SCP-1787-JP
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枯死直前のSCP-1787-JP-1

アイテム番号: SCP-1787-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1787-JPはサイト-8141の粉塵吸引装置の取り付けられた標準人型収容室に収容されます。収容室の壁面および天井にはSCP-1787-JPの死角がなくなるよう反射性を維持した鏡が設置される必要があります。SCP-1787-JPによって生成されたSCP-1787-JP-1は研究に用いるものを除き、SCP-1787-JPに視認させるか、焼却処分によって適切に廃棄してください。SCP-1787-JP-1のホロタイプ標本はサイト-8102の標本庫で管理されています。その性質上SCP-1787-JPがサイト-8102の標本庫周辺に立ち入ることは禁止されます。

説明: SCP-1787-JPは要注意団体「日本生類創研」の元職員である藤崎██氏です。SCP-1787-JPの性別は女性であり、収容時の年齢は39歳でした。現在までに判明している経歴や知能テストの結果から、SCP-1787-JPは当該団体で植物学、主に花卉園芸学を専門にしていたと推測されます。SCP-1787-JP本人に特筆すべき身体的特徴はありませんが、財団が行った精神鑑定の結果SCP-1787-JPのEQ1は平均値を大幅に下回っていることが確認されています。

SCP-1787-JPは自身の視界の外かつSCP-1787-JPを中心とした半径5.4mの範囲に、マメ科植物のクズ(Pueraria lobate)に似た外見的特徴を有する植物を出現・生育させる異常性を有しています。現在この植物はSCP-1787-JP-1に指定されています。SCP-1787-JP-1は多くの場合地上部・地下部共に貧弱であり特に地上部では軟弱徒長の傾向が強く表れるにもかかわらず、どの個体も大きく鮮やかな青い花冠を付けます。この花冠は一般的なクズのものとは異なり、その形状はバラ科バラ属の園芸品種に似た外見的特徴を有しています。また、SCP-1787-JP-1はその花から「ラベンダーのよう」と形容される独特の芳香を放っています。SCP-1787-JP-1は全て同一の遺伝子系を有しており、それらはSCP-1787-JP-1がマメ科クズ属の植物に近いことを示しています。SCP-1787-JP-1は自家不和合性を有しているためSCP-1787-JP-1が自身と同品種の種子をつけることはありません。

SCP-1787-JP-1の生育は一般的な植物と比べ非常に早く、芽の出現から15秒程度で開花まで至ります。また、SCP-1787-JP-1がSCP-1787-JPの周囲3m以内に出現した場合、SCP-1787-JP-1は後述する特性故成長せず枯死します。この異常性に対しSCP-1787-JPは一切の制御が出来ず、結果としてSCP-1787-JPの背後には常にSCP-1787-JP-1が出現し続けます。SCP-1787-JP-1は開花を行うと急激な成長を停止します。開花後のSCP-1787-JP-1は一般的な非異常性植物と同様の性質を示しますがSCP-1787-JP-1がSCP-1787-JPの視界、およびSCP-1787-JPの周囲3mに入った場合、表面から体内の水を放出し急速2に枯死します。枯死したSCP-1787-JP-1は非常にもろく、空気中に放置した場合十数秒程度で完全に風化します。

補遺1: 20██/██/██、SCP-1787-JPに対しその起源とさらなる性質の解明を目的としたインタビューが行われました。以下はインタビューの内容を文字に起こしたものです。

インタビュー記録1787-JP - 日付20██/██/██

対象: SCP-1787-JP

インタビュアー: 勝山研究員

<録音開始>

勝山研究員: インタビューを開始します。藤崎3さん、あなたの異常性が発現したのはいつですか?

SCP-1787-JP: 娘の葬式から2・3日たった後でした。朝目が覚めたらこの植物が天井から壁までワーッと覆ってたんです。まあ、びっくりしましたよ。「私こんな実験したっけ?」って。

勝山研究員: 藤崎さんの異常性は貴方の職場、日本生類創研と何かしら関係があるのでしょうか?関係する実験などで心当たりはありますか?

