SCP-2455-JP
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SCP-2455-JP

アイテム番号: SCP-2455-JP(暫定的指定)

オブジェクトクラス: Dagdagiel

特別収容プロトコル: 未考案。

説明: SCP-2455-JPは財団サイト-19において活動している起源不明の反ミーム実体です。あらゆる生命体はSCP-2455-JPの存在・活動・それらの痕跡の全てを知覚/認識できないか、記憶しておくことが出来ません。

唯一の例外はその生命体の睡眠時です。睡眠中の無意識状態、すなわち夢においてのみ観測者はSCP-2455-JPの存在・活動を限定的に想起することが可能となります。この性質のため、当文書は執筆者である私、アナ・ゴールウェイ財団下級研究員(職員ID: 017281)の夢として定義されています。

夢中においてSCP-2455-JPの反ミーム効果が打ち消される詳細なメカニズムは反ミーム及び脳科学に対する当文書執筆者の知識の欠如により未解明ですが、執筆者個人は睡眠時の脳活動における記憶整理過程が何らかの作用を及ぼしているのではないかと推測しています。

サイト-19に勤務する誰もが覚醒中にSCP-2455-JPを認識できていませんが、実際には以下のような実体として観測されている(そしてそれを即座に忘却している)ことが当文書執筆者の夢中において判明しています。

  • 手足の異常な長さと発達した頭蓋を除き、概ねヒトに類似する身体構造・体格(外見上のみの判断)
  • 全身の皮膚はぬめりけを帯びておりほとんどに色素がなく、体毛は一切ない
  • 眼は大きく黒く、瞳孔と強膜は確認されていない。しかし常にこちらを見ているため盲目ではないと考えられる
  • たびたび観測者に向かい、平均的な人間の4倍以上の大きさに開いた口を向ける。私を嘲笑っている

SCP-2455-JPは主にサイト-19内でさまざまな儀式的殺人・食人行為に従事しています。割り出された活動周期からこのSCP-2455-JPの行為は食事のためではなく、単に娯楽としてのみ行われているように見えます。SCP-2455-JPは生きた状態での磔、火炙り、串刺し、化学的融解、皮剥ぎを殊更に好む傾向にあり、被害者にはサイト-19職員及びサイト付近に居住する一般市民を含みます。ムードメーカーだったボブ、だれよりも優秀だったテレサ、結婚したばかりのカレン、私を気遣ってくれたジョン、そして名も知らない罪のない大勢の人たち。

この際被害者はSCP-2455-JPとその行為を完全に認識しているように思われます。これはSCP-2455-JPが自身の反ミーム効果の範囲を操作することが可能であり、その能力をずっと脳にこびりつくような叫び声を被害者に上げさせるためだけに使用していることの証左であるかも知れません。

被害者の周囲の人間はSCP-2455-JPの異常性によりこれらの行為を覚醒中に認識できず、被害者の存在も矛盾無く記憶から抹消されます。また夢中において想起されるこれらのSCP-2455-JP目撃時の記憶は、大多数の人間が睡眠時において無意識下にあるために専ら現実と無関係の悪夢としてのみ認識され、注意を向けられることはありません。これは後述の理由により当文書執筆者を除きます。

補遺1: 当文書執筆者は、現在のところSCP-2455-JPの存在を認知している唯一の人物です。執筆者は幼少期から能動的に明晰夢1を見ることができる体質であり、この体質が連続的な意識を睡眠中・覚醒中で限定的に保ちSCP-2455-JPを記憶しつづけることを可能にしていると推測されています。これはSCP-2455-JPへの対処が現状、執筆者ただ一人にのみ可能だということを明示しています。

以下にこれまで考案されたSCP-2455-JPの収容・無力化の試みとそのステータスを列挙します。


周知: 当文書執筆者以外の他者にSCP-2455-JPの存在を認知させる試み。これには以下のものが含まれる。

  • 他サイト/財団組織連絡窓口/収容違反総合オフィスへの現状の通知と救援の要請。[失敗] (いずれもSCP-2455-JPの異常性により失敗)
  • SCP-2455-JPを容易に認識することが可能な技術の開発。[継続中] (財団は反ミームに対して有効な技術や専門部門を現在保有しておらず、執筆者の専門知識2を用いて執筆者が単独でそれらを開発することも困難だと思われる)
  • 全サイト-19職員に対し、明晰夢を見ることができるような訓練を施す。[保留] (時間がかかりすぎる。奴はきっとそれに気づく)

解体: 通常兵器・超常的手段などを用いてSCP-2455-JPを無力化する試み。

  • [保留] (最も重大な問題として、覚醒中の当文書執筆者はSCP-2455-JPを認識できず、その所在を正確に把握することができない。サイト-19フェイルセーフの起動3は、SCP-2455-JPがサイト外部にも頻繁に出現していることからリスクに見合う確実な無力化手段ではないと判断される)

