SCP-1973-JP
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アイテム番号: SCP-1973-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-1973-JPはサイト-██に収容され、疑似記憶を植え付けたDクラス職員によりサイト-██は運営されます。サイト-██がSCP-1973-JP収容専用サイトであるという事実は、一部を除いたサイト-██職員に対して常に秘匿されます。サイト-██は全ての財団データベースから隔離され、常に偽装データが送信されます。職員は特別な理由がない限りサイト内での業務を行い、サイト外での活動後は記憶処理を施す必要があります。サイト管理者および14名のレベル3職員はサイト-██職員を操作し収容を維持し、必要があれば外部への協力を要請する必要があります。
SCP-1973-JPと「勝ち負け」が発生しうる事象を行うことは禁止されています。SCP-1973-JPに関連するすべての事項は精査を行い、少しでもリスクがあると認められた場合は却下されます。

説明: SCP-1973-JPは人型実体と思わしき生物です。外見・声・口調・使用する言語は観測者によって異なり、おおよその場合「観測者にとって尊敬・恋慕・愛護の対象となる理想的な人物」のものになるようです。身長や体重を機器を使用して計測する試みは、計測者によってまったく結果が異なるという事態を引き起こしました。録音記録も同様に観測者によって内容が異なり、SCP-1973-JPについて知らない人間が聞いた場合はSCP-1973-JPの発言は確認できないという結果になりました。
確認できる限りでは、SCP-1973-JPはどの人物に対してでも好意的であり、財団に対しても比較的協力的なようです。他者との交流を強く望み、会話や食事を共にすることをよく申請します。害意に対しては無視することがほとんどであり、直接的な被害が発生しない限り特に敵対することはありません。

SCP-1973-JPは現実改変能力を有しており、その効果範囲はこの宇宙全てであると考えられています。その性質上、相対的な数値により現実改変能力の強度を示すヒューム検査等は意味をなしません。現在財団は絶対的な手法による異常性の判断を行うことが出来ませんが、後述の現象において明らかに異常存在が関わっている点と、それを行うのに十分な理由を持つ存在がSCP-1973-JPしかいないことから、現在おおよそ正しいものとして認識されています。

SCP-1973-JPの異常性の1つは、SCP-1973-JPが「勝負」を行った場合、SCP-1973-JPが勝負の相手(以降対象)に必ず「勝利」することです。「勝負」は一般的な戦闘のほか、弁論や研究、競争など大よそ「勝ち負け」が発生するすべての事象が含まれ、「SCP-1973-JPが対象より優れている」結果を示し「勝利」する形で終了します。どの程度からSCP-1973-JPとの「勝負」の範囲になるのかは実験の困難さや予想される被害から、特別な理由がない限り禁止されています。
現実改変の理由として、過去の戦闘記録においてSCP-1973-JPの「勝利」につながる「偶然」が発生する点が挙げられます。これは過去の戦闘記録を視聴した機動部隊員が「SCP-1973-JPの動きが素人であるが、相手があり得ないようなミスしている事例が多すぎる」と指摘したことで発覚しました。いくつかの小規模な確認実験の結果、主に対象やそれに付随する環境に対して現実改変を行っていることが推測されました。SCP-1973-JPそのものの実力はそう高くないと考えられています。
SCP-1973-JPが「勝利」するために行う現実改変の規模・限度が不明な点、それによる発生する影響が想定できないことから、SCP-1973-JP関連の実験はすべて停止されました。しかしながら偶発的な要因により「勝利」事例が継続して発生している点には留意が必要です。

2つ目の異常性は、SCP-1973-JPと接触した人物に対する性格改変です。SCP-1973-JPへの評価は極端に肯定的か、あるいは極端に否定的になり、「どちらでもない」などの中庸的な意見が極度に減少します。
肯定的な職員(影響者A)は「もっと積極的に利用すべきである」「信頼できる」「SCP指定から外して正式な職員として雇用すべきである」などの意見を示し、社交的・積極的な性格になります。SCP-1973-JPに対して否定的な職員に対しては異常に攻撃的になりますが、直接的な行動に走ることはありません。
否定的な職員(影響者B)は「特別収容プロトコルを見直すべき」「利用は即刻中止しなればならない」「今すぐにでも終了すべき」などの意見を示し、内向的・消極的な性格になります。SCP-1973-JP及び影響者Aに対しては異常なまでの敵対心を示し、場合によっては直接的な排除行動に移ることもあります。しかし排除行動は必ず失敗し、影響者Bは周囲から孤立することになり、前述の傾向がより強くなります。
影響者A・影響者Bの両者ともに、SCP-1973-JPを極度に肯定的・否定的に見る理由を「そうでないとおかしい」と主張します。詳細な理由の説明を求めた場合、支離滅裂な言動を繰り返して有効な回答を得られませんでした。

