SCP-1956-JP
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プロトコル・御舟の様子。この写真が撮影された17分後SCP-1956-JPが飛来し、プロトコルは無事終了した。

アイテム番号: SCP-1956-JP

オブジェクトクラス: Keter Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-1956-JPは1950年7月2日に発生した事件によって異常性を消失したと判断され、Neutralizedに分類されました。

説明: SCP-1956-JPは異常な特性を有する未知の鱗翅目(Lepidoptera)です。全長は平均33.7cmであり、翅にモルフォチョウ属 (Morpho)に似た金属光沢を有し、双頭で、腹部に用途不明のすり鉢状器官を持ちます。鱗粉は有害であり、皮膚に強い痒み、爛れや引き攣れなどの症状を引き起こします。また体内にベネズエラヤママユガ(Lonomia obliqua)のものと似た成分の強力な出血毒を持ちます。口器が発達しており、花の蜜の他に花粉を摂食することが可能です。本州全土の山中にて発見された野生のSCP-1956-JPは約200匹から████匹の群れに分かれ生活していることが確認されています。知能は非常に高く、その群れで最も老齢の個体を長とする階級社会を築いていることが明らかになりました。

SCP-1956-JPの最大の特徴はその集団自殺行動にあります。不定な周期で、SCP-1956-JPの年長の個体は群れから分離して別の群れを作り、生息地である山中から自殺飛行へと出発します。飛行するSCP-1956-JPが実際にどの場所で自殺行動に至るかは山間部、都市部、海洋など不定であり、群れを構成するSCP-1956-JPの意思に左右されるものと考えられます。

SCP-1956-JPの集団自殺行動はその規模、SCP-1956-JP自身の毒性等を原因に周囲に大きな損害を与えます。過去の収容違反の代表例として、19██年█月█日に枯渇しかけていた██ダムで行われた集団入水は極度の水質汚濁を引き起こした他、強い毒性を帯びた水を飲用及び使用したことによって下流██村の住人█名が腎臓出血による腎不全で死亡、█名が内臓出血による重体、██名が強い痒みや爛れなどの皮膚疾患を発症しました。19██年█月██日には東京都██区にて発生した大規模な列車脱線事故現場にSCP-1956-JPの群れが飛来し、炎上する列車に飛び込み焼死しました。█名が眼窩にSCP-1956-JPが潜り込んだことで眼球に損傷を負い、また█名がSCP-1956-JPの毒性を原因としてショック死した他、██名が気道に多数のSCP-1956-JPを詰まらせ窒息死するなど、事故を直接の死因としない死者が多数発生しました。

SCP-1956-JPの管理は194█年に蒐集院より財団へ引き継がれました。SCP-1956-JPの自殺行動は美的価値が高いとみなされる物品を損壊させることで誘導される傾向にあることが蒐集院の研究によって判明しており、野生のSCP-1956-JPが自殺飛行に至った際の対処として収容が行われていました。当初財団は、SCP-1956-JPの危険性を考慮し、保護に必要な数を隔離及び飼育し他を殺処分する計画を立案しました。そしてその第一段階として長野県██山中から自殺飛行に至った群れを確保し、サイト-81██ガス室で殺処分を試みました。しかし複数の地域からSCP-1956-JPの群れおよそ████匹がサイト-81██に飛来し、またそれに呼応したガス室内の群れの収容違反によってサイト-81██全域で事案1956-Aが発生。職員██人が窒息や中毒を原因に死亡、また収容室の換気口から侵入したSCP-1956-JPの自殺行動に巻き込まれSCP-███-JP及びSCP-███-JPが破壊されました。結果、サイト内での収容を一時断念し、蒐集院の収容方式をより発展させたプロトコル・御舟が確立されました。

その後研究チームによって、事案1956-Aの反省を元に設計された飼育と自殺飛行の室内管理を可能とする特殊収容房にて恒久的にSCP-1956-JPの収容を行う計画が立案されました。この収容計画の遂行によってSCP-1956-JPのオブジェクトクラスはEuclidに引き下げられるとされ、特殊収容房81-██は1950年9月に完成し、次いで全国のSCP-1956-JPの確保作戦が実行される予定でした。

しかし1950年7月2日未明、京都府の██寺舎利殿██にて放火事件が発生すると共に、自殺飛行を行っていたSCP-1956-JPの一団が既に実行済のプロトコル・御舟を無視して飛来し、炎上する██に飛び込みました。その後、日本各地でSCP-1956-JPの群れが飛行を開始したことが各サイトより報告されました。火災の間SCP-1956-JPの群れは途切れることなく飛来し、日本全国で既に確認済の全ての群れに値する数が焼死し続けました。この放火事件以降SCP-1956-JPは現在まで確認されておらず、Neutralizedに分類されました。

補遺1: ██寺放火事件で逮捕された███氏へのインタビュー記録

対象: ███氏

インタビュアー: エージェント・平岡

付記: ███氏は重度の吃音症であるため、修正して筆記しています。

<録音開始>

エージェント・平岡: 今から幾つか質問をさせていただきます。

███: 【沈黙】

エージェント・平岡: あなたは、SCP-1956-JP、あの蛾についてご存知ですか?

███: 【沈黙】

エージェント・平岡: あれほど大量の蛾の群れが火に飛び込んだことを聞かされても、あなたは驚かなかった。██さん、あなたは最初からこの現象が起きると理解していたのですか?

███: 【沈黙】

エージェント・平岡: あなたが放火に至った動機はあの蛾に関係しているのですか?

███: 【9秒沈黙】教えたんです、あの蛾に。██を、時を経てなお聳える姿を見ろと。██はお前たちの目指すに相応しい場所や、俺もお前たちも、両方が幸福になれる道は、██を燃やす以外には最早無いと。【5秒沈黙】本当は。俺は、あれを殺さなあかんと、思った。あの蛾は、自分の望みのために、周りをなんぼでも犠牲にできる愚か者です。あの恐ろしい虫が罪を重ねる前に、この世から消さな、殺そう、殺そうと、思った。【対象は一時苦悶する】

エージェント・平岡: 大丈夫。大丈夫です。██さん、落ち着いてください。あなたはSCP-1956-JPと明確な意思疎通が可能だったのですね?

███: はい、はい、そして騙しました。理解者の振りをして、舌先三寸で、あの火に飛び込ませました。██と一緒に燃えればええと。あれの願いに、つけ込みました。【首を振る】あれの悲願は、きっと、叶ったんでしょう。救われたんでしょう。最初に飛び込んだ一団も、続いた子々孫々も。

エージェント・平岡: その願望とは何です?

███: とかく自らは、醜い故に。偉大なるもの、貴いもの、美しいもの。その死に殉じ、共に極楽浄土に至ると。【対象は号泣し、その後一切の質問に回答しなかった】

<録音終了(1950/7/8)>

補遺2: 事件後の調査から、放火事件以前の██寺舎利殿██の補修工事の際、材料にSCP-1956-JPの鱗粉と思われる物質が混入していたことが判明しました。原因は不明です。また、放火事件の犯人である██氏の不安定な心理状態、舎利殿██への執着はSCP-1956-JPとの交流に大きく影響されたものである可能性が高いことが担当心理士から報告されました。

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