SCP-1926-JP
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SCP-1926-JP外観の一部

アイテム番号: SCP-1926-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1926-JP周辺の区域は封鎖され、カバーストーリー"土地開発"を流布することで一般人の立ち入りを抑制・制限します。緊急時を除き、SCP-1926-JP内部の有人探査試行は禁止されており、内部調査および侵入者・被験者の回収には無人機のみが用いられます。

SCP-1926-JP-α群から発信される電話やメール等のあらゆる電気通信は、財団の専用チャンネルへと転送・再接続され、専任オペレーターが対応に当たります。その際に行われた対話内容は全て記録・録音され、SCP-1926-JPの更なる研究に活用されます。

説明: SCP-1926-JPは、京都府███北部のレジャーランド跡地内に存在する建造物群です。これら建造物の大半は、かつて大規模な迷路型アトラクションとして使用されており、約2ヘクタールの敷地内に6棟の屋内迷路と2ヶ所の屋外庭園迷路がそれぞれ連結する形に配置されています。

SCP-1926-JP内部の迷路を探索している人物(以下、被験者)は、極稀に突発的な昏睡症状に見舞われます。この症状が引き起こされる詳細な条件・要因は、現在も明らかになっていません。被験者の昏睡状態はSCP-1926-JP内に留まり続ける限り継続しますが、敷地外へ運び出すことで問題なく回復します。昏睡状態からの回復後も、被験者から身体的・精神的な異常性が診断されたケースは確認されていません。その一方で、探索中・昏睡直前・昏睡状態中等とタイミングが一致しないものの、複数の被験者が"子どもの声を聞いた気がする"と報告を行っている点には留意する必要があります。

昏睡状態へ陥った際に被験者が何らかの通信機器を所持していた場合、高確率で被験者を自称する人物(以下、SCP-1926-JP-α)から、電話・メール等の形式で連絡が届くようになります。この連絡は被験者の状態に関係せず発生し、大半の場合は被験者の家族・友人等の身近な人物か、警察や消防へと届く傾向にあります。その際に用いられる電話番号やアドレスは、被験者が所持していた通信機器のものと完全に一致します。その一方で、こちらからSCP-1926-JP-αと連絡を取ろうとする試みは、全て失敗します。また、通話時に実施された声紋解析の結果は、全てのケースでSCP-1926-JP-αが被験者と同一人物であることを証明しました。

最初の連絡に際し、SCP-1926-JP-αは自身がまだ迷路内におり、出口が見つからず迷い続けていると主張して救助を要請します。しかしながら、SCP-1926-JP内のいずれの迷路でも、SCP-1926-JP-αらしき存在が確認できたケースはありません。また、SCP-1926-JP-αが使用する通信機器の位置・GPS座標は、ほとんどの場合でSCP-1926-JPから離れた地点を示します。この座標地点を探査したケースでは、SCP-1926-JP-α本体及び、SCP-1926-JP-αが主張する迷路構造を含む建物を発見できませんでした。

SCP-1926-JPは19██/██/██に発生した解体工事中の事故を調査した際、エージェント・███が見舞われた昏睡症状と、それに続くSCP-1926-JP-α-1からの連絡によって各異常が発覚しました。更なる調査の結果、施設の営業中にも昏睡現象が数件発生していた事実も確認されました。それに加え、過去に施設内で発生した数例の事故・事件記録も回収されましたが、営業時に迷路内で発生した児童1人の失踪事件を含め、いずれも異常性の起源となった要因であると結論付けるには至りませんでした。

現時点までに、SCP-1926-JPの影響を受けた人物は、収容以前・以降を含めて9人であることが確認されています。その中で、SCP-1926-JP-αから連絡があったケースは5件であり、その内の1件が上記エージェントの事故によって、残りの4件がDクラス職員を用いた実験によって生じました。一般人のSCP-1926-JP-αが収容以前に発生しなかった理由については、当時持ち運び可能な通信機器が一般に普及していなかった背景等が要因であると考えられています。

記録: 以下の記録は、エージェント・███を自称するSCP-1926-JP-α-1との通信ログからの抜粋です。

<ログ001, 通信開始: 19██/05/24 08:23>

α-1: 本部、応答を願います。迷路の構造が建物の見取り図と一致しません。空間異常の影響でしょうか。そちらのモニター映像ではどうなっていますか?

