SCP-1915-JP
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アイテム番号: SCP-1915-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 財団は旧アメリカ連合国内のアメリカ連合国軍関係モニュメントとそれにまつわる社会的動向を常時監視し、過激派によるモニュメントの破壊企図がなされぬよう、ミーメティック誘導を旧アメリカ連合国所属各州内で展開して下さい。
万が一そのような事態になった場合は、機動部隊グザイ-18("テカムセ")が発生したSCP-1915-JP-1を終了します。その際起こる財団外の人的被害は、カヴァーストーリー「薬物中毒者による銃器乱射事件」によって隠蔽して下さい。

説明: SCP-1915-JPは1863年当時のアメリカ連合国軍(以後南軍)の灰色を基調とした制服を着用し、南軍の主力武装であったスプリングフィールドM1842小銃で武装した人型実体(以後SCP-1915-JP-1)が発生する現象です。人型実体の数はほぼ50~150名前後ですが不定です。SCP-1915-JP-1は1915年に公開されたD.W.グリフィス監督による映画作品「國民の創生」に登場するキャストとの骨相学的、体型的一致が多数見られます。また、同じ骨相学的、体格的特徴を持つSCP-1915-JP-1が複数確認されています。
SCP-1915-JP-1はアメリカ合衆国のうちかつて南軍に参加していた諸州のいずれかで、南軍由来のモニュメントが撤去または破壊されそうになった時に出現し、その行動を戦闘により妨害しようとします。戦闘行動は主に小銃による射撃と銃剣による刺突であり、結果として財団、警察などの対応が間に合わない場合において多数の死傷者が発生します。

SCP-1915-JP-1が最初に確認されたのは、ヴァージニア州[編集済]市において、南軍の英雄リー将軍1の銅像が市議会によって撤去されようとしていた20██/██/██日の、撤去抗議者によるデモとカウンターデモ隊が衝突した結果、市民██名が死傷し、市警察によってSCP-1915-JP-1が██名殺害された事件です。上記事件は当初、過激な南軍支持者が南軍兵士の扮装をしてテロ行為を行ったものとして認識され、報道されました。しかしSCP-1915-JP-1の遺体全てが既存のアメリカ合衆国市民ではないことが確認されると、財団はアノマリー事案としてこれに対処、現地目撃者の記憶処理、報道の撤回並びに報道機関経由のミーメティック誘導による記憶処理とカバーストーリー「薬物中毒者による銃器乱射事件」が適用されました。その後財団はSCP-1915-JPの調査に移りました。
しかし財団が事態を収拾する直前の20██/██/██、上記事件に刺激を受けた反白人至上主義者のデモ隊がノースカロライナ州[データ削除済]市で南軍無名兵士の像を破壊しようとし、再びSCP-1915-JP-1が出現しました。この行動は財団の察知するところであり、SCP-1915-JP-1の再出現の可能性を考慮して待機していた機動部隊グザイ-18(”テカムセ”)が出動しました。結果、SCP-1915-JP-1と交戦にいたり、SCP-1915-JP-1の全て███名を終了しました。彼らはいかなる降伏勧告も受け入れず、最後の1実体になるまで機動部隊に抵抗を続けました。

彼らは一切の苦痛を感じる様子もなく、機械的に戦闘を続行した。その姿は、まるで意志なきゾンビのようだった。――機動部隊グザイ-18指揮官

上記事件の隠蔽は速やかに行われ、SCP-1915-JP-1全遺体は回収されました。また、SCP-1915-JP-1の出現は、南軍由来モニュメントが破壊される事がトリガーとなっているとの仮説が立てられ、██回の実験が行われました。なお実験は全て周辺住民への影響を鑑み「不発弾処理」「区画整理」「ガス管修理」などのカヴァーストーリーを用い、市民を立ち退かせてから行われました。また、モニュメントが破壊された場合カヴァーストーリー「一時的立入禁止」を用いて、モニュメントを修復し、社会に対する影響が最低限に収まるよう配慮がなされました。

現状、南軍に関係するモニュメントが破壊されることがトリガーであることしか解っていないため、最低でも数回の実験を行う必要があるだろう。また、SCP-1915-JP-1が「國民の創生」に登場するキャストの姿をしているのも調査するべきだ――SCP-1915-JP主任研究員ジョンストン博士

██回の実験の結果として、SCP-1915-JP-1の発生は南北戦争の、主に1915年以降に建てられたモニュメントの破壊を試みたときのみに限られると判明しました。2
これらモニュメントはD.W.グリフィス監督による映画作品「國民の創生」による南軍ブームの後に建てられた物であることが共通しています。「國民の創生」は、全米で2500万人が見るという大興行記録を打ち立てたものでした。しかしながら、北部の傲慢と増長した黒人の犠牲となった善良な南部人が立ち上がり、増長した黒人を打倒するというストーリー構成のため、現在の主流である「北部と南部の政治・経済的対立による必然的な戦争」「南部にとっては、州権と郷土を守るための戦争」とはかけ離れた「北部の傲慢に対し立ち上がった正義の南軍」「北部に屈しなかった偉大な南部」という歴史観と、南部白人至上主義者の人種差別思想を広範に広めた映画と、現在における社会評価は確定しています。にもかかわらず、その文化的影響力は大きく、無視できない影響を現在のアメリカ合衆国市民に及ぼしています。南軍記念モニュメントも、「國民の創生」上映後の南軍ブームにより目立つところに多く建てられるようになり、前記の如き観念を強化する一環となりました。3

