SCP-203-JP
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Dクラス投入後30分後のSCP-203-JP。

アイテム番号: SCP-203-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-203-JPの存在する岩壁へ続く連絡階段は月に一度点検し、SCP-203-JPへの常時かつ確実なアクセスを確保しなければなりません。連絡階段の入り口には山小屋に偽装したガードポストを設け、6 名のセキュリティ要員及び12 名のDクラス職員が配置されます。SCP-203-JP特別指定区域に指定されている海岸部は三ヶ所に遠隔監視装置が設置され、担当職員によって常に監視されていなければなりません。

この特別指定区域とその海岸部はそれぞれ、自然公園法の特別保護区域と海域公園に指定されているため、観光客や漁船などの出入りは制限されています。しかし一般人の侵入は、特別指定区域へ続く山道の常時の有人監視と海上の巡視艇によって防がれなければなりません。9 月~11 月、そしてその2 週間前後の期間にはこの監視体制は一層強化されます。この時、前記の規制の他に天候不順などの各種カバーストーリーによって航空機の上空への進入を防止し、当該期間の衛星写真については各衛星に組み込まれた電子欺瞞プロトコル『今日はやけに雲が厚い』を起動し、特別指定区域の画像を加工します。

海蝕イベントが発生し海蝕が全体の34 %まで進行した時、直ちにSCP-203-JPに8 名のDクラス職員を投入して海蝕の進行を停止させてください。この時Dクラス職員は昏睡状態にしておくことが推奨されますが、緊急の場合は除きます。Dクラス職員を追加で投入して海蝕により削られた部分を回復しなくてはなりませんが、追加投入はセキュリティクリアランス3以上の担当職員が監督します。海蝕イベント中のSCP-203-JPへ現地に生息する小型爬虫類が侵入することを防ぐために、イベント中のSCP-203-JPはDクラス職員の投入が可能になるまでシートによって密閉されます。イベント中のSCP-203-JPへ爬虫類を投入するのは実験目的であっても禁止されています。

説明: SCP-203-JPは和歌山県██████市に存在する、凝灰岩の巨岩の中腹に穿たれた小さな横穴です。巨岩は高さが15 m程もあり、平安期に彫られたと推定される階段がSCP-203-JPまで続いていますが、摩耗のため使用に耐えません。そのため、現在は別に連絡階段が設けられSCP-203-JPへのアクセスを可能としています。巨岩及び横穴を人為的に破壊する試みは全て失敗し、雨や、風による浸食でのみこれらの対象は消耗します。SCP-203-JPのある巨岩は、半島の付け根に位置しており、半島の巨岩より先の部分はSCP-203-JP特別指定区域として指定されています。

SCP-203-JPの異常性は、平均的に9 月から11 月までの期間内に、年に一度発揮されます。SCP-203-JP特別指定区域の海岸部において異様な高波が発生することで海蝕イベントが開始され、これを境に通常よりも劇的に早く海蝕が進行し始めます。半島はその先端部分からSCP-203-JPまで██ kmの全長がありますが、試算によれば遅くとも15 日前後で半島全体が海蝕により全て海面下に沈むと考えられています。収容前、半島には典型的過疎村である███村があり███人の民間人が居住していましたが、収容後に全て記憶処理を施し移転させました。

この海蝕イベントは、海蝕が半島全体の34 %以上に及んだ時にSCP-203-JPの中へ8 人の人間を投入することで即時に停止します。また海蝕を受けて海中に沈んだ部分については、イベント停止後に人間を追加投入することで回復されます。この回復は半島上部に堆積した土壌や植物、建造物とその細部にまで及びます。ただし、人間を含む動物は海蝕の影響を受けて死亡・破壊された場合でも回復対象に含まれません。また人間以外の投入は無意味であり、ヘビを含む爬虫類の投入は逆に海蝕の速度を促進します。追加投入による回復量は一人につき半島全体の10 %程度であると見積もられています。投入する人間には特段の注意は必要なく、人間であれば老若男女や意識の有無に無関係にイベントの停止・海中に沈んだ部分の回復に使用することが可能です。

