SCP-1814-JP
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アイテム番号: SCP-1814-JP
 
オブジェクトクラス: Euclid
 
特別収容プロトコル: SCP-1814-JPもしくはそれに類似した効力を及ぼすと思われる物品を発見し次第、破壊または改竄または回収し、財団内に於ける関係者以外の人物の目に触れることを阻止してください。
回収を実行した場合、回収された情報または物品はサイト-8128のSCP-1814-JP情報管理部門へ取り扱い権限を移譲し、回収された全ての情報媒体を引き渡してください。
現在、SCP-1814-JP情報と、その所有者を発見する方法として、web監視網、メディア非体検閲、人工衛星による監視、独立素子への遠隔ハッキング、時間ブイによる時間跳躍事象に対する監視、スクラントン現実錨による情報比較から得られる再構築シナリオ発生の確認を含んだ確保プロトコル:Faustが稼働しています。
 
SCP-1814-JPに由来する時間旅行者と思しき実体を偶発的に発見した場合、近場の財団施設に報告し、対象との接触は極力避けつつ、追跡もしくは監視を続けてください。報告を受けた人員はただちにサイト-8145に連絡し、機動部隊き-11"看守"の出動を要請してください。
確保された実体は、SCP-1814-JP情報管理部門が蓄積してきた過去の情報との比較、あるいは尋問を含んだ調査・研究によって時間旅行者と判断された場合、サイト-8145の第2防護収容棟の個室に収容してください。時間旅行者ではないと判断された場合、Bクラス記憶処理を施した上で解放し、2ヶ月間の監視を行ってください。
時間旅行者によって何らかの形でSCP-1814-JPが一般社会に対して発表されてしまった場合、あるいはSCP-1814-JPに類する技術が独自に発見される恐れがある場合は、技術情報部隊さ-03"坑儒"が即座に対応してください。
 
現在、財団が把握している限りで3名の時間旅行者が未収容のままです。これらの確保対象の情報の詳細については、SCP-1814-JP情報管理部門へ問い合わせてください。
SCP-1814-JPへのプロトコルは全世界の財団施設で共有されています。現地での優位性強調のため、各支部ごとに別個のナンバーが割り当てられていますが、情報の一括管理と協調の呼びかけは米国が主導しています。
 
説明: 現在、SCP-1814-JPと定義づけられているのは1927年3月18日に作成された論文内の情報、1997年7月3日に一部web上に掲載された一連の論文と設計図案、2001年4月1日に保存された携帯端末上の一連の画像ファイル、2013年11月28日に保存されたHDD上のテキストファイル、2031年1月18日に発表されたと思われる論文内の情報です。
全てのSCP-1814-JPは生体が時間軸を飛び越えて、ある時点から任意の過去ないし未来へと個体が移動する技術について言及されています。複数の時間旅行者の実在と証言、SCP-1814-JP内の情報を基にした実験の結果から、SCP-1814-JPは時間旅行を可能にする情報であるとの事実が得られています。
全てのSCP-1814-JPに記載された情報には、特定の設計思想に基づく技術的な相似点が多く見られており、時間旅行者の証言からも、全てがある同一物の模倣であると見られています。しかしながら、時間旅行者の手による度重なるSCP-1814-JPの時間軸転移の事実から、その原典の発見は現在難航しています。
 
時間旅行者はSCP-1814-JPによって時間旅行を行った経験が一度以上ある知的生命体です。現在、その全ては現行人類と相違無い特徴を有しています。
しかしながら、時間旅行者が有する特定の行動パターンとして、SCP-1814-JP内の情報と技術を一般社会に拡散することで、時間旅行の技術を一般化させようとします。この動機については、後述の消失現象によるものと思われます。
時間旅行者はそれ単体では異常性も有さないため、SCPオブジェクトとして扱われません。しかし後述の消失現象が確認されて以降は、時間旅行者もオブジェクトの実体として認定し、高度な実験の対象とすべきであるとの議論が続いています。

