SCP-1886-JP
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消滅した財団施設跡地.jpg

SCP-1886-JPの影響によって消失したサイト-81██の跡地

アイテム番号: SCP-1886-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1886-JPはその性質から、完全に収容もしくは事前に防止することは困難であると判断されています。このため、SCP-1886-JP及びSCP-1886-JP-1の特徴を財団日本支部の各施設に周知することが義務付けられます。現在、SCP-1886-JP-1を恒久的に収容するための研究が進行中です。

SCP-1886-JP-1と疑われる人型実体の出現が確認された場合、その場におけるあらゆる手段を行使して当該実体を終了しなければいけません。SCP-1886-JPの発生による被害を事前に防止した後、速やかに対象となった財団施設への調査を開始し、原因となった不正行為を特定する必要があります。特に、対象となった財団施設の管理官を始めとした施設上層部の不正が存在していないかを重点的に調査して下さい。特定が困難な場合は一時的に対象の施設を封鎖し、所属している職員全員にクラスC記憶処理を実施して下さい。また、財団日本支部理事「獅子」はAクラス職員であり、特別な事情が存在しない限り一般の財団施設を訪問することはありません。

なお現在、SCP-1886-JP及びPoI-1933("宮沢賢治")1との関係について調査が進行中です。

説明: SCP-1886-JPは特定条件下の財団施設で発生すると考えられている異常現象です。現在までに確認されているSCP-1886-JPの影響範囲は日本国の領土及び排他的経済水域に建設されている財団日本支部の施設であり、民間施設及び財団日本支部以外の財団施設でSCP-1886-JPが発生した事例は確認されていません。

SCP-1886-JPが発生する原因の詳細は現在も調査中ですが、複数の財団職員が恒常的に勤務する施設において、特定もしくは複数の職員に対する不正・いじめ・嫌がらせといった行為が1年以上継続的に行われた場合に発現する可能性が高くなることが確認されています。SCP-1886-JPが発現状態となった時、対象となった財団施設の内部に財団日本支部理事「獅子」と名乗る人型実体(以下、SCP-1886-JP-1)が出現します。財団の調査により、この事態において本物の財団日本支部理事「獅子」は一切関与しておらず、無関係であることが証明されています。

これまでに生存者から収集された情報によると、SCP-1886-JP-1はモンゴロイド系の初老男性の風貌をしていることが確認されており、その施設内で最も人口の多い部屋に出現します。SCP-1886-JP-1は出現した部屋に存在する財団職員達に対し、およそ十数分程度に渡って「この施設ではまともな財団としての活動はできない」という旨の主張を行った後に、対象となった財団施設の解散を命じます。解散を命じられた対象の施設及び所属していた職員は即座に消失し、最終的に財団施設及び職員が存在していた痕跡はほとんど残存しません。SCP-1886-JP-1もこの時点で完全に消失します。これまでにSCP-1886-JPの影響で消失したと判明している財団施設及び職員が発見・回収された事例は存在しません。

SCP-1886-JPは発生直後から施設の解散が命令されるまでの間にSCP-1886-JP-1を終了することで一時的に回避することが可能です。SCP-1886-JP-1は終了された場合、即座に消失することから、遺体の回収に成功した事例は現在まで存在していません。SCP-1886-JP-1に対する記憶処理及び拘束の試みは全て失敗に終わっていることに留意して下さい。ただし、上述の不正行為といった要因が除去されない限り、SCP-1886-JP-1はその後も定期的に繰り返し出現することが確認されています。財団はSCP-1886-JPが発生するごとに施設の全職員に記憶処理を実施することは非効率と判断しており、可能な限り、対象となった財団施設で不正行為に及んでいる加害者及び被害者に対して適切な処置を実施することが推奨されています。

補遺: 20██/██/██、サイト-81██でSCP-1886-JPが発生した際に、SCP-1886-JPの収容担当者である沢村博士がSCP-1886-JP-1と接触しました。沢村博士はこの時録音機材を所持していたため、SCP-1886-JP-1に対するインタビューを記録することに成功しています。以下はインタビュー記録を転写したものです。

対象: SCP-1886-JP-1
インタビュアー: 沢村博士
付記: このインタビューは不測の事態に備えるため、小型の拳銃を所持した状態で実施された。

<録音開始>

[SCP-1886-JP-1が演説している。]

沢村博士: お話し中申し訳ないのですが、1つ聞きたいことがあります。よろしいでしょうか。

SCP-1886-JP-1: …何でしょう。

沢村博士: あなたは一体、何者なのですか?

SCP-1886-JP-1: 私は財団日本理事の「獅子」です。

沢村博士: あなたが日本支部理事の「獅子」ではないことは既に調査で判明しています。そもそも財団日本支部の理事はAクラス職員で、このような施設を訪れることは基本的にあり得ません。あなたはどうして財団の理事であると嘘をついてまで、このようなことを行う必要があるのですか?

[SCP-1886-JP-1が1分ほど沈黙する。]

沢村博士: SCP-1886-JP-1、お答え下さい。

SCP-1886-JP-1: そんな大した理由じゃありませんよ。私はただ、不正が罷り通る理不尽が許せないだけです。

沢村博士: 本当にそれだけですか?

