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アイテム番号: SCP-1760-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1760-JPはサイト-8181内の標準的な大型収容ガレージに収容されます。SCP-1760-JPの収容されているガレージには常に2名以上の警備員を配置し、SCP-1760-JPへの搭乗を阻止して下さい。SCP-1760-JP事象が発生した場合、日付が変更し次第速やかにSCP-1760-JP-Bの捜索を開始し、発見後は財団による監視下に置き、必要に応じて捕獲或いは終了して下さい。SCP-1760-JPを用いた実験にはセキュリティクリアランス3以上の職員1名の許可が必要です。SCP-1760-JPを用いた実験は許可されません。
説明: SCP-1760-JPはいすゞギガPDG-CYM2008年式のトラックです。SCP-1760-JPの異常性はSCP-1760-JPの運転席に人が搭乗した際に発現します。SCP-1760-JPの運転席に被験者が乗ると被験者は「他者をSCP-1760-JPで轢殺したい」という欲求に襲われます。この欲求に強制力は無く、また1人以上にSCP-1760-JPで接触した時点で欲求は消失します。走行中のSCP-1760-JPによる接触が行われた場合事象1760-JPが発生します。
事象SCP-1760-JPが発生すると、走行中のSCP-1760-JPに接触した人間(以下SCP-1760-JP-A)は即座に消失します。SCP-1760-JP-Aの行方を特定する試みは全て失敗に終わっています。そして、事象SCP-1760-JP発生後の翌日午前0:00分になると2つの現実改変が発生します。1つ目はSCP-1760-JP-Aがトラックに轢かれて死亡したという記録の作成及びSCP-1760-JP-A関係者への記憶の上書き、2つ目はSCP-1760-JP-Aに外見が酷似した人物(以下SCP-1760-JP-B)を出現させることです。
SCP-1760-JP-Bは地球上の人類の居住区域に出現し、その出現する場所は比較的SCP-1760-JP-Aの国籍に左右される傾向が強いと思われます。例えば、日本国籍のSCP-1760-JP-Aにより出現したSCP-1760-JP-B個体は6割以上の確率で日本国内に出現しています。SCP-1760-JP-Bは出現以前戸籍には一切記録が無かったにも関わらず、SCP-1760-JP-B本人及び周囲の人々は以前からSCP-1760-JP-Bが存在したかのように振る舞います。
SCP-1760-JP-BはSCP-1760-JP-Aと外見の酷似、DNAの一致など共通する点も見られますが、その他の性格や能力などはSCP-1760-JP-Aと異なります。また、特筆すべき特徴としてSCP-1760-JP-BはSCP-1760-JP-Aには見られなかった能力を持っています。この能力には個体差が存在することが分かっています。詳細は補遺2を参照して下さい。
補遺1: インタビュー記録(抜粋)
対象: 蒲田 ██(SCP-1760-JP-B-2)
インタビュアー: ███博士
付記: SCP-1760-JP-B-2は財団による実験でSCP-1760-JP-AとなったD-251528と酷似した外見をしており、ウナギ属(Anguilla) に対し非常に膨大な知識を有している為、現在██████に所属しウナギの研究をしています。また、便宜上「ウナギ養殖の最新事情」という番組の取材というカバーストーリーの下インタビューをしています。
<前略>
███博士: 蒲田さん、貴方はなぜウナギにそこまで興味を持つようになったのですか?
SCP-1760-JP-B-2: ウナギが大好物だからです。ウナギは食用として多く用いられるにも関わらず完全養殖が未だ実用段階に至っていない為に個体数を減らしています。あんなに美味しいものを食べられなくなるのは我慢できませんでしたし、そしたら自分で研究してみようと思いましたので。後2年もすれば完全養殖は成功させられると思ってます。
███博士: 成程。ところで貴方は過去に交通事故に遭った経験などはありますか?
SCP-1760-JP-B-2: ……?いえ、ありませんが……
███博士: では、█ ██という名前に聞き覚えは?
SCP-1760-JP-B-2: 全く知りません。失礼ですが、この質問は取材と何の関係があるんですか?