SCP-1787-JP: ええと、多少はあると思います。私の後ろに生える植物は、以前私が研究していた植物によく似ているんですよ。詳しく観察してないので断定はできませんが、試験的に光合成効率を上昇させた植物で、特殊なペルオキシソームを生成するように改良されたクズだと思います。ただ、こんなふうに特定個人の死角から突然発生する性質は付与しませんでしたし、何より花も違います。一瞬しか見ることができませんが、バラの花を咲かせていますよね?それからラベンダーの香りも。私が研究していた植物にはそんな改造しませんでした。

勝山研究員: では藤崎さんの異常性は、ご自身で意図的に得たものではないのですね。

SCP-1787-JP: はい。植物は好きですが、ここまでされると仕事への影響が大きすぎます。現にこうしてあなた達に見つかったわけですし。

勝山研究員: なるほど。では、藤崎さんの中で何か異常性のきっかけになったと考えられる事柄はありますか?精神的な変化とか、何か変わったことがあったとか。

SCP-1787-JP: そうですね。やはり時期的に娘の死が一番に考えられますね。

勝山研究員: 娘さんというのは亡くなられた杏さんの事ですね。自殺されたとのことですが、もし辛くなければ、杏さんのことをお聞かせください。

SCP-1787-JP: かまいません。娘は私と大学院時代の友人との子でした。娘を妊娠したのは25の時で、そのころには今の職場で働いていました。もともと私は誰かと結婚する気もありませんし、子供を持つ気もありませんでしたが、堕ろすのはちょっと忙しくて出来ませんでした。ちょうど研究が立て込んでましてね……入院に割く時間すらもったいなかったんです。つわりやら何やらを薬で抑えつつ研究を進めていたのですが、気が付いたら臨月でした。そうして生まれたのが娘の杏です。

勝山研究員: なるほど。確かに藤崎さんは結婚なさっていないようですね。杏さんの父親である藤崎さんの友人は子供ができたことに対し何かアプローチはしなかったのですか?

SCP-1787-JP: 何も。というか、彼とは一度寝たっきりです。なぜ彼とそういう関係になったかも今となっては思い出せませんし、正直あまり気にも留めていませんでした。それに、彼に「子供が出来たから責任を取れ」なんて言いに行く暇はありませんでしたから。

勝山研究員: そうでしたか。一応その相手の名前をうかがえますか?

SCP-1787-JP: たしか安藤……廣繁だったと記憶しています4

勝山研究員 ありがとうございます。話を戻しますね。杏さんは学校のいじめが原因で自殺されたそうですが、そのことに関して何か聞いていませんでしたか?

SCP-1787-JP: 何も。なので娘が死んだと聞いて驚きました。そんなことが起こっていたんだって。あの後警察の方からいろいろ聞かされましたが、ずいぶんと酷い目に遭っていたようです。具体的に何をされたとかはあまり関心がなく憶えていませんが。ただ、後から遺書が発見されたので突発的な希死感に駆られたというより、元からずっと死んでしまいたいと思っていたのかもしれません。

勝山研究員: そうですか。藤崎さんは杏さんの自殺の兆候には気付かなかったのですか?

SCP-1787-JP: はい。娘とは全く話しませんでしたから。それに、気付いていれば多少のケアはしました。それが出来なかったからあんな大騒ぎになってしまったんです。地方のニュース局はひっきりなしに取材に来ましたし、警察の取り調べだって本当に面倒だったんですから。

勝山研究員: 娘さんを失ったことに関して何か思うことはなかったのですか?

SCP-1787-JP: もちろんありますよ。娘にはいろいろな処置をしていたので、それが無意味になってしまったという意味ではかなりショックです。

勝山研究員: ああいや、そういった意味ではなく「娘の死をどう感じたか」をお聞きしたかったのです。利益とか不利益の面ではなく、感情的な部分を。

SCP-1787-JP: ショックと言ったじゃないですか?十分感情的な考えでは?ああ、でも私は娘を失って、恐らく世間一般的な遺族が感じるような"悲しみ"みたいなものは感じませんでした。そういう意味の質問でしたか?

勝山研究員: ええ。

SCP-1787-JP: ああ、そうでしたか。私は自分の娘にほとんど関心を持てなかったんです。なので、娘を失って悲しいといった感情は持てませんでした。花瓶の花が枯れたときの方がよっぽど悲しかったくらいです。先ほど娘の生い立ちについてはお話ししましたね?娘が生まれた後、私は自分じゃ処分できないので職場に持って行って実験材料にでもしてくれって言ったんです。でも、断られちゃいました。「ウチで使ってる実験動物は高い遺伝子構成の同一化が行われ、かつ既定の条件下で生育した奴だけだ。そんな雑種はいらない」と。あまりに正論なので何も言えませんでしたよ。なので私は娘を処分することも職場に押し付けることもできず、娘の世話をしなくてはならなくなったんです。

勝山研究員: なるほど。藤崎さんは先ほど「娘にはいろいろな処置をしていた」とおっしゃいましたが、どのような処置を施したんですか?

