SCP-1955-JP
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アイテム番号: SCP-1955-JP

オブジェクトクラス: Euclid

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SNSに投稿されたSCP-1955-JPの写真。現在はウェブ上より削除済み。

特別収容プロトコル: SCP-1955-JPは小型の複合型発信機を取り付けた上で、内面に緩衝材を設けた標準規格猛獣飼育ケージ内にて管理されます。ケージは防音加工を施した中規模収容コンテナの中心部に設置され、コンテナ内における職員の発話、特に感謝や賞賛に類する表現はその一切が禁じられます。SCP-1955-JPのバイタルサイン並びに身体状況は常時モニタリングし、予期せぬオブジェクトの衰弱に備えてください。オブジェクトの転移事象が発生した際は、発信機からの取得情報と民間人等による各種通報記録の統合から転移先を割り出し、地区配備職員による早急な再確保手順が成されます。

説明: SCP-1955-JPは絶滅種として知られるニホンオオカミ(Canis lupus hodophilax)の姿をとる生物実体です。体長は約90cm、その外見からは1歳程度の若い個体である様に見えます。しかし確認される限りその成長速度は非常に遅く、実際にはより年齢を重ねた個体と考えられる事が後に指摘されました。SCP-1955-JPの体内構造に異常は見られず、なおかつ生命活動も通常通りに成されていますが、当該実体には本来不可欠である摂食や排泄といった行為が確認されていません。後述する各記録より、SCP-1955-JPは本来の同種に比較して高い生命力・各種薬剤投与に対する耐性を持つことが推測されています。加えて最も特筆すべき事象として限定的な空間転移能力も持つとされていますが、財団の管理下でこの能力が行使された事案はこれまでで1例のみしか確認されていません。SCP-1955-JPの付属物品として、SCP-1955-JP-Aが存在しています。

SCP-1955-JP-Aは麻素材で作られたポーチであり、その形状はSCP-1955-JP自ら物品の出し入れが可能となるように簡素な細工がなされています。いくつかの記録は、これがSCP-1955-JPの首から下げられるようにして用いられていた事を示しています。またSCP-1955-JP-Aの内部からは状況に合わせた由来不明の物品が出現した旨も報告されていますが、これがSCP-1955-JP-Aの持つ異常性によるものか、もしくはその他の非特異的な活動を経た結果なのかは明らかになっていません。財団による確保時、SCP-1955-JP-A内部には非異常性のメッセージカード1点のみが存在していました。このカードには活版印刷とみられる印字で、下記の文面が記されています。

この子を、そちらにお送りします。
みなさんの元で一緒に暮らし、お役にたつのが夢なのです。
心やさしい子ですから、みなさんのために精一杯 きっとがんばってくれるはずです。
どうか、よろしくお願いします。

酩酊街より 愛をこめて

当初SCP-1955-JPはSNS上の記録や口頭での体験談等においてのみ確認され、財団はそれらの報告を事後に追跡する形で存在を把握していました。以下に採取された情報記録の抜粋を列記します。詳細な記録は別紙1955-JP付属資料Aを参照してください。


記録1955-JP-1 - 日付20██/03/03

発生場所: 滋賀県 ████線███駅内公衆便所

事案内容: 出勤途中であった男性████氏が使用中の個室内へ、認識外の未知の方法1でSCP-1955-JPが出現しました。当時██氏は突発的な腹痛による行動不能に陥っており、その状況に強い焦りを抱えていた旨を証言しています。これに対し、SCP-1955-JPは首に掛けたSCP-1955-JP-Aより市販の胃腸薬、並びに330mlペットボトル入りの飲料水2を取り出して男性に提供。男性は半信半疑ながらもこれを服用し、急速にその体調を回復させたと主張しています。██氏が自発的に感謝の言葉を述べると、SCP-1955-JPはその場の空間に吸い込まれる様にして消失したと報告されました。

