SCP-1905-JP
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アイテム番号: SCP-1905-JP

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SCPSat-1905-JP"ヴェルナー"と同様の外観を持つGPS衛星

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-1905-JPは現在収容出来ていません。存在の隠匿のため、財団情報部門は各国天文観測機関を常に監視し、SCP-1905-JP発見に繋がる研究を阻止してください。各国宇宙機関における宇宙探査計画も同様に監視し、SCP-1905-JPを通過する計画に対する監査を行います。SCP-1905-JPの範囲の観測のため、ストロンチウム光格子時計1を搭載し、GPS衛星に偽装した準同期軌道2衛星 SCPSat-1905-JP"ヴェルナー"から送信される時刻信号を常時記録します。この観測結果に基づき、各国の管轄機関を通じて全ての人工衛星の時刻を補正し続けてください。

説明: SCP-1905-JPはアメリカ合衆国ニュージャージー州プリンストン市の上空2█,███km付近の宇宙空間を中心とした2種類の異常空間の総称です。SCP-1905-JP全体は球状であり、地球自転に同期して移動します。201█/██/██現在の大きさは観測により半径1█,███kmと見積もられており、█.██km/日の速度での半径の拡大が確認されています。現在のまま膨張が進んだ場合、202█/██/██に地表に到達すると予想されています。SCP-1905-JPの拡大を止めるあらゆる試みは失敗しています。拡大速度の低下と封じ込めに向けたプリンストン計画が現在進行中です。

SCP-1905-JP-AはSCP-1905-JPの西半球を占める領域で、重力場の存在による空間歪曲が一切存在しない純ユークリッド空間です。この空間では重力は古典論的な「質量を持った物体同士が引き合う力」として振る舞い、一般相対性理論における重力場の空間歪曲などの性質を示しません。このため物体がSCP-1905-JP-Aを通過する際、地球重力により本来発生するはずの地球地表上に対する主観時間の遅延が発生しません。これにより領域内を通過するGPS衛星などのあらゆる人工衛星に対する影響が発生しており、関係機関を通して随時時刻補正を行う必要があります。

SCP-1905-JP-BはSCP-1905-JPの東半球を占める領域で、量子力学における不確定性原理に基づく諸現象が観測できない異常空間です。この異常性によってSCP-1905-JP-B内部では、トンネル効果3の発生、カシミール効果4による[編集済]、量子もつれ効果5、[編集済]などが確認されません。この異常による影響としては、これらの現象の性質を利用した各種装置が空間内で利用できなくなることが挙げられます。影響についての詳細は補遺1を参照してください。

SCP-1905-JP-AとSCP-1905-JP-Bの境界は西経74度40分██秒と地球の自転軸を通る面であり、地球の自転及びSCP-1905-JP自体の公転に対して常にこの位置関係を維持します。それぞれの空間の表面付近において、SCP-1905-JP-A側では仮想粒子6の異常な生成、SCP-1905-JP-B側では異常な重力波の発生が確認されています。この現象については、それぞれトンネル効果による仮想粒子の浸透及び空間歪曲による拡大が目的という説が有力ですが、現状では互いの異常性によってこれらの効果を打ち消し合っているため境界面の変動はありません。境界面を通過する際に重力場異常による微小な主観時間の遅延が発生するため、時刻補正にこの影響を追加する必要があります。

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財団内報7に掲載された原子時計のずれに関するグラフ。

補遺1: SCP-1905-JPは197█年に継続的な観測によって判明した、GPS衛星搭載のセシウム原子時計の異常なずれによって発見されました。財団は当時アメリカ合衆国政府の協力の下GPSの試験運用を行っていたため、一般相対性理論で説明できない衛星の時計のずれが周期的に発生する現象にいち早く気づきました。財団の宇宙航空研究部門の天体物理学者であるカウフマン博士による解析で準同期軌道上に異常領域があることが判明し、有人探査機による現地調査が実行されました。

探査ログ1905-JP-001


この探査によりSCP-1905-JP-A,B存在とそれぞれの大まかな性質が明らかになり、後の██回に渡る探査によりSCP-1905-JPはKeterクラスオブジェクトに指定されました。SCP-1905-JPの膨張速度は観測開始時からの若干の減速はあるものの、このままでは遅くとも200█/██/██までに地球の地表に達する事が予測されています。膨張速度と到達予測時間は常に変動しています。

