SCP-270-JP
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写真撮影のために整列したSCP-270-JP

アイテム番号: SCP-270-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-270-JPはサイト-81██の専用収容室に収容します。収容室内は監視カメラにより24時間体制で監視し、異常の兆候がある場合は担当研究主任の指示に従い対処してください。協力的な収容態度に対する報酬などサイト管理者が許可した場合を除き、SCP-270-JPを摂食する行為、およびSCP-270-JPの複製を作成させる行為は禁止されています。職員とSCP-270-JPの接触は必要最低限に控えてください。担当研究員は最大1ヵ月ごとに交代し、再割り当ては最低6ヵ月の間隔を確保してください。SCP-270-JPとの接触後は心理カウンセリングを行い、SCP-270-JPの影響が現れていると判断された場合は速やかに担当者を交代してください。

説明: SCP-270-JPは思考力、自立行動能力、発話能力を持った人形焼です。現在32体が残存しています。組成は一般的な人形焼と同一であり、SCP-270-JPの特異性の原因については判明していません。SCP-270-JPを摂食すること自体に異常性はなく、通常の食料品と同じように消化、吸収可能です。SCP-270-JPは活性化中は腐敗に対し耐性を持ちます。切断や加熱などにより不活性化したSCP-270-JPは、通常の食品と同じように腐敗します。

SCP-270-JPは発見場所から同時に回収された専用の機材と一般的な材料を使用して、SCP-270-JPを複製します。複製されたSCP-270-JPは知識や教養を持たないため、"教育係"のSCP-270-JPによるレクリエーションが行われます。なお専用機材以外でも型さえあれば複製は可能ですが、操作の困難さから複製効率は低下します。また専用機材を用いてもSCP-270-JP以外がSCP-270-JPを複製することはできず、成果物は通常の人形焼となります。このため、全てのSCP-270-JPが不活性化した場合、再複製は不可能となることに注意してください。

SCP-270-JPは仲間が捕食されると、嘆き悲しむと同時に、感謝の意を表明します。これはSCP-270-JPが掲げる"種の目的"が"人間に美味しく食べられること"であるためです。SCP-270-JPを食べた人間とその観測者は、悲しみにくれるSCP-270-JPを見て罪悪感に苛まれることになります。SCP-270-JPを食べずに踏み潰すなどの行為は、SCP-270-JPとその観測者にさらに強い情動反応を引き起こします。

SCP-270-JPの更なる特異性は、SCP-270-JPを食べる事ではなく、SCP-270-JPと長時間接触することで発生します。SCP-270-JPと長時間接触した被験者は、段階的に食事に対する嫌悪感をおぼえるようになります。影響はSCP-270-JPと接触しないことで時間経過とともに回復します。

第一段階では、SCP-270-JPを食べる事への拒否を示すようになります。当初これは倫理的に当然の反応であると考えられていました。
第二段階では、食肉を食べる事への拒否を示すようになります。被験者はこれについて一様に「生きていたものを殺して食べるなどという可哀想なことはできない」という説明を述べます。卵が食べられないかどうかは個人差があります。この段階の被験者は、ベジタリアン用の食事により生存することが可能です。
第三段階では、植物を食べる事への拒否を示すようになります。この理由は「植物だって生きている」ためであると被験者は供述しています。この段階に至った被験者は、水、牛乳、塩など限定的な補給しかできなくなるため、栄養素の偏りにより数ヶ月から数年で死亡します。
なお例外的に、いずれの段階においてもSCP-270-JPに「私を食べてください」と懇願された場合だけは、被験者は謝りながら(いくつかのケースでは泣きながら)SCP-270-JPを摂食します。

実験記録270-JP-3 - 日付████/██/██

対象: SCP-270-JPに関する情報を与えていないDクラス職員
方法: SCP-270-JPの不活性化プロセスに職員を介在させないよう、他のSCP-270-JP個体により頭部を切断させた状態で提出させ、対象にSCP-270-JPを摂食させる。
結果: Dクラス職員に影響はなし。実験を担当した研究員が食事への忌避症状を発症した。
分析: SCP-270-JPをどう消費するかは関係なく、「SCP-270-JPを殺したという認識」が、対象に影響を与える模様。SCP-270-JPの管理は必要最低限の接触のみに限定し、管理者は定期的に交代すること。

実験記録270-JP-5 - 日付████/██/██

対象: SCP-270-JP
方法: 材料として通常の砂糖の代わりに高価格な砂糖(和三盆)を与える。
結果: 貴族階級として敬われる立場のSCP-270-JPが誕生。当該個体は謙虚な姿勢を示しており、生まれが違うだけで敬われることに困惑していた。その他は、味が良くなった以外に相違点なし。葬式は3日に渡って盛大に行われた。
分析: 材料の品質に明らかに差異がある場合、身分に差が出る模様。品質の悪い材料を与える実験は、SCP-270-JPと担当職員の精神的負荷を増大させるおそれがあるため、延期とする。

実験記録270-JP-7 - 日付████/██/██

対象: SCP-270-JP
方法: 複製のどの段階でSCP-270-JPに意識が与えられるのか、複製中に機材を回収して確認する。
結果: 人形焼が焼き上がった段階で機材を回収してもSCP-270-JPにはならなかった。同じ状態の人形焼にSCP-270-JPが近づいたところ、人形焼は自発的に機材から起き上がり、SCP-270-JPとなった。また機材を細工して生焼けにしたり形を崩した人形焼は起き上がらなかった。
分析: 焼きあがった人形焼にSCP-270-JPが何らかの介入をすることで意識を持つ模様。不完全な人形焼はSCP-270-JPになれないのか、意図してSCP-270-JPにしていないのか、現段階では不明。

インタビュー記録 270-JP-█:

対象: SCP-270-JP-2

インタビュアー: ██博士

<録音開始, ████/██/██>

██博士: では、インタビューを開始します。

SCP-270-JP-2: よろしくお願いします。

██博士: まず、あなたたちは誰に作られたのですか?

SCP-270-JP-2: 私たちは、あなた方がSCP-270-JPと呼ぶ同胞によって作成されました。

██博士: あー、では、あなた方の種族の、一番最初の存在は、誰に作られたのですか?

SCP-270-JP-2: それについては伝承が残っておらず、お答えすることができません。

██博士: そうですか、残念です。では、なぜあなた方は、人に食べられようとするのですか?

SCP-270-JP-2: それが私たちに与えられた使命だからです。より美味しく召し上がっていただくこと、それこそが、我々の生きる目的なのです。

██博士: でも、食べられたあと、残された個体は悲しんだり、葬式をあげたりしますよね。

SCP-270-JP-2: ええ。同胞の死を悲しむのは当然でしょう。

██博士: そこに矛盾は存在しないのでしょうか?

SCP-270-JP-2: 意味がよくわかりません。あなた方人間も、いつかは死ぬと伺っています。死ぬとわかっているのに生に意味を求めることが矛盾であるなら、あなたがたも、わたしたちと同じ矛盾を抱えているのではないでしょうか。

██博士: なるほど。では、最後に、なぜあなたがたは、われわれ人間に、あらゆる食物を食べることへの忌避感を与えるのですか。

SCP-270-JP-2: おっしゃっていることがよくわかりません。私たちを食べることに、あなたがたが抵抗を感じていることは存じ上げています。そのお心遣いは、非常にうれしく思っております。しかし、その後のことについては、私たちは関与していないため、お答えすることができません。申し訳ありません。

██博士: 悪意があるわけではないのですね?

SCP-270-JP-2: そんな、とんでもないことです。

██博士: わかりました。本日のインタビューはこれで終了とします。

<録音終了>

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