SCP-208-JP
評価: +7+x

アイテム番号: SCP-208-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-208-JPがインストールされたコンピュータはサイト-8181の収容ロッカーに保管されています。外部への情報送信の可能性が否定出来ないため、このコンピュータのネットワークへの接続は禁止されています。実験の際に読み込ませるファイルは予めローカルファイルとして保存したものを使用してください。
現在、未収容のSCP-208-JPを捜索するために機動部隊ま-196("インターネット探検隊")が活動を続けています。

説明: SCP-208-JPはWindows系OS上で動作する、所謂「ウェブブラウザ」に分類されるアプリケーションです。製造元は不明で、製品名は「MemoryKeeper」、製品バージョンは「2.0.8」となっていますが、これ以外のバージョンのファイルは現在のところ発見されていません。ブラウザとしては特筆すべき点はなく、「クラッシュ後のタブ復元機能がない」「ファイルの実行速度が他社製品と比べて遅い」など総合的な機能ではやや劣っているといえます。

SCP-208-JPの異常特性は、日本語を読解可能な人間(以下「対象者」とする)がSCP-208-JPを用いて何らかの文字による情報が含まれたページ1を視認した時に発揮されます。対象者はそのページで視認した範囲の情報を完全に記憶し、またその情報を「以前から知っていたもの」と認識するようになります。肉眼ではなくカメラやスコープ等を通じての視認でも効果は発揮されますが、書かれた文字が日本語以外の言語であった場合や距離が離れていて判読出来ない場合は影響を受けません。また、複数のタブを開いた場合もその全てに対して同様の現象が起きます。タブを閉じたり、ハイパーリンクやブックマークなどによって別のページに移動しても、以前に開いていたページに対しての現象は持続します。

しかし、SCP-208-JPのプログラムもしくはそれが起動しているOS自体を終了させると、逆に対象者は前述の影響を受けたページの内容を(たとえそれ以前に知っていた情報であっても)忘却してしまい、それらの情報を「最初から知らなかったもの」と認識するようになります。この効果はSCP-208-JPで同じページをもう一度開き視認することで失われ、再び前述の完全記憶現象が起きます。また、忘却現象が起きた情報を別の手段によって「覚え直す」事は可能です。

このどちらの現象においても対象者は、何らかの形で影響を受けた情報が必要になるまではそれを「知っている」もしくは「知らない」のは自然なことと認識し不審を抱きません。また、SCP-208-JPで該当のページを視認した事実がそれと矛盾していたとしても、そのことに自分から気付くことは(たとえ今まさに閲覧している最中であっても)ありません。ただし、それらの矛盾点を他者から指摘された(記憶した情報に対して「その情報をどこで、どうやって知ったのか」と指摘された、忘却した情報に対して「その情報は知っているはずだ」と理由を挙げて指摘された等)場合、自分の記憶に齟齬があることに気付きます。それによって初めて、対象者がSCP-208-JPの異常特性に気付く可能性がありますが、すでに起きた完全記憶・忘却現象の影響自体が消えることはありません。

SCP-208-JPはインターネット上で「物知りになれる不思議なブラウザ」としてアップロードされていたものを財団エージェント███が興味を持ち入手、実験を行いその異常特性が明らかになったものです。その後全国各地でSCP-208-JPによる事件が発覚、現在までに45個のSCP-208-JPが確保されました。

実験記録004-1 - 20██/██/██
対象: D-208-JP-7(「めだかの学校」の曲および1番の歌詞は知っているが2~3番は知らないことを事前に確認済み)
備考: 童謡「めだかの学校」の歌詞が書かれたページをSCP-208-JPで開き、1秒間のみ画面を視認させる。その後別室に移動し、1時間後に「めだかの学校」を歌わせる。
結果: D-208-JP-7は1~3番すべてを正確に歌うことが出来た。また歌詞については2~3番も含めてすべて以前から知っていたと主張、SCP-208-JPでページを閲覧したことは覚えていたものの気に留めていないようだった。
分析: 文字を読む時間がなくても、ページを見るだけで影響は受けるらしい。

実験記録004-2 - 20██/██/██
対象: D-208-JP-7
備考: 実験004-1の10秒後、SCP-208-JPのプログラムを終了させ、再び「めだかの学校」を歌わせる。
結果: D-208-JP-7は1番も含めて歌詞を覚えておらず、歌うことが出来なかった。最初から歌詞を知らないと主張、SCP-208-JPでページを見たことは覚えていたものの、やはり気に留めていなかった。ただし曲の記憶はそのまま残っており、鼻歌で歌うことは出来た。また「メダカ」「学校」「川」などの単語の意味は通常通り理解していた。
分析: 忘れるのはページが「情報」として発信している内容だけか。なかなか興味深い結果が出た。

実験記録004-3 - 20██/██/██
対象: D-208-JP-7
備考: 実験004-2の後、D-208-JP-7が「めだかの学校」を先程歌ってみせたことを指摘する。
結果: D-208-JP-7はそのことを覚えており多少混乱した様子を見せた後、自らの記憶に矛盾があることに気付いたが、歌詞の内容については思い出せないままだった。
分析: SCP-208-JPによる視認したページに対しての記憶操作はかなり強力なものだが、辻褄合わせのための副次的な操作は容易に破れるようだ。根本的な解決にはならないが。

実験記録008-1 - 20██/██/██
対象: D-208-JP-14(タコが軟体動物・頭足類であると知っていることを事前に確認済み)
備考: 既存の知識と矛盾する内容の情報を見せた場合の検証。SCP-208-JPで「タコは哺乳類である」と書かれたページを視認させ、別室に移動。その後「タコは何に分類される動物であるか」を質問。
結果: D-208-JP-14は「軟体動物・頭足類である」と回答。ただし「タコが哺乳類だという、根拠も何もない出任せを聞いたことがある」ともコメント、どこで聞いたのかは記憶していなかった。
分析: 情報の真偽に関する判断は対象者次第ということか。次はそのあたりを工夫してみよう。

実験記録008-2 - 20██/██/██
対象: D-208-JP-15(タコが軟体動物・頭足類であると知っていることを事前に確認済み)
備考: 既存の知識と矛盾する内容の情報を見せた場合の検証。SCP-208-JPで「タコは哺乳類である」と書かれ、その根拠を様々な詭弁を弄してもっともらしく解説したページを視認させ、別室に移動。その後「タコは何に分類される動物であるか」を質問。
結果: D-208-JP-15は「哺乳類である」と回答。根拠を尋ねると、視認させたページに書かれている通りの解説を行った。その後のインタビューにより「頭足類であるとする説も知っている」とコメント。
分析: SCP-208-JPには情報の説得力を補強する効果もあるということか。まさか詭弁のでっち上げが積み重ねてきた常識に勝つわけが……ないよな?

補遺: 事件208-JP-8を受けて、未収容のSCP-208-JPの捜索体制が強化され、従来の個別のエージェントによるものから専用に結成された機動部隊によるものに変更されました。

事件記録208-JP-8 - 20██/██/██
███原子力発電所█号機において、原子炉の管理担当であった████、█████の2名がSCP-208-JPの影響を受け[削除済]に関する知識を忘却、[削除済]の危険が発生した。

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