<後略>
終了報告書: SCP-1760-JP-BはSCP-1760-JP-Aとは全くの別人であることが裏付けられる結果となった。また、SCP-1760-JP-Bは有する能力を得た理由についてもしっかりと記憶が植え付けられており、SCP-1760-JP-Bの出現場所は自然と能力に因む場所になる可能性が高いと思われる。
補遺2: SCP-1760-JP-B個体記録
この項目では財団によって存在が確認されたSCP-1760-JP-Bの各個体を記録します。記録は以下のテンプレートに従って行って下さい。
個体番号:
個体名: SCP-1760-JP-B個体の現在の名前
SCP-1760-JP-A: 事象SCP-1760-JPの発生に際し消失した人間
能力: SCP-1760-JP-Bが有する特筆すべき特徴のこと
補遺: 無ければ省略して構わない
個体番号: SCP-1760-JP-B-1
個体名: 氷室 ██
SCP-1760-JP-A: ███ █
能力: ハッカーとしての非常に優れた能力
補遺: SCP-1760-JP-B-1は財団により確認された初のSCP-1760-JP-B事例であり、収容のきっかけとなった事故により発生した個体であると考えられます。現在SCP-1760-JP-B-1は██████においてハッカーとして働いています。
個体番号: SCP-1760-JP-B-2
個体名: 蒲田 ██
SCP-1760-JP-A: D-251528
能力: ウナギ属に対する非常に膨大な知識
補遺: 財団による実験で生み出された初めてのSCP-1760-JP-B個体です。上記インタビュー終了後、その知識がSCP-████-JPの収容に役立つと考えられ、研究員として財団に雇用されました。
個体番号: SCP-1760-JP-B-3
個体名: 中村 █
SCP-1760-JP-A: D-251529
能力: 180秒を正確に計る能力
個体番号: SCP-1760-JP-B-4
個体名: 小鳥遊 ███
SCP-1760-JP-A: D-251530
能力: 心理学、特に社会心理学に関する非常に膨大な知識
補遺: SCP-1760-JP-B-4は現在██党に所属する政治家として活動しており、自身の持つ能力を活かし一部でカリスマとして崇められる存在となっています。
個体番号: SCP-1760-JP-B-5
個体名: 宮田 ██
SCP-1760-JP-A: D-251531
能力: 100m走で10秒を切れるほどの短距離走の能力
補遺: SCP-1760-JP-B-5は国際的なアスリートとして活躍しており、20██年に行われた五輪に於いて日本人初の100m走でのメダルを獲得しました。
個体番号: SCP-1760-JP-B-6
個体名: [データ削除済]
SCP-1760-JP-A: D-251532
能力: 強力な現実改変能力
補遺: SCP-1760-JP-B-6はSCP-1760-JP事象による現実改変に於いてサイト-████に[データ削除済]として収容された状態で発見されました。その後、その素行や精神活動が問題視され、収容に値しないと考えられた為終了されました。
個体番号: SCP-1760-JP-B-7
個体名: 不明
SCP-1760-JP-A: D-251533
能力: 財団の機密文書を無許可で自由に読むことが出来る能力
補遺: SCP-1760-JP-B-7はその能力により大規模な収容違反を引き起こすと思われています。SCP-1760-JP-B-7は財団の存在をフィクションであると認識していると推測される為、財団の存在については信じていないと思われますが、ミーム的異常を持つ文書にアクセスした際の影響が未知数である為即時の終了が計画されています。現在SCP-1760-JP-B-7の所在地は捜索中です。
私が奴の存在を知ったのは昨日の事だ。なんでも最高機密である001 に数回のアクセスがあったそうだ。しかしその日には001へのアクセス許可を持った職員は誰も001にアクセスしていないと言う。不審に思ったRAISAの職員が調べたところ、001から番号順にアイテムの報告書を読んでいると思われる謎の存在が浮き上がった。しかも財団が管理している端末ではなく外部の端末を使用して読んでいるらしいとのことだ。これは一大事である。これほどの大量の異常物品が大衆に知られたら厄介というレベルではない。しかし、幸いにも異常物品に関する情報の漏洩は確認されなかった。調査チームの間では犯人は財団の存在を信じていないのではという推測が建てられたようだ。言われてみれば気持ちはわかる。私もここに来た当初は現実と虚構の境が曖昧になったものだ。
そういう訳で大規模なパニックは現状では避けることが出来たものの、依然として危険な状況であることには変わりなかった。なにせ財団で収容してる物品には報告書を読むだけで非常に危険な伝染性のミームに汚染されるものもあるのだ。下手するとk-クラスシナリオだ。それを回避する為に調査チームは原因の特定に当たった。様々な敵対的な組織が疑われたものの、最終的に疑われたのがSCP-1760-JP-B-7であった。3日ほど前に実験に使用されたD-251533が消滅してからSCP-1760-JP-B-7が未だ発見されないこと、SCP-1760-JP-B個体の持つ未知の能力が財団のセキュリティを掻い潜る可能性が指摘されたことなどが主な理由だ。たまたま責任者になった実験がこんなことになってしまうとは。冗談じゃない。
ともあれ、この事態の収拾を任せられた私はSCP-1760-JP-B-7に対して罠を張ることにした。まずは財団のホームページのインターフェースを創作サイトっぽく編集した(勿論許可は取った)。知り合いに頼み込んでこんなものまで作って貰った。「やるなら徹底的に」が私のモットーだ。その上でSCP-1760-JPに「今日の注目記事」というタイトルをつけこのページを目立つところに置いておく。奴がこのサイトを娯楽として消費するならより面白そうなページを選んでアクセスして来る筈だ。そして、最初のページには敢えて大量の検閲をかけ、奴の興味を引き、ページの最下部にパスワード入力画面を仕込んだ。これが罠だ。奴は今まで全てのパスワードを入力せずに記事を閲覧していることが分かっている。今回も恐らくパスワードを入力せずに中身を確認するだろう。だからパスワードを入力しないことで遷移するページを作り、そのページに入った途端に██████によって端末を攻撃し場所を暴き出すという寸法だ。またSCP-1760-JP-B-7の終了が確認された時点でこのページ以外のSCP-1760-JPのページを消去する。というのが私の立案した作戦である。
私の首と世界の命運が懸かっているんだ。成功してくれ。
ページリビジョン: 8, 最終更新: 10 Jan 2021 16:56