本部: エージェント・███? そんな、貴方はまだ昏睡状態にあるはずでは?

α-1: 本部? 私が昏睡状態にあるとは、一体、どういうことですか?

本部: 待ってください。少し状況を整理します。

この後、簡易的な協議が行われ、通信相手を疑似的にオブジェクト指定した上で、エージェント・███と扱いながらやり取りを継続することが決定した。

本部: エージェント、お待たせしてすみません。現状を説明しますと、貴方は先ほど迷路内の探索中に突然昏睡状態へと陥り、今も救護室で眠っている状態にあります。簡易的な検査も実施しましたが、身体的には貴方本人であることに間違いありません。

α-1: そんな、馬鹿な。では、未だに迷路を探索し続けている私は、一体なんだというのですか?

本部: 無論、貴方が別の場所に転移され、救護室で眠っている方が偽物、という可能性も十分にあり得ます。しかし正直なところ、現状では何とも言えません。エージェント、一先ず周囲の状況を説明できますか?

α-1: ここはC棟1階の迷路と同じで、装飾されたコンクリートの壁で構成された典型的な迷路です。ただ、明らかに見取り図の構造よりも広くなっています。本部、その、GPSの位置座標で現在地を確認できないでしょうか?

本部: エージェント、確認しましたが、貴方の位置座標は元の探索地点から南西に2kmの地点を指しています。

α-1: では、私は現実の別の場所に転移したということでしょうか? 本部、その地点には何がありますか?

本部: 地図上では何もない山間部です。確認のため、回収部隊を向かわせましょう。そのまま待機を願います。

α-1: 分かりました。

5分後、回収部隊が上記の座標位置へと到着するが、SCP-1926-JP-α-1及び迷路構造を含むような建造物は発見できなかった。また、同時にSCP-1926-JP内部の調査も行われたが、全ての迷路内でSCP-1926-JP-α-1らしき存在を発見できなかった。

本部: エージェント、座標位置を捜索しましたが、その地点から建造物を一切発見できませんでした。また、迷路内の捜索も行いましたが、どこからも貴方を発見できていません。現時点において、本部による貴方の回収は不可能な状況にあると言っていいでしょう。

α-1: 本部、分かりました。

本部: エージェント、一先ずは貴方が別の地点に転移したものと仮定してください。現在の状態で、迷路出口の探索を続行することは可能ですか? 念のため、現在の装備を報告してください。

α-1: 装備は迷路に入った時と同じで、標準装備の拳銃と通信機器以外には、簡易工具と水と携帯食料が少し、後は予備バッテリーが1本だけです。おそらく、出口が見つからなくとも3、4日は持つかと思います。

本部: エージェント、了解しました。そのまま探索を続行してください。また、バッテリーを節約するため、異常な現象に遭遇した場合を除けば、連絡は定例報告のみに留めてください。いいですね?

α-1: 本部、了解しました。探索を続行します。

<ログ002, 通信開始: 19██/05/24 13:09>

α-1: 本部、こちらエージェント。先ほどの迷路から屋外へと出ることに成功しました。ですが、外には草木の壁で作られた庭園迷路が続いています。GPSの現在位置座標に、私や庭園迷路を確認することはできませんか?

本部: エージェント、こちら本部。貴方の位置座標を追跡し続けていますが、先ほど同様、その地点に迷路らしき構造物は一切確認できません。

α-1: 私がいるはずの地点には、本来何がありますか?

本部: 先ほどの地点から20kmほど西へ行った場所で、本来は住宅地が広がっているはずです。

α-1: 20km? そんなはずはありません。前回からの連絡までに、私が移動した距離はせいぜい5km程度でした。

本部: 分かりました。ではエージェント、近くの壁を登り、周囲の景色を確認することは可能ですか?

α-1: いえ、迷路を構成する草木の壁には十分な強度がなく、登ることは難しそうです。また、仮に登れたとしても、灯りがなくては周囲を確認することは不可能かと思います。

本部: エージェント、なぜ屋外なのに灯りが必要なのですか?

α-1: 本部、庭園迷路内には照明装置等の光源がなく、この時間帯では暗く遠方を確認できそうにありません。

本部: エージェント、今はまだ午後1時過ぎくらいのはずです。そちらは夜間なのですか?

α-1: 本部、現在こちらの時刻は午前1時で、夜中になっています。奇妙です、前回の通信から、体感ではまだ数時間ほどしか経っていないはずなのに。本部?

