SCP-1844-JP
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アイテム番号: SCP-1844-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1844-JPの存在する家屋の周囲は封鎖され、周辺住民にはカバーストーリ―「私有地により立ち入り禁止」を流布してください。またSCP-1844-JP内に対象が出現するとすぐに対象の特定を開始し、再出現後に記憶処理を行ってください。

現在、未収容のSCP-1844-JPが多数存在すると考えられています。担当職員は早急な捜索を行ってください。

説明: SCP-1844-JPは動物の姿を模したパペットです。SCP-1844-JPは必ず家屋内に存在しており、家屋の外へ持ち出そうとすると、瞬時に元の場所へ移動します。

SCP-1844-JPの異常性は午後9時~午後12時の間のみ発現します。異常性発現時間になると、SCP-1844-JPは自発的に動き始めます。SCP-1844-JPが動きだす際に、SCP-1844-JPの周囲からクラス1型霊的実体1が発生し、SCP-1844-JP内部へと侵入していることが分かっていますが、発生元などの特定は完了していません。SCP-1844-JPが自身の手をすり合わせるような動きを行うと、SCP-1844-JPの周囲に日本各地のヒト(以下対象と呼称)がランダムに1体出現します。また、上記の行動を行う前にSCP-1844-JPの周囲にヒトが存在している場合はそのヒトが対象となります。対象出現後、SCP-1844-JPは対象に対し未知の手段で会話を行います。この際自身のことを「猫又出張イタコサービス」の利用者であること、対象に飼われていたペットだということを証言します。午後12時を過ぎると対象はその場から消失し、対象の居住地へと移動します。

発見経緯: SCP-1844-JPはインターネット上に多数上がっていた「ぬいぐるみになった死んだペットと話した夢を見た」という投稿が財団の目を引き、さらにSCP-1844-JPを撮影したと思われる写真がアップされたことから場所の特定が行われ、収容に至りました。しかし、収容が完了したのにSCP-1844-JPのものと思われる投稿が減らなかったため、SCP-1844-JPは複数体存在すると仮定され大規模な捜索が行われました。現在までにSCP-1844-JPは27体発見されています。

補遺: 2019/7/26、SCP-1844-JPへのインタビューが行われました。

インタビュー記録1844-JP

対象: SCP-1844-JP

担当職員: 浮世博士

<記録開始>

SCP-1844-JP: こんばんわー!猫又出張イタコサービスですー!久しぶりやなあ!

浮世博士: ええっと、あなたは……。

SCP-1844-JP: なんや、分からへんの?まあ、当たり前やな。声聞いたことないもんな。あんたがちっちゃい頃に飼われてたなみちゃんやで!

浮世博士: ああ、なみちゃんですか……。

SCP-1844-JP: 「ですか」ってなんや、他人行儀やなあ。もうちょい肩の力抜きいや!

浮世博士: ……しかしですね。ちょっと今回はあなたに聞きたいことがあってですね。

SCP-1844-JP: 聞きたいこと?何いよ?

浮世博士: その、この猫又出張イタコサービスのことを聞きたいんです。

SCP-1844-JP: 聞きたいって、どないなことを?

浮世博士: えっと、起源というか、行動理念といいますか……。

SCP-1844-JP: 起源とかなら、うちは知らんよ?

浮世博士: え?

SCP-1844-JP: そもそも、このサービスがあったの、うちらよりずうっと前の話やしな。

浮世博士: そうなんですか……。何か知ってることとか、ないですか?

SCP-1844-JP: せやなあ……なんかな、昔早う亡くなってもうた猫が主人に逢うために始めたんがきっかけやと聞いたことあるで。知らんけどな。

浮世博士: なるほど、飼われていた人に逢うために始めたのがきっかけ……では、サービスの名前についている猫又というのは。

SCP-1844-JP: んー、さっきの猫が元になっとるとは思うで。多分。さっきも言うたように、うちが死ぬ前からあったからな。よう知らんで。

浮世博士: あなた達は自分が猫又か分からないんですか?

SCP-1844-JP: 分からんなあ。別にしっぽは割れてないしなあ?でも、猫又に近いんやない?霊やし。

浮世博士: そうですか……。このサービスは猫だけに行われてるわけではないようですが?

