SCP-1909-JP
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実体化するSCP-1909-JP-2

アイテム番号: SCP-1909-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1909-JPはサイト-8169の標準型飼育室内に収容してください。B1からB7までの階層には無線型監視カメラを設置し、担当研究員はSCP-1909-JPの行動を常時記録します。SCP-1909-JPの同型個体の出現予想地域は、財団フロントによって常時監視されなければなりません。飛行イベント発生後、同型個体の出現が確認された場合は、収容プロトコル「フナラパ」を発動し、同型個体を確保・収容してください。

説明: SCP-1909-JPは異常性を持つヒグマ(学名:Ursus arctos)です。現在、飼育室には5頭の個体が収容されています。体長平均は2.8m、体重は平均780kgです。SCP-1909-JPは、食事・水分補給・排泄を一切行いません。また、動物や人間に対して攻撃的になる事はなく、ほとんど動くこともありません。SCP-1909-JPは、時折口腔内から橙色の液体を100〜500mmlほど吐き出す事があります。液体は腐敗臭を放っており、粘性を持ちます。液体の粘度は0.058Pa・sです。この液体の成分をLCLC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析機)1で解析し、成分を下記のようにまとめました。

諸成分一覧
液体の構成比:水と化学物質が9:1
化学物質は下記の3群に分類される。
1群:タウロウルソデオキシコール酸等の胆汁酸代謝物。
2群:血漿 ヘモグロビン タンパク質 脂質 グリコーゲン ブドウ糖 鉄分等の血中液体成分。
3群:塩化ナトリウム 塩化マグネシウム 硫酸マグネシウム 硫酸カルシウム 塩化カリウム等の塩分。

以上の解析結果から、SCP-1909-JPが吐き出した液体は、胆汁と血液と海水の混合物である事が判明しました。

SCP-1909-JPの異常性は、背や腹に手で直接触れた時に発現します。SCP-1909-JPに接触すると、SCP-1909-JPの体内に潜り込む事が可能となります。SCP-1909-JPの体内に潜り込んだ人間(以下対象と表記)はSCP-1909-JPの体内を泳いで移動する事が可能です。SCP-1909-JPの体内はSCP-1909-JPの体毛・血液・筋肉・内臓が混ざり合った空間となっています。空間の広さは10m×25m×50mであり、対象は空間内部を満たす液体を吸引することにより、空間内での呼吸が可能となります。対象は「下を目指したい」という欲求を抱きます。この欲求には強制力はなく、対象自身が選択可能です。

50m下降した時点で、対象はSCP-1909-JP-1の天井部に到達します。SCP-1909-JP-1は、5m×5m×5mの広さを持った部屋です。天井部はゼリー状で、物理的破壊を行わずとも容易に通過する事が可能です。対象は水中を降下するように、緩慢にSCP-1909-JP-1の床へと降着します。SCP-1909-JP-1内の壁面は不明な原理で発光しており、室内照明のように作用しています。壁の素材は外見からモルタル製のように見えますが、素材自体は強固であり、サンプルの採取には成功していません。SCP-1909-JP-1の壁面を壁透過レーダー2でスキャンしましたが、電磁波の反射は一切なく、スコープには何も映りませんでした。壁の隣接区画は存在しないと考えられます。また、SCP-1909-JP-1内部に電磁波を照射して室内の3Dイメージングを試みましたが、電磁波の反射はなく、イメージングに失敗しています。この調査の過程で、SCP-1909-JP-1は電磁波を完全に透過する事が判明しています。この特性により、SCP-1909-JP-1内部に無線型監視カメラを設置する事が可能となっています。

SCP-1909-JP-1の中央にはSCP-1909-JP-2が存在します。SCP-1909-JP-2はクマ科の個体であり、複数の種類が存在します。SCP-1909-JPと同様、背や腹を触ると内部に潜り込む事ができ、空間内部で50m下降するとまた同じデザインのSCP-1909-JP-1に到達します。現在、SCP-1909-JPの体内空間は7つの階層に分けられている事が判明しています。これらの階層をB1及びB7と呼称します。

以下は、B1からB7に存在するSCP-1909-JP-2を表にしてまとめたものです。

階層 SCP-1909-JP-2
B1 ツキノワグマ(学名:Ursus thibetanus)
B2 アメリカグマ(学名:Ursus americanus)
B3 メガネグマ(学名:remarctos ornatus)
B4 ナマケグマ(学名:Melursus ursinus)
B5 マレーグマ(学名:Helarctos malayanus)
B6 ジャイアントパンダ(学名:Ailuropoda melanoleuca)
B7 ホッキョクグマ(学名:Ursus maritimus)

B7に存在するSCP-1909-JP-2の体表に触れて体内へと潜り込むと、対象はSCP-1909-JP-3に到達します。以下は、SCP-1909-JP-3内部の詳細です。

SCP-1909-JP-3
概要:広大な空間、無人機で探査した結果、少なくとも8,000万km2の広さを持つ事が判明している。
大気組成: 地球上と同様であり、呼吸可能。
天然光源: 1億4960万km離れた宙域に存在する恒星。放射組成は地球上の太陽と同様。
海洋: SCP-1909-JP-3内部の90%を占める。SCP-1909-JPが口腔から吐出するものと同一であり、腐敗臭を放つ。