このような背景のため、SCP-1915-JP-1の現れるモニュメントは南部白人至上主義者の崇敬を受け易い状態にあります。新たに行われた█回の実験の結果、そのような南部白人至上主義者の崇敬が、モニュメントに異常性とSCP-1915-JP-1発生力を与えていることが判明しました。その上で、主任研究員のジョンストン博士はO5評議会に以下の異例な提案を行いました。

私はリー将軍と南軍が奴隷制のためではなく州権と愛郷心のために戦ったという見解を持っています。4しかし南部の白人至上主義者達は、そうした理解をしていません。「國民の創生」が引き起こした偉大な南部という幻想、白人至上主義という歪んだ価値観と歴史観、それらが異常性を発生させるなら確保・収容・保護すべきはむしろ彼らとその思想ではないでしょうかーージョンストン博士

ジョンストン博士の提案に対し、O5評議会は以下のように返答しました。

物語られる過程で歴史は変質する。君の歴史観もまた然りだ。そして確保・収容・保護されるべきはアノマリーそのものであり間接的な発生源ではない。重々留意すべきだろう――O5-7

ジョンストン博士はこの異例な提案により主任研究員から一般研究員に降格、後任にはフッド博士が昇格しました。
以下は異例な提案を行ったジョンストン博士の心理状態を調査するためのインタビュー記録です。

対象: ジョンストン博士

インタビュアー: エージェント・シュシュニコワ

付記: このインタビューはジョンストン博士の心理状態を把握するために内部保安部門によって行われました。

<録音開始, 20██/██/█**>

エージェント・シュシュニコワ: なぜあのような異例な提案をO5評議会に行ったのですか?

ジョンストン博士: ……許せなかったからだ。

エージェント・シュシュニコワ: 一体何が許せなかったのですか? 詳しくお聞かせ下さい。

ジョンストン博士: 彼らが死者の尊厳を冒涜していることだ。

エージェント・シュシュニコワ: 彼ら、とは?

ジョンストン博士: 南部の白人至上主義者たちだ。彼らは南北戦争で戦い戦死した多くの人々の尊厳を等しく冒涜している……特に自身が崇敬しているはずの南軍兵士への冒涜は甚だしい。私見では、南北戦争で戦った兵士たちは州権と郷土愛のために戦った。私の祖先も、州権と郷土愛のために戦い、そして戦死したものが大勢いる。にもかかわらず、「國民の創生」をルーツのひとつとする白人至上主義者は、自らの信じる偽史をもって、兵士たちの戦いの意義を塗りつぶし、挙句の果てはSCP-1915-JPなどという現象まで生み出してしまった。それが私には許せなかった。

エージェント・シュシュニコワ それだけですか?

ジョンストン博士 それだけではない。私は彼らに、私たちの祖先の墓を荒らされた悲しみも覚えた。これは怒りと対をなす心からの思いだ。なぜ安らかに眠る兵士たちをそっとしてやれないのか?

エージェント・シュシュニコワ: 心情はお察しします。しかし財団職員としては軽率ではありませんか?

ジョンストン博士: 軽率であったことは認める。しかし事態の抜本的解決のためにはあの提案しかなかったのだ。南部の白人至上主義者たちの思想を確保・収容・保護することでSCP-1915-JPの発生を終了することが。この国はいま社会的分断のさなかにある。SCP-1915-JPの発生はさらに増大するだろう。それはさらに分断を深め、SCP-1915-JPもまた更に増大する。その負のループを断ち切ることが必要と判断したのだ。

エージェント・シュシュニコワ あなたの意見は理解しました。とはいえ、財団は壊し屋ではありませんし、政府でもありません。あなたの意見はGOCや連邦政府のマターであり、財団はアノマリー自体を終了することはまずありえません。あなたは逸脱しすぎました。

ジョンストン博士 おそらくはそうなのだろう。現在の処分にも納得している。しかし――

エージェント・シュシュニコワ しかし?

ジョンストン博士 私は、あの偽物の死者たちを消し去り、私の祖先を始めとする戦死者たちを安らかに眠りに就かせてやりたかったのだ。

<録音終了, 20██/██/█**>

終了報告書: ジョンストン博士は財団職員として不適切な感情的動機から上申を行ったことが判明しました。――エージェント・シュシュニコワ

補遺1: 現在、財団の努力にもかかわらず、SCP-1915-JPの発生とそれによるSCP-1915-JP-1がもたらす被害は増大しつつあります。財団はこれに対処すべく、アメリカ合衆国国民の再統合を図るため、アメリカ合衆国政府と協議すべきという意見がありますが、O5評議会は現在結論を保留中です。

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