SCP-203-JPに投入された人間はSCP-203-JPの壁面に触れた素肌の部分から、壁面に開いている微細な孔に水分を含んだ生体組織の全部を吸い込まれます。この吸引は強力なもので、投入開始から数分で生体組織の95 %が壁面に吸い込まれます。衣服に残った血液なども完全に吸い込まれるため、使用したDクラス職員の拘束衣は再利用が可能です。半島の海蝕が34 %以上に達していない場合にはこの吸引は行われません。吸引された生体組織がどこへ行くのかは、SCP-203-JP及び巨岩の破壊不能性により不明です。

SCP-203-JPによる海蝕が開始されると、SCP-203-JP特別指定区域の3 kmの沖合に推定6 万匹のセグロウミヘビ(Pelamis platura)が集結します。この時のセグロウミヘビはイワシのような巨大な集団を作り、海蝕によって水没した部分を通って2~3 日ほど掛けてSCP-203-JPへ近づいていきます。これらのセグロウミヘビは通常より凶暴性が増しており、海中の生物を手当たり次第に捕食している様子が確認されています。陸と海の接する岩壁に到達するとこれらのウミヘビは岩壁に体当たりなどを繰り返し、その結果として海蝕はより速く進行します。この行動でウミヘビ達は傷つきません。

SCP-203-JPは地元住民以外には奇岩として知られていましたが、特に注目を集めるようなものではありませんでした。しかし、███村の住民はSCP-203-JPの異常性を把握しており、少なくとも数十世代に渡って海蝕イベントを停止させ続けていました。海蝕イベントは神道のワタツミ・龍蛇信仰に結びつけて解釈され、投入と同時に祈祷や儀式が行われていたようです。しかしこの祈祷や儀式はSCP-203-JPの異常性の抑制などに全く関わりが無いことに注意してください。彼らが投入に使用していた人員は聞き取りによると、多くは計画的に出産された乳児や死期の近い老人でした。███村内では近親婚が行われ、多夫多妻制のもとで持続的な人員の産出が確保されていました。SCP-203-JPの確保の際には投入用の人員と見られる幼児が██人倉庫内に備蓄されているのが発見されました。これらの幼児は狭い場所に閉じ込められた上に鎖などで拘束されていたことで、骨格が変形し歩行も困難で会話もほとんど不可能な状態でした。

国土地理院内に潜入していたエージェントが地形の著しい変化に気がついたことで███村は財団の注目を浴び、捜査が開始されてすぐにSCP-203-JPが発見されました。SCP-203-JPの確保の際に███村の住民が組織的に抵抗したため、機動部隊が現地に投入され7 名の住民が終了されました。この際、初期交渉にあたっていて非武装だったエージェント████が住民によって射殺され、████博士は全治三ヶ月の重傷を負いました。機動部隊が村全体を制圧したことで███村は抵抗を諦め、███村の司祭者と有力者からSCP-203-JPの基礎情報が財団に譲渡されました。

███村から得た資料には海蝕がSCP-203-JPのある巨岩まで進行すると、海蝕が巨岩以後にまで及び、日本列島が全て水没するという推測が記述されています。しかし、███の住民のSCP-203-JPに関する正確な知識は、今のところ前述のSCP-203-JPによる海蝕の停止・半島の失われた部分についての回復についてのみであり、この推測の信ぴょう性は疑問視されています。また資料では、現在SCP-203-JPの異常性が特別指定区域に限られていることは、村人とその血筋が存在していることに起因するものであるという仮説が展開されています。███村の住民は収容当時の平均年齢が50 歳であったこともあり、村人のほとんどが本報告書執筆時点で死亡していますが現在も██人が生存しています。先述の仮説に基づいてこれらについての監視が行われています。しかし村人が半島から全員退去した後もSCP-203-JPの性質に変化が見られないことから、この仮説も正確でない可能性があります。

補遺: 以下は███村制圧直後に行われた███村の司祭者と有力者に対して行われたインタビューです。当時、海蝕イベントの進行3 日目であり早急な対処が必要であったため、インタビューは現地で行われました。インタビューはエージェント藤田が担当し、監督には加藤木博士が付きました。

補遺2:上記インタビューの三日後、早川が調査隊として派遣されていたサイト-81██のチームのテントを襲撃し、保安要員によって無力化されました。この際、早川は外傷によって重体に陥り、折しもその日に海蝕が34 %以上に進行していたため、臨時にDクラス職員として雇用されました。そして同じくDクラスとして雇用されていた███村の備蓄人員とともにSCP-203-JPへ投入され、海蝕イベントの停止に貢献しました。

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