通信に歌唱の"ちょうちょう"を歌う声が混じり始める。声は部分的に不鮮明で歌い手の特徴を断定できない。

本部: エージェント、この歌は貴方が歌っているのですか?

α-1: 本部、歌とは何のことですか? こちらは風に草木が揺れる音くらいしか聞こえませんが。もしかすると、近くで子どもが遊んでいたので、その子が歌っていたのかもしれません。

本部: 待ってください。子ども、というのは?

α-1: え? いや、子どもがただ遊んでいるだけのことです。ただ、え?

本部: エージェント、なぜその子どもについて、最初に報告をしなかったのですか?

α-1: あ、その、私もなぜだか分かりません。それに子どもは、もういなくなっています。今考えれば、私はその子どもの性別が何であったのかすら、分かっていませんでした。ただ、子どもがいるとだけしか。

本部: エージェント、やはりその迷路内は危険です。周囲に異常存在がいないか警戒を行いつつ、探索を続行してください。

α-1: 本部、了解しました。探索を続行します。

<ログ007, 通信開始: 19██/05/26 07:42>

α-1: 本部、こちらエージェント。4棟目の屋内迷路に入りました。迷路はE棟の構成とほぼ同じようです。また、手持ちの簡易工具を用いて壁を破壊しながらの迷路探索を試みたいのですが、許可をいただけますか?

本部: 確認を取ります。ですが、なぜ急に壁の破壊の提案を?

十数秒間の沈黙。

本部: エージェント? 聞いていますか?

α-1: 本部、壁の破壊の提案とは、何のことですか?

本部: エージェント、それは先ほど貴方が提案したことのはずですが。

α-1: あの、私はそんなことを言った覚えはありません。なぜ、私がそんな。

本部: 疲労の影響かもしれません。再び異常存在と遭遇する可能性もありますが、周囲に注意を払いつつも、適度に休息を取るよう心掛けてください。ともあれ、壁を破壊しての探索については、こちらで審議を行っておきましょう。その結果については、次の定例連絡の際に伝えます。ではエージェント、探索を続行してください。

α-1: 本部、こちらエージェント。4棟目の屋内迷路に入りました。

本部: エージェント、それは通信の最初に聞いたはずですよ。

α-1: あ、いえ、すみません。どうやら自分で思っている以上に消耗しているようです。警戒しつつ、探索を続行します。

後に、探索に有効な手段ではない点や、未知の異常性の発露を懸念する点から、壁の破壊は許可されなかったとSCP-1926-JP-α-1に伝えられた。

<ログ011, 通信開始: 19██/05/28 21:00>

α-1: 本部、応答を願います。

本部: エージェント、こちら本部。前回の定例連絡から、すでに10時間近く経過しています。なぜ今まで連絡をしてこなかったのですか?

α-1: 本部、私は命令違反を犯し、壁を壊して迷路を進もうと試みました。ただ、変です。私はこの工具を何年も使ってきました。それなのに、3枚目の壁を壊して以降、何十回繰り返しても使用手順5で必ず失敗するんです。それ以外は、壁を壊したことによる迷路への影響や、異常現象の発生は見受けられませんでした。

本部: エージェント、なぜ壁を壊すことが無意味であると分かっていながらも命令違反を?

α-1: それが、上手く説明できません。何となく、壁に穴を空けることが最善の手段に思えたんです。単に食料も水も尽きて、自暴自棄に陥っていただけかもしれませんが。気が付いたら、私は壁に穴を空けていました。

十数秒間、SCP-1926-JP-α-1のものと思わしき息遣いだけが聞こえる。

本部: エージェント?

α-1: 本部、自決の許可を願います。何度か、居るはずのない子どもの声を聞きました。ですが、壁の中には子どもはいませんでした。どうして、壁の向こう側から聞こえたのに、私は壁の中にいるものだと勘違いを? 嗚呼、私にはもう、これ以上の探索は不可能です。

本部: エージェント、貴方は明らかに混乱しています。少し待ってください。

5分後、自決は許可されなかったとSCP-1926-JP-α-1に連絡されたが、それに対するSCP-1926-JP-α-1からの回答はなく、既に衰弱死しているものと考えられた。

<ログ012, 通信開始: 19██/05/29 00:07>

α-1: 本部、応答を願います。本部。

本部: エージェント? 貴方、無事だったのですか?

