SCP-1972-JP
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SCP-1972-JP-1と思われる、野生のカラスアゲハ雌個体   -エージェント・立尾撮影

アイテム番号: SCP-1972-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: その性質上、SCP-1972-JPを発現した全てのSCP-1972-JP-1個体を収容する事は不可能です。野生のSCP-1972-JP-1個体には発見次第小型チップを取り付け、その動向を随時追跡・監視します。ただし一般に希少種と呼ばれる種類のSCP-1972-JP-1個体は、民間への被害を防ぐため、捕獲の上でサイト-81██へ収容します。チップの取り付けられていないSCP-1972-JP-1個体と思われる鱗翅目を発見した際は、その場で直ちに破壊して下さい。可能であれば捕獲した上で、最寄りのサイトへ通報して下さい。その際、対象が密閉された状況に置かれる事のないよう十分に配慮する必要があります。
現在、研究・保存用のSCP-1972-JP-1個体は、サイト-81██の屋外特設ケージに7個体が収容されています。SCP-1972-JP-1が死亡した際は、死骸は通常の実験用昆虫と同様に処理し、新たなSCP-1972-JP-1個体を捕獲次第補充して下さい。また、後述するSCP-1972-JP-1-β類似個体が確認された際は、直ちにサイト-81██へ通報して下さい。
民間の建造物においてSCP-1972-JPによる被害が出た場合は、カバーストーリー「竜巻と見られる突風被害」を適用し、速やかな関係者の記憶処理を行って下さい。

説明: SCP-1972-JPは、ZW型性決定様式1の鱗翅目に現れる突然変異及び、それに起因する異常特性です。SCP-1972-JPが現れるのはW染色体上であるため、異常特性が生じる個体(以下、SCP-1972-JP-1)はその全てが雌、あるいは雌雄モザイク体です。外見上は異常性のない同種の鱗翅目(以降、通常個体)と殆ど変わりませんが、体長に対する翅の総面積の値が、通常個体と比べ10%程度大きくなる傾向が見受けられます。SCP-1972-JPに遺伝性はなく、SCP-1972-JP-1の親から生まれる子がSCP-1972-JP-1であるとは限りません。また、SCP-1972-JP-1の幼体期にも、前述の遺伝子異常以外に特筆すべき点は観察されません。

SCP-1972-JPによる異常性は、SCP-1972-JP-1成体が飛翔する時に発生します。SCP-1972-JP-1の羽ばたきによって生じた大気の動きは、SCP-1972-JP-1を中心に半径10m程度の空間内において、あらゆるものの摩擦の影響を無視した上で徐々に増幅します。通常の飛翔程度の羽ばたきであれば、半径10mの範囲を抜ける頃には瞬間的に風速15m/s前後2に達します。範囲を抜けた風は通常と同じく摩擦力の影響を受け、いずれ消滅します。この異常性は生きたSCP-1972-JP-1成体が羽ばたく場合によってのみ生じ、また種類や個体による体格差で風力は上下しません。

SCP-1972-JP-1が密閉空間に閉じ込められた場合、空間内で際限なく風が増幅し続ける恐れがあります。過去の実験においては、3m3の実験用仮設チャンバーに閉じ込められた全長1.3cmのベニシジミ(Lycaena phlaeas)のSCP-1972-JP-1個体が、13秒間で瞬間風速36m/s3の風を巻き起こし、チャンバーを破壊しています。またSCP-1972-JP-1自体の物理的な強度は通常個体と同程度であり、各密閉実験・事象における全てのSCP-1972-JP-1個体が、自らの起こした風によって破壊されています。

補遺1: SCP-1972-JPの存在が明らかとなった契機は、19██/06/██の、愛媛県██市内にあるエージェント・███の自宅の一部損壊事故でした。当初この事故は、日本国内で数件確認されていた超常現象「突如陸上で発生し、殆ど移動しないまま瞬間的に消失する、超小型の局所的な低気圧もしくは竜巻」の一例として記録されました。しかし、エージェント・███はその全てが建造物と重なる形で発生している事実に興味を惹かれ、独自に調査を開始しました。結果、当超常現象の各事象における生存者へのインタビューによって、被害に遭った建造物の全てが当時鱗翅目と深い関係を持っていた4事が判明しました。