SCP-1844-JP: そやね。今はイヌとかウサギとか、いろんなペットたちがそれぞれでやっとるみたいやわ。サービス言うても個々で活動してる感が最近はあるなあ。

浮世博士: なるほど。団体というよりは1人1人が活動している感じですか。

SCP-1844-JP: そういうこと。……なあ、そろそろあんたと昔のこととか話したいわあ。せっかく逢えたのに、こんなんばっかつまらんわ。

浮世博士: ……少々待ってください。……SCP-1844-JPへのインタビューを終了します。

<記録終了>

終了報告書: インタビュー終了後、浮世博士は一般会話をSCP-1844-JPと行い、12時を過ぎると、浮世博士は自室に転移しました。

事案1844-JP-1: 2019/8/15、SCP-1844-JPの周囲にセクター-8129にて就寝中だったD-62789が出現し、12時になる前に転移する事案が発生しました。以下はその際の音声記録です。

音声記録1844-JP-1

<再生開始>

D-62789: ……ここは、どこだ?これは一体……

SCP-1844-JP: 貴様!

D-62789: うあっ!急になんだ!

[SCP-1844-JPがD-62789の首へと飛びつき、絞める。]

SCP-1844-JP: 覚えてないのか!俺は、お前に飼われていた、ナンバー065だ!

D-62789: な、なんばー065?って、お前……。

SCP-1844-JP: ああ、覚えてないんだろうなあ!貴様は俺たちのことなんて、なんとも思ってなかった!だから、あんなことをしたんだろ!なあ!そうなんだろ!

D-62789: ぐ、ち、違う……俺は……。

[この直後、D-62789がセクター-8129の自室へと転移した。]

<再生終了>

事案発生後、急遽D-62789へのインタビューが行われました。

インタビュー記録1844-JP-2

対象: D-62789

担当職員: 浮世博士

<記録開始>

浮世博士: 首は大丈夫ですか。D-62789。

D-62789: ……ああ、問題ない。

浮世博士: では、先ほどあったことについて、何か思い当たることはありますか?

D-62789: ああ、ある。

浮世博士: 教えてください。

D-62789: ……俺は、昔研究関係の仕事をしていたんだ。主に、生物関連の研究をしていてな。さっき逢ったナンバー065というのは、その時飼っていた、実験用のラットの分類番号だった。

浮世博士: ラット。ネズミですか。

D-62789: まあ、あんたらも良く使うから分かるだろうが、ラットには、かなり過酷な実験を行ったりもする。だから、情が移るととても実験がやりづらくなる。だけど、俺は主に動物の知能を検査したり、動きを調べたりするだけだったから、危害を加えなくても良かったんだ。でも、俺のラットを好む姿を見て気に入らないやつがいたみたいなんだ。ある日、俺は実験用ラットの解剖を任された。

浮世博士: 解剖を……それは何故?

D-62789: ……なんか、生きたネズミの内臓を使った研究を行うため、とか言っていたが、十中八九、俺への嫌がらせだろうな。解剖ならもっと慣れているやつもいたし、俺はそもそも解剖なんて少ししかしたことがない。

浮世博士: そんなことが……。

D-62789: 起こるはずがないって?確かにこの施設じゃあ起こりにくいかもな。でもな、先生。劣悪な人間でも、上に立つことはできるんだぜ。

浮世博士: ……それで、あなたはどうしたのですか?

D-62789: もちろんやったさ。断れるはずがなかった。合計で、64匹。しっかりと、しっかりと、全員の肉を裂いた。暴れる四肢の感覚、爪が皮膚に食い込み、力を失う感覚。生ぬるい血のおかげで、次第に金属トレーの冷たさが分かり始めたころ、俺は胃の中を全部吐き出した。[微かに震えだす]

浮世博士: 大丈夫ですか。少し、休みますか。

D-62789: [12秒間沈黙]いや、大丈夫。大丈夫だ。……すべてのラットを解剖完了したころには、すでに夜は明けていた。俺は、ラットの内臓を先輩たちに渡しにいったよ。そしたらさ、奴ら、どんなことを言ってたと思う?「あいつに任せたラットの内臓分別、終わったらどうするの?」「ああ、すぐに廃棄するよ。どうせすぐ代わりがくるし。急に死んだって言えばいいだろ。」って。はっきり一言一句、覚えてる。先輩達の肉感とともに、しっかり刻みこんだから。ラットと違って、ちょっと堅かったよ。

浮世博士: それは…‥。

D-62789: あとは、大体分かるだろう?俺は、唯一の証人だった先輩を殺したせいで、ただの殺人者になり、終身刑。そこで、あんたらに会った。……これが思い当たる節って奴かな。分かっただろう?

