SCP-1917
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アイテム番号: SCP-1917

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1917は当初の発見地点であるエリア-1917-1に存在します。現時点ではSCP-1917を除去する必要性が無く、また現在の自己完結的な挙動を乱すリスクは対象を放置するのに十分な理由と見做されています。SCP-1917やその他の近隣の異常存在の収容を容易にするため、サイト-127が確立され、エリア上部の地上に位置しています。

SCP-1917は自らの存続に必要な構成部品を全て自力で賄うことが可能であり、またルーチンを変更させるためのあらゆる努力に抵抗しているため、収容するうえで人間との交流を必要としません。代わりに収容チームはGoI-004Fの歴史を研究し、同団体のかつての構成員らとの中立的/友好的関係を築き、また全体としての当該宗教が一般社会に認知されることを防ぐものとします(詳細はCotBG抑制プロトコルAlfa-Hotel-RATCHETを参照のこと)。

説明: SCP-1917は異常な膂力と大きさを持つ知的なヒト型の生体機械です。対象は身長3.5mで、最大1,500kgまでの重量を持ち上げることが可能です。また、自身の構造を修復し、維持し、僅かに改良するのに十分な知識を示しています。SCP-1917は(数ある改造の中でも)肩甲骨から延びる追加の腕2本、足および下肢の代わりとなる無限軌道メカニズム、首から下の全ての皮膚と置換された連結金属板を有しています。SCP-1917は胸部に格納された(おそらく異常な)小型蒸気機関から完全な動力供給を受けており、機能し続けるために不自然なほど少ない燃料しか消費しません。SCP-1917は燃料と少量の水以上の栄養補給を必要とせず、制御下の実験によって毒性の高い低酸素環境でも生きられると判明しています。

SCP-1917はイギリスのマンチェスター郊外にある地下複合建造物、指定名称エリア-1917-1に居住しています。この構造は以下3つの主要区画から構成されています。

  • 8ヶ所の居住区。各居住区には寝室、洗面所、ウォークイン形式の収納領域が含まれる。SCP-1917は大部分の時間をこの中の1ヶ所で過ごしており、他7ヶ所は長年放置されているように思われる。
  • 2ヶ所の工房。機械加工設備、溶接工具、大量の石炭1と鉄が収容されている。発見当時、両方の部屋は様々な完成段階の機械的な構成部品、雑多な装置、人工身体部位で埋め尽くされていた。
  • 広い礼拝堂。巨大なステンドグラスの窓があり、裏から照らされている2。この区画の石造りの床はSCP-1917が通過するため所々で摩耗しているが、説教壇と中央通路以外の領域は概ね無傷。

広範なインタビューの結果、SCP-1917はGoI-004F (“新生くろがね同胞会”)The New Ferrous Brotherhood — イギリス産業革命期に創設された、壊れた神の教会の古風な派閥 — の一員を自称していることが明らかになりました3。SCP-1917は主教の称号を持っていると主張し、促された際には記憶を基に幾つかの聖典や真言を暗唱しました。GoI-004Fは歯車仕掛正教による武力政変の後、1890年に正式に解散しているため、SCP-1917の主張は検証されていません。

補遺 — 行動分析: 放任されている時のSCP-1917は一定のルーチンに従っています。まず沐浴と自己メンテナンスを行い、礼拝堂で長い説教を行い、自身の居住区に帰還し、そこで短い間無反応かつほぼ不動の状態になります(デルタ状態と指定、以下参照)。このサイクルは約6時間ごとに繰り返され、時折、外部の影響によって軽微な逸脱が生じます(殆どの場合は気温、気候、人間との交流、地震活動などによる)。

研究は、満足感と充足感を表しているにも拘らず、SCP-1917が現状を完全には理解していないことを示しています。SCP-1917は日々の出来事を殆どないし全く記憶せず、これまで一貫して財団職員を(毎週チェックのために訪れる人員さえも)識別していません。質疑の結果、SCP-1917は現在が1872年だと未だに信じていることが判明しました。SCP-1917は自らの精神的能力を完全にコントロールしているにも拘らず、自分が無人の部屋で説教をしているという事実を、たとえ直接反証する証拠に直面した場合でさえ認めません。SCP-1917にその周期的な行動性質を納得させようとする試みは、全て上述したデルタ状態の発生時期を早める結果4に終わったため、現在、デルタ状態はこの記憶喪失の原因または影響であると考えられています。

特記事項として、SCP-1917を調査した研究者は、デルタ状態の性質と期間にはごく少数の偏差しか伴わないことを発見しました。これはデルタ状態が単純な機械的故障ではなく、設計上の要素であることを示唆しています。この理由は不明です。

補遺 — インタビュー1917-05:

