SCP-189-JP
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財団の管理下におかれたSCP-189-JP。

アイテム番号: SCP-189-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-189-JPは移動させることができないため、建造した自治体から維持管理を引き継いでいます。中央放水口には財団が新たにゲートを設置し、監視カメラによって24時間監視します。2名以上の警備職員が放水口の周囲に常駐しなければなりません。SCP-189-JP-1Aは、低危険度の人型オブジェクト用の収容室に収容されます。現在財団では、1体のSCP-189-JP-1Aを収容しています。SCP-189-JP-1Aには、3日に1度、200gの石英を与えます。与える素材は、市販されているガラスでもかまいませんが、水晶を与えると対象の精神に安定をもたらします。

財団では現在、SCP-189-JPおよびSCP-189-JP-1Aから、その構成素材を持ち出した人間を追跡調査しています。

説明: SCP-189-JPは、███に存在する██ダム、およびその放水口です。

ダム中央の放流管内部にあるコンジットゲート1を通ると、SCP-189-JP-1と呼ばれる異常空間に出ます。当該のコンジットゲートは、SCP-189-JP-1Aが開いた場合にのみ、SCP-189-JP-1へと繋がります。ダムの機能を使用しゲートを開いた場合、通常通りダム湖と繋がり、放水が行われます。

SCP-189-JP-1は、22平方km程度の平らな空間です。天井までの高さはどの地点でも10m前後で一定しています。SCP-189-JP-1は、およそ当該のダム湖の湖底の形と一致しており、天井からはダム湖の水中が見えます。天井には、ガラスのような構造物は存在しないのにも関わらず、ダム湖の水は未知の力で支えられており、光(電波も含む)と熱の一部を除いて、物質の往来はできません。昼間はダム湖から日光が供給され、地上の3分の2程度の明るさが保たれます。原理は不明ですが、ダム湖の湖底に異常は見られず、ダム湖側からSCP-189-JP-1を視認することはできません。

後述する記録から、SCP-189-JP-1にはかつて町が存在しており、全ての構造物が二酸化ケイ素 (SiO₂) の結晶(以下水晶)で構成されていたと考えられます。現在は、その残骸らしき水晶の瓦礫が散見されるのみで、SCP-189-JP-1A-001の証言するような構造物があったかどうか確認することはできません。破壊が困難だったと考えられる機械の一部や、建造物の根元部分らしきものは発見されています。それら構造物の接合部は未知の加工方法が用いられていると見られ、構造物全体が水晶単体と同等の強度を保っているため、財団保有の機材を持ってしても破壊には時間を要します。

SCP-189-JP-1A群は、SCP-189-JP-1に存在していた町に住んでいたと考えられる、人型オブジェクトです。現在では、収容下にあるSCP-189-JP-1A-001が残るのみであり、当該オブジェクトについての記述は、SCP-189-JP-1A-001を基準とした情報になります。

SCP-189-JP-1A群は、体全体が水晶でできており、物理的損傷に対し非常に強靭です。人間と同等の知性を有しており、発声機構は不明ながら発話もできます。わずかながら、昆虫の外骨格に似た外見、関節構造が見られるものの、筋肉組織や循環系の体液などは認められず、生体維持に関する機構ほぼすべてが未解明です。各個体ごとに多少の大きさの違いがあったようで、平均的な身長は180cm前後だったと考えられます。食事は主に、SCP-189-JP-1の地下から採掘される水晶を含んだ鉱物で、必要な道具や建物も採掘した水晶で製造されていました。SCP-189-JP-1A群の町は、破壊直前までは107名の住人がおり、非常に文明的かつ、平和的な生活を送っていたものと思われます。

SCP-189-JP-1A-001は、SCP-189-JP-1にいた唯一の生存者です。

SCP-189-JP-1A-001の知能は比較的高く、また財団を含む人間に対して必要以上に友好的ですが、人間社会に対しいくつかの誤解が生じており、意思疎通には困難が伴っています。これはSCP-189-JP-1A群と最初に接触した人間による、意図的な刷り込みだと推測されます。

20██/06/20 ███の██ダムにおいて、減勢工2に大量の水晶が堆積していたため、自治体により、ダム本体およびダム湖周辺の地質調査が行われました。その過程において、SCP-189-JP-1が発見されたため、情報を察知した財団が収容に向かいました。自治体から当該物件の管理業務一切を引き継ぎ、関係者に記憶処置を行いました。自治体の調査、財団の初期収容時、どちらにおいてもコンジットゲートの前に人間が立つことで、SCP-189-JP-1A-001が、SCP-189-JP-1側からゲートを開き、内部へ侵入が可能となりました。

SCP-189-JP-1A-001は、当初SCP-189-JP-1からの退去に対し強い抵抗を示していましたが、研究員の説得により財団の収容に同意しました。収容施設への搬送前、SCP-189-JP-1A-001は会話をしていた研究員と警備職員2名を、殴打による一撃で死亡させています。衝撃力計測機器によれば、SCP-189-JP-1A-001の殴打は衝突の瞬間に最大2,268kgの圧力が発生しており、前述の職員は即死しました。

聴取記録A001-001からの抜粋: 20██/07/01 09:10:35

研究員T: あなたのお名前をもう一度お聞かせいただけますか?

SCP-189-JP-1A-001: SCP-189-JP-1A-001ですね?

研究員T: いえ、あなたの町で、あなたの仲間に呼ばれていた名前です。

SCP-189-JP-1A-001: 門番です。門番と呼ばれていました。門番は私しかいなかったので。正確には3代目門番ですね。

研究員T: なぜ研究員を殴ったのですか?

SCP-189-JP-1A-001: 外へ出ることになるので、信頼の挨拶をして、私も砕けようと思ったのですが。

研究員T: どういうことでしょう。

SCP-189-JP-1A-001: あなたたちの間では、親しいもの同士の証として、殴りあうと聞いております。

聴取記録A001-003からの抜粋: 20██/07/12 09:03:20

研究員T: 人間社会において、殴り合いは親しい間柄での挨拶ではありません。

SCP-189-JP-1A-001: では、親しくないうちに殴りあうのが礼儀でしょうか?

研究員T: いえ、人間を殴ってはいけません。

SCP-189-JP-1A-001: 私は人間ではありません。私は殴ってもらえないということでしょうか?

聴取記録A001-003からの抜粋: 20██/07/13 09:21:47

SCP-189-JP-1A-001: 私はいつ殴ってもらえるのでしょうか。

研究員T: 我々の管理下において、あなたに危害を加えることは決してありません。付け加えるなら、殴られることは喜ばしいことではありません。

SCP-189-JP-1A-001: そうですか。私たちは、殴られ、砕けることで、あなたたちのお役に立てると聞きました。早く砕けたいです。

[20██/07/13 09:23:51]
研究員T: あなたたちに、最初に接触した人間の話を聞かせてもらえますか。

SCP-189-JP-1A-001: とても良い人たちでした。私たちに、新しい喜びを教えて下さいました。今はもう去ってしまいました。

研究員T: 彼らが、あなたたちの町を破壊していったことに、疑問を感じませんか? 彼らに、悪意を感じませんでしたか?

SCP-189-JP-1A-001: 人間に悪いヒトたちなどいません。

補遺01: 収容直前までSCP-189-JP-1A-001がつけていたと考えられる日誌を回収しています。

補遺02: 財団では現在、SCP-189-JP-1A-001の日誌に記された、破壊行為に関与したと見られる3名の人間について、徹底的な調査を行っていますが、具体的な成果は上がっていません。

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