SCP-1814-JPの理論を使用して開発された機器はいずれも特筆すべき異常性は有しておらず、SCP-1814-JPの理論が示す通りの挙動のみを行います。また、機密上SCP-1814-JPの詳細な内容は担当職員以外には開示されませんが、SCP-1814-JPの理論は主流科学から検証しても覆しようの無い科学的事実であり、この点についても収容対象と認定すべきかどうかとの議論がかつて行われていました。

何故タイムマシンが、タイムマシンを作れる理論が存在してはならないのかを、改めて説明したく思います。
タイムマシン技術が世に広まり、簡略化され、ローコストの技術として浸透した結果、何が起こるかを。
例えば、今ここでSCP-1814-JPが一般社会に発表され、それに対して我々が「何もしない」と決定したその瞬間に、この現在の時間は、今後数百年間、数千年間、数万年間に誕生したあらゆる時間旅行者によって一斉に干渉を受けるのです。
それだけではありません。無数の時間旅行者はありとあらゆる過去、未来へと同時に影響します。一人の時間旅行者が5年前に移動して息を吸い、10年後に移動して息を吐くことは、我々が「何もしない」と決めたその瞬間に同時に起こることなのです。

つまりは、こういうことです。タイムマシン技術が広まり、残り続けることが確定したその瞬間に、全ての時間軸に無数の時間旅行者が同時に出現し、あらゆる時間が同時に書き換えられるのです。
その結果として起こるのは、断裂です。時空連続体は完全に崩壊し、一瞬にして宇宙は「初めから存在していなかった」ことになるでしょう。
しかし、今そうなってはいません。何故ならば、我々が監視し、対処し、抑止しているからです。SCP-1814-JPの原典を発見しない限り、時間旅行者は増え続ける一方ですが、彼らが発表するSCP-1814-JPは即座に押さえています。
現実には、我々が新たなSCP-1814-JPの複製を押さえるまでの間に、その情報に触れた者が新たな時間旅行者になってしまうのですが、短時間で必ず複製を押さえるのであれば、時間旅行者の数はひとまずそれ以上は増えません。
それに、我々が「未来永劫必ず常に目を光らせている」という事実があるからこそ、時間旅行者はどの時間に逃げ込んだとしても、我々に発見されるリスクと、現地で死亡するリスクに挟まれて目立った動きがとれず、時間への影響も軽微になっています。

彼らを自由にしてはいけません。大手を振って正道を歩かせてはいけません。我々は、永久に終わりのない戦いを続けなくてはなりません。
勝利はなくとも、敗北してはならないのです。
少なくとも、未来の我々もそのようにしているからこそ、この現代の宇宙はまだ存在しています。

O5-2

補遺: 20██年██月██日、オーストラリア支部管轄に於いて収容、監視していた時間旅行者AO(Associated Object)-14が消失していたことが、米国管理の情報との比較によって明らかとなりました。米国管理の情報を除くAO-14に関する情報や記録、記憶に至るまでが消失しているばかりでなく、AO-14が所持していたSCP-1814-JP情報までが消失していたことから、時間的な異常、もしくは再構築シナリオの発生によるものと考えられ、それに基づいた仮説が有力視されました。
 
それによると、全ての時間旅行者は時間旅行を幾度も繰り返すことで、自身の存在証明そのものがSCP-1814-JPによる時間移動技術の存在に依存することになり、自身の存在証明が希釈された状態で生存している不安定な状態になります。ここで、財団の手になる収容と封じ込めがSCP-1814-JPの存在に一定の限界をもたらしたことで、再構築へと向かう時間軸の変容から自己の存在が立証不可能となってしまうために、時間上での消失を迎えたものと見られます。
こうした消失現象は、今回確認される以前より起こっていたものと思われ、米国管理の情報をもとに調査が進行しています。しかし、全ての時間旅行者がSCP-1814-JPの流布と普及に執着する動機こそが、この現象にあると考えられることから、時間旅行者たちはこの事実を何らかの方法により知っていたと見られ、併せて調査されています。
 
また、致命的規模では無いものの、時間旅行者の存在が結果的に再構築シナリオを誘引しているという事実から、時間旅行者をオブジェクトとして認定すべきであるとの議論が現在行われています。

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