浮世博士: つまり、あのナンバー065は、その時殺したラットだと。

D-62789: ああ、ナンバー065って聞いて、納得したよ。あいつ、一番メス入れるときに暴れてたからなあ。気性が、荒くって、わんぱくでさ……[嗚咽]

浮世博士: D-62789。

D-62789: そうだよなあ。俺が死んでも、あいつらが赦すはずがないよなあ。ごめん、ごめんなあ。ごめんなあ。

<記録終了>

補遺2: 2019/8/17、再びD-62789がSCP-1844-JPの周囲に転移されました。以下はその際の音声記録です。

音声記録1844-JP-2

<再生開始>

D-62789: ……ここは。

SCP-1844-JP: こんにちは……。

D-62789: ひっ![跪く]済まなかった、許してくれ。許してくれ。もう、俺には何もできることはないんだ。許してくれ。

SCP-1844-JP: あ、あの、落ち着いてください!落ち着いて!この前はすみませんでした!

D-62789: ……え?

SCP-1844-JP: 私、ナンバー034です。あなたに危害を与える気はないです!とりあえず、話を聞いてください!

D-62789: ナ、ナンバー034?……俺のことを殺しに来たんじゃないのか?

SCP-1844-JP: 違います!私、いや、私たちは、あなたに感謝を伝えたかったんです!

D-62789: ……はえ?

SCP-1844-JP: 私たちは、確かに私たちを殺しました。一日のうちに、私たちすべてを。でも、それには理由があったのでしょう?

D-62789: え、でも、なんでそんなこと……。

SCP-1844-JP: 分かりますよ。私たちは見てましたから。あなたの歪んでいる表情を。感じましたから。目から流れる涙を。あんな表情をしている人が、私たちを殺そうとするはずがないって、そう思ったんです。

D-62789: そうか……そうか……。

SCP-1844-JP: なので、私たちはこのサービスを使って、あなたに感謝を伝えたい。そう思ってこの「猫又出張イタコサービス」を使ったんです。あなたが忘れてしまってるかもしれないから、記憶のいじり方も猫又の人に教えてもらったり。……ちょっぴり怖かったけど。……でも、仲間の1人に、正しい連絡が言ってなかったみたいで、あなたをあの研究員と勘違いしてしまったのです……。

D-62789: あの研究員って、先輩のことか……。

SCP-1844-JP: ええ、私たちはあの人を許しません。でも、復讐はすでにあなたが終わらせてくれたんですよね。なのに、あんなことになってしまって……謝っても謝り切れません。

D-62789: そんな……じゃあ、お前らは俺を、赦してくれるというのか?

SCP-1844-JP: 赦すも何も、私たちはあなたに感謝しているんです。ありがとうございました。私たちの短い一生を、精いっぱい愛してくださって。ただ消費されるだけの私たちに、愛を教えてくれて。

D-62789: そうか……そうかあ……真実を知ってくれてた存在が、いたんだなあ……。

SCP-1844-JP: それで……差し出がましいのですが、ナンバー065と話してやってくれませんか?あの子、すごくへこんでるんです。私たちの中でも、かなり若いほうだったので……。

D-62789: もちろんだ。むしろ、話させてくれ。

SCP-1844-JP: ありがとうございます!……でも、その前に。

[SCP-1844-JPが突如飛び上がりD-62789の額を手でつく。]

D-62789: うお、なんだ?

SCP-1844-JP: ちょっとした、記憶のおまじないですよ。ここでの思い出を、忘れないように。……じゃあ、変わりますね!

D-62789: 記憶のおまじない?それって――

[音叉の音が10秒間発生する。その後、別の声が発生する。この声を便宜上SCP-1844-JP-1と呼称する。]

SCP-1844-JP-1: ……篠田さん2

D-62789: ……ナンバー065か?

SCP-1844-JP-1: ごめんなさい。僕、ひどいことしちゃった。でも、僕、篠田さんのこと、本当に好きだったんだよ。だから……。

D-62789: いいんだ。

[D-62789がSCP-1844-JPを抱きしめる。]

D-62789: 俺が悪いんだ。お前が傷つくことじゃない。だから、謝らないでくれ。お前は、わんぱくな子だろう?元気な声を聞かせてくれよ。

SCP-1844-JP-1: ……うん、うん!

<再生終了>

終了報告書: 実験後、通常通り、Bクラス記憶処理が行われましたが、SCP-1844-JP、SCP-1844-JP-1との会話部分の記憶を処理することが不可能でした。これによりD-62789をSCP-1844-JP緊急担当職員として雇用する提案が出されました。この提案は現在承認待ちとなっています。

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