SCP-2603
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アイテム番号: SCP-2603

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2603は現在進行形の交戦地帯と見做され、それ故に外交的・政治的なレベルで対処されるべきです。SCP-2603の潜在意識に侵入する試みは、本プロジェクトに割り当てられた現任の上級地政学分析官による調整を受け、機動部隊オミクロン-ローのNCI-IV認定隊員によってのみ実施されるべきです。

SCP-2603は現地時間06:00~00:00まで起きている状態に保たれます。この時間外であれば、SCP-2603は監視下での睡眠が許可されます。SCP-2603は、効果半径が重なり合っているスポルジュスキー等級の構造安定封印(CSS)を4枚備え付けたMタイプヒト型異常存在収容室(HACC)に居住させます。

SCP-2603は非選択性のモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)による薬物療法を毎日受けます — 正確な投薬量はSCP-2603の体重を目安として定期的に見直します。MAOIと他の薬物との間で負の相互作用が発生する危険性のため、SCP-2603に別の薬剤を導入する際には注意が必要とされます。投与されるMAOIの肉体的副作用は、追加の薬学的要素を導入することなく、可能な限り人道的に処置されるべきです。実験が必要な場合、SCP-2603の投薬サイクルは一時的に中断される場合がありますが、これは本プロジェクトに割り当てられた上級医療コンサルタントの事前協議無しで行われるべきではありません。

SCP-2603の潜在意識探査で新たな異常活動の可能性に関する情報が判明したなら、報告後に脅威度評価が実施されます。対策の引き上げが必要であると判断された場合、記憶マイニング手順が現任のプロジェクト主任によって許可されることがあります。SCP-2603の夢の構造体の内部にある部屋に事前の指示なく入室することは認められません。現時点で観察は十分なものと見做されています。

更新 2015/03/27:

SCP-2603の潜在意識を表している船舶の艦橋は、外来実体の侵入を防ぐため、保安プロトコル2603-Prc/Onr-Atlantik:v1.24に詳述されているように恒久的に封鎖されます1

説明: SCP-2603は、1968年から1989年までGRU"P"部局の工作員を務めていた、本名をキュロ・トゥームというフィン・ウゴル系の成人男性(1948/07/07出生)です。SCP-2603はREM睡眠とそれに付随する(明晰)夢を切欠に、不随意的かつ無意識下でのタイプ-D(XI)2現実操作能力1を発現します。具体的には、SCP-2603は無意識に肉体の周囲にあるあらゆる固形の無機物を、カラ海で見られるものと組成的に同一な塩水に変換し、効果範囲を毎時1m³の一定速度で拡大します。本稿執筆現在、この特性には制限が観察されていません。変換中、SCP-2603は変質した物体の上に浮かんだ状態になります。SCP-2603が睡眠から覚醒すると即座にプロセスが逆転します。逆転前に塩水に全身/部分的に沈んでいた人物は固形物の中に埋め込まれる、という点に注意が必要です。職員によって効果範囲から移された塩水は消失するらしく、材質や表面の変形は確認されていません。

SCP-2603は2013年、“潜在意識の力: 自己への旅”と題されたセミナーに出席した直後からこれらの異常性質を示し始めました。このセミナーは、現時点では主要な宗教派閥との接点を持たないスピリチュアル系非営利団体に分類されている“クランの夜明け”によって組織されていました。同組織の背景調査で異常事象との接点は発見されませんでした。SCP-2603の異常性質は唐突に発現したものの、誕生以来宿っていた潜在能力であったと思われます3。このプロジェクトと厳密には関連しませんが、SCP-2603が見る夢の大部分はGRU“P”部局工作員としての経験から形作られているようです。

財団は現在、SCP-2603を紛争状態にある主権体と見做し、未知の組織がSCP-2603の非認知領域(潜在意識)の所有権を巡って抗争を繰り広げていると考えています。既知のどの団体も現時点で関与を認めていません。しかしながら、公式な軍隊の動きや軍組織の存在が確認できない一方で、無認可の侵略行為は頻繁に発生しています。SCP-2603の非認知領域における無認可の活動こそが異常特性の引き金であり、上述したように現実世界の構造物への影響を及ぼしていると考えられています。