防御: 当文書執筆者を保護し、維持しておくための試み。具体的には以下の手段が取られている。

  • 職務を除いた可能な限りの時間、執筆者はSCP-2455-JPの進入が不可能だと思われるバリケードを作っただけの自室隔絶された空間に自らを配置し、自己防衛の姿勢を取る。[継続中] (執筆者はSCP-2455-JPを認識し、対応可能な唯一の人員である。執筆者を喪失することは財団の総体にとって多大な損失と判断される)

ただ閉じこもった部屋の隅でガタガタ震えてるだけ。私が皆を奴から守らなきゃいけないのに、私には何も出来ない。何も。


忘却: 主観的にSCP-2455-JPを無力化する試み。全ては何事も無かったことになる。

  • 当文書執筆者の明晰夢を見る能力を取り除く。
  • 記憶処理剤の過剰摂取により、執筆者の記憶を保持する能力を完全に破壊する。
  • 自己終了。

[却下] 考慮に値しない。財団職員として、執筆者による収容の試みは継続されなければならない。本当に?


補遺2: 客観的な心理分析により、当文書執筆者は軽度の鬱状態にあると判断されています。これは自身がただ一人のSCP-2455-JP担当職員であるという責任から来る重圧と、同僚の死を反復的に夢の中で閲覧することによる精神的苦痛及び自身の死に対する恐怖によるものであると考えられ、これによりSCP-2455-JPへの対処が滞ることを危惧して以下のケアが自主的に行われています。

  • 精神安定剤トランキライザーの服用(無制限)。
  • 財団職員向けに提供されている精神訓練法(主観フィルタリング判断式)の実践。または冷静な判断のために、このようにして自分の本心を効率的に押し殺すための方法。
  • 毎朝、自室に掲載された以下の文章(SCP-2455-JP発見初期に起草されたもの)の閲覧。

これは私のための覚え書きだ。今の気持ちを忘れずSCP-2455-JPに立ち向かうことができるように、目が覚めたらすぐ見える位置に置いておくことにする。

最初に気付いたのは、奴がまるで精肉店のように天井から吊り下げたフックでボブを引き裂いた光景を目撃した時だ。その場所はオフィスだったし、文字通り夢の中でその様子を見たものだから何かの悪夢だと思った。だが目覚めても悪夢は消えず、今も続いている。この短い期間で、何度もそんな光景を目にすることになった。

未だに誰も奴の凶行には気付いていない。私は一人きりで奴に立ち向かう責任がある。それができるのは私だけだから。私だけしかいない。そんな必要も、理由もないのに。

時々、奴は私のことに気付いていながら、楽しみのためあえて泳がせているのかもしれないとすら思う。だとすればそれはチャンスなのだろう。奴が私を侮っているというなら、まだ猶予があるということだ。試すべき手段をすべて行えるかは分からないが。幸運にもすべての手段はやりつくせた。だけど何も変わらない。

もっとひどいときには別の想像をしてしまう。奴は私の妄想で、本当は存在しないんじゃないかと。私だけの幻覚……夢でしか見えない化け物なんてものよりは信憑性がある。それならもっと話は簡単だ、精神治療を受ければいい。財団のカウンセラーは優秀なのだから。

だけど、犠牲となった人々の苦悶がそんな他愛のない考えを否定する。

ボブの死体は未だにフックにぶら下がっている(蠅がひどくたかっているが、私の背丈では外してやれない)。テレサの左目はきっとまだ14番チャンバーにあるはずだ(奴が内臓をばら撒いた範囲は広すぎる)。カレンの指輪は見つけられなかった(体と一緒に塩酸に溶けてしまったのだろう)。

ジョンは私に関わったばかりに生きたまま焼かれた。私が奴に疲弊しているときに限って、その様子を気遣ってくれた人を奴は殺している。そんな気すらする(ジョンのこと以来私は、奴に関する私の不自然な行動が出来るだけ他の職員の注意を引かないよう過ごすことにした)。

本当はもっと多くの人が犠牲になっているはずなのに、奴の異常性は彼らの名前を忘れさせてしまった。

私は彼らの死に報いなければならない。

私は財団職員として人々の安寧を守らなければならない。じゃあ誰が私を守ってくれるの? これ以上奴の好きにさせないために、たった一人であってもこの暗闇の中で私は戦い、あがき続ける。そうしなければならない。あがき疲れたよ。

私は諦めるわけにはいかない。SCP-2455-JPの収容を必ずやり遂げなければならない。

もういや

SCP-2455-JPを収容する当文書執筆者の試みは、現在も継続中です。

誰か、私をたすけてよ

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