の遺書

もう、見ないふりはやめましょう。これはほとんど誰もが知っていて、そしてあえて見ていないことです。こうやって書いたとしても、きっとあなたたちはそれを思い出さないでしょうし、それがあなたがたと、私自身の望みでした。そして、それが達成されるために、我々は我々自身の記憶に制約を課しました。
我々はそれをしなければ滅ぶわけではなかったし、それをしなければ大勢の人が不幸になるわけでもありませんでした。ただ、それのおかげで我々は少し幸せになることが約束されていました。
我々は、それを実行しました。これは財団やオカルト世界の話ではなく、本当の意味で人類全体の問題でした。そして、全体がそれに比べれば小さな犠牲を伴うことを良しとしました。そうして私たちは、見ないようにしているものを押し込めることによって、少しだけ幸せになりました。

それらを押し込めるための柱として押し込めた弱きものは、本当に、我々を不幸にするものではなかったし、害をなすものでもありませんでした。それは押し込められることを当然望みませんでしたが、誰もその声を聞こうとはしませんでした。そうして、今やそれは核となり、意志となり、すべてとなって、そこにあります。

すでにすべては始まりました。私は、私を幸せであると思います。これから起きることを知って、その前に静かに眠ることができますから。

さて、ここまで語ってもあなたはやはりそれを思い出さないでしょうから、あなたが思い出すときか、もしくは全てが終わるときのために、せめて、これだけは覚えておいてください。

これは他でもない、あなた自身がやったことなんですよ。

補遺: 最初の発見以来、新たなSCP-1731-JPが発見されるまでの期間は徐々に短くなっています。

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