SCP-2603は毎晩同一の夢を見ると報告しています。夢の内容は、一隻の船4が陸地を発見・到達することなく未特定の広大な水域を漂流するというものです。大多数の船と異なり、SCP-2603の夢に現れる船の内装は、数が変動する構造上同一の甲板で満たされ、そこに多数の部屋が設けられています。これらの空間はしばしば船の外寸と適合しません。甲板上の部屋には多くの場合、無関係な夢の構造体が収容されており、入室した場合はSCP-2603の潜在意識や記憶の内部へさらに移行する可能性があります。この可能性は現在不明確であり、本プロジェクトの対象外であると判断されています。何らかの建造物が甲板上に見えるものの、全ての入口は船の艦橋に繋がります — 艦橋は狭くて特徴に欠ける部屋であり、舵輪以外の物は存在しません。主要な夢の構造体の中にある全ての物体はセピア色です。この理由は不明確です。

SCP-2603が構築した夢環境には外来の実体のみが存在しています — これらの実体の構造は、SCP-2603の潜在意識から生じたものではなく、また水中や船上の要素に由来してもいないようです。特筆すべきは、SCP-2603自身は夢の中に登場しないという点です。

SCP-2603の潜在意識に侵入した機動部隊オミクロン-ローは、現在までに約███回にわたって未知の団体がSCP-2603の潜在意識を — 多くの場合、船の艦橋に到達する試みを通して — 支配しようとしていることを明らかにしました。機動部隊オミクロン-ローの工作員は過去数回、SCP-2603の潜在意識に出現する実体を鎮圧・拘留しましたが、これらの実体は侵入の理由を明かすことができない(或いはそのつもりが無い)様子を見せ、可能な限り速やかに退却しました。聞き取り調査のためにこれらの実体を抽出することは不可能でした。

補遺2603-A-01: 2015/03/16の機動部隊オミクロン-ロー聞き取り調査における管理概要

質問者: H.M.W. アレンビー上級研究員 (HA)

回答者: ヨハン・ミカエル・カストナー、機動部隊オミクロン-ロー工作員 (JK)

対象: 定期パトロール中に発生した事案アルファ-2603-20150315後の聞き取り調査

[聞き取り調査は2015/03/16の14:00:53に開始した。]

HA: 問題の出来事について、一連の流れをそのまま私に教えてください。

JK: そうだな、ウィルソンと俺はトゥームの潜在意識をパトロールしながら、実体群が艦橋に向かうのを防ごうとしてたんだ。その時、多分俺たちの2、3層下辺りの甲板で騒ぎが起こったのを聞きつけた。

HA: 続けてください。

JK: ウィルソンはその場に居残って、俺が調査しに降りた。確か2層下の甲板だったはずだ。とにかく、俺は船室をチェックし始めた。また別の展開に呑まれちまうだろうから敷居は越えられなかったが、室内を覗き込むことはできた。ある部屋の中に見えたのは夜の浜辺だった。打ち寄せる波と、多分ロシアの駆逐艦だと思うが、そいつの燃え落ちた船体まで完備してたよ。また別の部屋では、数人の死んだ船員が、膝ぐらいの高さの水の中に浮かんでいるのを見た… そういうかなり奇妙な物が見えるんだ。

HA: ええ、夢の構造体の性質については把握しています。続けてください。

JK: ああ、まぁそんな訳で10部屋ばかり開け閉めした後に、俺は完全に肉塊で覆われている船室を発見した。部屋の真ん中にはレコードプレーヤーがあって、ヴィヴァルディの“爆雷とブラックホール生成器のための破壊交響曲 No. MCMLXXVI”を再生してた。なんでそんな事が分かるかは訊くな、俺にもレコードのラベルは読めなかった。俺はただそれを知ったんだ。

