アイテム番号: SCP-2314
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2314の全個体は、生物研究サイト-129のレベル4低温バイオハザードユニット内で休眠状態に保ってください。全てのSCP-2314個体と感染者はレベルBのHAZMAT防護服を着用した職員以外が取り扱ってはならず、担当職員は感染の可能性を検査するため実験手順の前後にMRIスキャンを受けてください。
SCP-2314-1はMタイプヒト型異常存在封じ込めセル (M-HACC) に収容されます。SCP-2314-1に対しては定期的に、新たに有用な情報が得られないか、新たなSCP-2314実体が検出されていないかを調べるためのインタビューを行ってください。インタビューには少なくとも1名の財団情報局職員が立ち会ってください。
説明: SCP-2314は遺伝子改造を受けた線虫で、Caenorhabditis elegansに最も近縁です。0.7ミリメートルより大きく成長したSCP-2314個体はほぼ見られず、C. elegansと異なり全ての生殖器系を欠いています。宿主の体外でのSCP-2314の平均寿命はおよそ36時間です。経口的に宿主体内に侵入すると、SCP-2314は宿主の軟組織を通り抜けて視交叉に達します。ここでSCP-2314は眼窩付近の組織に潜り込み、一連の小さな付属器で自身を固定します。この過程には3-7日かかり、この間にSCP-2314は宿主の免疫応答を緩和するためその1型ヘルパ-T細胞(Th1)を能動的に抑制します。この過程を通して感染者に症状は現れません。摘出された個体の解剖から、SCP-2314にはヒト由来の遺伝物質が存在していることが判明しました。これは特にグリア細胞と神経細胞に顕著で、この種が本来保有する単純な神経系を置き換えています。
感染者から除去されたSCP-2314個体より得られた24個のDNAサンプルの内、2個がSCP-2314-1との関連性を有しています。現在、SCP-2314-1と関連するSCP-2314個体が財団の管理外に存在するかどうかは不明です。しかしこの可能性は排除できないため、組織間諜報プロトコルに従ってリスクを有する他の組織は概要の説明を受けています。
財団全体で緊急MRI検査が行われた結果、フィールドエージェント、上級研究員、機動部隊員、少数のサイト管理者を含む37名の感染が判明しました。感染が発覚した職員はSCP-2314除去のための特別な術式の対象となり、術後の完全な職務能力を保証するためにデルタ級記憶処理を受けました。術後の患者に作用の残留は見られませんでした。
SCP-2314-1は1982年6月3日にチェチェン共和国シャトイに生まれた、マリーナ・トロポワという名の個人です。SCP-2314-1はOKB-161に駐留するGRU"P"部局遠隔透視部門の職員であると主張しています。
SCP-2314-1は19██年██月██日に米国に不法入国し、19██年██月██日にジョージ・H・W・ブッシュ大統領による赦免を受けて米国市民となりました。SCP-2314-1から得られた情報より、一卵性双生児を操作して検出不能な通信路を確立し、国家間、組織間の諜報活動に利用するというGRU"P"部局による廃止された監視計画、暗号名「眼柄計画」2の存在が指し示されました。SCP-2314-1はSCP-2314の存在と、SCP-2314と遠隔透視者の間で通信が行われていることを確認できる十分な証拠を提供してきました。
SCP-2314-1はその一卵性双生児(オルガ・トロポワ、故人)のDNAが組み込まれたSCP-2314実体から送られる、感染者が見た光景を受信することが可能です。対象は、この画像は通常の視覚的入力に重なるような形で見えると述べています。SCP-2314-1はOKB-16に所属している間にこれらの光景を書き留めることを求められたことを示し、現地を離れた後に書いた多数のノートを所持していました。これらのノートは管理下に移され、現在、GRU"P"部局への情報漏洩の程度を決定するための調査が行われています。現在、どれだけの情報が漏れたかは不明です。現時点ではSCP-2314-1を除いて存命の3受信者は回収されていませんが、財団の管理外にSCP-2314-1のような個人が存在する可能性を排除することはできません。
インタビュー2314-1: 20██年██月██日の午前9時2分、SCP-2314-1はセブン・シスターズ・プロダクション4に姿を現し、この企業のSFCL(上級フロント企業連絡係)であるエージェント・██████████との対話を求めました。SCP-2314-1はエージェント・██████████の勤務記録を読み上げ始め、即時拘束されました。次の予備的インタビューはその数時間後に行われました。
質問者: S.T.H. カムデン警備主任、エージェント ██████████
回答者: SCP-2314-1
監視者: B.F. グリーブス警備員、Q.W. ファン・ダイク警備員<記録開始>
カムデン警備主任: では始めましょう。あなたは誰ですか?我々にはあなたがどこから来たか分からないのですが、あなたは機密情報を述べながらセブン・シスターズ・プロダクションを容易に見つけ出しましたよね?
