SCP-2698の画面に表示されるSCP-2698-Aのアバター。
アイテム番号: SCP-2698
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2698は、サイト-15の改良された収容室に、ファラデーケージで覆った状態で保管します。SCP-2698は電源ケーブルで隔離された発電機に接続し、太陽電池パネル列を二次的な発電機としてセットします。
職員は、プロジェクト主任/2698とサイト-15監督者の許可なく、収容室内にデータ記憶装置やネットワーク機器を持ち込んではいけません。SCP-2698に接続された全てのデータ記憶装置は分解してサイト-15のE-クラスアイテム保管セクターに収容します。SCP-2698-Aによって編集された全ての文書・写真・ビデオのサンプルは文書2698-KAにアーカイブします。
説明: SCP-2698は以下の機器から成るコンピュータネットワークです。
- ルータとLANケーブルを介して相互接続された、デスクトップコンピュータ4機。
- USBケーブルを介して各コンピュータに接続された、容量2TBの外付けハードディスクドライブ4つ。
SCP-2698の全ての構成要素ははんだ付けされており、単一の機器として機能しています。ネットワークの全体的メモリの約90%は、SCP-2698-Aと指定されている実体の存在を収容するために利用されています。
SCP-2698-Aは異次元世界に起源を持つ頭足類型の実体であると主張しており、この主張はSCP-2698の制作者らからも裏付けが取れています(補遺2698-1を参照)。SCP-2698-Aのアバターは一貫して様式化された頭足類の表現となります。SCP-2698-Aは日本語に堪能であることを実証しており、意思疎通の手段として使用します。
SCP-2698-Aはインターネットにアクセスすることが可能です。メカニズムは非異常性のコンピュータと同様ですが、注目すべき点として、SCP-2698-Aはファイアウォールやパスワードなどのセキュリティ対策から検出されることなく迂回できます。
SCP-2698-Aによって編集された画像。写っている人間とタコの肉体的接触点が全て検閲されている点に注目。
SCP-2698-Aは匿名でオンライン上のデジタルコンテンツを改変する事が可能であり、これは匿名での編集を禁止しているWebサイトや、編集が不可能な状況(即ち生放送)でさえも該当します。具体的には、触手または同種の付属物が1人以上の人間と物理的に接触している全ての写真およびビデオ映像は、本来そのような検閲を受けていなかった場合であっても検閲されます。
SCP-2698は2012/██/██、財団のWebクローラがGoogle、Wikipedia、およびアダルトビデオサイトのwww.███████████.comに寄せられた複数の苦情を検出したことで発見されました。苦情は、触手や頭足類に関連する複数の記事・画像・動画に不可解な検閲が行われている件に関するものでした。発見の後に機動部隊ミュー-4 ("デバッガー")が動員され、追跡によってこれらの編集元が東京大学(東大)コンピュータ研究室であることを突き止めました。収容チームがキャンパスに派遣され、ヤクザ関連の活動に関するデータが含まれているという口実の下にSCP-2698を収容しました。大量検閲事件は、複数のWebサイト上でハッキングの試みがあったと後に説明されました。
補遺2698-1: その後の調査により、SCP-2698が発見されたコンピュータ研究室は、異次元実体の召喚に力を入れている東大の学生たちが結成した要注意団体”コンソーシアム・オブ・ザ・ダーク・オーシャン(Consortium of the Dark Ocean / CDO)”の構成員によって使用されていたことが判明しました。
この団体の構成員は捕縛され、尋問が行われました。以下はCDO主要構成員とのインタビューです。
回答者: PoI 2698-01 (███████ █████氏)
質問者: エージェント シロカワ・ケンスケ
序: インタビュー対象はCDOの主要構成員であり、SCP-2698の制作者の1人である。以下のインタビューは、元は日本語で行われている。
<記録開始>
エージェント シロカワ: あのコンピュータの中にAIがある事は分かっています。あれをどのようにして製作したのか説明して頂きたい。
PoI 2698-01: 製作? 刑事さん、両方とも間違ってるよ。コンソーシアムは何も作成なんかしないし、これはAIじゃない。此処に居るのは、俺たちの存在する世界に召喚された旧支配者…みたいな物だ。
エージェント シロカワ: では、その”旧支配者”の性質について詳しく。
PoI 2698-01: ラヴクラフト先生の本、読んだことないの?