付記: ██氏によるSNSへの投稿から、財団が最初にSCP-1955-JPの存在を認識するに至った事案です。地区配備の職員によって██氏と回収物品、並びに該当する公衆便所内へ各種異常性の測定が行われましたが、三者共に特異性は見られませんでした。個室内からはSCP-1955-JPのものとみられる数本の体毛、██氏が所持していた薬瓶・ボトルの表面からはその唾液成分が採取されました。SNSへの投稿はデータを記録したのちに削除されています。

記録1955-JP-2 - 日付20██/03/04

発生場所: 広島県 ██市 住宅街

事案内容: 民間人宅から逃走した中型犬をSCP-1955-JPが確保した旨がSNS上に報告されました。逃走したのは屋外飼育中の個体で、その原因は係留用ポールの取り付け不備であったと見られています。オーナー家族による捜索中、SCP-1955-JPが逃走した中型犬のリードを咥え牽引する形で出現。接近したオーナーに対してリードを引渡すと、その後認識外のうちに消失したとされています。

付記: SNSを経て把握された事例。上記のオーナーは消失直前のSCP-1955-JPに対し、感謝を述べながら撫でるといった短時間のスキンシップを図っています。聴取にて証言された実体の様相やその状況、さらには採取された体毛・唾液サンプルなどから記録1955-JP-1の実体と同一存在であると推定し、当該実体の暫定的なナンバリングが行われました。SNSへの投稿はデータを記録したのちに削除されています。

記録1955-JP-8 - 日付20██/03/11

発生場所: 東京都 ██区 ███公園

事案内容: 夜間パトロール中の警察官によって保護された児童の側に、SCP-1955-JPが目撃されました。児童は当時保護者による“躾”として屋外環境に放置されており、発見時のSCP-1955-JPはブランケットを羽織った児童に自らの身体を寄せ、暖める様な仕草をとっていたと報告されています。保護に当たった警察官がSCP-1955-JPの行動を賞賛すると、当該オブジェクトはその場から消失したとされます。

付記: 警察組織内での報告を経てその発生が把握された事案の1つです。後に行われた当該児童に対する聴取から、所持していたブランケットはSCP-1955-JPがSCP-1955-JP-Aから取り出し提供したものであると証言されました。

記録1955-JP-21 - 日付20██/03/21

発生場所: 神奈川県 ██市 █氏住宅

事案内容: 市内の█氏住宅敷地内にSCP-1955-JPが出現。SCP-1955-JPは住宅の玄関扉を激しく掻き、遠吠えを繰り返しました。その様子を不審に思い敷地内へと進入した近隣住民が、SCP-1955-JPの先導のもと住宅内で倒れ意識を失っている█氏を発見。救急へと通報されるに至りました。到着した救急隊の処置によって█氏は後に意識を回復しています。

付記: 目撃談が地域内で流布した事により発覚した例。進入した近隣住民は当初SCP-1955-JPを█氏の飼犬であると認識しており、█氏の異変を外部に伝えた当該実体へ賞賛と感謝を口頭で述べていたと証言しています。その後SCP-1955-JPは消失していますが、この住民はこの過程を視認していませんでした。


収集された各種情報より、記録1955-JP-1以降1日につき1度以上のSCP-1955-JP出現事象が日本国内のいずれかの場所で不規則的に発生していたと考えられています。しかし、20██/03/21に発生したとされる記録1955-JP-21を最後にSCP-1955-JPの目撃情報は突如として断絶。担当班は当該実体の無力化・消失も視野に入れた情報収集を続けていましたが、以降2ヶ月以上に渡って有力な情報は得られていませんでした。この状況は、同年の06/05に██県██保健所により確保された野犬一頭の異様な容態について、その情報が財団へと通達された事を契機に進展します。確保された個体に対する初期調査の過程において、ここで採取された遺伝子情報が事前に記録されていたSCP-1955-JPとみられるサンプルのものと一致。各種分析を経て、結果的にこの個体がSCP-1955-JP実体であると判断されるに至っています。