SCP-2314-1: 私はマリーナ・トロポワ。この場所は何度も見たことがあります。責任者と話さなければなりません。
カムデン警備主任: ええと、今は私で我慢しなければならないでしょう。グリーブス、トロポワ嬢について分かるかぎりのことを調べてくれ。(グリーブス警備員は取調室を出る) それでは、この場所を見たことがあると言いましたが、どうやって?我々を監視下に置いていたことがあるのですか?誰に雇われているのですか?
SCP-2314-1: わ――私は誰かに雇われているわけではないんです、カムデンさん。私の問題に関してはきちんとお話するつもりなのですが……でも、その前にエージェント ██████████に会わないと。
カムデン警備主任: 彼が誰かをどうやって知ったのかは知りませんが、██████████はここに来れません。さっきも言いましたが、私で我慢しなければなりません。
SCP-2314-1: もういいです、カムデンさん。こうさせたのはあなたですからね。あなたがもう少しで前回の健康診断に引っ掛かるところだった原因は、あなたがいつも――
カムデン警備主任: (目に見えて動揺し) おい、タレ込んだのはどいつだ?ジョーンズか?小僧――
SCP-2314-1: (遮って) エージェント ██████████を連れてきて。誓ってもいいですが、私は敵対するつもりは……
カムデン警備主任: 黙れ。動かずに座ってろ。(カムデンは部屋を離れる)
カムデン警備主任の協議の間、インタビューはおよそ36分中断された。
(カムデン警備主任はエージェント ██████████と共に再度取調室に入る。)
カムデン警備主任: (エージェント ██████████に向けて) こちらがマリーナ・トロポワ嬢です。どうぞご自由に。
(カムデン警備主任は部屋を出て、インタビューを監視するファン・ダイク警備員に合流する。)
エージェント ██████████: お早うございます、トロポワさん。あなたは我々の警備員をとても鮮やかに脅かしたと言わなければなりません。私は██████████ですが、あなたは多分――もう知っていますよね。できる限り簡潔に進めようと思います。このインタビューの後にあなたをもっと安全な場所にお送りするための車を準備しました。
SCP-2314-1: はい。サイト-88ですね。
エージェント ██████████: (沈黙) そうです。無論。さて、あなたは何を話しにここに来たのですか?
SCP-2314-1: あなた方が……スキップ?と呼んでいるものについてです。発音は合ってますか?単語は見たことがあるのですが、口に出すのを聞いたことはないんですよ。
エージェント ██████████: それは口語的な表現なんですが、合ってます。その発音です。では、具体的に教えていただけますか?我々に嘘をつくのは良い考えではないとはっきり言っておかねばなりません。いずれにせよ我々はあなたから真実を聞き出すことになるのですが、あなたが協力してくだされば遥かに快適に済ませることができるでしょう。
SCP-2314-1: 分かってます。あなた方のやり方は見てきましたから。私はGRU-P遠隔透視部門の、ある計画の一部です。彼ら……彼らは私達に、私に恐ろしいことをしたんです。あなたは感染者です。エージェント ██████████。
エージェント ██████████: 遠隔透視?本当に?それに、私がどうやって感染したというんです、トロポワさん?
