SCP-1767-JP
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アイテム番号: 1767-JP
レベル1
収容クラス:
euclid
副次クラス:
none
撹乱クラス:
dark
リスククラス:
notice

Pikaia_BW.jpg

田村研究員によるSCP-1767-JPのイラスト

特別収容プロトコル: SCP-1767-JPは海水で満たされた30×30×80cmの水槽に収容されます。専用ドローンを介し、餌として1日1回植物プランクトンを適量与えてください。水槽には暗幕を貼り、職員によるSCP-1767-JPの視認を防止してください。SCP-1767-JPが水槽中から脱出した場合、速やかに捕獲して再度の収容を行ってください。

盗掘者による発掘を防止するため、バージェス頁岩は財団古生物学部門により管理されます。既に発掘されたSCP-1767-JPと同種の化石(以下、SCP-1767-JP-A)は回収し、博物館・大学・個人コレクター等にはレプリカが配当されます。SCP-1767-JP-Aは目視を避けるため、専用ドローンを介して低危険度物品収容ロッカーに保管してください。

説明: SCP-1767-JPは、中期カンブリア紀の海洋に生息したピカイア(Pikaia gracilens)に類似する生命体です。SCP-1767-JPは主として植物プランクトンを摂食します。SCP-1767-JPは未確認のSCP-5745-1を介して出現したと推測されますが、SCP-5745と関連しない別個の異常性が確認されたため、独立したナンバリングが行われました。

水槽から伝導する音に基づき、通常時のSCP-1767-JPは緩やかに水槽内を遊泳していると推測されます。全長5cmを超過する動物(以下、対象)が水槽の半径2m以内に侵入した際、SCP-1767-JPは水槽内において水飛沫を伴う激しい遊泳を行います。当該の遊泳は対象が水槽から2m以上離れるまで持続します。

SCP-1767-JPが対象に視認された場合、SCP-1767-JPは対象から遠ざかる方向に半径5m以内の地点へ転移します。当該の転移の有無自体は対象の属する分類群に依存しませんが、対象が節足動物である場合に転移距離の有意な増大が確かめられています。なお、SCP-1767-JPは大気中でも一定時間の生存が可能ですが、水棲生物の身体への莫大な負荷を鑑み、迅速に水槽へ戻すことが義務付けられています。

収容経緯: 2015年、SCP-1767-JPは余暇活動として海釣りを行っていたアルバータ大学准教授████・█████氏により発見されました。█████氏はSCP-1767-JPを研究室に持ち帰り、交友関係のあった寺澤研究員に連絡し意見を求めました。寺澤研究員が訪れた時点でSCP-1767-JPの生物的性質の大部分は█████氏により解明されており、当時の知見を踏襲する形で特別収容プロトコルが策定されました。SCP-1767-JPは寺澤研究員により確保され、█████氏を含むラボメンバーは記憶処理を施されました。

SCP-1767-JPは█████氏および他のラボメンバーに対し懐く様子を示しており、記憶処理の実行時には水音を伴う激しい遊泳を行ったことが寺澤研究員の証言から得られています。本稿執筆時点において、SCP-1767-JPは徐々に新収容環境への慣れを示し始めており、植物プランクトンの摂食量も増加傾向にあります。



補遺1: SCP-1767-JPの分泌したDNAを用い、現生の動物から構成されるデータセットに挿入して系統解析を実施したところ、樹形の異なる2つの最節約系統樹が得られました。SCP-1767-JPは一方の系統樹において基盤的頭索動物クレード、もう一方において最基盤脊索動物に置かれました。旧来の学説においてPikaiaは脊椎動物の直系の祖先たる原初の脊椎動物に分類されましたが、現在では直接的な関連のない基盤的頭索動物として解釈が改められています。今回の系統解析において、新旧2つの類縁仮説は共に支持されています。

補遺2: SCP-1767-JPが真にPikaia gracilensである場合、当該の異常性は、アンドリュー・パーカー氏が1998年に言及し2003年に公表した「光スイッチ説」に従って説明が可能であると推測されています。「光スイッチ説」はカンブリア紀に起きた動物の爆発的進化を説明する仮説です。

エディアカラ紀をはじめとする先カンブリア時代の動物は軟組織により構成される外部形態を持つ一方、カンブリア紀の動物には多様な外部形態が認められます。一般に認められている仮説として、カンブリア紀には動物の高次分類群の多様化が起き、それに際して外骨格を有する形態形質が確立したとされます(カンブリア爆発)。パーカー氏は、この多様化の原動力が当時の生態系で顕在化した捕食圧であり、獲物を狙う捕食者と逃走・防衛する被食者の間の相互作用により種分化が促されたと主張しています。

パーカー氏の主張によると、動物は眼を獲得したことにより、捕食・逃走・防衛など各種行動が効率化され、捕食-被食関係が強化されました。彼らの細胞は分化あるいは原核細胞との細胞内共生を経て光受容器を獲得しました。やがて節足動物は外胚葉に由来するレンズ状構造を発達させ、高度な複眼を獲得したと考えられています。結像機能を持つ眼は約5億2,100万年前に出現したとされ、同時期に動物の爆発的放散が開始したと推測されています。

SCP-1767-JPの異常性の発動条件が体長5cm以上の動物による視認であることから、当該の異常性は自身の天敵となりうる大型動物からの逃走に寄与するものであったことが推測されています。当時の海洋生態系には最大全長約38cmのアノマロカリス・カナデンシス(Anomalocaris canadensis)、最大全長約7cmのオパビニア・レガリス(Opabinia regalis)などの動物食性節足動物が生息しており、被食者であったSCP-1767-JPは異常性を用いて彼らの脅威から逃れていたと考えられています。


Pikaia_Smithsonian.jpg

SCP-1767-JP-A

追記: 2016年9月2日、カナダのブリティッシュコロンビア州に分布するスティーブン累層バージェス頁岩から産出した全てのPikaia gracilensの実物化石において、SCP-1767-JPと同一の原理に基づく異常性が発現していたことが判明しました。財団は直ちに全てのPikaia化石をSCP-1767-JP-Aに指定し、オブジェクトクラスをSafeからEuclidへ変更、特別収容プロトコルを改訂しました。

当時SCP-1767-JPはカナダ・アメリカ合衆国などでの常設展や日本などでの巡回展で非異常の化石と共に数多く展示されていました。博物館をはじめとする研究機関およびオークション・個人コレクターを介した異常性の拡大を懸念し、現在財団はSCP-1767-JP-Aの積極的回収を行っています。





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