SCP-1922-JP
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アイテム番号: SCP-1922-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1922-JPは、低脅威物保管ロッカーにおいて24時間体制の監視下に置かれます。実験の際にはサイト管理官の許可を必要とします。██氏に対する調査は20██/██/██の██氏の死亡をもって中止されました。

説明: SCP-1922-JPは、漫画家██ ███(本名██ █)氏によって作成された漫画本です。内容は妖怪を描いたイラストが、最終ページを除く全ページに図鑑的な説明と共に記されているといったものであり、一般に流通はしていません。財団民俗学部門の調査において、そのどれもが旧来の書物において確認されない妖怪であることが判明しており、全てが██氏の創作であると判断されています。ただし、閲覧した人間はそのいずれかにおいて、既視感を覚える傾向があることに留意してください。

SCP-1922-JP-1は、SCP-1922-JPの『忘れじ』と題された白紙の最終ページに触れることによりのみ侵入が可能な異常空間です。SCP-1922-JP-1内に侵入した場合、一切の映像、音声、GPS信号が遮断されます。その為、SCP-1922-JP-1内の情報はSCP-1922-JP-1内から帰還した人物の証言、記録に依存しています。現在、SCP-1922-JP-1内から帰還した例は██件中5件のみです。

SCP-1922-JP-1内には、後述するSCP-1922-JP-2を除く一切の生物が存在せず、常に降雪が確認される夜間に固定されています。また、一面に様々な物品及び生物の死骸が散乱していることが証言されています。それらの物品は帰還時に所持していたもののみ持ち帰ることが可能です。

以下はSCP-1922-JP-1内から帰還したエージェント・埋木の聴取記録です。

インタビュー記録1922-JP-GEG - 日付 20██/██/██

インタビュアー: 丸山博士

対象: エージェント・埋木

«録音開始»

丸山博士: では、まず貴方が入り込んだSCP-1922-JP-1内部について覚えている限りで構いませんから詳細に説明してください

エージェント・埋木: そうだな…、まず雪が降ってた。それも俺があそこにいる限りはずっと降ってたよ。で、朝がいつまで経っても来なかった。ずっと夜なんだ。それに、明かりになるものは何もなかったけど少しだけ明るかったのを覚えてる。寒かったが、けれどむしろ…、何というのかな、すごく心? そういった何かが暖かかった、歓迎されているような、いつまでもそこにいたいような。…母親の胸の中とかよく言うが、あんな感じなのかもしれないな

丸山博士: 成程、他には何か

エージェント・埋木: あっちこっちにガラクタが転がってたな。山みたいになってるのもあったし、ぽつんと一個だけ転がってたのもあったな。新品の物はほとんど無かった、壊れてるのもあれば、ずっと大事に使われたんだろうなってのもあった。時々どう使うのか分からない見たこともないものもあったよ。人間や生き物の死骸もあったけど、何か死骸って感じはしなかった、たぶん死骸じゃなかったのかもしれないな。それに、そういった死骸の中によく分からない化けモンみたいなのもあった。あとは、なんというか街外れみたいな印象を受けたよ。上手くは言えないんだけど、そういう印象だった

丸山博士: 街外れ、ですか

エージェント・埋木: ああ、何というか…、どこかへ向かう入り口、経路みたいな。もっと奥がある感じだ。で、多分その奥から微かだけどなんか声が聞こえてきた。楽しそうっつうか、なんだか宴会みたいな。あ、それとどっからか分からんが、酒臭かったのを覚えてる。ちょっと鼻をくすぐるくらいだったけどな。俺が見たのはそんくらいだ

丸山博士: では、貴方はどのようにこちらへ帰還したのですか?

エージェント・埋木: …そこなんだ博士、それがよく分からねえんだ。とりあえず何か見つけられるかと思ってガラクタの山を漁ってたら、ふと何かに目が留まった。で、それを拾い上げたら急に寒くなって。…なあ、博士、こりゃ一体なんだ?

«録音終了»

エージェント・埋木が帰還時に所持していた玩具を親族に照会したところ、過去にエージェント・埋木が所持していたものであることが判明しました。確認すると「そういえばそんなものがあった。大事にしていたのに何で忘れていたんだろう」といった返答がありました。その後、該当玩具は異常性検査の結果問題なしと判断され、エージェント・埋木の自室にて保管されています。

SCP-1922-JP-1内には、SCP-1922-JP-2と指定される人型実体が存在しています。SCP-1922-JP-2は眼鏡を掛けた日本人男性であり、名前を「山田」と名乗ります。外見は既製品のスーツ、近視用の眼鏡、極端にデフォルメされた出っ歯が特徴として挙げられます。この容貌は██氏の作中に登場するキャラクターと一致しており、SCP-1922-JP-2の証言からその姿を意図的に模倣しているものだと考えられます。

SCP-1922-JP-2はSCP-1922-JP-1内の案内人を自称しており、侵入者に対しては非常に友好的な態度を取ります。侵入者がSCP-1922-JP-2に対し攻撃を行った場合も、速やかに攻撃者の無力化を図る以外の行動は確認されていません。以下はSCP-1922-JP-2と接触し、帰還したエージェント・我路が筆写していた聴取記録です。