SCP-2314-1: エージェント ██████████、私の目はあなたの目を通して物を見ることができます。あなたの妻はきれいなブロンドですが、あなたに長年空気のように扱われてきたために憔悴してきています。彼女は疲れているのに、あなたは最近夫婦喧嘩をしましたね。あなたには3人の子供がいて、一人は男の子、二人は女の子。正確には双子です。あなたの――
エージェント ██████████: (震えて) もういいです。これは驚いた。それで十分です。でもどうやってそんな情報を手に入れたのですか?
SCP-2314-1: それはもう言いました。でも、私達の物語をお話しましょう。私の話の後に、あなたから質問してください。ともかく最後まで聞いてください。
エージェント ██████████: (溜め息をつき、背もたれに寄りかかる) ご親切にどうも。聞かせてもらいましょう。どうぞ。
SCP-2314-1: ありがとう。(沈黙) 遠い昔のことです。妹と私が学校から帰ると、家の前に一人の男がいました。母は緊張した様子でした。私はその男を知らなかったし、母も知らなかっただろうと思います。母は、男は私達を特別な場所に連れて行くために来た、とだけ言いました。私達は特別な才能があるからだと。私達は従うべきだと。男は何も言いませんでした。彼は私達を連れ出し、抵抗しようとすると無理矢理引きずられました。母が後ろで泣いているのが聞こえました。彼は外に止まっていた軍用車に私達を乗せました。私達は二人きりではありませんでした。車の中には少なくとも10人以上の子供がいて、全員が私と妹みたいに双子でした。
エージェント ██████████: どこに連れて行かれたか分かりますか?
SCP-2314-1: シベリアの荒野に出たところにある特別収容所です。警備員が教えてくれました。彼らはそこをOKB-16と呼んでいました。私達が着いた時にはそんなに悪い場所じゃありませんでした。屋外でやることはそんなにありませんでしたが、私達は付きっきりで世話をしてくれる女性の一団に出迎えられました。私達にはおもちゃ、食べ物、飲み物が欠かさず与えられました。彼らは両親が会いに来ると約束し続けましたが、終に会うことはありませんでした。
エージェント ██████████: それで、そのOKB-16にはどのくらいの期間滞在していたのですか?
SCP-2314-1: 私……私達は5年間そこにいました。妹と一緒だったのはその内の3年間です。彼女達は自身をこう呼んでいたんですが、その「母親達」に教育を受けました。私達はほぼ毎日本館に連れて行かれ、医師が注射をしたり、実験や観察をしたりしました。そして私達は他人の考えを推測する訓練をさせられました。これはゲーム形式だったので、私達はそれを楽しみにしていました。彼らは、私達は国の英雄になれると言いました。私達は日常の習慣を学びました。簡単なことでした。
(SCP-2314-1は沈黙する)
SCP-2314-1: 両親には会えませんでしたが、私達が素晴らしい仕事をすればお父さんもお母さんも誇りに思うだろうと毎日聞かせられました。だから、私達は言われるがままに、毎日の過程をこなしていました。87年のいつかだったと思うのですが、妹と私は本館のまだ行ったことがない場所に連れて行かれました。病院のような場所です。二人とも怖がっていましたが、医師達は私達を引き離しました。私は上等なベッドとテレビのある暖かい部屋に連れて行かれ、妹は奇妙なシンボルの書かれた大きなドアの向こうに消えました。私が最後に見た彼女の姿です。彼らは、両親が彼女を家に帰すように頼み、それが許可されたのだと言いました。私はとても狼狽し、私を取り残した両親に怒りました。でも、今の私には分かります。私は彼らの名が刻まれた墓石を見ましたし、妹に何が起こったかも知っています。
エージェント ██████████: すみません。私にはまだ、これがあなたの訪問とどう関連しているか分かりません。
SCP-2314-1: 夢です、エージェント ██████████。夢を見たんです。少なくとも、最初の私はそれをそういうものだと思いました。妹が消えた最初の夜、視界に折り重なる無数のイメージのために私は眠れませんでした。それはとても混乱したもので、目を瞑っても消え去らず、その夜は一睡もできませんでした。次の日に「母親達」にそう伝えると彼女達はとても嬉しそうで、すぐに医師に会わされました。彼らもとても嬉しそうでした。それから、他の双子達も引き離され始めました。ある時は二人とも消え、ある時は私達のように片方が消えて片方が残りました。最後に残っていたのは4人だけです。そして、スペツナズが来た時の混乱に紛れて逃げ出せたのは私だけです。
エージェント ██████████: スペツナズ?