SCP-1787-JP: ええと、例えば知り合いの職員に頼んで喉をいじってもらったりとかですかね。人体工学は専門ではありませんが、喉のなんとか筋ってのを付け替えて、大きい声を出そうとすると息漏れが起こるようにしてもらいました。おかげで煩わしい泣き声を聞かずに済みました。それから、腹が減ったってうるさかったので、そこも改造しました。体に植物を後付けして、光合成でエネルギーを賄えるようにしたんです。ああ、確かその時娘に植えこんだ植物がさっきお話しした植物です。あの植物の強化された有機物生成のおかげで、面倒な食事の用意をしなくて済むようになったので、過去の自分には感謝しています。

勝山研究員: 光合成は素早い動きを必要としない植物だからこそ、エネルギーを賄えているはずです。活発に動き回る人間のような動物では、たとえ多少強化されていたとしてもエネルギー生産が追い付かないのではありませんか?

SCP-1787-JP: ええ、なので極力動くなって言いつけてました。一日中ずっとベランダに寝っ転がって、無駄にエネルギーを消費しないようしろと。まあ、多少足りなかったようで娘の身長や体重は同年代の子供と比べ低かったみたいですね。ああ、そう考えてみると娘がいじめられる原因もわかるような気もしますね。大声も出せない背の低い同級生なんて、格好の餌食じゃないですか。

勝山研究員: あなたは自分の娘に対し愛情のようなものは抱かなかったのですか?

SCP-1787-JP: 全く。私はどうにもそういった感覚が薄いようでして、娘には特別な価値を感じませんでした。実験動物にもなれない、捨てることもできない、ただただエネルギーを浪費する非生産的な生物。むしろ憎んですらいました。ですが、世間体もありましたから最低限のことはしましたよ?娘が学校に通い始めてからはちゃんと食べ物を口から摂取させましたし、道具や服も一通りそろえました。

勝山研究員: そうですか……藤崎さんは娘さんとあなたの異常性にどのような関連性があるとお考えですか?

SCP-1787-JP: さっきも言ったように、私の後ろで発生する植物、これは娘に植えた植物と似ているんです。いくつか差異はありますが……例えば花は娘に植えた植物とは違います。というか、娘に植えた植物は花芽形成を抑えるよう、特別に改良していました。花を咲かす養分があるならば葉を広げて茎をのばし、より本体へ養分を送れるようにと。2つ目は匂いです。私が娘に植えた植物は無臭です。理由は先ほどと同じで、余計なエネルギーを使わせないようにするためです。

勝山研究員: それらの差異には何か原因や理由があるとお考えですか?

SCP-1787-JP: どうでしょうか……ただ、青いバラの花もラベンダーの香りもいつも家にあるものでした。

勝山研究員: 詳しくお願いします。

SCP-1787-JP: はい。先ず花ですが、あの花は私が好きだった花の1つによく似ているんです。私が創ったんですがね。あの花も綺麗な色でした。普通の青いバラってデルフィニジン合成量が乏しいので、そこまで劇的に青くならないんですが、いろいろと手を尽くしてようやく理想の青色にこぎつけたんです。深く、それでいて淡い、美しい青色……我ながらほれぼれします。思い入れの深い花でしたので、切り花にしていつもテーブルの上の花瓶に生けてたんです。私の周りに咲く花は、その青いバラによく似てます。まあ、一瞬しか見ることが出来ないので断定はできませんが……それから匂いでしたね。ラベンダーの香りは私が好きな香りの一つでして、エッセンシャルオイルを入浴の時に使ってました。あとは私がベランダの消臭剤としてラベンダーの香りを使っていた程度でしょうか?

勝山研究員: そうですか。藤崎さんは貴方の異常性によって生じる植物を一瞬しか見ることが出来ないとのことでしたが、その理由として何か思い当たる原因などはありますか?

SCP-1787-JP: さあ?嫌われてるんですかね。それか、もしこの植物が娘の生まれ変わりなのだとしたら、まだ生きていたころのアレに「目障りだから私の視界に入るな」と散々言い聞かせたからでしょうか。

勝山研究員: 生まれ変わり、ですか。なぜそう思うのですか?