現在確保されているSCP-1955-JPの様子は、当初目撃者より証言されていた内容・写真記録等と大きく変わり非常に凶暴かつ敵対的です。発見された際の当該実体は全身に重度の熱傷を負っており、表皮は一部が炭化や壊死による組織の脱落、それに伴う創面への感染症を表していました。内部組織・骨格にも損傷と治癒の痕跡がみられるほか、表皮の付着物からは灯油が検出された事などから、SCP-1955-JPは人為的に損傷を受けた事が推測されています。これらの状況は本来当該実体の生命を絶つのに十分と考えられる重大なダメージですが、未解明の能力によりSCP-1955-JPは最低限の自然治癒のもと現在も生存しています。財団による確保以降、担当班は複数回に渡ってSCP-1955-JPの損傷に対する治療を試みていますが、当該実体の激しい抵抗並びに鎮静剤・麻酔薬の非有効性から、現状では拘束具を用いた小規模かつ段階的な処置のみが試行されています。

当該実体の駆除要請を行った██県██市の男性████氏は、訪れた██保健所の職員に対してSCP-1955-JPを「自宅敷地内に侵入した野犬であり、知人の大学生3人と協力し自らのガレージへ捕獲したもの」であると述べ、オブジェクトが負っていた損傷への関与は当初否定していました。しかし財団の関与後、敷地内から廃棄されたSCP-1955-JP-Aが発見された事や、さらには██氏並びに上記学生らの所持端末にSCP-1955-JPに対する集団的な加虐の様子が映像・写真データとして保存されていた事実より、のちに全員が一転してその関与を認めています。██氏はこれを野犬駆除の為の正当な行為であったと主張していますが、過去の通信履歴からは██氏らが以前より野良猫や小動物などを対象に同様の行為を繰り返していた事が示されています。██氏と大学生3人には詳細な聴取と所持データの没収が行われ、現在は記憶処理を経て簡易的な監視の元、全員が本来の生活へ復帰しています。

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SCP-1955-JP

SCP-1955-JPが初期に行使していたとされる空間転移能力について、これが後に確認されなくなった理由として幾つかの推論が成されました。最も有力な説として、記録された転移の状況では必ずその直前に至近距離の人物による感謝あるいは賞賛に類する発言がされていた事をもって、これがSCP-1955-JPの能力発現のトリガーであるという考察が挙げられます。不確定であったこの推論は、20██/██/██にSCP-1955-JP収容ケージ保守作業中であった職員同士の不用意な発話によって転移事象が発生した事で確定とされました。この転移でSCP-1955-JPは拘束具を逃れて島根県██市内の民間人宅へと出現。住民の通報を受けて職員が投入されるまでに、当該住居の居住者に1名の死者と3名の重軽傷者を発生させました。改訂されたプロトコルでより厳格な発話の抑制措置が採られて以降、SCP-1955-JPの転移事象は発生していません。上記の例も加味した上で、SCP-1955-JPの転移能力は予め定められた特定状況をトリガーとする不随意のものであるというのが現在担当班が採択している見解です。

付記: 財団によるSCP-1955-JP確保から█ヶ月が経過した20██/██/██、管理下にあったSCP-1955-JP-Aから確保当時に発見されたものと同様のメッセージカードが出現しました。以降不定期的に、現在計4通までの文書が確認されています。内容は以下の通りです。

回収日: 20██/██/██

あの子は元気にしていますか?
みなさんのお役にたてていますか?
あの子の夢が叶っているなら、私たちはとても嬉しいです。

回収日: 20██/██/██

あの子は元気にしていますか?
幸せに暮らせているでしょうか?
さいきん返事がこないので、ほんの少しだけ心配です。

回収日: 20██/██/██

あの子はあなたと一緒にいますか?
お返事くださると幸いです。

回収日: 20██/██/██

今度、そちらにお邪魔します。
ご迷惑だったらごめんなさい、お土産もたくさんお持ちしますので…
その時がきたら、よろしくお願いします。

酩酊街より 愛をこめて

20██/██/██現在、SCP-1955-JP並びにその周辺で何らかの変化が観測された報告はありません。

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