SCP-1909-JP-3内部には、SCP-1909-JP-4が存在します。
以下は、SCP-1909-JP-4の詳細です。

SCP-1909-JP-4
概要: 広さ1,825km2の島。
環境: 植生や野生動物は存在せず、水脈も存在しない。
自然現象: 時折マグニチュード3から5の小地震が発生する。

SCP-1909-JP-3に到達した対象は、SCP-1909-JP-3の上空500mに転移します。対象は緩慢な降下を開始し、SCP-1909-JP-4の浜辺に降着します。浜辺には半液状化したSCP-1909-JP-2が出現します。SCP-1909-JP-2個体は、海水と半ば同化しつつ浜辺へと押し寄せます。浜辺に存在するSCP-1909-JP-2の個体数は、多く見積もって常時500頭〜1000頭です。SCP-1909-JP-2の多くが半液状化しているため、浜辺に上陸する事はありません。SCP-1909-JP-2個体は、時折半液状の状態から変移し、実体化する事が分かりました。実体化する個体は決まって1体のみです。

実体化したSCP-1909-JP-2は、対象を探して浜辺を4本足で歩き始めます。対象は、海からSCP-1909-JP-2が出現すると、SCP-1909-JP-2を探し始めます。SCP-1909-JP-2と対象が遭遇(以下”邂逅イベント”と表記)すると、対象の腹部が液状化を始めます。そして、SCP-1909-JP-2は対象の体内に潜り込みます。対象は物理的に破壊されず、SCP-1909-JP-2が対象の体内に完全に没入すると、対象は液体となって即座に蒸発します。

邂逅イベントが完了すると、B7からB1に変化が生じます。(以下、”射出イベント”と表記)
射出イベントはB7からB1へ、下層から上層へ向けて発生する事が分かっています。

射出イベントの発生手順
1: SCP-1909-JP-2は、二本足で立ち、頭部を天井に向け、口腔から橙色の液体を高圧で噴射する。
2: 噴射された液体は、天井を貫通し、一つ上の層のSCP-1909-JP-2に突き刺さる。
3: 液体に貫かれたSCP-1909-JP-2個体は、天井に向けて液体を高圧放射する。
4: これらの手順がB7からB1まで順番に発生する。
5: 高圧噴射された液体がB1の天井を貫通した時点で、射出イベントは完了する。

射出イベント完了後、SCP-1909-JPの口部から液量250lの液体が放出され、液体から対象とSCP-1909-JP-2が出現します。出現した対象は、SCP-1909-JPに潜行する以前となんら変化がありません。また、出現するSCP-1909-JP-2個体はB1からB7に存在する個体のいずれかが、ランダムに出現します。SCP-1909-JP-2個体は、出現と同時に溶解していき、最終的には橙色の液体となり、即座に蒸発します。

補遺: SCP-1909-JPは、北海道██村付近で発見されました。██村周辺の狩猟従事者の間で「人を飲み込む熊がいる」という噂があり、財団の目を引きました。エージェントが調査を行なった結果、SCP-1909-JPは、███村から200m離れた山小屋の外部に鎖で繋がれているのが発見されました。小屋の所有者は██村に居住する猟師、太田██氏である事が判明しています。太田氏は現在も行方不明です。エージェントは収容スペシャリスト及び機動部隊を応援に呼び、SCP-1909-JPを確保・収容し、現在に至ります。

エージェントは太田氏の自宅を調査し、一冊のノートを発見しました。
ノートには短い手記が書き込まれていました。以下はその抜粋です。

今日、あの海に行く。今度は、深く深く潜るつもりだ。

この記録を確認後、財団はSCP-1909-JP-3内部の海洋調査を開始しました。海中にAUV3(Autonomous Underwater Vehicle) を投下し、SCP-1909-JP-4近海の情報を探査しました。SCP-1909-JP-4周辺のプレート分布を調査したところ、SCP-1909-JP-4を構成するプレートは岩盤ではなく、全て生体である事が判明しました。具体的には、観測した海底の全てに巨大な生物が存在します。その生物の大きさは全長5km〜20kmほどであり、パズルのピースが敷き詰められたような状態で海底に横たわっています。そのシルエットから類推した結果、海底に存在する巨大生物は、漸新世から中新世に存在したアンピキオン類(学名:Amphicyonidea)と推察されます。これらの個体は時折、身体を微動させます。その際の震動が、SCP-1909-JP-4で発生する小地震の震源であると推察されます。

SCP-1909-JP-3に侵入した対象が、SCP-1909-JP-3内部に滞在して1週間経過すると、海面に変化が生じます。(以下”潮汐イベント”と表記)潮汐イベントが発生すると、SCP-1909-JP-3内部で海面が急激に上昇します。海面上昇はSCP-1909-JP-4を完全に覆い尽くす事で停止し、潮汐イベントは終了します。

潮汐イベント終了後、海面から複数のSCP-1909-JP-2個体が出現。個体群は空中を泳ぐように高速で移動し、上空500mに到達した時点で消失します。(以下”飛行イベント”と表記)飛行イベント発生後、全世界規模におけるクマ科の生物の個体数に微増傾向が見られました。ですが、この傾向は生態系の誕生-死亡のバランスによって±0に調整されうる事象であり、飛行イベントの発生による、個体の総数に対しての長期的な影響はありません。しかし、飛行イベント発生後に誕生した熊の個体の中にSCP-1909-JPと同じ性質を持った個体がわずかに確認されている事から、現在の収容プロトコルが策定されました。

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