この事実に基づき当事象の研究チームが発足、鱗翅目に発生する特異な突然変異が発見され、当事象はSCP-1972-JPの番号を割り振られました。19██年当時のSCP-1972-JP-1は世界中でおよそ██████個体と予測され、その個体数の多さ、突然変異という収容・根絶の難しさから、SCP-1972-JPは該当個体発見次第破壊のKeterクラスオブジェクトとして分類されました。

まさか、地球上の全ての鱗翅目を絶滅させる訳にはいかないからな。文字通り草の根を分ける捜索だが、致し方あるまい。 -███博士

補遺2: 200█/07/██、青森県██市において、SCP-1972-JP-1個体と同様の異常性を持つアオダイショウ(Elaphe climacophora)の雌個体が発見・回収されました。当個体は這う時に生じる空気の流れを増幅しますが、その幅は一般的なSCP-1972-JP-1個体の約1.5倍である(個体から10m地点において、瞬間風速23m/s前後)事が確認されています。当個体はSCP-1972-JP-1-βと呼称され、現在サイト-81██の屋外特設ケージにて観察が続けられています。

我々が本当に危惧するべき事は2つです。1つは、当オブジェクトが発生する可能性を持つのが鱗翅目ではなく「ZW型性決定様式の生物であった」、もしくはそのように「なってしまった」という事実。そしてもう1つは、もしも後者が正しいとするならば、それはSCP-1972-JP-1総個体数の減少を理由に引き起こされたと考えられる点です。
現在の所、SCP-1972-JP-1-β以外に当オブジェクトの影響が見られるヘビは確認されていません。しかし、ZW型性決定様式の生物は鱗翅目やヘビ類に限りません。翅の小さな蝶達や、地を這うしかないヘビですら、凄まじい威力の風を起こせるのです。それがたくましい翼と体格を持つ「鳥類」に生じてしまったとしたら、世界中でどのような惨事が巻き起こるかは、想像に難くありません。 -枝角博士

枝角博士の提言を受け、SCP-1972-JP-1個体の破壊は研究目的を除いて禁止されました。SCP-1972-JP-1個体は発見次第確保し、希少種はサイト-81██に移送、それ以外は行動追跡用の専用小型チップを取り付けて解放します。同時に、各国の財団施設の協力の元、SCP-1972-JPの異常性が現れたヘビ類・鳥類の捜索が続けられています。
尚、200█年までの財団の活動によって、SCP-1972-JP総個体数はおよそ█████体まで減少したと見積もられています。

補遺3: 西暦2000年前後より、世界各地で大気の乱れの観測が頻発化しています。当事象とSCP-1972-JP間のはっきりとした相関関係の発見には未だ至っていませんが、収容チームより「元々SCP-1972-JP-1個体の巻き起こす風があってこそ、地球の大気は安定していたのではないか」との見解が示されています。

何という事だ。近年のゲリラ豪雨や爆弾低気圧、竜巻の頻発は、我々財団が招いた事態だとでも言うのか。地球温暖化など嘘だとでも。我々の努力は、人類のための活動は、間違っていたのか? -█研究員

遺伝子操作によるSCP-1972-JP-1の人工増殖実験を申請します。現状が我々の招いた事態なのならば、我々にはそれを収束させる責務があるはずです。 -███博士

申請を却下、実験は保留とする。SCP-1972-JP-1個体数の減少と、ヘビ型SCP-1972-JP-1個体発生及び異常気象との相関は、現時点で双方とも憶測に過ぎない。財団の責務は異常存在の確保・収容・保護であり、決してそれを増やす事ではない。 -日本支部理事 ██

20██年現在において、減少したSCP-1972-JP-1個体数の回復は確認されていません。

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