SCP-2314-1: 彼らは夜闇に紛れて現れましたが、私はそれ以前から彼らの動きを見ていました。い――私はこうするつもりだったんです、エージェント ██████████。もう少し聞いてください。
エージェント ██████████: 分かりました。あなたは逃げ出したと。それで、あなたの持つ「視界」、それはどのように機能するのですか?
SCP-2314-1: ええと、最初……最初は全てが同時に流れ過ぎるせいでそれが何なのか伝えることができませんでした。でも少し経つと、私は自分の目で見えるものを無視して他のイメージに焦点を合わせる方法を学びました。意味を成している層を分離する方法を。残された4人のうち、2人だけがこれを習得できました。他の人は気が狂ってどこかへ連れて行かれました。私とイリヤだけが残りました。そしてイリヤは……彼はたった9歳で亡くなってしまいました。
エージェント ██████████: そうですね、あなたはその視界で何を見てきましたか?
SCP-2314-1: 酒を飲んで煙草を吸う太った老人とか……他の男性や女性が死ぬのも見ました。██████████さん、私はそれを殺し屋の目から見ていたんです。
エージェント ██████████: それで、つまりどういうことなのですか、トロポワさん?彼らはあなたを超能力者にしたのですか?
SCP-2314-1: 違います。私は超能力者じゃありません。超能力者はその才能を持って生まれてきて、生きていく内にそれを成長させていくものですが、でもこれは――これは才能じゃないんです。██████████さん、これは私に押し付けられたものです。同じように彼らは妹のオルガを捕まえ、彼女をスパイのための道具に変えました。彼女――彼女は沢山の人の中に存在し、私は寝ても覚めてもその目を通して物が見えるんです。エージェント ██████████、彼女はあなたの中にいます。
エージェント ██████████: ええと、少しお待ちく――
SCP-2314-1: ま――待てません!こうしている間にも妹は苦しんでいるんです。彼女を出してあげて。今すぐに!
エージェント ██████████: トロポワさん、私はあなたの妹なんて――
SCP-2314-1: (遮って) あなたは89年に感染しました。多分そうだと思います。はい。プラハへの旅で。あなたがBotič-Milíčov自然公園であの男を撲殺するのを見ました。あなたは泣いていましたね。私がこれを知っているのは、妹が見せてくれたからです。お願いです。彼女を出して、永久の眠りを与えてやってください。私たちに安息を与えてください。お願いします。
エージェント ██████████: (目に見えて震えながら) ああ、カムデン、おい、頼む。後はお前がやってくれ。対象の移送準備を。お、俺はすぐに――
<記録終了>
補遺: インタビュー2314-1を受け、SCP-2314-1はさらなる調査のためにサイト-88に移送されました。SCP-2314-1からの情報に基いて数名の職員が外来DNAの検査を受け、全ての定期検診で用いられる医療プロトコルが開発されました。SCP-2314-1と一致するDNAを持つSCP-2314の全実体は、埋葬のために全宿主から計画的に除去されました。SCP-2314-1とDNAが一致しない実体に関しては、研究目的で保管されるかHazB-Inf/142bプロトコルに従って焼却されました。
続く2ヶ月の内に██名の財団職員が視交叉からのSCP-2314除去手術を受けました。全ての手術は成功しました。国内外の財団とそれ以外の組織において、さらなる感染の可能性に関する監視は継続中です。「眼柄計画」の範囲や詳細に関する研究は進行中です。SCP-2314の作用を複製する試みに関しては、現在議論中です。