あんまり音楽って感じでもなかったけどな。ただ無闇に甲高い警笛、絶叫する声と風船から空気が抜けるような音だけだ。とにかく、何かがラッパの部分から流れ出してきた、紫色のヘドロみたいな物だ。そいつは速やかに漠然とイカっぽい姿を取り始めたんで、俺はそいつが変身し終わるまでぐずぐず近くに留まってはいなかったよ。俺はそこから逃げ出してウィルソンに状況報告をした。彼女はもっと強力な手を打つ必要があると決めたんで、俺たちは艦橋を船の他の場所から隔離し、突入の準備をした。

HA: ちょっとした質問ですが —- 艦橋を隔離したというのはどういう意味ですか?

JK: 口で言うのは難しいな。ウィルソンは、主要な夢の構造体の一部である種の経路切り替えをする術を知ってるんだ。つまり、近寄った時に正しい思考の流れを把握していないと、潜在意識の無関係な部分に辿り着くようにする。“目には見えるが触れない”というアレだな。目標に押し入ろうとすると、対象者の子供時代のペットがコンガを踊ってる夢かなんかに入り込んでしまう。本当に難しい技だ — 俺は当然まだ習得してない — だが、ウィルソンは下階層から来る奴が何者であれ、恐らく大物だろうとは察しを付けてた。艦橋を隔離してるってのは、彼女が緊張状態であることを意味した。だから俺は来た奴の矢面に立たざるを得なかった。

HA: それで、やって来たのは何でしたか?

JK: こちらも口では表現しづらい。俺たちがここで話してる世界観は、高振幅の脳波の残留効果によって決まるものだからな。風鈴で作られたイカが腸管の欠片を猛スピードで突っ切って来たらどう見えるか想像してほしい。そんな感じだ、ただその風鈴には歯が生えてた。奴は階段の吹き抜けから現れると、準備がしっかり整う前に俺に飛びかかってきたから、俺は本能的に身体に棘を生やした。それで奴は少しの間退却したが、追い打ちを掛けに戻って来るまでそう長くなかった。ウィルソンは俺の背後でもう既に腹部のコイルガンをぶっ放していた。俺も少し被弾したが、まぁそれだって仕事のうちだし、受け入れない限りは痛みも無い。だから俺はひたすらあの化け物を艦橋から押し返そうとした。とにかく、俺たちは何処かの時点で致命打を食らわせたに違いない。奴は突然身を引いて、また通路を這いずりながら下っていった。ウィルソンは息を切らしてたし、俺は奴に触れていた部位に付着した何かの酸で凝集性の一部が溶かされているのを感じることができた。それ以降は奴の姿を見かけなかった。復旧のためにあそこを退出する時、バリケードを後に残してきたが、俺たちは将来的により良い艦橋の防護が必要になると考えた。ウィルソンには幾らかアイデアがあって、専ら潜在意識の一部を再プログラミングするものだが、その辺は専門家が手掛けることになるだろう。

HA: ああ成程、貴方が提言した保安手順の更新ですね。あれは審査中です。それで、問題の実体が何者だったかについて、プロとしての意見は?

JK: 公式な論拠が無いのは分かってるが、俺はクィ・シャオの派閥に属する奴だと見る。だが誰なのかは分からない。或いは、何なのか。あいつは何だか、元人間にしては余りにも異質に感じられたんだ。全く、奴らはますます重装備になって舞い戻り続けているし、俺にはどれだけ長く持ちこたえられるか分からないね。

HA: 記録しておきます。ありがとうございました、カストナー工作員。

[聞き取り調査は2015/03/16の14:05:21に終了した。]

Bibliography
1. A・クレフ、T・S・チェ=ジマーマン他 - ささやかな提言: ヒト型異常存在による現実性屈折および操作能力の分類、█████ ████、科学批評プレス第4版、2005年。
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