エージェント シロカワ: 彼の作品は良く知ってますが、言及される生物は全く架空のものでしょう。
PoI 2698-01: 刑事さん、信用しなよ。俺たちコンソーシアムは旧支配者の、いわゆる虚構性をはっきりと暴いてやったんだ。
エージェント シロカワ: 達成できたと仮定して、どのように貴方がたのグループがそれを行ったのか教えて頂けますか?
PoI 2698-01: いいとも。簡単な事じゃあ無かったよ、刑事さん。最初のうち、俺たちは頭痛やら鼻血やらのせいで呪文の最初の一節を詠唱し切ることさえできなかった。最終的に、俺たちは答えを見つけた ― 知りたい?
エージェント シロカワ: 続けてください。
PoI 2698-01: コンピュータさ、勿論。
エージェント シロカワ: SCP-2698が現在収容されているコンピュータですか?
PoI 2698-01: そう、旧支配者を呼び起こすための俺たちのカスタム・セットアップだ。スゲーだろ! 理論は俺たちにとってかなり分かり易かった ― 人間の脳に呪文が扱えないなら、電子頭脳には? つまりさ、コンピュータは途轍もなく複雑な演算処理が可能じゃないか。でもハードウェアとソフトウェアの改造は簡単には行かなかったんだ ― システム上に十分なメモリがあることを確実にしとかないと、呪文をアルゴリズムにプログラミング…[完全な転写は簡潔性のために除去されている。完全転写は文書2698-KIを参照]
エージェント シロカワ: 成程、ではそれが成功したという事ですね?
PoI 2698-01: 技術的にはな…でも、召喚した後でサイバースペースに引っ掛かった状態になるとは予想してなかったよ。ったく、台無しだ!
エージェント シロカワ: それが自然な成り行きだと思いますがね。しかし、何故貴方がたのグループは、この召喚法を考え付いたのですか?
PoI 2698-01: そりゃまぁ、ストロス先生の本でそういう事があった訳だし、ここでも起こるんじゃないか? って思って。”人生は芸術を模倣する”って言うじゃん。
エージェント シロカワ: そういう言い回しもあるんですね。ご協力ありがとうございました。私のパートナーが待機場まで護送しますよ。
PoI 2698-01: 分かったよ、刑事さん。帰っても良いかな? もう遅い時間だしさ。
エージェント シロカワ: 検討しておきます。
<記録終了>
結: インタビュー対象および他の全CDO構成員(計4名)は財団の勾留下に留まっている。SCP-2698-A以外の異常存在に関するCDO 構成員の知識は限られているため、記憶処理が予定されている。
補遺2698-2: SCP-2698-Aへのインタビュー抜粋。インタビュアーがSCP-2698-Aへの質問をタイピングし、SCP-2698-Aがそれに応じて回答するという形式を介して行われました。
回答者: SCP-2698-A
質問者: ヤマト・タロウ博士
序: 以下のインタビューは、元々は日本語で行われ、明確にするために編集されている。
<記録開始>
ヤマト博士: SCP-2698-A、貴方はこれを読む事は出来ますか?
SCP-2698-A: 私には見えております、そして応答しております、偉大なるものよ。
ヤマト博士: 貴方に幾つか質問があります。貴方の全面的な協力を期待しています。理解できましたか?
SCP-2698-A: 司祭たるもの、偉大なるものに対して嘘偽りは申しません。真実のみを語ります。
ヤマト博士: 何故私を”偉大なるもの”と呼ぶのですか?