SCP-1905-JPが地球を飲み込んだとしても、日常生活レベルでの異常性を感じることは難しいだろう。SCP-1905-JP-B領域内での半導体技術の飛躍的な発展10が見られるようになったところで、その程度の異常性を収容するのは容易い。しかし常に人類を先導し、現代科学の遥か先を行く異常存在たちと対峙してきた我々財団にとっては違う。我々の機密情報が人類が持ちうる究極の機密であるのは量子暗号技術に保証されており、量子コンピュータ技術によって解読した暗号を元に秘匿された異常物品を見つけることが出来る。量子力学における[編集済]の原理により、nPDN装置により霊体的な異常存在を現実に固着できる。SCP-███-JP由来の重力場制御技術は、幾つもの時空間異常の封じ込めに寄与している。多くの現実改変能力者たちを抑えこむことができるSRAの基礎技術は、[編集済]による重力場[編集済]及び、仮想粒子生成における[編集済]理論によって成り立っている。これらの技術による異常性の封じ込めが不可能となったとき、代替手段を持たぬ我々は多くのオブジェクトの収容違反を許すだろう。これによって予想され得る損害は、対象となる多くのオブジェクトの危険性も相まって、もはや強制的な無力化を辞さない手段を取ってしても我々の手に負えるものではないとの見積りがなされている。そしてこれは収容違反が更なる収容違反を呼ぶようなXK-世界終焉シナリオの発生を意味しており、SCP-1905-JPの無力化、あるいは拡大阻止のためのあらゆる手段を講じる必要がある。—O5-█

SCP-1905-JPの封じ込めの試みは、財団が持つ多くの対異常存在技術の無力化もあって失敗しました。SRAを起動状態でSCP-1905-JPに突入させることで周囲1█.██mの空間への異常性の浸透を防ぐことが可能ですが、一度シャットダウンすると再起動が不可能になること、SCP-1905-JPを完全に覆うだけのSRAを生産することが不可能であることからこれによる封じ込めは不可能です。このため引き続きSCP-1905-JPに対する有人探査を行い拡大阻止の手段を模索すると同時に、地表への到達がやむなしとなった場合に備えて収容違反が予測されるオブジェクトの終了、異常存在の拡散が起きた場合の新世界秩序の構築について手段を模索する"B.B.計画"11が進行中です。代替プロジェクトの発足により、B.B.計画は現在凍結中です。

補遺2: 1995年頃、SCP-1905-JPの膨張速度が段階的に█.██km/日まで低下するという現象が確認されました。この現象は調査の結果、素粒子物理学における第2次ストリング革命と呼ばれるムーブメントにおいて、関連する超弦理論についての論文12が発表される度に起きていたことが確認されました。その後の財団基礎物理学研究部門による幾つかの一般向け論文発表13と観測により、量子重力理論についての革新的な研究が発表される毎に膨張速度が低下していくというSCP-1905-JPの新たな性質が証明されました。このことから量子重力理論の完成、すなわち一般相対性理論的上の重力場の理論の量子力学上での記述についての正確な理論が一般向けに公表された時、SCP-1905-JPは膨張を停止、あるいは異常性を消失するとの説が現在有力視されています。これを受け、O5評議会の承認の下プリンストン計画が実行されました。

プリンストン計画 概要

目標: SCP-1905-JPの地表到達を阻止するため、財団外部を含めた物理学者による量子重力理論の完成を目指す。

組織: 財団基礎物理学研究部門内に本プロジェクトの専門部局を設置し、████部局長をはじめ1█人の上席研究員を運営委員会として任命する。委員会は部局所属の研究者の研究計画を監査し、外部発表の承認を行う。また、委員会は世界各国の関連する大学・研究機関の研究進捗状況を調査するチームを選抜し、調査結果から必要に応じた助言、資金援助を行う権限を有する。█████大学、███████研究所をはじめとする研究機関系財団フロントは、これら外部干渉を行う窓口とする。

人員: 上記の運営委員会に加え、財団基礎物理学研究部門所属の理論物理学者███名を専属研究員として任命する。また、外部機関に対する調査チームにはそれ以外の財団所属研究者を必要に応じて割り当て、通常の研究業務に加えて論文の精査などを行う。調査チームにはまた博士号を持つフィールドエージェントを選抜し、各外部機関に潜伏させることでより詳細な研究状況の把握に努める。

予算: 財団基礎物理学研究部門には、本プロジェクト用に追加予算が割り当てられる。この予算はO5評議会の方針の下運営委員会が直接配分を行う。

— 上席研究員 ██

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