α-1: それが、無事であるはずがないんです。私は苦痛から、許可を得る前に銃で自決を行いました。ですが、私は今も生きています。しかも、それだけではなく、怪我や壊れた装備、食料や水、バッテリーの残量まで、全てが迷路の中に入る前の状態に戻っているんです。これは、一体何が起こったのですか? 本部?

本部: エージェント、落ち着いてください。まずは周囲の状況を説明できますか?

α-1: ここは、私が死ぬ直前にいたのと同じ場所です。近くには、私が壁に空けた穴もあります。本部、私は幻覚を見ていたのでしょうか? それとも、実際に死んでから生き返ったのでしょうか?

本部: それは、現在の情報だけでは判断できません。エージェント、一先ず周囲を散策し、情報を集めることは可能ですか?

α-1: 本部、奇妙です。壁が低い。この高さなら、容易によじ登ることも出来ます。なのにどうして、私は今まで気付きもしなかった。本部、どうか、しばらく考える時間をください。

<ログ013, 通信開始: 19██/05/29 01:05>

α-1: 本部。私はあの後、今度こそ確実に自身の頭を撃ちました。ですが、私はまだ生きています。

本部: エージェント、こちら本部。現在も、貴方の救出手段に関する協議が続いています。どうか、冷静に。

α-1: 本部、私は今まで、自分があの京都の迷路から、別の異空間かどこかにある迷路へと転移されたものと考えることで耐えてきました。ですが、こうなっては疑いようもありません。私はクラゲの中にいる。だから、死んでもまた若返って元通りになるんです。

本部: エージェント? 何を言っているのですか?

α-1: そして、死なないというのなら、迷路の出口を見つける時間は十分にあります。ありがとうございます、また探索を続行します。

以降の連絡で、SCP-1926-JP-α-1には"不死性"を活用した上での探索続行が指示された。なお、"クラゲ"に関して質問を行った際は、SCP-1926-JP-α-1は発言した覚えがないと主張した。

<ログ019, 通信開始: 19██/06/05 17:19>

α-1: 本部、こちらエージェント。報告します。私は先ほど不明な敵対的存在からの襲撃を受けて一度死亡し、生き返りました。

本部: エージェント、こちら本部。襲撃者の姿を確認しましたか?

α-1: いいえ、ベースキャンプ中に背後から後頭部に銃撃を受けたため、襲撃者の姿を確認することはできませんでした。ですが、それ以外に被害はありません。

本部: エージェント、襲撃者は銃を所持していたのですか?

α-1: はい、銃声からすると小型の拳銃だと思います。また、対象はおそらく私よりもずっと背の低い、小さな人型実体だと。周囲を散策しましたが、近くの壁に子どもがくぐれるくらいの小さな穴が空けられており、そこから襲撃されたものと考えられます。

本部: エージェント、了解しました。引き続き周囲を散策し、襲撃者の捜索と警戒を行ってください。

<ログ037, 通信開始: 19██/07/05 11:09>

通信開始と同時に、歌唱の"きらきら星"を歌う声が聞こえ始める。この声も部分的に不鮮明で歌い手の特徴を断定できない。

α-1: 本部、こちらエージェント。現在の迷路構造はA棟の1階と同様ですが、これまでに何度か遭遇した壁と同様に、所々の壁の輪郭がボヤけています。ただ、近付くと壁はすぐに元通りになります。触れてみると、感触は角のない丸い卵のようです。奇妙でなりません。

本部: 待ってください、エージェント。貴方には、この"きらきら星"の歌が聞こえていないのですか?

α-1: また、壁の向こう側から、再び声を聞きました。あの声は何となくですが、子どもの泣き声や笑い声にように思えます。本部、私は再び壁を破壊して、探索を再開してみようと考えているのですが、構わないでしょうか?

本部: エージェント、私の話を聞いているのですか? 質問に応えてください。この歌が聞こえていますか?