質問者: エージェント 4-B-モーティス、財団雇用下にある壊れた神の教会からの亡命者。身体の大部分が機械で構成されており、SCP-1917への同情を示し得る特異な立場にいることから選択された。

回答者: SCP-1917

序: 以下のインタビューは、他の半機械ヒト型存在に対するSCP-1917の反応を確認するため、エリア-1917-1で非公式に実施された。動画はサイト-127アーカイブから閲覧可能。


<記録開始>

エージェント モーティス: こんにちは、師父よ。

SCP-1917: ん? 誰 — おぉ! 清掃員かい。

エージェント モーティス: ええ、はい。私です。清掃員です。清掃に来ました。

SCP-1917: いや、邪魔はしねぇよ。ちょうど最後の説教を済ましたばかりだ、もうすぐ出ていく。何しろ皆には有難がられてるんでな。俺と離れ離れになるのは耐えられないってんだ。

エージェント モーティス: 何処かへ行かれるのですか?

SCP-1917: おぅ、誰もお前さんにゃ教えなかったのか? 俺は引退した。言わば、古い工具箱を棚に掛ける日が来たって訳さ。実はな、俺は…

[SCP-1917は沈黙し、前かがみになる]

SCP-1917: こいつを俺一人の秘密にするのはきつい、それにお前さんは分別のある若者のようだ。誰にも言わんと誓ってくれるか?

エージェント モーティス: 私の唇は、仮にまだあったとしても、決して開きません。

SCP-1917: ハ。良し。そうだな、実は俺はこの… 宗教ってもん全般に疑問を持ち始めてる。

エージェント モーティス: 主教と呼ばれる方にとっては、実に珍しい事ですが。

SCP-1917: うむぅ。いや、人生には教会の湿っぽい隅に寄り集まってるよりもっと何かあるはずだと思うんだ。ここに突っ立って、俺たちの誰も見たことが無い神さんについて説法するよりもさ。とにかくそれが俺の見解だ。俺は実力でここまで伸し上がったんだから誰にも止められん。退職記念にって思いがけず改良してくれたし、幸運を祈ってはくれてるがね。びっくりするほど親切だよ。

[SCP-1917は指で側頭部を叩く]

SCP-1917: かなり滑らかに動くんだ、近頃の鉄では何でもできるんだな、え? 脳の一欠片が、ウィーンって回ってよ — ほとんど普通に物を考えさせてくれる。 [沈黙。この間SCP-1917は目を閉じている] ほとんど。まだ時々引っ掛かる。軽い引き攣りだとか痙攣だとか。完璧に直したって言ってはくれてるが、俺にはそれほど確信が持てん。

エージェント モーティス: [頷く] ええ、仰る事は分かります。私がかつて… その、教会の一員だった頃、私はアップグレードを愛していました。全てひと括りにした中で最高の部分だったと思います。けれど、ロボットであるというのは、暫く経つと退屈になります。

SCP-1917: ん? お前さんも聖職に就いてたのかい?

エージェント モーティス: どちらかと言えば信者でしたが、そうです。ここからそう遠くない小さな教会でした。実を言えば、私はただ面白そうだというのが主で入信したのです。

SCP-1917: あぁ。うちにもそういうのが何人かいる。ただ火を吐いたり建物をぶっ壊したいだけで、脳改造の話が出るとすっ飛んで逃げちまうような小僧っ子だ。正直な話、俺もそういう風に物事を見るようになってきてる。金属はとにかく素晴らしいもんだが、完全にこの目がガラスに変わっちまう前に世界を一目見たいと思わずにはいられねぇのさ。

[SCP-1917は溜息を吐き、小さな蒸気の雲を放出する]

SCP-1917: 皆は無論俺を止めようとするだろう、何しろ俺をほぼ崇拝してる。だが俺はこうしなきゃならねぇ。機械学以上のものを経験して、外の世界が何を見せてくれるか探り出す。ただ —

[数回の可聴域のクリック音が、金属の軋る音を伴い、急速に連続してSCP-1917の頭部から発せられる。SCP-1917は63秒間活動を停止する。SCP-1917はその後この事象に対して反応を見せず、おそらく時間経過に気付いていない]

SCP-1917: — 最後の説教だけやらせてくれ、その後は出ていく。何もかも後腐れなく済ませたい。

エージェント モーティス: そ… そうします、ええ。

[SCP-1917は微笑む]

SCP-1917: でもな、選んだ道を後悔してはいねぇよ。ちっともな。そいつは俺に踏み出す勇気をくれたんだ。

<記録終了>

この後、SCP-1917は礼拝堂に引き返して72分間の説教を行い、居住区に戻りました。類似のインタビューでもほぼ同一の結果が得られていますが、SCP-1917のルーチンには現在まで如何なる変化も観察されていません。

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