インタビュー記録1922-JP-01-AKUM - 日付 20██/██/██

インタビュアー: エージェント・我路

対象: SCP-1922-JP-2

«記録開始»

エージェント・我路: 此処はいったい何なのですか? 貴方はいったい何者なのですか? それにその姿は…

SCP-1922-JP-2: おっと、そんな一気に尋ねないでくださいな。一つずつ説明するとしましょう。此処は忘れられるのを待つモノの場所、忘れられる、という黄泉へ向かう入り口、村はずれ、境界といったところですか。何を基準に忘れられるとされるのかは分かりませんがね。ここ以外にもいくつかあるようですが、私は此処しか知りません

エージェント・我路: 忘れられる、とは

SCP-1922-JP-2: 言葉のままですよ、誰しもかつては覚えていたもの、当たり前に使っていたもの、それらはすべて忘れられていく。そしてそれを取り戻そうとする奇特な方はあまりに少ない。当然ですね、みんな今を生きるのに必死ですから。寂しい事ですがもちろんそれを否定しやしません

エージェント・我路: …では、此処は人に忘れられるのを待つ場所、ということですか?

SCP-1922-JP-2: それが一番近い、だが微妙には違います、しかしそれを説明するための時間はあまりにも短い。私もその一人。いずれ忘れ去られる何か、貴方方も私のお仲間を何人かご存じのはずだ。ただ、この形になりましたからね。あの人への感謝もあって、ここでこうやって案内をしてるんですよ

エージェント・我路: …此処から出る方法は?

SCP-1922-JP-2: 一つは街へ向かうこと。アレは忘れられた者らの集う場所。いつかは消えるはずの酔いにいつまで経っても浸かる場所。ただしそちらは一方通行。忘れられるより他にはありません。飛び出すことはできなくもありませんが、忘れ去られたならば例え思い出されようと飛び出したって誰も覚えていてはくれない。飛び出した奴らは気のいい奴らばかりですが、ちょいとそちらでの動き方を忘れてる。そして帰るときはまたここを通らねばならない。また忘れられなければならぬ一方通行。不憫な奴らですなあ

エージェント・我路: では他の方法はないのでしょうか

SCP-1922-JP-2: 此処にある何かを思い出すこと。此処は忘れられるものの黄泉路。ここを訪れた時点で貴方もまた忘れられゆくもの。ですから早くそれを思い出しなさい、それがきっと導くでしょう。そうしなくちゃ、此処に閉じ込められたまま、いつか忘れられる。まあ、近頃はみんな妙に色々と覚えている。だいたい数百年でしょうか

エージェント・我路: …何か他に方法は

SCP-1922-JP-2: ありませんよ。忘れられたものはもう帰ってこない、戻せない。精々がホルマリン漬けの解剖検体です。必死に思い出しなさい、貴方や貴方たちが忘れたものを。酩酊の街に向かってしまう前に。…あの人は、██サンは思い出すのがお上手でした。…そういえば、あの人はどうしました? 最近来られていないようですが

エージェント・我路: ██氏であれば、亡くなりました

SCP-1922-JP-2: …ああ、そうか。あの人には私たちを光から引きずり出していただいた、私たちをこの黄泉路から見つけ出してくれた。…忘れません、私はけして忘れません。…少々話し過ぎてしまいましたね。貴方も早く探す方がいい。此処はいればいるほど離れがたくなっていくから。失くしたものに囲まれて、思い出せなかった暖かさに揺られて。…そうか、もしかしたら、あれを造った何者かは忘れられるということを一つの救いなのだと、愛なのだと考えているのやもしれませんね

エージェント・我路: …貴方は

SCP-1922-JP-2: そうは思いません。忘れるということは恐ろしいこと、忘れるということは諦めること。あの酩酊の街は終わりと退廃、停滞と慕情の街。そう、忘れられるとは地獄です。あそこは地獄、それと知って酒に溺れ、幻の温かさに溢れ、飛び出したものには冷ややかに。それを愛だと宣って。あのようなとこに、██サンを、そして貴方方を向かわせたくはないものです。いずれ皆が辿り着く場所だとしても

«記録終了»

この記録から、他にもSCP-1922-JPに類似する物品が存在する可能性があるとして調査班が組織されています。

補遺1: 以下の記録は、SCP-1922-JP-1内においてエージェント・我路が発見、回収したレコーダーに録音されていた音声です。内容としては複数名の声による唱和が録音されていますが該当人物の特定は失敗に終わりました。

音声記録1922-JP-01-KASN - 日付 20██/██/██

«再生開始»

永き世の とをのねぶりの みなめざめ 波のり船の おとのよきかな

色はにほへど 散りぬるを 我が世たれぞ 常ならむ

有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず

それならばこそ 此処は酩酊 永久に戻らぬ 夢の街

変わらぬものは 夜半の月と 酒肴のみ 永遠の雪

我ら行き 我ら忘れ 我ら歌う

来いよ来いよと 我ら酔う

愛を込めて

永き世の とをのねぶりの みなめざめ 波のり船の おとのよきかな

«再生終了»

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