[SCP-1886-JP-1が20秒ほど沈黙する。]

SCP-1886-JP-1: …私は昔、酷いいじめや嫌がらせを受けたことがありましてね。それだけでも相当辛かったのですが、何より堪えたのは皆そのことを知っていたのに誰も助けてくれなかったことでした。だから決めたんです。こんな理不尽なことがまかり通る組織など消してしまった方が世の為人の為だとね。それから今の活動を行うようになりました。もう数えきれないほどの会社や団体でこんな理不尽と戦ってきたんです。宮沢さんという方2が私の活動を小説にしてくれたこともありました。

沢村博士: …後で確認しておきます。確かにあなたは相当以前から活動していたようですね。しかし近年、あなたは財団に活動の軸を絞っているように見受けられます。財団の調査でもあなたが財団の施設を標的にしていることは明白です。なぜあなたは財団を狙うのですか?

SCP-1886-JP-1: 今の社会の中で、最も闇が深く、理不尽さが溢れている組織。こう言えばあなたもお分かりではないですか?私は人類を守ることを目標に掲げ、日々奮闘している組織に巣食う不正や悪事と戦うと決めたのです。財団には私と同じ名前の人がいるようなので、名乗りやすかったのも理由の1つですね。

沢村博士: あなたが仰りたいことはよくわかりました。その上で言いたいのですが、このようなことは止めて貰うことはできないのですか?正直に言えば、半分はあなたの考えに賛同したい気持ちもあるのですが、財団として無視するにはあまりに被害が大きすぎるのです。

SCP-1886-JP-1: 止めてほしいですか。…あなたは知っていますか?ここの施設の管理官が収容しているアノマリーを利用して私腹を肥やしていること。それを咎めた部下に濡れ衣を着せてDクラス職員に降格させたこと。そのことを皆知っているのに、何年も見て見ぬふりをし続けてきたこともです!こんな不正が横行している施設の解散を止めてほしいとあなたは言うのですか?あなたもどうせ知ってて見て見ぬふりをしてきたんでしょう?私が見てきた財団施設はどこもこんなものです。それでもあなたは同じことを言うつもりなのですか?

[沢村博士が沈黙する。]

SCP-1886-JP-1: だから宣言します。この施設の連中は皆同罪です。そんな組織で人類を守るための活動とか何かの冗談としか思えない。だからやめてしまえ!サイト-81██の解散を—

沢村博士: SCP-1886-JP-1を終了します!

[沢村博士がSCP-1886-JP-1の胸部に向けて3回発砲する。SCP-1886-JP-1がその場に倒れる。]

<録音終了>

終了報告書: インタビュー終了後、直ちにサイト-81██の職員への聞き取り調査及びサイト-81██管理官に対する査問を実施した結果、SCP-1886-JP-1の主張が概ね事実であったことが証明されたため、管理官は速やかに拘束された。その後、サイト-81██では現在までSCP-1886-JPの発生は確認されていない。

インタビュー実施後、これまでにSCP-1886-JPが発生した全ての施設に対する再調査が実施されました。その結果、再調査された財団施設の内、90%以上の施設において管理官もしくは施設幹部が主導したと推測される人事権を行使したハラスメント及びアノマリーの不適切管理といった不正行為が発見されました。財団日本支部理事会は従来推測されていた条件とは別に、施設上層部の不正行為がSCP-1886-JPの発生に影響を及ぼしている可能性が高いと判断し、特別収容プロトコルの改定を実施しています。

以下は、特別収容プロトコル改定時に財団日本支部理事会が発表した声明文です。

この度、強調したいのは施設管理官の責任の重さである。我々の汚職や不正は我々自身の手で取り除かなければならない。そのことで付け込まれる隙を与えることが決してあってはならないことを全ての施設管理官は自覚すべきだ。今度のプロトコル改定もその自覚を促すためのものと言って良い。

我々は職員の不正行為にはそれ相応の罰をもって臨んでいるし、そのために毎年少なくない人数の職員が処分されているのは諸君らも知っていることだろう。それ故、諸君の中にはSCP-1886-JP-1の主張に内心賛同している職員も少なくないと私は推測している。その上で言わせてもらうが、そのような感傷は財団には不要である。

なぜなら、そのような感傷を抱く時点で、逃避しているも同然だからだ。財団内の汚職や不正は排除されるべきであるが、それはあくまで財団の活動を妨げる要因を除去し、財団の理念を遂行する一助とするためでなければならない。施設の職員を全て抹消して「リセット」しようとするSCP-1886-JP-1の行動はその点で財団の姿勢に明確に反する。だからこそ、諸君はSCP-1886-JP-1を否定しなければならない。冒頭で述べたように、財団の汚職や不正の排除は我々自身が不断の努力で実現するべきだ。その努力を自ら放棄し、アノマリーの主張に同調するようなことがあるとするならば、それは財団の使命からの明白な逃避以外の何物でもないことを理解するべきである。

もう一度言う。SCP-1886-JPとは財団にとって収容すべきアノマリーであり、SCP-1886-JP-1の行動は財団にとって単なる破壊行為に過ぎない。

我々の使命をもう一度思い出せ。我々の使命とは異常存在の脅威と恐怖から人々を守ることであり、その為に異常存在を確保し、収容し、保護することだ。その上で、我々が行わなければならないことをここに示しておく。それは財団の破壊をもたらすSCP-1886-JPの阻止と、この現象に関与しているSCP-1886-JP-1の収容である。諸君はそのことを肝に銘じてほしい。

財団日本支部理事「獅子」

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