α-1: え? あ、聞こえます。本部、たった今、歌が備え付けのスピーカーから流れていることに気が付きました。これは、何人かの子どもが歌っているようです。

突如、歌が不自然な箇所で途切れ、別の歌詞部分から再開される。

α-1: 本部、了解しました。疲労のためでしょうか、日が経つごとに、徐々に身に着けているものが重くなっているように感じます。それに時折、酔っているような感覚にも襲われるんです。急ぐ必要があるように思えます。探索を続行します。

本部: エージェント、何を[通信が切れる]

この通信以降、SCP-1926-JP-α-1は不定期なスパンで、ほぼ簡易的な内容の報告とやり取りを繰り返すようになる。

<ログ062, 通信開始: 19██/10/24 09:11>

α-1: 本部、私はおかしくなったのでしょうか? いくら作業を早めるためとはいえ、工具が壊れる度に自らの頭を撃ち抜くなど。しかも、それをする時、私は一切の違和感や問題も抱いていないのです。これは明らかに異常です。嗚呼、聞こえますか? 本部?

本部: エージェント、聞こえています。どうか、一度落ち着いてください。貴方が希望するのであれば、無線越しではありますが、カウンセラーとの面談も許可されるはずです。

α-1: では、家族との対話は許可されますか? 私が家族へと掛けた電話も、全て本部、貴方へと繋がりました。私は、一体どうなっているのです? 私は、どうすれば迷路から出られるのですか? この幻覚から醒めるのですか?

本部: エージェント、それに対する回答はできません。

α-1: 了解しました。作業を続けます。

<ログ087, 通信開始: 19██/06/05 17:16>

α-1: 本部、こちらエージェント。報告します。先ほど壁の穴を抜けた先で人型実体と遭遇し、対象が武器を所持していたため、止む無くその実体を攻撃しました。

本部: エージェント、こちら本部。その人型実体について、詳細に説明してください。

α-1: 対象は私よりも背が50cm以上高い、大柄な人型でした。危険を感じたため、背後から先行して銃撃を行いました。銃弾は対象の後頭部に命中しましたが、直後に死体は持ち物とともに消失しました。

本部: 攻撃する直前、人型実体が何をしていたのか分かりますか?

α-1: 分かりません、対象は焚火を前にして、ただ座り込んでいました。その、今思えばですが、休息をとっていたようにも思えます。それに、あの服装には見覚えがある気がします。

微かにすすり泣く声が聞こえる。

本部: エージェント? どうしました? 人型実体の服装がどうしたのですか?

α-1: ごめんなさい。私は、急いで作業に戻らなければ。すぐに行かないと。

<ログ101, 通信開始: 19██/12/28 16:05>

α-1: 本部、身に着けているものが、また重くなりました。壁もずっと高く感じます。穴を空けるために要する時間も増えました。日を追う毎に、私の身体では無くなっているように思えるのです。また、先ほどまで、私は天井を歩いていました。分かりません、なぜ私は、それがごく自然であるかのように。しかも、無視できるはずなのに、律儀に下の迷路の壁に沿って移動を。なぜ? 本部?

SCP-1926-JP-α-1のすすり泣くような声がしばらく続く。

本部: エージェント、こちら本部。なぜ泣いているのですか?

α-1: 私は、誰の頭の中に?

本部: エージェント、質問に応えてください。

α-1: このままでは、私も壁の向こう側に。

1発の銃声がした後、通信が途切れる。

<ログ106, 通信開始: 19██/06/06 17:44>

通信開始から、1分間の沈黙が続く。

本部: エージェント、応答を願います。一体どうしました?

α-1: あー、すみません、間違えて繋いでしまいました。

この後、数秒間に亘ってSCP-1926-JP-α-1の笑い声に加えて、子どもの笑い声が通信に混じり込む。

<ログ158(最新), 通信開始: 20██/04/17 10:06>

α-1: 本部、私は今どこにいますか?

時折、SCP-1926-JP-α-1のすすり泣くような声が通信に混ざる。

本部: エージェント、貴方はSCP-1926-JPから1050km西の地点にいます。

α-1: すぐに作業へと戻ります。私はもうこれ以上、あの子たちに近付きたくない。もう目を醒まさなければ。


付記: SCP-1926-JP内での昏睡事案後、エージェント・███は1時間後に覚醒し、各種検査でも異常性が診断されなかったことから、一定期間の経過観察後に職務へと復帰しました。なお、SCP-1926-JP-α-1との円滑なやり取りを維持するため、この情報が伏せられ続けている点には留意してください。

追記: 19██/██/██、エージェント・███はサイト-81██で発生した収容違反事案に巻き込まれ、殉職しました。その一方で、エージェント・███が死亡したことによる、SCP-1926-JP-α-1への明確な影響・変化は観察されませんでした。

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