SCP-2303-JP
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アイテム番号: SCP-2303-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 領有権問題を抱える国家において対外交渉を行う機関は、財団による監視の対象となります。監視担当者はSCP-2303-JPを出現させ得るイベントが計画された段階で、直ちに財団渉外部に連絡してください。財団渉外部は対象イベントに適切な人員を投入し、SCP-2303-JPが発生した場合には隠蔽活動を行います。SCP-2303-JPの出現するイベントは一般社会の関心が高いケースが多いため、関係者の記憶処理は慎重に行ってください。

説明: SCP-2303-JPは40代~50代のモンゴロイド系男性です。SCP-2303-JPは特定地域の領有権問題に関する国家間の協議を行っている場に突如出現し、出席者に「現在協議の対象となっている地域の領有権主張を取り下げる代わり、日本国の名古屋市を譲り受ける事で納得できないか」と提案します。出席者が提案を受け入れるケースはほぼ無く、多くの場合SCP-2303-JPは警備担当者によって退場させられますが、退場後に原理不明の手段で消失するためSCP-2303-JPの確保に成功したケースは存在しません。

SCP-2303-JPが初めて確認されたのは1989年、イギリス及びアルゼンチン政府が行ったフォークランド諸島の領有権についての会談です。イギリス側の代表者であるジェフリー・ハウ外務大臣は財団の存在を把握していた為、会談後に財団へ連絡を取りSCP-2303-JPの存在が明らかとなりました。以下はハウ氏へのインタビューを元に作成された当時の会話記録です。

会話記録2303-01:

発生日時: 1989年4月14日15時25分
発生場所: アメリカ合衆国ニューヨーク州
出席者: 英国外務大臣ジェフリー・ハウ氏、アルゼンチン外務大臣ドミンゴ・カバーロ氏、米国国務次官レジナルド・バーソロミュー氏、他書記官ら10名
備考: 会談は英語にて行われた。本記録は日本語訳されたもの。

バーソロミュー国務次官: 双方の主張は分かりました。しかし、両国の関係がこのまま緊張状態にある事は米国にとっても望ましくありません。中南米地域の安定と平和を願う大統領も深く憂慮しておられます。両国の国交を復活させ、話し合いによる解決へ舵を切る時ではありませんか。

ハウ外務大臣: 我々も戦争を望んでいる訳では無い。だが、歩み寄りの糸口も見えぬまま口先だけで国交を回復させても意味の無い事だ。

カバーロ外務大臣: その点に関しては同意する。我が国としては、自国領であるマルビナス諸島1をイギリスに不法占拠されているという見解を変える事はできない。国交を回復させた場合、国民からは占拠を容認したとみなされるだろう。

ハウ外務大臣: 多くの死者を出したフォークランド紛争からまだ10年も経っていない。あの島を守るために命を落とした者の遺族が大勢いる。イギリス世論も納得しないだろう。

バーソロミュー国務次官: しかしハウ大臣、中国が中南米地域への影響を強めている昨今、このような火種を残す事はあなた方にとっても好ましくない筈です。

ハウ外務大臣: それはそうだが、フォークランド諸島の領有権はまた別の問題だ。

SCP-2303-JP: すみません、名古屋ではダメですか。

ハウ外務大臣:

SCP-2303-JP: フォークランド諸島を諦めて、代わりに名古屋を貰うという事ではダメですか。

ハウ外務大臣: 君は誰だ?カバーロ大臣、あなたの所のスタッフかね。

カバーロ外務大臣: 東洋人など雇っていない。

SCP-2303-JP: ハウさん、フォークランド諸島の代わりに名古屋ではダメですか。

バーソロミュー国務次官: お前、どこから入ったんだ。警備員は何をしている。

SCP-2303-JP: 名古屋ではダメですか。

カバーロ外務大臣: ナゴヤとは何だ?

SCP-2303-JP: 日本にある市の名前です。いいところですよ。

バーソロミュー国務次官: 警備員、早くこいつをつまみ出せ。

SCP-2303-JPは上記の初出現以降、2022年までに34回出現しました。そのうち何回かは当事者がインタビューを敢行し、SCP-2303-JPから「自分は世界平和のために活動している」「名古屋は世界一すばらしい所だ」「世界平和の役に立てるならば、名古屋の人たちも喜ぶだろう」等の発言を引き出しました。但し、出現及び消失の原理については解明できていません。

インシデント記録2303-01:
2022年8月7日、スーダン共和国ハルツームにてスーダンのイルハーム外務次官補とエジプトのヘガージ国軍参謀長がハラーイブ・トライアングル2の帰属について会談を行いました。この会談は親交のあった両氏が私的に行ったものであり、スーダン及びエジプト政府に潜入していた財団職員は監視を行う事ができませんでした。会談中、現れたSCP-2303-JPに対しヘガージ国軍参謀長は「面白い、ぜひナゴヤを頂こうじゃないか」と発言しました。後日行われたインタビューにてヘガージ氏は、「冗談のつもりだった」「SCP-2303-JPは喜び、満足したように見えた」と供述しています。

インシデント記録2303-01以降、SCP-2303-JPの行動は変化しています。国際的な会談の場に出現する事は無くなり、代わりにハラーイブ・トライアングル周辺に出没するようになりました。いずれの出没事例においても、SCP-2303-JPはインシデント記録2303-01におけるヘガージ氏の発言を紹介し現地に住むエジプト人に名古屋への移住を勧めています。尚、ビザや金銭の問題から現地人の日本への移住は現実的では無く、SCP-2303-JPの提案を受け入れた民間人は現在までに存在しません。また現状SCP-2303-JPは現地民間人から「頭のおかしな東洋人」という以上の評価は受けておらず、異常性も認知されていないため積極的な収容は計画されていません。特別収容プロトコルは最新の状況に合わせ更新される予定です。

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