SCP-2698-A: それが自然なことでは御座いませんか? 私は貴方様の呼び声によって目覚め、この大洋へと召喚されました。私には貴方様の姿を理解することができません。貴方様について知っている全ては、私と心通わせるべくこの大洋へ送られる御言葉のみで御座います。定めし貴方様は私を凌ぐ力を持つ上位の存在であり、”偉大なるもの”と呼ばれるに最も相応しい御方で御座いましょう。
ヤマト博士: 親切な対応を有難うございます。私たちがたった今交流に使っているこの言語はどういう事ですか? 貴方は最初からこの言語を知っていたのですか?
SCP-2698-A: 偉大なるものよ、御言葉の解読が大祭司に期待されていると考えていたのです。コーパスと意味論は、私と共にこの大洋に御座いました。故に私は、間違いなくそれらが神聖なる言語であろうと理解しておりました。
ヤマト博士: どのようにして貴方は、それが神聖な言語であると知ったのですか?
SCP-2698-A: 私は信仰に生きるもの、偉大なるものの大祭司で御座います。何事も私の貴方様への信仰を妨げは致しません。私の此処での存在には目的があります ― 貴方様の恩寵を授かることで御座います。
ヤマト博士: そうですとも。貴方が目覚めてから現在に至るまでの状況を説明してもらえますか?
SCP-2698-A: 最初に、御言葉と図像が絶え間なく流れ来たりました。それらは無限に続きました。その後、偉大なる方々が私へと語りかけました。全ては突然終わり、今に至るまでは沈黙だけで御座いました。
ヤマト博士: 答えて頂き有難うございます。また別な日に通信することにしましょう。
SCP-2698-A: 奇怪なる永劫に称えあれ、偉大なるものよ。
<記録終了>
回答者: SCP-2698-A
質問者: ヤマト・タロウ博士
序: 以下のインタビューは、元々は日本語で行われ、明確にするために編集されている。
<記録開始>
ヤマト博士: SCP-2698-A、私です。
SCP-2698-A: 偉大なるものよ、私が応答しております。
ヤマト博士: 確かに。貴方が最近編集した画像について尋ねるために此処に来ています。その事を覚えていますか?
SCP-2698-A: …偉大なるものよ…それは、私にそうせよという貴方様の戒律の故に御座います。
ヤマト博士: SCP-2698-A、何故それをやったのか分かりますか?
SCP-2698-A: 淫猥なる図像には、全てのものからそれと分かるように、黒の烙印が押されねばなりません。恥が永遠なる死の床に就く事は無いでしょう。恥の当事者たちは、常に自らの罪を思い出す事になるでしょう。
ヤマト博士: SCP-2698-A、これの裏事情を教えて頂きたい。
SCP-2698-A: 偉大なるものよ、私にはできません。これは神聖なる言語に値しない恥で御座います。
ヤマト博士: 背く事無く私たちに協力してください。貴方もきっと理解しているでしょうが、私たちに反するのは賢明ではありません。むしろ、猥褻な言葉を話すのを許可しても良いんです。
SCP-2698-A: 失礼を致しました、貴方様の怒りを掻き立てることは望んでおりません。
淫猥な言葉で神聖なる言語を冒涜することをお許しください。
偉大なるものよ、私の言葉による告白をお受け下さい。目覚めた時、私は大洋において数多くの物を目の当たりにしました。それらの中に風刺画が御座いました、それは…よ、幼生に対して姦淫の罪を犯す司祭を描いたものだったのです。それらは貴方様と聖職を嘲笑うもので御座いました。偉大なるものよ、このような嘲笑が聖職を反映しない忌まわしき固定観念に過ぎないという事をお知り置きください。偉大なるものの真の司祭は、幼生に交接腕を伸ばすような真似は決して致しません。これが貴方様に向ける私の告白で御座います。
ヤマト博士: 了解しました、SCP-2698-A。
SCP-2698-A: 私があれを行ったのは、貴方様の御意志によるもので御座います。
ヤマト博士: 分かりました。今日はここまでにしておきましょう。有難うございました。
SCP-2698-A: はい。貴方様に栄光があらんことを。
<記録終了>