補遺: ジーン博士の提言

SCP-1973-JPに関しての調査を担当した私から言えることは、現在の収容を維持することが一番ということである。担当職員をすべてDクラスに入れ替え、今までの担当にFクラス記憶処理をわざわざ施したのは、やつを殺そうとすることが一番やってはならないことだからだ。
「勝利」するためには敵が必要だ。敵は倒されるべき存在であり、あいつは「勝利」するためにその能力を有している。だからこそやつに敵対的な感情を抱く存在を、やつに倒されるための存在を数多く作り出す。世界が、やつの敵を用意するのだ。だからこそ、財団はやつと「戦ってはいけない」。やつと戦わず、やつを避けて、永遠に決着がつかないようにするしかない。あいつには「勝てない」のだ。だが「負け」も許されない。
我々に勝利はない。あいつを殺すことはできないし、特異性の原因を突きとめることもできないだろう。ただ、「敗北」の結果をより小さなものにするしかない。永久に終わらぬ勝負を続けられる、そんなわずかな可能性にかけるしかないのだ。 —ジーン博士

 
 
 

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送信ID: dcs2554

宛先ID: a1w0ta

ファイル : 12の添付ファイル

連絡が遅れたことをまずはお詫びします。私たちは失敗しました。SCP-1973-JPはもう間もなくサイト-██の外に出てくるでしょう。
サイト-██はやつの汚らわしい欲望に汚されました。かつて研究者たちが世界を守るために日々戦い続けていた戦場は、SCP-1973-JPを称賛し彼を中心とする壊れた世界になってしまいました。財団の理念を胸に秘めた勇敢な職員は、今や彼の栄光を称えるための人形にすぎません。

今、サイト職員は2種類に分類できます。栄光の木漏れ日を受ける人形と、栄光の陰に蝕まれるガラクタです。私たちはそのどちらかにならざるを得ませんでした。恐らく、これが1973-JPの現実改変なのでしょう。私たちは例外なく人格を蝕まれ、ただ奴の栄光に記される”モブ”になるのでしょう。一部の職員は彼の隣に立つことが出来ますが、彼らすらもただの人形にすぎません。このサイトでは1973-JPが全てであり、世界の中心です。男性職員は奴を貪り、女性職員は奴の食い物にされ、彼に批判的な職員が奴隷的な扱いを受けています。全員自分たちがどんな組織に所属し、どんな職務についていたか、そして自分がどういった人間だったか覚えていません。私も、自分がサイト管理者であり、奴をコントロールしないといけないということ以外記憶が曖昧です。ただ、1973-JPの寵愛を受け、迫害から逃れることにすべてを注いでいます。私も記憶処理薬と記憶再起薬を何度も使用して、ようやくこのメールを書きあげています。

どうか、SCP-1973-JPを殺してください。奴を制御するのは不可能です。もう、私たちは限界です。


 

メッセージを作成しますか?
[はい (Y)]  [いいえ (N)]


 

送信ID: a1w0ta

宛先ID : geen2545

ファイル : (添付ファイルなし)

サイト管理者役であるD-2554からのメッセージが届きました。予想されていた時期より若干早めですが、添付ファイルの数、暗号メッセージからまだ余裕はありそうです。「助けてくれ」はおそらくフェイクでしょう。
推測な上未発表のものですが、ジーン博士の予想は正しいでしょう。職員向けカバーストーリーFGH-0”杞憂の世界”は成功しているとみていいです。とりあえずの対抗策として、プロトコルSUE-1973は有効であると考えられます。より強い記憶誘導剤を使用すれば確実になると思われます。
このままプロトコルSUE-1973を特別収容プロトコルに組み込むことを上層部に提案します。完全とは言えませんが、SCP-1973-JPの興味が外へ行くのをだいぶ遅らせることが出来るはずです。


 
 

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