SCP-1787-JP: いや、論理的な説明はできませんが、私の周りに生える植物は娘に植えた植物と似てますし、その振る舞いもよく似てますから。私が近づくと逃げるように枯れていくところとか、視界に入ろうとしないこととか。

勝山研究員: ……そうですか。最後に、娘さんの遺書からはあなたの虐待に関する記述はなかったようですね。警察が行った聞き込み調査でも貴方が杏さんに対し虐待を行っていたという記録もありませんから、おそらく杏さんは貴方の虐待を他人に打ち明けることはしなかったようです。その理由はいかがでしょう。

SCP-1787-JP: まったくわかりません。遺書の存在は警察から教えられて初めて知ったんですが、私への恨みつらみが書かれていないのは意外でした。それどころが「育ててくれてありがとう」なんてお礼まで言ってましたからね。もしかしたら本当に恨んでなかったのかもしれません。

勝山研究員: そうですか。では以上でインタビューを終了します。

SCP-1787-JP: ああ、待ってください。ちょっとした要望があるのですが。

勝山研究員: 何でしょうか?

SCP-1787-JP: この植物、この植物を分析したデータを私にも見せてくれませんか?

勝山研究員: それは何故でしょう?何か気がかりなことでも?

SCP-1787-JP: 気がかり……とは少し違います。単純に「気になる」んです。私の周りに発生する植物は、今まで見たことない未知の植物です。知らないことがあるのなら、知りたいと思うのがヒトの性質でしょう?教えてください。あの植物の遺伝子はマメ科寄りですか?それともバラ科?3枚複葉の葉はクズのものっぽいですが、他に特徴的な外見はありませんか?ミトコンドリアや色素体のDNAは?花の色素は何でしたか?CDK5の活性はどうなってます?娘に植えこんだ植物にはMMC6のSLGC7分化を促進するようにプログラムした遺伝子群を挿入しましたがそれは機能していますか?LFY遺伝子8の抑制は効いていますか?娘に植えた植物はlfy fdの二重変異体9でしたが、どうやって花芽形成を行っているのでしょう?

勝山研究員: 現在それらの具体的な研究は行われていません。少し落ち着いてください。

SCP-1787-JP: まだ行われていないんですか!?既に私が収容されてから72時間以上経っているはずです。どうしてそんなに段取りが悪いんですか……そうだ!いっそあなた達が私を雇用すればいいんですよ!私が私の研究をするんです。そうすればあなた達の研究は大きく躍進しますよ!あなた達にデメリットなんてないでしょう?任せてください。花卉園芸に関して、私はプロフェッショナルです!

勝山研究員: これ以上のインタビューは不要です。退出させていただきます。ありがとうございました。

SCP-1787-JP: なぜそんなに冷淡なんですか!あなただって研究者の端くれでしょう?あの植物はどういった理屈で発生し、急速な成長をしているのか。根からの水分吸収や養分の摂取をせず、どのようなプロセスで成長に必要なエネルギーを得ているのか。そもそもアレはどうやって出現しているのか。知りたくないんですか!?それに、私は娘が死んで、あの花が現れて、ようやく娘に興味を持てるようになったんです!私があの植物を直接調べることができないのは本当に、本当に残念です。私を覆う植物が娘の生まれ変わりなら、私はようやく娘を……愛しく思えているんです。もっと知ってあげたい……調べてあげたい!どうかお願いです。私に娘を愛させてください!

勝山研究員: 藤崎さん、それに関しては私たちが検討し、判断しますので本日はこれで終了です。後日、またお話を伺います。

SCP-1787-JP: [罵倒]。それだからあなた達はいつまでもゴミ箱のままなんです!後手後手にまわして、必ず安定を取る!リスクを顧みない研究をしなければ、決して先駆者にはなれない!

<録音終了>

以上のインタビューを受け、SCP-1787-JPの起原は藤崎杏氏にあると推測され、調査が行われました。しかしながら杏氏の死に不審な点は見られず、その遺体も既に火葬済みであったため有意な情報は得ることができませんでした。加えてインタビュー後に再度実施されたSCP-1787-JP宅の調査では、杏氏が母親から虐待を受けていたことを客観的に証明する物品は押収されず、SCP-1787-JPの勤務していた日本生類創研の施設は既に撤収済みであったため、SCP-1787-JPおよび杏氏に関する情報はSCP-1787-JP本人の証言に限定されます。今後SCP-1787-JPには尋問を含む複数回の調査が行われる予定ですが、いずれの場合においてもSCP-1787-JPが自身の異常性に関する具体的な研究を行うことは許可されません。

補遺2: SCP-1787-JP-1発生地点にクラスDレベルⅠ霊的存在10が確認されました。当該霊体はSCP-1787-JPの視界の範囲内に入らないように移動する以外、目立った動作を行いません。SCP-1787-JP、および杏氏とクラスDレベルⅠ霊的存在の関係性は不明です。

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